私のための小説

桜月猫

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10話

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 今日の実力テストは1年から3年までの全校生徒が受けるので、実力テストが1教科終わるこどに各クラスで生徒達の屍が増えていき、5教科が終わって放課後になる頃には各クラスの半分ほどが真っ白に燃え尽きていた。
 1年3組でも庵が真っ白に燃え尽きていて、公もダウン寸前だった。

「ようやく終わったか」
「そうだね。疲れたよ」
「入学すぐの実力テスト5教科はツラいものがあるな」

 蛍はホッと一息吐き、朧月は背伸びをした。

「そういうわりには朧月も蛍も余裕じゃねーか」
「そんなに余裕に見えるかな?」
「まぁ、庵ほどじゃないからな」

 3人の視線が庵に向いた。庵は机に突っ伏したまま動かない。

「庵は論外だろ」
「そうかもしれないが、それでも精神的な疲れはあるぞ」
「入学早々のテストで疲れない人はいないと思うよ」

 蛍の言葉は納得できた公。

「でも、精神的な疲れはあっても、点数的な余裕がなければあーなるぞ」

 庵を指差した公。庵はまだ突っ伏したまま動かない。

「つまり、公も点数的に余裕はない、と」
「余裕があったらもうちょっと疲れずにすんだんだけどな」

 でも、公の中学の時の成績ってそんなに悪くないだろ。

「そうなのか?」

 あぁ。まぁ、よくもないけどな。

「どっちなの?」

 平々凡々。

「つまり、余裕があるわけでもないわけでもないってわけか?」

 そういうこと。

「いきなりのテストだから悪くなってる可能性があるんだよな~」
「それはみんなだからね」
「でも、もとの成績がいいやつは悪くなったところでそれほどだからいいじゃねーか」

 ブーたれている公に朧月と蛍は苦笑した。

「そういえば2人の中学の時の成績ってどうなんだ?」
「僕はそこそこ良いほうかな」
「俺は得意と不得意で差が出るな」
「でも、余裕ってことは不得意な教科もそんなに悪くないってことだろ」

 羨ましそうに公は2人を見た。

「終わったことをあーだこーだ言ったところで意味ないし、帰ろうぜ」

 あっさりとしている朧月とは違ってまだ少しモヤモヤしている公だが、気持ちを切り替えて帰る準備を始めた。
 3人の帰る準備が終わるとまだ突っ伏して動かない庵を見た。

「これ、どうするんだ?」
「任しとけ」

 自信満々に言う朧月。

「どーも。コンビーフです」
「賞味期限は明日!」

 あれだけ真っ白に燃え尽き、机に突っ伏したままいっこうに動かなかった庵があっさりと立ち上がって復活した。

「って、あれ?」

 首を傾げる庵を見ながら公は驚いていた。

「ネタを始めると反応するなんて」
「ただ俺の声じゃないと反応しないのが欠点だがな」

 それは庵にとってコンビーフの相方は朧月だけだからだろう。これぞコンビ愛!

「気持ち悪いこと言うな、作者」
「気持ち悪いとはなんだよ!」

 なんのことを言っているのか理解していないくせにノリだけでキレた庵。その頭を叩いた朧月はため息を吐いた。

「帰るからさっさと準備しろ」
「ハッ!もうそんな時間なのか?」

 最後のほうのテストは半分無意識でやっていた庵は時計を見てさらに驚き、一瞬で帰る準備を終えた。

「さぁ、帰るぞ!」

 先ほどまで燃え尽きて死んでいたくせにイキイキと先頭で歩いていこうとする庵に朧月はまだため息を吐き、公は呆れ、蛍は苦笑した。

「どうした?帰らないのか?」
「もちろん帰るよ」

 公と朧月はなにも言わずに庵を抜かしていったので、2人についていきながら蛍が笑顔でそう言うと、庵も2人のあとを追った。
 4人が廊下に出ると桜達がすでに待っていたので、合流すると下駄箱に向かって歩きだした。

「それで、テストの手応えはどうだった?」

 桜の問いに分かりやすい反応を見せたのはやっぱり庵で、背中を丸くして手をだらーんとさせると、一気に気持ちが沈んで元気がなくなった。次に分かりやすかったのは真一文に口を結んだ公に苦笑する暁、頭を掻いてなんともいえない表情をした蛙の3人。他のメンバーは微笑だったり無反応だったりと余裕がありそうだった。

「なるほどなるほど」

 桜は特に庵の反応を見てにまーとしていた。その表情に少しムカついた庵は反撃した。

「そういう桜はどうなんだよ!」
「まあまあね」
「桜の中学の時の成績は俺と同じくらいだぞ」
「2人の中学の時の成績なんて知らねーよ!」

 庵のツッコミに確かにと頷く2人。

「テストが返ってきた時のお楽しみってことで」

 どこか納得のいかない庵だが、テストが返ってこないとなんともいえないので矛先を朧月に向けて八つ当たりを始めた。

「そもそも朧月が余裕ぶってるのも気にくわねーんだよ!」

 八つ当たりされた朧月はため息を吐いた。

「俺は余裕ぶってるんじゃなくてお前みたいに終わったことであたふたしねーだけだよ」
「朧月は相変わらずあっさりしてるな」
「庵が見苦しすぎるだけだろ」

 八つ当たりのつもりがやぶ蛇になった庵はもらうことのなかったダメージをもらいさらにテンションが下がった。

「そういえば、得意と不得意で差が出るとか言ってたが、どれくらいなんだ?」
「それもテストが返ってきてからのお楽しみだな」
「なら楽しみにして待つことにするよ」

 蛍が微笑みかけると朧月は頷いた。

「そうしといてくれ」

 下駄箱についたので靴に履き替えて校門までやって来ると、校門の前には人混みができていた。

「どうしたんだろね~」

 暁は背伸びをしたが、人混みの先が見えることはなかった。

 じゃあ人混みの先頭にワープ。

 先頭までワープしてきた公達が見たのは少女の背中とその向こうにいる10人の不良達。

「これってどういう状況?」
「一触即発?」

 薫が首を傾げていると、少女が喋りだした。

「なにしに来たの?」
「なにしに来たの?か。そりゃあお前が普通校に入学したって聞いたから見に来たに決まってるだろ」

 不良達はニヤニヤしていた。

「それに、1つ確認したいこたがあったから来たのさ」
「なによ?」
「もう喧嘩しないってホントか?」
「ホントだったらどうするの?」
「そりゃもちろん、今ここでお前に喧嘩をふっかけて今までやられた分をかえすのさ」

 不良達はすでにやる気満々だった。

 ここでもう1度公だけワープ。

 公は少女を守るように前に立ち、不良達を見た。

「えっ?えっ?」

 戸惑う公を不良達が睨み付けた。

「なんだテメェ」
「ジャマする気か!」
「えっ?いやっ。えぇ!?」

 さらに戸惑う公。その姿に不良達はイライラを積もらせて爆発した。

「おい。やっちまえ」

 その言葉に1人の不良が公の前にやって来た。

"って展開早すぎねーか!?ってか勝手に俺を巻き込むな!"

 公が私に抗議している間に不良は公に殴りかかった。

「うおっ!」

 いきなりの攻撃をとっさに避けた公。すると、不良はさらに攻撃をしかけたが、公はことごとく避けていった。

「このヤロウ!避けるな!」
「いや、ムリだから」

 冷静になった公は不良を冷めた目で見た。

「くそが!」

 さらに殴りかかってきた不良の拳を避けた公は、掌底を不良の顔面スレスレで寸止めした。不良は腰を抜かして座り込んだ。

「なにやってんだ!お前ら!」

 不良達は公を取り囲むために動き出した。その時、

「ジャマするで~」
「ジャマ………」

 声が聞こえてきた方向を見た不良達は固まった。公もその方向を見ると、校門の塀の上にサングラスをかけて長髪を後ろに1つにまとめ、着崩した制服を着た少年がいた。

「???」

 少年は首を傾げた。少女が驚いたように少年を見ていると少年は塀から飛び降りた。

「おいおい。そこは『ジャマするやったら帰ってか』やろ。なんで途中で止めるねん」

 少年が話しかけても不良達は誰も返事をせずに人を凝視していた。

「なんや?」
「なんでお前がいる?」
「じゃあ逆に聞くが、なんでテメェらはここにいるんや?」

 不良達は顔を青くして冷や汗を垂らした。そんな不良達と公の間に少年はやって来て、1度公を見てから視線を少女に向けた。

「よう、ゆき
じんどうして………」
「いやな。そこのバカどもがおかしなことをしようとしてるって話を聞いたから来てみたら案の定だったってわけや」

 人に睨まれた不良達はさらに顔を青くして後ずさった。

「テメェら。この前の決着で雪には2度と手は出さんって約束したはずやろ」
「あ、あんな約束律儀に守る必要ないだろが!」

 1人が叫ぶと、他の9人も「そうだ!」と叫びだしたが、直後「パン!」という音が10発鳴り響いたかと思えば不良達は頭を抱えてうずくまり、人はどこからか取り出したハリセンで肩を叩いていた。つまり、人が一瞬で10人の頭を叩いたということだ。

「見えなかった………」

 呟く桜。
 人の動きが見えた人は多分いないだろう。

「テメェら。そう言うっちゅうことはトップの命令に逆らうってことやぞ。その意味わかってんやろな?」

 うずくまっていた不良達がガタガタ震え出した。そんな不良達を見て人はため息を吐いた。

「みなさん。コイツらが騒がしてしまって悪かった。このとおりや」

 不良達を止めにきた人が頭を下げたことに公や野次馬達は驚いた。

「さて、ここにおってもジャマになるだけやし、これ以上の話は帰ってからや。いくで」

 人の言葉に不良達は逆らうことなくついていき、騒動は一段落した。

「ありがとう」

 雪からのお礼に公は戸惑った。

「そんなお礼を言われるようなことはしてないよ」
「でも、守るように出てきてくれたでしょ?」
「あれは作者が無理矢理やったことであって」
「でも逃げなかったよね?」
「それは………」
「だからやっぱりありがとうよ」

 雪の笑顔に公はそれ以上否定することができずにお礼を受け取った。

「私は雪。君は?」
「俺は公」
「で、私が公の幼なじみの桜」
「同じく幼なじみの楓よ」
「幼なじみの暁だよ~」
「いとこの薫」
「僕はクラスメートの蛍で、双子の妹の光」
「クラスメートの朧月だ」
「クラスメートの庵です」
「俺は朧月と庵の幼なじみの蛙だ」

 いつの間にかやって来ていた桜達も自己紹介をした。

「って、お前ら見てただけだろが!」
「関係ないでしょ」
「あるだろ!」
「なんだよ!またお前だけ女の子と仲良くなる気かよ!」
「うるせーよ!」

 ほっとくとうるさくなりそうな庵を公は早いうちに殴り倒した。

「あーもう!雪って今年入学した1年だよな?」

 やけくそ気味に公はそう確認した。

「えぇ。そうよ」
「なら同級生としてこれからよろしく」

 公が手を差し出すと、雪は笑顔で手を握り返した。

「えぇ。よろしく、公」
「あぁー!」

 その光景に復活した庵が叫んだが、直後にまた公に殴り倒されて沈黙した。
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