私のための小説

桜月猫

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30話

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 月曜日。なにげない週の始まりなのだが、1年3組は朝から騒がしかった。その騒ぎの中心は公と庵。

 今日も朝早くに学校に来た公が蛍達と話していると、いきおいよく扉が開いて庵が入ってくるといきなり公の胸ぐらを掴んだ。

「テメー!」
「落ち着きやがれ」

 公は庵の頭にチョップをくらわして下を向かせたが、庵は襟を掴んだ手を離さずにすぐに顔を上げて公を睨み付ける。
 ため息を吐いた公はアイアンクローで庵の顔を掴むと力を入れた。

「イタタタタタタタ」

 しかし、イタイと叫びはするも、やっぱり襟は掴んだまま離さない庵。

「話はちゃんと聞いてやるからとりあえず襟を掴む手を離せ。そしたら俺とアイアンクローを止める」

 公の言葉を聞いてもまだ粘っていた庵だが、我慢の限界にきたのかようやく手を離した。なので、公も約束通りアイアンクローを止めた。
 すると庵は痛さから頭を押さえながら座りこんだ。

「で、朝っぱらからいきなりなんなんだ?」

 そんな庵を呆れながら見下ろした公。

「見たんだよ」

 頭を押さえながらもキッ!と公をにらみあげる庵。

「いったいなにを見たんだ?」
「土曜の夕方のスーパーで、お前が見たことない美女2人と楽しそうに買い物する姿をな!」

 庵の言葉になんのことだか理解した公は「あー」と声をあげた。

「あの美女2人は誰なんだよ!」

 むさ苦しく迫ってきた庵の顔を公は片手で押さえつけた。

「あの2人は義姉さんとその友達だよ」
「そういえば、あんたこの週末ずっと史さんのところに行ってたんだっけ?」

 桜の隣では暁もうんうんと頷いていた。

「なんで知ってるんだよ」

 別に知られて困ることではないのだが、伝えてもいないので気になった公。

「私と舞と夢が週末に桜達と遊んだ時に話した」

 薫が手を上げた。

「なるほどな」
「ちょっと待て」

 納得した公に庵から待ったがかかった。

「なんだよ」
「舞と夢っていうのは?」

 聞いたことのない名前に疑問をもった庵。

「俺の妹達だよ」
「へぇ~。もしかして、お前って兄妹の中で唯一の男なのか?」
「そうだけど?」
「うらやましいな!」

 怨めしそうな目で見ながら庵が手を伸ばしてきたので、公は正面から取っ組みあった。

「さらに言えば、公の家は単身赴任の父親もとへ母親が行ったから、今家にいるのは公と妹達と薫と萌衣さんだけだったわね」

 桜が言わなくていいことを爆弾を投下したことによって庵のパワーが増し、公は押されはじめた。

「桜!テメー!」

 桜に文句を言いながらも、なんとか庵を押し返して拮抗する。

「そうやって桜に文句を言うってことは本当なんだな~」
「間違っちゃいないが、だからといってお前にとやかく言われる筋合いもねーだろが!」

 公の言い分はもっともなのだが、そんなもの今の庵には関係ない。

「そんなうらやましい状況のお前を俺が許すとでも思ったか!?」
「お前にこうして怒られてる意味すらわかんねーよ」
「テメーだけどうしてそんなに女性との出会いがあるんだ!?」
「それは作者がそうしてるだけで俺のせいじゃないだろう」

 庵の力が弱まったので公は少し押し込んだ。

「それに、お前は俺の周りに女性が現れたらいちいち俺に突っかかってくる気なのか?そんなことするより自分の彼女作ってリア充になったほうがよくないか?」

 あまりに心にグサグサくる言葉に、力が弱まるどころか泣き出す庵。

「わかってるさ。他人を羨ましがっているだけじゃダメなことぐらいわかってるさ。でも、俺はお前とは違って女性との出会いがないんだよ!」

 庵の悲痛な叫びに公達がなんともいえない雰囲気になっていると、庵の頭を朧月が叩いた。

「アホか。お前の場合、問題なのは女性との出会いがないことじゃなくて高すぎるテンションだろが」
「どういうことだい?」

 首を傾げる蛍に朧月は苦笑を向けた。

「こいつは基本俺や蛙と一緒に行動することが多いから、俺や蛙と同じくらい女性と出会ってはいるんだ。
 そこでみんなに聞きたいんだけど、彼女が欲しいというのを全面に押し出したうえにこのハイテンションで迫ってこられたらどう思う?」
『あ~』

 公達は納得した。

「うざったいわね」

 桜がバッサリと斬り捨てる。

「そう。うざったいうえにめんどくさいから相手はひいてしまって、せっかくの出会いを台無しにしてしまう」

 朧月からきた追加の1撃に、庵は胸を押さえながら膝まづいた。

「だから、基本こいつは自分で出会いのチャンスを潰してるんだよ。6話ではカッコつけて『今のままの俺を好きになってくれる人を探す』なんて言ってたけど、ずっとそのハイテンションに付き合ってくれる女性は中々いないってことを理解しとけよ」

 いつの間にか正座をしている庵は深々と頷いた。

「結局、俺に突っかかってきているのは八つ当たりってわけか」
「そうだろうな」
「迷惑なヤツだ」
「ホントだよな」

 公と朧月の視線をうけた庵は深々と土下座をした。

「どうもすいません」
「どうやら決着したようですね」

 そう言いながらやってきたのは長だ。

「でしたらもうすぐ授業が始まるので他のクラスの方々はクラスに帰ったほうがいいですよ?」

 長の言葉で時計を見た桜達はそれぞれのクラスへと戻っていった。

「庵くんもいつまでもそうしていないで早く席に座ってください」
「はい」

 テンションの低い庵は素直に自分の席に座り、それを見た公達も席に座った。


          ◇


 ところ変わって、時間も少し巻き戻っての朝の生徒会室。

「先生達から上がってきた報告と部活動や同好会への参加の有無とかからいって、最終選考はこれでいいかしら?」

 秋は夏を見た。

「私はこれでいいと思いますよ」
「俺も異論はありません」
「ワタシも異論ナシデース」

 廻やハルも同意したので、夏の視線は3年のいちふゆに向いた。

「俺は異論はねーな」
「私もないですよ」
「それじゃあ決定ということで、先生のほうから連絡してもらうようにするわね」

 それが決定すると、会議に一段落したので夏達はホッと一息吐いた。

「やっぱり秋先輩が生徒会長やってくださいよ~」
「だ~め。選挙で決まったことなんだからいまさら変えるなんてできないわよ」

 微笑んだ秋は後ろから夏に抱きついた。

「そうデスヨ。みんなが夏に期待しているノデス。だからガンバるデス」
「この前みたいに恥ずかしいことになるだけなのに」

 顔を赤らめた夏にハルと冬が左右から抱きついた。

「恥ずかしがることなんてないですよ」
「そうデス。この前だってあんなにカワイかったんデスカラ」

 2人は夏の頭を撫でた。しかし、納得できない夏は頬を膨らませて怒ってることを主張するが、ただただ可愛いだけで、秋と冬とハルはその姿を微笑ましく見ていた。

「おーい。そろそろ授業始まるから教室行くぞ」

 壱の言葉に3人は名残惜しそうに夏から離れた。

「壱先輩。ありがとうございます」
「まぁ、俺も可愛いっていうのには賛成なんだがな」
「ですね」

 壱と廻の言葉に呆然としていると、全員が生徒会室を出ていき、夏は1人残された。

「こんな生徒会もうイヤー」

 生徒会室に響く夏の叫び声。それを廊下で聞いた5人は笑いだした。


          ◇


「公くん。少し職員室に来て下さい」

 朝のホームルーム終わりに向日葵からそう言われた公は、向日葵と一緒に職員室へ。

「なんでしょうか?」
「今週末の土曜日になにか予定はありますか?」
「いえ。今のところはありませんけど」
「そうですか。ではこれを渡しておきますね」

 向日葵が差し出した封筒を受け取った公。封筒には『生徒会主宰お花見パーティー招待状』と書いてあった。

「これは?」
「見ての通り、招待状です。とりあえず中を見てみて、行く気がなければいつでもいいので先生に返しにきてください」
「はぁ」
「先生の話はそれだけですので、教室に帰っていいですよ」
「わかりました。失礼します」

 職員室を出て教室に帰る間、公は封筒を見て首を傾げるのだった。
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