紡ぐ者

haruyama81@gmail.com

文字の大きさ
89 / 117
【第20章 運命の選択】

第2節 真の焔

しおりを挟む
「俺は負けない。絶対に。」
椿と美桜は岩陰から顔を出す。
「あれは……ロビンなの?髪が伸びてるし、目の色も赤いし。あの髪……炎なの?」
「………。」
椿は一言も喋らない。ただひたすら、ロビンの姿をじっと見つめていた。ロビンの姿は先程までとは大きく変わっている。髪は腰まで伸びており、伸びた部分は燃えているかのように揺らめいている。瞳の色は青から赤へと変わっている。全身には、青い炎と赤い炎がローブのような形となってロビンの体を覆っている。その姿はまるで別人のようだ。
(赤い炎と青い炎………2つの炎を纏っている。あれは……一体何?)
ロビンは刀を下ろしてニグレードに近づく。
「その姿はなんだ?」
「さあな。だけど、1つわかることがある。」
ロビンは手を握りしめる。
「今ならお前に勝てそうだ。」
ニグレードが瞬きをした瞬間、ロビンが目の前に現れる。
(速っ……)
ニグレードが反応するよりも先にロビンの刀が振り下ろされる。青い炎を纏っているためかなりの痛手となる。
「ちっ、くそっ……!」
ニグレードはロビンの足元から蒼黒の炎を放つが、ロビンの纏っている炎に相殺される。
「はっ!」
ロビンは刀の柄でニグレードを殴る。体勢を崩したところに蹴りをいれる。しかしニグレードもただでは転ばない。ロビンの足を掴んで地面に倒そうとする。
「離せ!」
ロビンはニグレードの腕を斬る。斬った腕から黒い炎が飛散する。ロビンは全身で浴びるが、何事もなかったように平然と立っている。
「お前っ……」
ニグレードが起き上がる前に、ロビンはニグレードの背中を貫いて地面に刀を突き刺す。
「燃えろ!」
ロビンは刀から青い炎を噴出させる。ニグレードの体が炎に包まれる。
「ぐっ……あぁぁぁ!」
「これはさっきとは違う。本当の太陽の炎だ。」
ニグレードは地面に手をついて体を起こそうとする。
(こいつ、まだ動けるのか?!)
ロビンは炎の威力を強める。しかしニグレードは止まらない。苦痛の声をあげながら体を無理やり起こす。
「俺は、《王》だ。全ての魔獣を…統べる者だ。人間風情に負けるなど……ありえない!」
ニグレードは立ち上がって左手で刀を掴む。手から血がこぼれる。
「《王》が負けることなど……許されない。負けるのは……お前だ!」
ニグレードは右手でロビンの左腕を掴む。ロビンは振り払おうとするが、離す気配はない。ニグレードはロビンの背後に剣を生成する。
「はぁ……力技で押し切るか。」
ロビンは右手を剣から離すと、炎を集めてニグレードの右腕を掴む。そして右手に力を込める。
「くそっ!」
ニグレードは咄嗟にロビンの左腕から手を離す。その隙にロビンはニグレードの体から刀を引き抜き、背後の剣を斬り伏せる。その後、ロビンはすぐに戦闘態勢を整える。
(こいつ……戦闘に没頭している。体の動かし方が今までとは違う。)
ニグレードは2本の剣を構える。
(少しでも隙を見せることは許されない……)
ロビンは刀に炎を集める。
(来る……!)
ニグレードが予想した通り、ロビンはニグレードに斬りかかる。剣の軌道が青い光を残す。2人の剣が何度もぶつかり合う度に、辺りに黒い炎と青い炎が飛散する。
「ちょっと離れたほうがいいかも。」
「え?」
美桜は椿に腕を引っ張られる。すぐ後に、2人がいた場所に青と黒の炎が降り注ぐ。椿は赤を美桜に移す。
「お前は戦わないのか?」
「魔力がだいぶ持ってかれたわ。私は支援にまわるから、2人で頑張りなさい。」
美桜が赤を受け取ると、青が顔を出す。
「こいつに我らを渡して大丈夫なのか?」
「問題ないわ。私の子孫よ。舐めてもらっては困るわ。」
(その子孫を我に食わせようとした奴には言われたくないな。)
青はそっと視線を美桜に移す。美桜は首を傾げる。
「あー、そうそう。こいつらは好きなだけこき使っていいよ。」
「「何勝手なこと言ってんだー!」」
2体の龍は同タイミングに同じ言葉を叫ぶ。
「元々あんたらは美桜に渡すつもりだったから。丁度いいと思っただけよ。」
「もっと言い方があるだろ!」
「右に同じく。あと、そんなことは初耳だ。」
赤は青の言葉に同感する。
「私の指示に従いなさい。」
椿の言葉に赤と青は凍りつく。
「ほら、行くよ!」
美桜は2体の龍を引っ張る。椿は薙刀をしまって魔力を確認する。
(だいぶ減ったわね……)
椿は遠くの空を見上げる。そこには2つの閃光が見えた。
「くっ………早く……倒れろ!」
「それは貴様だ!」
2人は剣がぶつかる度にいがみあう。2人はかなりの時間、攻防を繰り返しているが一向に勝負がつかない。
(早く決着をつけないと……)
ロビンは刀を振り下ろしたあと、ニグレード目掛けて振り上げる。ニグレードは予想外の行動に反応できず、頬に刀を受ける。
「へへっ……だいぶ疲労が見えてきたな。そろそろ幕引きの時間か?」
「そう言っているが、お前にも余裕はないだろう?」
「それがどうした?そんなこと………関係ねえ!」
ロビンはニグレードに刀を振り下ろす。疲労が溜まってきて単調な動きしかできなくなっている。しかしそれは、ニグレードも同じだ。先程から動きが少しずつ鈍くなっている。その証拠に、避けられるはずの攻撃を避けられなくなっている。
(ぐはっ………またか。)
ニグレードは攻撃を受けて、後ろによろめく。ロビンはその隙に一気に畳み掛ける。
(今だ!)
ロビンが刀を振ると同時に、ニグレードは黒い炎を爆発させる。
「おわっ?!」
ロビンは爆風に吹き飛ばされて地面を転がる。爆風を利用して、ニグレードは岩陰に身を隠す。
(まずいな、体の復元が間に合っていない。魔力がそろそろ底をつく。)
ニグレードは打開策を考えようとしたが、すぐにやめる。
(考えることは、俺の趣味じゃない。やることはただ1つ。強行突破しかない。俺の力なら今の状態でも容易だろう。上手くいったらだが……)
「どこだ!」
ロビンは炎で辺りを手当たり次第攻撃する。ロビンは上空からの気配に気づく。背後に美桜が降り立つ。
「加勢するよ。」
「気をつけろ。どこからくるか分からねえ。」
2人は辺りを警戒しながら見渡す。ニグレードが岩陰から姿を現す。
「来るぞ。」
ニグレードは2人に向かって炎を放つ。放たれた炎は地面を抉りながら襲いかかる。
「俺の後ろから出るなよ!」
ロビンはニグレードの炎を青い炎でかき消しながら突き進む。
「後ろは任せて!」
美桜は背後からくる炎を赤の力で打ち消す。
「おのれ……」
ニグレードは後ろに下がって距離を取ると、黒い炎で蛇を作り出す。
「はぁっ!」
ロビンは刀を振って青い斬撃を放つ。斬撃は炎の蛇を斬り裂いてニグレードに迫る。ニグレードは蒼黒の炎で相殺する。
「走れ!」
ロビンは美桜を引っ張って煙幕の中を走り抜ける。煙幕の中から2つの刃がニグレードに向かって飛び出す。
「この程度………通用すると思うな!」
ニグレードが声を上げると、地面から蒼黒の炎が噴出する。
「このっ……やろう!」
ロビンは青い炎で自分たちを覆い、事なきを得る。
「行って、赤!」
美桜は赤をニグレードに向かって放つ。ニグレードは赤を体で止める。
「うっっ……おぉぉぉ!」
ニグレードは赤を地面へと投げ飛ばす。
(火事場の馬鹿力ってやつか?いや……何考えてんだ……)
ロビンは無駄な思考を捨てて、ニグレードに向けて刀を振る。
「がっ?!」
青がニグレードの動きを妨害する。
「離せ!」
青を振り払った次の瞬間、刀はニグレードの首を捉える。ロビンは刀に力を込める。刀からは青い炎が噴き出る。
「貴っ……様ぁぁ!」
ニグレードは青い炎に呑み込まれる。炎が消える頃にはニグレードの姿は消えていた。
「倒……した?」
「いや……まだだ。」
ロビンは警戒を緩めない。ニグレードの姿は見えないが、気配は消えていない。しばらくすると、2人は地面に揺れを感じる。
「なんだ?」
「こっちに来い!」
青がロビンを呼ぶ。ロビンは青の上に飛び乗る。
青が2人を乗せて飛び立った後、地面が崩れ始める。
「あれは………」
地面が崩れてその下から巨大な手が現れる。見間違いでなければ黒い炎で作られている。
「何……あれ?」
地面の下から巨人のような怪物が現れる。全身が黒い炎で覆われている。
「間違いない。ニグレードだ。」
「嘘でしょ……」
その大きさは圧巻の一言だった。
「我よりでかいんだか……」
「人間が勝てる相手なの?」
美桜はロビンに不安そうに聞く。
「……知らね。けど、戦うしかない。」
青の背中に椿が飛び乗る。
「ぐえっ?!」
「さて、どうやってあいつを倒そうかしら。」
「まず倒せるのか?」
「さぁね。でも、弱点はあれでしょ。」
椿はニグレードの胸を指差す。胴体の中心に核のようなものが光っている。
「あれを破壊すれば倒せるんじゃない?魔力が集まってるし。」
「それしかなさそうだな。」
ロビンは刀に青い炎を纏わせる。それと同時に、全身の炎を強める。ニグレードはこちらを見つけると耳をつんざくような雄叫びを上げる。
「理性は残ってるのか?」
「知性は残ってると思う。理性は知らない。」
ニグレードはこちらに向かって少しずつ歩き出す。踏みつけた場所が黒い炎に侵食される。
「あいつをここから出すわけにはいかないようね。世界が危ない。」
青はゆっくりとニグレードに近づく。
「これが最後の戦いよ!」
椿の声で戦いの火蓋が切られる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

勇者の様子がおかしい

しばたろう
ファンタジー
勇者は、少しおかしい。 そう思ったのは、王宮で出会ったその日からだった。 神に選ばれ、魔王討伐の旅に出た勇者マルク。 線の細い優男で、実力は確かだが、人と距離を取り、馴れ合いを嫌う奇妙な男。 だが、ある夜。 仲間のひとりは、決定的な違和感に気づいてしまう。 ――勇者は、男ではなかった。 女であることを隠し、勇者として剣を振るうマルク。 そして、その秘密を知りながら「知らないふり」を選んだ仲間。 正体を隠す者と、真実を抱え込む者。 交わらぬはずの想いを抱えたまま、旅は続いていく。 これは、 「勇者であること」と 「自分であること」のあいだで揺れる物語。

大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。 それが約50年前。 聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。 英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。 俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。 でも…英雄は5人もいらないな。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

処理中です...