紡ぐ者

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【第15章 太陽が沈む時】

第1節 感情の力

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「な、なんだ?!」
ロビンは青い光に包まれる刀を見る。光は刀に吸収され、一体となった。
「何が……起きたんだ……」
(刀身が光を纏っている?魔纏ではないなら、あれはなんだ?)
その場にいる者は皆困惑する。ニグレードを除いて。
「"青い炎"……」
「へ?」
ニグレードは苛立ちを見せる。
「かつて我を瀕死にまで追い込み、この身を滅ぼした炎。我の討伐には至らずとも、決定打となり我を封印した。それを扱える人間が再び現れるとは……実に忌々しい。」
ニグレードはロビンから離れる。
「貴様は異質だ。太陽の人でありながら青い炎を扱うことができる。貴様は……」
ニグレードは空中に大量の魔法陣を描く。
「我が最も警戒するべき男だ!」
それぞれの魔法陣から、無数の光線が放たれる。その威力は先程までとは比べ物にならないほどだ。
「うぇっ?!」
ロビンは光線の下をくぐって攻撃をやり過ごす。
「やるしかない……美桜、玖羽を頼む!」
ロビンは玖羽を美桜に任せると、ニグレードに向かって走り出す。美桜は玖羽を回収する。
「………。」
玖羽は意識を失っている。だが、息はある。
「この傷……早く手当したほうがいいぞ。」
「わかってる。」
美桜は玖羽の体に手を当てる。
「くっ………」
玖羽は苦しそうな声を出す。
「少し我慢してよ。治療魔法は得意じゃないから。」
ロビンはニグレードの黒い炎を青い炎で相殺する。
(効いてる!)
ロビンは手応えを感じるが、ニグレードもただでは転ばない。黒い炎をかき消してもすぐに迫ってくる。
「相殺できてもキリがねえ!」
ニグレードの目を見ると、凄まじい殺意を感じる。
(本気で俺を殺しに来てるな。隙を見せたら終わりか。)
ロビンはその場から離れてニグレードに接近する。
「ようやく近づいてきたか。」
ロビンは刀をニグレード目掛けて振り上げる。刀がニグレードの側面に大きく斬り裂く。
「逃さん!」
ニグレードはロビンの刀を自身の体で掴む。
「おまっ……」
ロビンは刀を引き抜こうとするが、がっしりと掴まれているためびくともしない。ロビンの左腕に黒い炎が忍び寄る。それに気づいたロビンは、刀から手を離して距離をとる。
「ハァ……ハァ……」
(今……変な感じがした……さっき掴まれていたら……)
ロビンは呼吸を整えて落ち着きを取り戻す。
(こいつは何を狙っている?まずは武器を取り戻さなねえと。)
ロビンはニグレードに刺さっている刀を見る。近づけば簡単に手が届くが、迂闊に近寄ることはできない。その上、ニグレードががっしりと掴んでいる。
(どうする………)
「どうした動きを止めて。降参したか?」
黒い炎が地面を這って近づいてくる。
「くそっ!」
ロビンはその場からすぐに離れる。
(ふんっ、所詮は刀をあっての力か。この程度で無力ができてしまうとは……我の想像より脅威ではなかったようだな。依代として使う分には問題ないがな。)
ニグレードは美桜のほうを見る。
(まずは奴等を処理するか。)
青がニグレードに気づく。
「え?」
青は2人を掴むと空中に飛ぶ。
「急にどうしたの?!」
「あいつがこちらに来る。」
ニグレードは青に接近する。ロビンの目にニグレードが映ると、黒い炎を振り払ってすぐに青のもとに向かう。
「どうする?我ではニグレードに対抗できんぞ。」
「逃げて。あいつの注意をロビンから逸らして。」
青はニグレードの頭上を飛び越える。美桜はニグレードに魔法を放って反撃する。
「空中戦か、面白い!」
ニグレードは青の体に黒い炎を巻きつける。
「青!」
「我は問題ない。今はお前たちのことを気にしろ!」
美桜は青の背中によじ登ると、玖羽をかついで下に飛び降りる。
「逃げたか。」
美桜の足下から黒い炎が放たれる。
「しまっ……」
美桜は黒い炎に呑み込まれる。玖羽は炎に弾かれて壁際に転がる。炎が晴れると、美桜の姿はなかった。
「美桜!お前!美桜をどこにやった?!」
「ここだ。」
ニグレードは自身の体から美桜を取り出す。
「貴様の仲間は我の人質となった。取り戻したくば取引をしようじゃないか。」
ロビンは唾を飲む。
「要件はお前の体をよこせ。我の依代にする。」
ロビンの頬を汗がつたう。
(どうすればいいんだ………)
「決まらないのか?」
ニグレードは美桜の首から黒い炎を注入する。
「あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙!」
美桜は苦痛に悲鳴をあげる。
「ふむ……龍神の加護で即死しないか。なら、もう少し……」
ロビンはニグレードに刺さっている刀を引き抜いて、美桜に巻き付いている黒い炎を断ち切る。
「………。」
ロビンの瞳は太陽のように朱く染まっていた。
「あれは………」
ニグレードはロビンの瞳に注目していると、急に体が軽くなる。気がつくと、体の一部が斬られていた。背後には刀を鞘に納めるロビンがいた。
「……消えろ。」
ロビンがそう呟くと、ニグレードの体を青い炎の斬撃が真っ二つに断ち切る。
「ぐあぁぁ!貴様ぁ!」
ニグレードは絶叫しながら消えていった。
「やったか?」
青はその光景を上から見ていた。青に巻き付いていた黒い炎が消える。
「……多分。」
ロビンは青のほうを見上げながら話す。美桜はゆっくりと立ち上がる。
「ん?」
ロビンは何かの気配を感じる。
「どうしたの?」
「いや、何か……」
ロビンの全身に激痛が走る。痛みに耐えきれず、地面に膝をつく。
「ふぅん。お前に聞くんだな。炎以外の耐性は低いのか……」
ディファラスがポケットに手を突っ込みながら暗闇から出てくる。
「あんた……どこから?ここは結界で入って来れないはず……」
「確かにそうだな。まぁ俺には関係ないがな。」
ディファラスは得意げに話すと、ロビンのほうを見る。
「さて、《王》……いや、ニグレード様。今こそ依代を手に入れる時です。」
「ロビン逃げて!」
美桜はロビンに叫ぶ。
(わかってる……けど、体が動かねえ……)
ロビンは体を動かそうとするが、何かに縛られているかのように全く動かない。
「あんた、ロビンに何をしたの?!」
美桜はディファラスに薙刀を向ける。
「何って、束縛しただけだ。逃げられたら困るからな。」
ディファラスは美桜の目の前から姿を消す。
「ッ?!」
美桜はロビンのもとに駆け寄ろうとするが、結界に阻まれて近づけない。
「なんで結界が?」
「ニグレード様の結界を分裂した。お前たちはあいつに近づくことはできない。」
美桜はディファラスを見る。
(魔力……一体いつ使ったの……)
「あんたの魔法が原因?」
「その通り、俺の魔法は特殊でな。空間に干渉することができるんだ。」
「空間に……干渉……?」
美桜は話についていくことができない。
「空間に干渉すれば、結界を断裂することもできる。結界の内側と外側を繋げることも可能だ。」
「じゃあさっき私の前から消えたのも?」
ディファラスは顎に手を当てる。
「それは違うな。」
「は?」
美桜はおもわず声が出る。
(え?瞬間移動したってこと?魔法でそんなことできるの?)
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ディファラスは美桜の背後から話しかける。
(また消えた……?!)
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(こいつ……人を舐め腐ってるの?ここまで不気味な奴は初めてだわ……本っ当にイライラする…)
(あとさっきから感じるこの違和感は何?)
美桜は唇を噛みしめる。
「お、始まったな。」
ロビンのほうを見ると、ロビンの体に黒い炎が纏わりついていた。
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