クローバー

鹿ノ杜

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エピローグ

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 桜が散り終えた井の頭公園は暖かい。ベンチに座っていたら少し眠くなってきた。最近は残業続きだったから少し寝不足のような気もする。目の前を小さな男の子が駆けていって、母親らしき女性が慌てたように追いかけている。
 明大前で待ち合わせをしていた。待ち合わせた時間にはまだ早いから、ここに立ち寄ったのは正解だったように思う。
 先日やっさんから、飲みに行こうよ、と久しぶりに連絡が来た。やっさんの誘いはいつも突然だ。
「ちょうどよかった。発表があるんです」
「なんだ? 結婚でもするのか?」
「……会ったときに言います」
「あ、当たっちゃった?」
 やっさんは朗らかに笑った。
「ごめんごめん。ケントさんにはおれから声をかけておくよ」
「お願いします」
 それから、ケントさんの予定も合いそうだ、と再び連絡が来た。
 三人が揃うのは久しぶりのことだ。会った瞬間に二人は何と言うだろうかと想像して、顔がほころんだ。
 そのとき、風が吹いた。花の匂いのする風に、あの頃の記憶だけがよみがえった。
 ふと、足元に視線を落とす。すると、クローバーが群生していることに気がついた。ぼうっと眺めていたら、自分でもそうとは気づかないうちに四つ葉のクローバーを探していた。どんな意味を込めて、人は四枚目の葉を探すのだろうか。葉をかき分けようとして手を伸ばした。次第に夢中になりながら、かつて僕が東京の雑踏に向けて伸ばしていた手のことを思い出した。
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