紡ぐ者

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【第20章 運命の選択】

第1節 賭け

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「んっ………何が……あったんだ?」
ロビンは地面から体を起こす。辺りは黒い炎で燃えていた。岩陰から顔を出すと、上空にニグレードの姿があった。体に大剣が突き刺さっている。死んでいるかのようにピクリとも動かない。
「倒した……のか?」
「いいえ………まだよ。」
瓦礫の下から椿が顔を出す。額から血が流れている。
「あいつは………死んでいない。」
椿は体を引っ張って引きずり出す。突如、ニグレードの体が動き出す。それと同時に大剣が抜けて地面に落下する。
「さっきの攻撃はニグレードを倒すには至らなかった。だけど……」
ニグレードは体を広げる。体に触れて何かを気にしている。
「あいつの体力をかなり削ることができた。」
「この状況はなんだ?」
「上を見なさい。」
ロビンは空を見上げる。空は黒く染まっている。
「なんだ………これ?」
「さっきニグレードが魔法を使った。その影響よ。」
ニグレードは2人を見つけると地面に降りてくる。
「まだ生きていたか。流石に今のはヒヤリとしたな。だがこれでわかっただろう。お前たちでは俺を倒せない。さっさと諦めたらどうだ?」
「まだ負けてない。」
椿は薙刀を地面から引き抜く。ニグレードはロビンのほうを見る。
「お前の炎……少し違和感があるな。」
「違和感?」
「形としては完璧だが、性質としては脆すぎる。不完全に近い感覚だ。」
(不完全?)
ロビンは自身に纏っている青い炎を見つめる。
「お前のそれは、太陽の炎ではなく、"ただの青い炎"だ。俺にはそう感じる。」
「真に受けるな。デタラメな発言だ。」
九尾はロビンに忠告する。ロビンは青い炎を手に出す。
「そう言われれば、完全ではない気もする。」
「おい!相手の言葉に惑わされるな!」
「2年前、初めて太陽の炎を使ったときなんだけど……初めてだからなのか知らねえけど、めちゃくちゃ辛かったんだよ。」
九尾はあの時の光景を思い出す。
「それと、今気づいたことなんだけど……俺、青い炎しか纏えないんだ。」
「普通の炎を纏えないのか?」
「使うことはえきるけど、纏うことはできない。」
ロビンは手に普通の炎を出す。纏おうとするが、形が崩れてしまう。
(妙だな。この炎と青い炎、全く同じだ。)
「……少し、試したいことがあるんだ。」
「何をするつもり?」
「あいつとタイマンをはらせてくれ。」
「……援護は?」
「死にそうだったら。」
ロビンが飛び出したタイミングで美桜が飛び降りてくる。
「休んでていいわよ。」
「なんで?」
「彼が賭けにでたから。」
椿はロビンのほうを見る。
「1人で来るとはいい度胸だな。」
(やることは1つ………太陽の炎を顕現させる!)
ロビンは刀に青い炎を纏わせてニグレードに斬りかかる。ニグレードは剣で簡単に受け止める。
「今の俺とお前では相当な差ができている。そう上手くいくと思うな!」
ニグレードは剣を振ってロビンを遠ざける。そのまま槍に変えて追撃を行う。
「くそっ………」
槍はロビンの脇腹を抉る。ニグレードは槍を逆手に持ってロビンに向かって突き出す。ロビンは刀で受け流す。
「おい!防戦一方だぞ!」
「言われなくても………わかってらぁ!」
ロビンは刀を振って青い炎の斬撃を放つ。ニグレードは槍を薙ぎ払ってかき消す。
「こんなものか?」
ニグレードは挑発するように威圧的な表情を見せる。
「今度はこちらの番だ。」
ニグレードは周囲に無数の剣を作り出す。剣はロビンを追尾するように飛んでいく。
「くっ………」
ロビンは剣を弾きながら攻撃を躱す。ニグレードは剣の間から矢を放つ。
「うおっ?!」
矢はロビンの頬をかする。傷口に黒い炎が付着する。ロビンは傷口を拭って黒い炎を払う。
「うっ……?!」
ニグレードはロビンを背後から蹴り飛ばす。ロビンは地面に手をついて立ち上がる。
「くっ……この!」
上空から降り注ぐ無数の矢を青い炎で吹き飛ばす。煙幕を突き破ってニグレードが槍を向けながら急降下してくる。ロビンは刀で槍を受け止める。
「この程度か。太陽の人の力は?」
ロビンはニグレードを振り払うが、すぐに距離を詰められる。
「俺を倒す?まだ負けていない?俺に適うはずもないというのに………図に乗るな!」
ニグレードはロビンを突き飛ばす。ロビンは空中で体勢を整えて着地するが、着地した地面から蒼黒の炎が噴き出る。
「ぐうぅぅ……」
ロビンは前方に飛び込んで炎を躱す。
(地面は逆に危険か。なら空中に……)
ロビンは地面を蹴って宙に飛ぶ。その瞬間、ニグレードが作り出した無数の剣がロビン目掛けて飛んでくる。
「またかよ!」
ロビンは剣の間を器用にすり抜けていく。
「後ろだ!」
九尾が叫ぶが間に合わず、ロビンの右肩に背後から剣が突き刺さる。
「っっっ?!」
ロビンは体勢を崩して少し降下するが、すぐに起き上がって剣を抜く。
「終わりだ。」
ニグレードは上空に向けて弓を引く。1本の矢が上空で弾け、無数の矢となって降り注ぐ。
「こっ……の!」
ロビンは青い炎で一掃しようとするが、矢は青い炎を突き破る。
(威力が弱まってる……)
ロビンに矢が当たる直前、椿が前に出て矢を払う。
「ほんっとに危ないわね。見ててヒヤヒヤしたわ。で、まだ1人で戦うの?」
「あぁ。悪いな。」
椿はニグレードを睨んで地面に降りる。
「もう諦めろ。その怪我だ。」
「お前に心配される筋合いはない、ぜっ!」
ロビンはニグレードに急接近する。ニグレードは余裕そうに刀を防ぐ。
「お前は弱い、弱すぎる。俺との戦いの土俵にすら上がれていない状態だ。目障りで仕方ない。」
「だったら早く殺せよ!何をそんなに警戒してるんだ?」
「警戒だと?」
ニグレードは自分でも気づかないほど無意識の内に警戒していた。
「お前のようなやつを警戒する理由などないが?」
「お前からはビンビンに感じるぜ。俺を警戒してるってのがな!」
ロビンは力を込めてニグレードを押し払うと、刀に青い炎を纏わせて斜めに振り下ろす。ニグレードは平然と剣で受け流す。ニグレードはロビンの足を払って地面に倒すと、首筋に剣を突きつける。
「軌道が丸見えだ。これでは防いでくれと言っているようなものだ。」
ロビンは瞬時に剣を刀で振り払う。
「立て直すのは早いが、反撃が弱すぎる。」
ニグレードはロビンが起き上がったところを弓で狙う。弓の弦がニグレードの指から離れ、1本の矢が放たれる。
「ちっ………」
ロビンは矢を躱しきれず左足に受ける。矢は刺さると、炎となって飛散した。ロビンの体から炎が消える。
「このっ………」
ロビンは体を起こすのに必死だった。
「俺から解放されたばかりの体では、まともに戦うのは難しいだろう。よくやった、とだけは言っておこう。」
ニグレードはロビンに槍を向ける。
「まだ……終わってない。」
ロビンは再び青い炎を纏うと、宙に向かって飛び出す。
「何度でも同じだ。」
ニグレードはロビンに向かって無数の剣を放つ。
(あれは……マズイ。)
椿は危険を察知してロビンのもとに向かおうとするが、ニグレードが炎を放って行く手を阻む。
「そこで見ておけ。仲間が目の前で殺される瞬間を。」
ロビンは剣を躱しているが、少し危うい状態だ。ニグレードは剣の軌道を変えてロビンを囲う。剣は球状に散らばり、先端がロビンのほうを向く。ロビンは炎で消そうとするが威力が足りない。
「これが、お前の最期だ。」
ニグレードが手を頭上から下ろすと、剣はロビンに向かって勢いよく動き出す。
(くそっ………ここで……)
ロビンは目を瞑る。それと同時に昔のあることを思い出す。



「最後に……聞きたいことが……ある……の。」
「………言ってくれ。」
アリスは最後の力を振り絞ってロビンの耳元で囁く。
「どんな困難が……あっても………私の分まで……生きて……くれる?」
ロビンはアリスの手を握る。徐々に冷たくなっているを感じた。ロビンは静かに頷く。
「あと……もう1つ……」
アリスはロビンの頬に手を伸ばす。
「私のことを………忘れ………ない……で……」
「あぁ、当たり前だろ。」



(そうだ。俺は、負けられないんだ。あいつと約束した。あいつの分まで………生きるって!)
ロビンは体の奥から何かが燃え上がるのを感じる。
「ん?」
ニグレードはロビンの内側から何かが湧き出ていることに気づく。
(なんだ?)
突然、辺りに閃光が走る。次の瞬間には、ニグレードは地面に打ち落とされていた。
「何?!」
(何が起きた?!)
椿は美桜を庇いながら状況を確認する。ニグレードも状況を理解できていない。煙幕の中に1つの人影が見える。煙幕が勢いよく飛散する。
「その……姿は?」
ニグレードの目にはロビンの姿が映る。
「俺は負けない。絶対に。」
ロビンは刀をニグレードに向ける。
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