私のための小説

桜月猫

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77話

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 さて、読者のみなさんはこの『たたみなさい』の1文に隠された謎を見つけることが出来ただろうか?

「なに推理モノみたいな始め方をしてるんだよ」

 えっ?前回の終わりがそれっぽい終わり方になったから、それっぽく始めてみたのだけど?

「みたのだけど?じゃねーよ」

 え~。いいじゃん。たまにはこんな始まり方の回があっても。

「いいからさっさと進めろ」

 ぶ~。

【ところで、この掛け軸に隠された謎ってなんなのですか?】

 まだわかっていない幽は掛け軸を見て首を傾げていた。

【まず掛け軸の裏を捜させたいのなら、『裏を見ろ』とかもう少し紛らわしい書き方をしたほうが惑わせやすい。それに、掛け軸をたたむなんて言い方はおかしいと思わないか?】
【確かに。掛け軸をたたむなんて普通言わないですね】
【そうなってくると、この『たたみなさい』は掛け軸のことを言っているわけじゃなくなる】
【じゃあ、何のことを言っているのですか?】

 その謎をとくために必要なこと、それは漢字への変換。

【漢字への変換ですか?】

 私の言葉に幽は首を傾げた。

 そうそう。この1文を漢字に変換すると、

『畳みなさい』

 と、なるわね。

【そうですね。でも、別に変なところはありませんよ?】

 そうだね。でも、ここからさらにもう1文字だけ漢字に変換すると、別の意味になるのよね。こんな感じに。

『畳見なさい』

【あっ!ホントだ!漢字に変換したことで意味が変わった!】

 漢字へ変換する前だと『たたみなさい』だったのが、漢字へ変換することで『たたみなさい』となって『み』が1つ増えて全く別の意味になるのよ。

【つまり、この部屋の畳を確認すれば】

 幽が畳を確認していくと、部屋の角にある正方形の畳を見て叫んだ。

【ありました!】

 なので、公も確認すると、畳のへりの模様の中に小さく数字が紛れ込んでいて、その数字は『390218』だった。

【これがあのダイヤルの数字なんでしょうか?】

 このからくり屋敷にも慣れてきた幽は、それをすぐに断定することはしなかった。

【そうなんだろうけど………】

 公は畳を見て考え込んでいた。

【どうかしましたか?】

 幽の問いに公は畳のへりを指でなぞった。

【この畳、本来のサイズより少し小さく作っているから隙間があるんだよね】
【確かに】

 その隙間を確認した幽だけど、その意味がわからずに首を傾げて悩みだした。

【なんででしょう?】
【それは多分】

 公は畳を叩いて畳返しの要領で浮かせると畳をキャッチしてどけた。
 畳がなくなって見えた床には1つの鍵穴。

【えっと、つまり、畳に書いてあった番号でダイヤルを回して開けて、中に入っている鍵をここにさして回せばからくりが発動する。というわけですか?】

 幽の問いに答えることなく公は考えながらダイヤルの方へやって来た。

【多分、もうちょっとひねらないといけないと思うな】
【ひねる、ですか?】

 公の返事に幽は首をひねった。

【そうそう。例えば】

 ダイヤルを掴んだ公は回すのではなく引き抜いた。

【えっ】

 驚く幽とは対称的に、公は自分の考えが正解だったことにニヤリと笑った。
 引き抜かれたダイヤルの先は鍵の形をしていた。
 その鍵を先ほど見つけた床の鍵穴に差し込むとぴったり入った。

【あとは、畳のへりに書いてあった番号通りに回せば】

 カチカチとダイヤルを回して最後の8のところに合わせた瞬間、天井から階段が降りてきた。

「よし!」

 ガッツポーズする隣で呆然とするしかない幽。

【ほら、行くよ】

 公に促されると、幽は呆然としたまま公のあとをついていった。
 階段をのぼって2階にやって来た公は、廊下の左右にある4つの部屋の入り口を見た。

【ここにも何か仕掛けがあるのですか?】
【あることにはあるけど、単純な仕掛けだよ】

 そう言いながら公は廊下の突き当たりまで行くと、壁を押した。すると、壁が回転した。

【庭の生け垣と同じ回転扉】
【そういうこと】

 というわけで、回転扉を抜けるとそこは部屋で、からくり爺・婆と白がいた。

「今日もノーミスでやってきたか。少しは失敗してくれないと俺達としてもつまらないし、自信をなくすぞ」
「イヤですよ。失敗したら汚れたり痛い思いをしないといけないじゃないですか」

 頬を膨らませるからくり爺を見て公は苦笑した。

「まぁまぁ爺さんや。そんなことより色々と話を聞かないといけないでしょ」
「そうだったな」

 からくり爺は一瞬視線を白に向けてから公を見た。

「作者からは公が助けた子としか聞いてないんだが、どういう状況なんだ?」
「そうですね」

 公は駅前を歩いていると白に助けを求められ、黒服達から逃げるためにこの家に来たことを話した。

「ふむ。トラちゃん。その黒服達の映像を出せるか?」
「もちろん!」

 トラちゃんの元気な返事とともに画面には黒服の姿が映し出された。

「ふむ」

 頷いたからくり爺は白を見た。

「この黒服達に見覚えは?」
「ないですね」

 きっぱりと答える白。その答えを聞いたからくり爺は頷くとさらに質問をした。

「追われる理由に心当たりは?」
「ありません」
「追われるのは今日が始めてかい?」
「はい」
「どうして公に助けを求めた?」
「勘ですね」
「勘?」
「はい。この人なら信用できそうだ、と一目見た時に思えたので、助けを求めました」

 そこまで聞いたからくり爺は聞くことは聞いたとばかりに公を見たので、今度は公が話し始めた。

「一様追っ手の黒服をまいたとはいえ、また追われる可能性もあるから家まで送るよ」

 公の提案に白は黙りこんでしまった。

「どうかした?」
「私、今家出中で家には帰りたくないのです。だから迷惑なのは承知でお願いします。ここに泊めてはくれませんか?」

 頭を下げた白。
 その姿に公はからくり爺・婆と視線を合わせた。

「公。どうするんだ?」
「そうですね。助けに手を差しのべて乗りかかった船ですからね。最後まで面倒はみるつもりですよ」

 その答えを聞いたからくり爺・婆は微笑みながら公を見た。

「お前ならそう言うと思ってたよ」
「さすがはヒーローね」
「からくり婆。その呼び方はもう止めてくださいよ」

 公がため息を吐いていると、白が頭を上げた。

「泊めてくれるのですか?」
「ここじゃなくて俺の家だけどね」
「ホントにいいの?」
「あぁ。助けたからには最後まで面倒はみるよ。途中で放り出す気はないからうちに来るといい」
「ありがとう」

 頭を下げた白へ微笑みかける公。

「というわけで、俺達は帰ります」
「その前に、漬物をつけたから持って帰るといい。だから、婆さん。先に白を玄関まで送ってあげてくれ」
「わかりました。いきましょ、白」
「はい」

 2人が部屋を出ていったのを確認したからくり爺は、公を連れて台所までやって来た。

「公。今回は中々厄介なことに巻き込まれたかもしれないぞ」

 漬物を袋に分けながらかけられたからくり爺の言葉に公は頷いた。

「わかっています」
「そうか。なら俺から言うことはもうなにもない。ほら、漬物だ」
「ありがとうございます」

 漬物を受け取った公は玄関まで行って白と合流し、2人に見送られながらからくり屋敷をあとにした。
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