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【第21章 紡ぐ者】
第5節 合同訓練ー3
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カーネリアは自分の部屋につくと椅子に腰を下ろす。カーネリアはため息をつく。
「どうしたのぉ?疲れちゃったのぉ?」
「君のほうから話してくることもあるんだね。」
「そりゃあね、暇だもの。それで、疲れたの?」
「別に、今日は疲れるようなことはしてないさ。いや、1つあった。君と話をしたことだ。」
「へぇー、君は僕のことが嫌いなんだ。なのに、殺そうとしない。本当に不思議だねぇ~。」
「さっき言っただろ。今の君には、僕たちは手を出すことができない。」
「だったら、僕をここから出せばいいじゃないか。まさか、それが怖いのかい?」
「当然さ。君を本という檻から放ったら、どれほどの被害がでるか分からない。それに、君の実力も未だに未知数だ。そんなやつを自由にする馬鹿がどこにいる?」
「あっははっ!君は慎重だねぇ。だけど、それが足枷になってると見た。君は今この時、戦いたくて仕方ないんだろう?」
「確かに、僕は戦うのは好きだ。でも、勝算のない戦いは嫌いだ。」
「1つ質問があるんだけど、君は勝つためなら、どんな手段でも使うのかい?」
カーネリアは少し口を閉じる。
「いいや、卑怯な手段は使わない。僕は正々堂々した勝負が好きなんだ。」
「へぇ、意外だねぇ。」
カーネリアは本に手を置く。
「そうだ。君に1つ、教えておかないといけないことがある。」
「なになに?言ってみて。」
「ニグレードは死んだぞ。」
グリモワールは静かになる。
「君の主はニグレード。そうだろう?」
「そうだよ。ニグレード様が死んだ?ふぅん。」
グリモワールは先程の勢いはなくなっている。
「あまり驚いていないみたいだね。もしかして、あまり尊敬していないかったとか?」
「まさか。ニグレード様は誰よりも偉大なお方だ。あの人は自由と権利を求めて、人類と戦った。」
「人類と戦った?それに、自由と権利を求めた?」
「そうだ。お前たちは僕たちからそれらを奪った。あれはあまりにも、凄惨な戦いだった。」
「その戦いについて、詳しく教えてくれないか?」
「なんで僕が君に教えないといけないんだ?もし僕から聞きたいのなら、それ相応の代価が必要になるけど?」
「取引か、面白い。」
カーネリアはしばらく考え込む。
「そうだな。これを君にあげよう。」
「これは………正気か?」
「まさか、君からそんな言葉が聞けるとはね。」
「流石の僕でも、これを取引に使うことはしない。やっぱり君は、狂ってるね。正々堂々とは言っても、手段は選ばないのか。」
「この取引は、失敗しても僕だけが利益を損なう。他の人たちには迷惑をかけていない。僕一人の損失で重要な情報を手に入れられるんだ。」
「君、いつか全てを失うことになるよ。」
「それは楽しみだ。」
寝室に向かおうとするカーネリアを、グリモワールは呼び止める。
「待ちたまえ。」
「まだ用があるのか?」
「これで最後さ。ニグレード様が死んだと言ったね?」
「あぁ。それがどうした?」
「じゃあなんで、"僕は生きてるの?"」
「……どういうことだ?」
「ふふっ、なんでもない。でもいずれ、この言葉の意味がわかるよ。」
グリモワールは静かになる。カーネリアは何も考えずに寝室に向かう。
「おはよう……」
美桜は目をこすりながらサーミルの部屋に入る。
「なっ?!私の部屋に来るなんて、それに……」
サーミルは美桜の服装を見る。
「なんでそんなに着崩してるんだ?まさか、その状態でここまで来たのか?」
「うん……寝起きだもん。」
「道理で、髪もそんなに寝癖だらけなのか。」
サーミルは美桜の髪を整える。
「そういえば、部屋の前に変な紙が貼ってあったの。」
「私のところにも貼ってあった。数字が書かれていただろ?」
「あー、えっ?」
「見てないのか……」
美桜は紙を見る。紙にはAと書かれていた。
「ちなみに私はBだった。」
「ふむふむ、よし、私は今日の訓練に関係あるとみた。」
「誰もがその結論に辿り着くと思うけど?」
サーミルは美桜の髪を手に乗せる。
「しかし、綺麗な髪だ。」
「手入れは毎日欠かしてないからね。」
美桜は髪を後ろで結ぶ。
「ポニーテールってやつか?なかなか似合っているな。」
「さっ、朝食を食べに行こ。」
2人は部屋を出て食堂へ向かう。廊下には2人を監視するカーネリアがいた。
「何してるの?」
カーネリアは声のしたほうを見る。
「なんだ君か。僕になんの用だ?神宮寺 椿。」
「気が変わった。あの本を渡せ。」
「悪いな、今手元にはないんだ。」
「その言い方、あったら渡すつもりだったのか?だが、お前のことだ。あっても渡さない。そうだろ?」
「あぁそうだねぇ。確かに、僕は渡さないね。」
「そういうわけで、私はお前の部屋を漁らせてもらう。」
「おいおい、人の部屋を勝手に漁るのはどうかと思うぜ?」
「あの2人にストーカーまがいのことをしてるやつがよく言えたな。」
「それを言われると弱いな。」
「素直に認めるんだな。」
「言い訳は醜いものだからね。僕には合わない。」
椿は髪を撫でる。
「気が変わった、部屋は漁らない。その代わり、今から私の質問に、全て、"正直"に答えろ。」
「僕が嘘をついたら?」
「いいや、私の予想が正しければ、お前は嘘をつけない。」
カーネリアは椿の異質な雰囲気を感じる。
(へぇ、噂には聞いてたが、これが神宮寺 椿という人間か。彼女にとっては、僕なんか、地面を歩くアリに過ぎないんだろうね。簡単に踏み潰すことができる。)
「いつでもいいよ。」
「わかった。」
椿は目を閉じて深呼吸をする。目を開けて、カーネリアに質問する。
「お前は人間か?」
「はい。」
「お前は、自分が強いと思うか?」
「はい。」
「お前に、大事なものはあるか?」
「いいえ。」
「お前は、魔力を取り込んだことはあるか?」
「はい。」
「次が最後の質問だ。お前は………」
椿は少しの時間、目を閉じる。
「死を回避することができるか?」
「……はい。」
椿の口角が上がる。
「これでいい。本の管理は任せたわ。あんたなら、扱いには問題ないはず。」
椿は足音をたてずに廊下を進む。
「ちっ、面倒なやつに勘付かれたな。」
カーネリアは機嫌を悪くしながら、朝食を食べに向かう。
「皆さん、昨日はしっかり休めましたか?今日と明日の訓練は、各々の実力が試されます。今までの経験の成果を発揮しきれることを、心から願っています。」
「あー、遂に始まったか。」
美桜は控室で薙刀の手入れをしている。
「緊張してるのか?」
「そりゃあ少しはね?」
美桜は青の顔を撫でる。青は嫌そうに頭を振る。
「我を使えよ?暴れたくて仕方がない。」
(まずい……)
美桜は青を押し戻す。
「おや?あなたとは同じグループのようですね。」
アメジストが隣に座ってくる。手にはAと書かれた紙が握ってある。
「お飲み物をご用意しましょうか?」
「いや、いいよ。」
美桜は立ち上がって体を伸ばす。
「試合前のストレッチですか?」
「そうそう。体が動かないとか、洒落にならないからね。」
アメジストは時計を見る。
「そろそろ始まります。」
「最初は誰だろう?」
美桜は控室の外を見る。
「どうやら、最初は私のようですね。」
アメジストは席を立って会場に向かう。
「頑張ってよ?」
「ふふっ、最善は尽くします。」
アメジストは笑みを浮かべて控室から出る。
(ん?)
美桜は裏口から出て、会場の裏手にまわる。青が顔を出す。
「どうしたの?」
「今のうちに最後の確認をしたらどうだ?」
「変な消耗はしたくないんだけど……」
「本番でガタが出たら意味ないだろ?」
「それはぁ、そうだけど。」
「簡単なことだ。我の言う通りにすればいい。」
美桜は薙刀を構える。
「よぉ嬢ちゃん。1日目以来だな。体調は優れてるか?」
Bグループ1回戦は、サーミルとカタレットだ。
(まさか格上とあたるとは……)
サーミルは剣に手をかける。
「一方的に痛めつけるのは、少々可哀想だが、許してくれよ?」
カタレットは背中に担いだ大剣を抜く。
「行くぜ。はあっ!」
カタレットは大剣を思い切り薙ぎ払う。大剣から炎の斬撃が放たれる。
「このっ…」
サーミルは斬撃の上を飛び越える。カタレットは着地する隙を狙う。サーミルはカタレットの大剣を軽快に避ける。
「やっぱり、剣は身軽だな。なら、これはどうだ?!」
カタレットは大剣を構えてその場に留まる。
(何をする気だ?)
サーミルは一瞬、判断に戸惑う。
(いや、考えるな。)
サーミルは剣をカタレットにむかって突き出す。 「かかったな!」
カタレットは大剣を振る。サーミルは瞬時に体を反らして範囲外に出る。
「今のは……カウンターか。」
「そうだ。大剣は動きが遅い。自分から攻めに行くのは悪手だからな。まぁ、慣れてるやつは例外だ。」
カタレットは大剣の先端を地面に置く。
「燃やし尽くせ!」
カタレットは大剣を地面をなぞるようにして振る。大剣から炎がほとばしる。
「炎が邪魔だな……」
「早くしねぇと、炎に囲まれるぞ!」
カタレットは大剣を振り下ろす。炎の斬撃が、地面に亀裂を作りながら飛んでくる。
「私の魔法を、見せてやる!」
サーミルは剣に水を纏わせる。剣を振ると、纏った水が斬撃となって放たれる。2つの斬撃がぶつかった瞬間、爆発して蒸気が発生する。
「水の魔法か。俺にとっては相性が悪いな。」
カタレットは大剣をサーミルに向ける。
「だが、相性を覆してこそ、一流の魔道士だ。」
サーミルは剣に水を集める。カタレットは大剣に炎を集めだす。
(来る……!)
カタレットは大剣を勢いよく振る。サーミルは剣で防ぐが、勢いに押される。
「何が起きた?」
カタレットの大剣から、炎が溢れ出ている。
「さぁ、もっと盛り上がろうぜ!」
カタレットは大剣を振り払う。
(次が来るまでの猶予で、背後に回り込めれば……)
カタレットは、サーミルに向かって大剣を薙ぎ払う。
「なっ?!」
サーミルは咄嗟に剣で防ぐ。
「どうだ、速いだろ?だが、まだまだ止まらないぜ!」
カタレットはサーミルを押しのけると、大剣を立て続けに振り回す。
「どんな力してるんだ!」
サーミルは大剣を剣で受け止める。
「よく止めたな。苦しくないか?」
「ふっ、戦闘で……苦しくないことなんて……あるのか?」
サーミルは腕を震えさせながら答える。
「そりゃそうか。」
カタレットはサーミルと顔を合わせる。
「俺は女性をいたぶるのは嫌いだが、今回ばかりは仕方ない。勝たせてもらうぜ!」
カタレットは大剣を頭上に振り上げる。サーミルは剣に力を込める。2人は武器を相手に向かって振る。武器がぶつかると、風圧が会場を襲う。風圧が消えた時、サーミルは地面に膝から倒れる。カタレットはサーミルを担ぐ。
「今のは……なんだ?」
カタレットは大剣にできた大きな傷を見る。
「まぁ、こんなものか。彼女からすると、相手が悪すぎた。」
「あら、私はそんなことは思わなかったけど?」
椿は男の背後で武器の手入れをしながら会話する。
「なぜだ?カタレットと彼女の間には高い壁ができている。」
「それは事実ね。だからと言って、勝てないわけではない。」
椿は立ち上がって、男の前に2つの石を置く。
「大きくて刺々しい方をカタレット。小さくて整っている方をサーミルと例えよう。」
「これは何か意味があるのか?」
「カタレットの弱点みたいなものよ。石にあるこの隙間。これをカタレットの懐、この尖っているところが武器とすると、懐は安全地帯になる。逆にサーミルは、変な隙間がない。攻撃を受けやすいけど、攻撃に安全地帯がない。」
「何が言いたい?」
「簡単な話、彼女が接近していたら、カタレットが負ける可能性もあった。おまけに、彼女の魔法はカタレットが苦手とする水魔法。」
「なるほど、勝算はあったのか。」
「そう。」
椿は石を魔法で砕く。
「弱点は誰にでもある。そこを突かれたら、負ける可能性があるのも同じ。だけど、1人だけ。1人だけ、弱点が分からないやつがいる。」
「お前にも、弱点が分からないやつがいるんだな。」
「しかも、そいつの実力は未知数。おそらく、今回の合同訓練で、最も警戒すべき魔道士よ。」
「あ、帰ってきた。」
控室にアメジストが戻ってくる。
「どうだった?」
「なんとか勝利しました。」
「そう。よかったよかった。」
美桜は水を飲む。
「次は、私の番はまだか……」
「そのようですね。少し、お散歩でもしますか?」
「大丈夫なの?」
「えぇ、従者の務めに支障が出ないように戦いましたので。」
「そう。ならついて来て。」
美桜はアメジストを連れて控室から出る。
一方その頃、すでにBグループの試合は始まっていた。2回戦は、ガーネットと玖羽の勝負だ。流石は上位陣の2人だ。他の追従を許さない、圧巻の試合を行っている。その様子を、カーネリアは客席から観戦していた。
「やっぱり、素晴らしいな。だけど……」
カーネリアは玖羽の動きに違和感を感じる。玖羽はその場からあまり動かず、ガーネットにカウンターの形で攻撃を行っている。
(なんだこの感じ……)
カーネリアは立ち上がってどこかに向かう。
カーネリアが廊下を歩いていると、椿が廊下に立っていた。
「また君か。今度はなんだ?」
「別に。あんたの監視。」
「そうか。でも丁度いい。僕は君を探していたんだ。」
カーネリアは椿との距離を縮めない。
「彼、鶴城 玖羽に何か指示をしたのか?」
「どうしてそんなことを聞くの?」
「僕は今回の参加者の戦闘スタイルを学習してきた。彼の場合は、ひたすら攻めるタイプだったはずだが?」
「そうね。疲れてるだけなんじゃない?」
「言い訳をしても無駄だ。僕はずっと、君を監視していた。」
「道理で、ずっと誰かの気配を感じたわけね。」
「その結果、君は彼と常に行動していることがわかっている。離れていることもあったが、監視した時間の半分以上は行動を共にしていた。それに昨日の夜、君は彼に何か指示をしていたことも知っている。」
椿はため息をつく。
「全部知ってるわけ?」
「会話の内容までは知らない。」
「そう……なら、あんた、腕を見せなさい。そして、私の質問に答えなさい。そうすれば、会話の内容を少しだけ教えてあげる。」
「へぇ、それはいい取引だ。」
カーネリアは袖をまくる。左腕をには何もない。
「右も見せなさい。」
カーネリアは右袖をまくる。
「……やっぱりね。」
右腕には、不気味な文字が螺旋状に記されていた。
「じゃあ、質問をするわ。」
椿はカーネリアに近づきながら質問をする。
「それは、自分でかけたものか?」
「いいえ。」
「それは、一員になるときに、契約としてかけられたものか?」
「はい。」
「それは、呪いか?」
「……はい。」
椿はカーネリアの右隣で足を止める。
「お前は……いつでも、死ぬことができるか?」
カーネリアはしばらく目をつぶる。
「……はい。」
カーネリアは目を開けて静かに答える。
「そうか。」
椿はカーネリアの右肩に手を置く。
「私に、いや、魔道士全体にとって重要な情報がわかった。お前には私の企みを教えてやる。」
「へぇ、それはありがたいね。ちなみに、会話の内容はなんだったんだい?」
「……試合ではしゃぎすぎるなと注意しただけだ。」
「なんだそんなことか……」
カーネリアは額に手を当てる。
「で、君の企みとやらはどんなものだい?」
椿は肩から手を離す。
「……魔道士の、"覚醒"だ。」
椿はカーネリアを見ずに廊下を進む。
「……"覚醒"?」
カーネリアがその言葉を発した途端、内側から体を貫かれる。
「がっ……?!」
カーネリアはその場に倒れる。床には赤い液体が広がる。
(くそっ、不意打ちか……)
「結構経ったよね?」
アメジストは時間を確認する。
「そうですね。美桜様は……まだ選出されておりません。」
「次もなし?もう半分ぐらいじゃない?」
「えぇ、それに、今の試合が終わったら昼食の時間かと。」
「じゃあ、先に食べちゃおうか。」
「承知しました。」
2人が食堂に着くと、落ち込んでいるサーミルと、隣で紅茶を飲んでいるカーネリアがいた。
「何してるの?」
「丁度いいところに来た。彼女を慰めてやってくれないか?僕は生憎、人を慰めるのが得意じゃないんだ。」
「………。」
美桜はカーネリアを観察する。
「何かあった?」
「何も?」
「そっ。」
美桜はサーミルに事情を聞く。
「……負けた。」
「………。」
美桜はサーミルの背中を撫でる。
「美桜さんはどうだったの?」
「まだだよ。」
「はぁぁぁぁぁ……」
サーミルは長いため息をつく。
「えーと、何か食べたいのある?」
「……ショートケーキ。」
美桜は自身の昼食とショートケーキを持ってくる。
「……どうも。」
(相当落ち込んでるなぁ……)
「じゃあ、行ってくる。」
「ご武運を。」
アメジストは美桜を見送る。美桜が選出されたのは最終試合だった。
(なんで一番最後になるのやら……で、肝心の対戦相手は?)
会場には相手の姿はない。
「どうやら、待たせてしまったようですね。」
反対の入口からホーリーが歩いてくる。美桜はポカーンと口を開ける。
「あなたの対戦相手はこの私、ホーリー・サラブレットです。」
(嘘ー?!)
美桜は平然を装うが、内心、非常に焦っている。
(なんでこの人と戦わせるわけ?!意味が分かんないんだけど!)
「面白いくなりそうだな。」
青が小声で美桜に話しかける。
(私はそんな気分じゃないんだけど……)
「今の状況は、互いに4勝4敗。故に、私も手加減は行いません。それに、本日の最後の試合でもあります。フィナーレに相応しい試合を行いたいのです。」
「まぁ、そうだよね。」
美桜は薙刀を手に持つ。
「勝つためには、本気を出さないと。」
「では、尋常に勝負!」
ホーリーはレイピアを抜く。レイピアの先端がこちらに向けられる。
(さて、どうしたものか……)
「我らがいるんだ。そう慎重になる必要はない。」
美桜は青の助言を聞くが、参考にはしない。
(慎重に、慎重に。)
美桜はジリジリと間合いを詰める。ホーリーは間合いを詰めず、左回りに歩きながら美桜から視線を逸らさない。
(攻める隙は……無いか。構えに無駄がない。こうなったら、少し強引に攻めるしかないかも。)
美桜は自身の魔力量を確認する。
(体調は万全。青と赤も待ちくたびれてる。)
ホーリーがまばたきをする。
(今!)
美桜はホーリーに接近して、右方に薙刀を振る。
「っ?!」
美桜は身の危険を感じて、後ろに跳ぶ。ホーリーは微塵も動いていない。
(攻撃の予兆はなかった。でも、本能で危険だと感じた。)
美桜はホーリーの全体を観察する。
(特に何かあるわけじゃない。じゃあさっきのは、心配しすぎ?)
美桜は首を振って雑念を晴らす。
(今は戦うことに集中する。)
「どうしました?」
ホーリーが喋りだす。
「あなたが来ないのなら、こちらから仕掛けさせてもらいます。」
美桜は身構えて攻撃に備える。ホーリーは少し息を吸うと、レイピアを突き出す。美桜は反射的に右側に倒れる。
(あっ……ぶない!)
美桜が倒れた直後、左側を強烈な閃光が走る。
(軽く地面を抉る威力。まともにくらってたらどうなってたか……)
「今のを避けますか。やはり、実力は確かですね。」
ホーリーはこちらに向かって歩き出す。
「次は、接近戦です。」
ホーリーは美桜に近づいてレイピアを絶え間なく突き出す。薙刀で防ぎ続けるが、ホーリーから無言の圧を感じる。
(隙を見せたら負け!)
美桜は薙刀を下から振り上げて、レイピアを弾く。ホーリーの体勢が崩れたところを狙うが、そう簡単にはいかない。
「下がれ!」
青の助言で、美桜は飛ぶようにして後ろに離れる。直後、落雷が起こる。美桜は薙刀を握り直す。
(今のは魔法、だけど、自然のものに近い。魔力が薄いせいで、察知するのが難しい。)
砂煙を突き破って、ホーリーのレイピアが飛び出してくる。美桜は体を反らして躱す。そして、ホーリーに足払いを仕掛ける。転んだところを攻めるが、ホーリーはレイピアに雷を落とす。
「あがっ……」
直撃はしなかったが、美桜は左腕が痺れた。レイピアは雷を纏っている。
「来るぞ!」
青が警告する。ホーリーはレイピアは振って、雷の斬撃を飛ばす。
「速っ……?!」
美桜は飛び込むようにして斬撃を躱す。美桜が立ち上がろうとするが、斬撃が迫ってきたため、前方に転がる。転がったあとは、すぐに立ち上がって走り出す。ホーリーは休むことなくレイピアを振る。斬撃は高速で迫る。
「やっぱり、なんか速くない?!」
「おそらくあいつの武器も、お前のと同じように特殊なものなのだろう。油断してると、一瞬で終わりだぞ。それに、あいつの雷は変だ。」
ホーリーは腕を止め、美桜に向かってレイピアを突き出して突進する。美桜はなんとか躱す。レイピアは壁に突き刺さった。
(あぶっ……)
美桜が反撃に転じようとすると、壁に電流が走る。
「待って……」
美桜は急停止してバク宙をする。直後に、壁から電撃が飛び出す。
「いい反応ですね。しかし、逃げてばかりでは、勝てませんよ。」
ホーリーはレイピアを引き抜いて、美桜に向ける。
(これでいい。いつでも青を呼び出せる。)
美桜は薙刀の刃を地面につける。
(来ますね。)
美桜はホーリーに向かって薙刀を振る。ホーリーは薙刀を受け流し、レイピアを突き出そうとする。
「させるか!」
美桜はホーリーの背後に風の刃を作り出し、奇襲を仕掛ける。ホーリーは背後に一瞬気を取られるが、すぐに美桜のほうを見る。
「やはり……」
美桜の姿がない。ホーリーは、雷で風の刃を消す。
「違う、狙いはこれか!」
ホーリーの周りに竜巻が発生する。ホーリーは吹き飛ばされないようにこらえるが、竜巻は軽々と上空に吹き飛ばす。ホーリーは雷で竜巻を消そうとする。
「まて、彼女はどこに行った?」
ホーリーは美桜を探すが、どこにも見当たらない。
「まさか、下か?!」
美桜はホーリーの真下から、風の刃を飛ばす。
(今ならいける。)
ホーリーは美桜に向かって突進する。美桜は左に避けるが、レイピアが袖を破る。
(さっきより速くなった?!そんなわけない……はず。)
ホーリーが着地した衝撃で、竜巻が消える。レイピアは地面に刺さっている。
(これは攻め時じゃない!)
美桜はホーリーから視界から外すことなく距離をとる。
(次はどうくる?)
美桜はホーリーとの距離を確認する。
(これくらいなら、突進されても避けられ……)
ホーリーは美桜の左方に潜り込む。
(えっ……?)
美桜は一瞬戸惑うが、反射的に体が動く。後ろに倒れて、すぐに起き上がる。
「はっ……?!」
ホーリーの体には魔力が纏わりついている。
「まずい、魔纏(まてん)だ。」
青が警告する。
(これ……絶対普通の魔纏じゃない!)
美桜の予想は的中する。ホーリーの体には、電気が流れている。
(来るっ……)
美桜が感じた頃には、ホーリーは真横を通り過ぎていた。
(速っ……過ぎない?!)
美桜が考えた頃には、ホーリーは美桜の反対にまわっていた。反応する頃には、美桜の背後に回り込む。
「そうか、磁石と同じ原理か。」
「どういうこと?」
「周りの壁をよく見ろ。」
壁には電気が流れている。
「いつの間に……」
「おそらく、壁に武器が刺さった時に流したのだろう。あとは体に電気を纏えば、人間磁石の出来上がり、ということだろう。」
ホーリーはレイピアを美桜に向ける。
「今のあいつに触れるのはやめておけ。感電するぞ。」
ホーリーは美桜に迫る。美桜はレイピアを薙刀で受け流す。
「あっ……れ?」
美桜は電気の影響を受けない。ホーリーは驚いた様子を見せる。
「なるほど。その薙刀の柄は、高い絶縁性を持っているようですね。」
ホーリーはレイピアを払ったのち、自身の周りに磁場を発生させる。
「気をつけろ、引き寄せられるぞ。」
ホーリーは美桜に向かって再び突進する。美桜はかろうじて避けるが、今までとは比にならない速度だ。
「うえっ?!」
美桜はホーリーに引き寄せられる。薙刀を地面に突き刺して、なんとか堪える。
(これ……やばい!磁力が強すぎる!)
美桜が止まっている隙を、ホーリーは逃さない。「動け!」
美桜の頭上から雷が落ちる。雷が着弾して、砂煙が発生する。
「勝負あり………ではないようですね。」
砂煙の中から、ホーリーは何か強大な存在の気配を感じる。砂煙を突き破って青が現れる。青は雄叫びをあげる。
「まさか、こんな化け物を従えているとは……」
砂煙が晴れると、膝をついた美桜を青が守っていた。
「さて、どうする?」
「あんたの落雷は通じると思う?」
「あいつがどこまで耐えられるかだ。我の雷は、自然のものの何倍の威力を持つ。普通の人間なら即死するだろう。」
ホーリーは青を見る。
(これが龍神。本に記された情報よりも、かなり大きい。百聞は一見に如かず、ということですね。)
ホーリーはレイピアを青と美桜に向ける。
「こいつを捻り潰せばいいのか?」
「あんたは基本、手出ししないで。一回だけ。一回だけ、雷を落としてくれたらいい。タイミングは私が教える。」
青はすんなりと美桜の言う事を聞く。
「続きといきますか?」
「えぇ、そうね。」
(その前に……)
「俺の出番か。」
赤は美桜に力を与える。薙刀の刃が赤く染まる。ホーリーは薙刀を警戒しながら、美桜にレイピアを突き出す。美桜はゆっくりと避ける。
「突きは通用しませんか……」
ホーリーはレイピアを振って、全方位に斬撃を放つ。美桜はホーリーに接近して斬撃を躱す。
「近づきましたね。」
ホーリーは見越していたかなように、全ての斬撃を引き寄せる。
「ちぃっ……」
美桜は斬撃の隙間をくぐり抜けるが、裾が斬撃に触れる。斬撃はレイピアに吸収される。
「はっ!」
ホーリーは美桜に向かってレイピアを投げる。壁に吸い寄せられるようにして、レイピアは加速しながら美桜に迫る。
「っぶない!」
レイピアは美桜の足元に突き刺さる。
「しまっ……」
美桜は急いでレイピアから離れようとする。しかし、美桜はレイピアに引き寄せられる。
「せいっ!」
ホーリーは頭上から腕を振り下ろす。レイピアに向かって雷が落ちる。その雷はレイピアに着弾すると周囲に電撃を放つ。雷の閃光は雲に届きそうなものだった。
「まさか、これほどの落雷を起こせるとは……」
男は立ち上がって会場を見下ろす。
「あいつは大丈夫なのか?」
「さぁね。少なくとも、青の加護があるから死にはしない。」
椿は髪を下ろしている。
「……気をつけなさい。次がくる。」
男は後ろに下がる。
「はぁ……はぁ……」
ホーリーは息を切らす。
(これほどまで……消耗したのは……初めてだ。今までの数十倍もの落雷を起こした。)
ホーリーの体から電気が消える。
(魔力が少なくなっている。もう魔纏は使えないか。)
ホーリーは砂煙のほうを見る。
……………
辺りに沈黙が走る。ホーリーはこの感覚を何度も経験してきた。
「そうか……まだか。」
砂煙の中に人影が見える。ホーリーは残った魔力で体に雷を纏う。突然、空に雷鳴が走る。ホーリーは全てを察する。直後、ホーリーに雷が直撃する。
「…………。」
ホーリーは地面に座り込む。砂煙が晴れ、美桜が現れる。
「まったく、ハラハラさせるな。」
「仕方ないでしょ。レイピアを離してほしかったんだもん。」
青は美桜の腕をつつく。美桜は腕をおさえながら痛みに耐える。
「あれほどの雷をもろに受けたんだ。我の加護があるとはいえ、完全には防ぎきれない。だが、真に心配すべきはあいつだ。」
青はホーリーを指差す。
「我の雷が直撃したぞ。」
美桜はホーリーに近づく。ホーリーは動かない。
「生き……てる?」
青がホーリーの顔をつつく。
「ん……?」
ホーリーはゆっくりと目を開ける。
「はっはっはっ!驚いたぞ!我の雷を直に受けて生きているとはな!」
ホーリーは喋ろうとするが、上手く言葉を発せない。どうやら、体が麻痺しているようだ。青はホーリーの頭に指を置く。ホーリーは体から痺れが消えるのを感じる。
「……私の負けだ。いい勝負だった。」
美桜はホーリーの手を掴んで引き上げる。
「おめでとう。」
「おめでとうございます。」
「うん、祝ってくれるのはうれしいよ。だけどね……」
美桜はグラスを持ったまま、プルプルと震えている。
「私の部屋でする必要ある?!狭いのに!」
「まあまあそう言わずに。はいカンパ~イ!」
「乾杯はするけど……」
サーミルと美桜とアメジストは、グラスを当てて乾杯をする。
「お食事はまだまだありますよ。」
アメジストは美桜の皿に夕食を盛っていく。
(食べきれるかな……)
美桜は食事をしながら2人と会話をする。
「でも、まだ明日があるよ?むしろ、明日のほうが大事では?」
3人が話していると、誰かがドアをノックする。
「はーい。」
美桜がドアを開けると、ガーネットが立っていた。手にはウイスキーの瓶が握られている。
「何してるの?」
「えぇ~だって~、部屋の前にこんなのあったら~、気になっちゃうよね~。」
部屋の前には、食事を運ぶ台車が置いてあった。
「私がお借りしました。」
アメジストは軽く手をあげながら答える。
「というか、めちゃくちゃ酔ってない?」
「う~ん、そだね~。」
「どんだけ飲んだの?」
「うーん、瓶1本!」
ガーネットははっちゃけたように答える。
「うるさっ。」
美桜はストレートに言葉を発する。
「ちょっと~、辛辣じゃな~い?こう見えて~、自分の部屋から~歩いてきたんだよ~。」
「違う、そうじゃない。」
サーミルは困ったようにため息をつく。
「ガーネットさんはたまに、思い立ったかのように外出してワインやウイスキーを飲みに行くんだ。ただ、いつも1人で飲みに行くんだ。」
「そうですね。帰ってきた頃には、当たり前のように顔を赤くしています。」
美桜はガーネットのほうを見る。
(実はガーネットって、相当だらしない?)
「てかちょっと待って。瓶1本って言わなかった?!」
ガーネットは3本のウイスキーを持っていた。1本は空になっている。
「ほんとに1人で飲んだの?!」
「そだよ~、おいしかった~。」
美桜はガーネットの顔を掴んで叫ぶ。
「馬鹿じゃないの?!ウイスキーって、めちゃくちゃアルコール強いんだよ?!」
「知ってるよ~。あ、一杯飲む~?」
「飲まない!」
美桜は2人のほうを見る。
「取り上げたほうがいい?」
「いえ、大丈夫ですよ。ガーネット様はその程度では死にませんから。」
「え?」
「少し昔、ガーネット様と1時間ほど飲み比べをしたのですが。私はワイン、ガーネット様はウイスキーです。」
「そんなことをしてたのか?」
サーミルも知らないようだ。
「私がワイン3本、ガーネット様がウイスキー2本を飲み干しました。」
「1時間でウイスキー2本って……冗談はやめてもらっても……」
「実話です。本人に直接聞いてみてはどうですか?」
「ほんとに飲んだの?」
「うん~、飲んだよ~。ちなみに~、ちびちび飲んでたから~、普通に飲めば~もっと飲めるよ~。」
美桜は反応に困る。
「まぁ、いつもは真面目に責務を全うしておられますので、多目に見てやって下さい。」
「いや保護者か。」
サーミルはアメジストにツッコミを入れる。
「……飲んでみる?」
サーミルがウイスキーの瓶を持って2人に聞く。2人は頷く。ガーネットはサーミルの持っている瓶を掴もうと、赤子のように手を伸ばしている。
「はい。」
美桜は少量だけ注がれたウイスキーを覗く。
(私って、お酒そんなに強くないんだよなぁ……そういえば、アリスもお酒に強かったような?その辺りは似てるんだ。)
アメジストは少量のウイスキーを躊躇なく飲む。
「うーん、やはりアルコールが強いですね。私には向いていません。」
続けてサーミルも飲む。
「意外といけるな。まぁ、頻繁に飲むものではないが…」
美桜は覚悟を決めて飲み干す。
「あ゙ぁ゙っー!」
美桜はアルコールに耐えられず蒸せる。
「大丈夫か?」
サーミルは美桜の背中をさする。
「ふふっ、私にはノンアルコールがお似合いね。」
美桜は枯れた声で負け惜しみを言う。
「じゃあ、また明日。」
「うん、また明日。」
サーミルとアメジストは部屋を出る。アメジストはガーネットを部屋まで運ぶようだ。
「はぁ、疲れた。」
美桜はソファに寝転がる。
「ふんっ、こんなものか。」
カーネリアは机に置かれたトランプをめくる。トランプはエースだった。
「エース………ふっ、楽しみだ。」
カーネリアは窓の外を見る。
「何が楽しみだって?」
椿がカーネリアの死角から話しかける。
「またか。一体いつまで、僕につきまとうつもりだ?」
「あんたが本性をあらわすまで。」
椿はトランプをめくる。
「へぇ、あんたにとって、私はJOKERなのね。しかもちゃんと、私のイメージカラーと言ってもいい赤色。あんたがどれだけ、私を警戒しているかがよくわかるわぁ~。」
「さっさと出ていってくれないか?僕はもう寝たいんだ。」
「はいはい、そんな苦し紛れの言い訳はしないで。眠いんだったら、トランプなんかせずに、早く寝ればいいのに。」
カーネリアはトランプを片付ける。
「君は何をしに来たんだ?僕とトランプがしたかったのか?」
「そうねぇ、せっかくだし、ポーカーでもしましょ。」
2人は静かにポーカーをする。終盤に差し掛かった時、椿がカーネリアに話しかける。
「あんたは、自分が強いと思う?」
「いいや。そうは思わないね。」
「ふ~ん。」
椿はカードを1枚引くと、動きを止める。
「どうした?降参したか?」
「あんたは最初、さっきの質問に、"はい"と答えた。だけど今は、違うと答えた。どちらか嘘をついているはずだ。呪いが発動しないな。」
「当然さ。強い、弱い。どっちも本当のことだからね。」
「なるほどねぇ。」
椿はトランプを裏向きにして机に置く。
「全てわかった。」
椿はトランプを表向きにする。
「ストレート・フラッシュか。君の勝ちかな?」
「いいえ、私の負けよ。だって、あんたは……」
椿はカーネリアの手札を机の上に表向きにして置く。
「コードネーム:絶対的な勝者(ロイヤルストレートフラッシュ)。」
カーネリアは不気味に口角を上げる。
「呪法連合(じゅほうれんごう)のスパイめ…」
「どうしたのぉ?疲れちゃったのぉ?」
「君のほうから話してくることもあるんだね。」
「そりゃあね、暇だもの。それで、疲れたの?」
「別に、今日は疲れるようなことはしてないさ。いや、1つあった。君と話をしたことだ。」
「へぇー、君は僕のことが嫌いなんだ。なのに、殺そうとしない。本当に不思議だねぇ~。」
「さっき言っただろ。今の君には、僕たちは手を出すことができない。」
「だったら、僕をここから出せばいいじゃないか。まさか、それが怖いのかい?」
「当然さ。君を本という檻から放ったら、どれほどの被害がでるか分からない。それに、君の実力も未だに未知数だ。そんなやつを自由にする馬鹿がどこにいる?」
「あっははっ!君は慎重だねぇ。だけど、それが足枷になってると見た。君は今この時、戦いたくて仕方ないんだろう?」
「確かに、僕は戦うのは好きだ。でも、勝算のない戦いは嫌いだ。」
「1つ質問があるんだけど、君は勝つためなら、どんな手段でも使うのかい?」
カーネリアは少し口を閉じる。
「いいや、卑怯な手段は使わない。僕は正々堂々した勝負が好きなんだ。」
「へぇ、意外だねぇ。」
カーネリアは本に手を置く。
「そうだ。君に1つ、教えておかないといけないことがある。」
「なになに?言ってみて。」
「ニグレードは死んだぞ。」
グリモワールは静かになる。
「君の主はニグレード。そうだろう?」
「そうだよ。ニグレード様が死んだ?ふぅん。」
グリモワールは先程の勢いはなくなっている。
「あまり驚いていないみたいだね。もしかして、あまり尊敬していないかったとか?」
「まさか。ニグレード様は誰よりも偉大なお方だ。あの人は自由と権利を求めて、人類と戦った。」
「人類と戦った?それに、自由と権利を求めた?」
「そうだ。お前たちは僕たちからそれらを奪った。あれはあまりにも、凄惨な戦いだった。」
「その戦いについて、詳しく教えてくれないか?」
「なんで僕が君に教えないといけないんだ?もし僕から聞きたいのなら、それ相応の代価が必要になるけど?」
「取引か、面白い。」
カーネリアはしばらく考え込む。
「そうだな。これを君にあげよう。」
「これは………正気か?」
「まさか、君からそんな言葉が聞けるとはね。」
「流石の僕でも、これを取引に使うことはしない。やっぱり君は、狂ってるね。正々堂々とは言っても、手段は選ばないのか。」
「この取引は、失敗しても僕だけが利益を損なう。他の人たちには迷惑をかけていない。僕一人の損失で重要な情報を手に入れられるんだ。」
「君、いつか全てを失うことになるよ。」
「それは楽しみだ。」
寝室に向かおうとするカーネリアを、グリモワールは呼び止める。
「待ちたまえ。」
「まだ用があるのか?」
「これで最後さ。ニグレード様が死んだと言ったね?」
「あぁ。それがどうした?」
「じゃあなんで、"僕は生きてるの?"」
「……どういうことだ?」
「ふふっ、なんでもない。でもいずれ、この言葉の意味がわかるよ。」
グリモワールは静かになる。カーネリアは何も考えずに寝室に向かう。
「おはよう……」
美桜は目をこすりながらサーミルの部屋に入る。
「なっ?!私の部屋に来るなんて、それに……」
サーミルは美桜の服装を見る。
「なんでそんなに着崩してるんだ?まさか、その状態でここまで来たのか?」
「うん……寝起きだもん。」
「道理で、髪もそんなに寝癖だらけなのか。」
サーミルは美桜の髪を整える。
「そういえば、部屋の前に変な紙が貼ってあったの。」
「私のところにも貼ってあった。数字が書かれていただろ?」
「あー、えっ?」
「見てないのか……」
美桜は紙を見る。紙にはAと書かれていた。
「ちなみに私はBだった。」
「ふむふむ、よし、私は今日の訓練に関係あるとみた。」
「誰もがその結論に辿り着くと思うけど?」
サーミルは美桜の髪を手に乗せる。
「しかし、綺麗な髪だ。」
「手入れは毎日欠かしてないからね。」
美桜は髪を後ろで結ぶ。
「ポニーテールってやつか?なかなか似合っているな。」
「さっ、朝食を食べに行こ。」
2人は部屋を出て食堂へ向かう。廊下には2人を監視するカーネリアがいた。
「何してるの?」
カーネリアは声のしたほうを見る。
「なんだ君か。僕になんの用だ?神宮寺 椿。」
「気が変わった。あの本を渡せ。」
「悪いな、今手元にはないんだ。」
「その言い方、あったら渡すつもりだったのか?だが、お前のことだ。あっても渡さない。そうだろ?」
「あぁそうだねぇ。確かに、僕は渡さないね。」
「そういうわけで、私はお前の部屋を漁らせてもらう。」
「おいおい、人の部屋を勝手に漁るのはどうかと思うぜ?」
「あの2人にストーカーまがいのことをしてるやつがよく言えたな。」
「それを言われると弱いな。」
「素直に認めるんだな。」
「言い訳は醜いものだからね。僕には合わない。」
椿は髪を撫でる。
「気が変わった、部屋は漁らない。その代わり、今から私の質問に、全て、"正直"に答えろ。」
「僕が嘘をついたら?」
「いいや、私の予想が正しければ、お前は嘘をつけない。」
カーネリアは椿の異質な雰囲気を感じる。
(へぇ、噂には聞いてたが、これが神宮寺 椿という人間か。彼女にとっては、僕なんか、地面を歩くアリに過ぎないんだろうね。簡単に踏み潰すことができる。)
「いつでもいいよ。」
「わかった。」
椿は目を閉じて深呼吸をする。目を開けて、カーネリアに質問する。
「お前は人間か?」
「はい。」
「お前は、自分が強いと思うか?」
「はい。」
「お前に、大事なものはあるか?」
「いいえ。」
「お前は、魔力を取り込んだことはあるか?」
「はい。」
「次が最後の質問だ。お前は………」
椿は少しの時間、目を閉じる。
「死を回避することができるか?」
「……はい。」
椿の口角が上がる。
「これでいい。本の管理は任せたわ。あんたなら、扱いには問題ないはず。」
椿は足音をたてずに廊下を進む。
「ちっ、面倒なやつに勘付かれたな。」
カーネリアは機嫌を悪くしながら、朝食を食べに向かう。
「皆さん、昨日はしっかり休めましたか?今日と明日の訓練は、各々の実力が試されます。今までの経験の成果を発揮しきれることを、心から願っています。」
「あー、遂に始まったか。」
美桜は控室で薙刀の手入れをしている。
「緊張してるのか?」
「そりゃあ少しはね?」
美桜は青の顔を撫でる。青は嫌そうに頭を振る。
「我を使えよ?暴れたくて仕方がない。」
(まずい……)
美桜は青を押し戻す。
「おや?あなたとは同じグループのようですね。」
アメジストが隣に座ってくる。手にはAと書かれた紙が握ってある。
「お飲み物をご用意しましょうか?」
「いや、いいよ。」
美桜は立ち上がって体を伸ばす。
「試合前のストレッチですか?」
「そうそう。体が動かないとか、洒落にならないからね。」
アメジストは時計を見る。
「そろそろ始まります。」
「最初は誰だろう?」
美桜は控室の外を見る。
「どうやら、最初は私のようですね。」
アメジストは席を立って会場に向かう。
「頑張ってよ?」
「ふふっ、最善は尽くします。」
アメジストは笑みを浮かべて控室から出る。
(ん?)
美桜は裏口から出て、会場の裏手にまわる。青が顔を出す。
「どうしたの?」
「今のうちに最後の確認をしたらどうだ?」
「変な消耗はしたくないんだけど……」
「本番でガタが出たら意味ないだろ?」
「それはぁ、そうだけど。」
「簡単なことだ。我の言う通りにすればいい。」
美桜は薙刀を構える。
「よぉ嬢ちゃん。1日目以来だな。体調は優れてるか?」
Bグループ1回戦は、サーミルとカタレットだ。
(まさか格上とあたるとは……)
サーミルは剣に手をかける。
「一方的に痛めつけるのは、少々可哀想だが、許してくれよ?」
カタレットは背中に担いだ大剣を抜く。
「行くぜ。はあっ!」
カタレットは大剣を思い切り薙ぎ払う。大剣から炎の斬撃が放たれる。
「このっ…」
サーミルは斬撃の上を飛び越える。カタレットは着地する隙を狙う。サーミルはカタレットの大剣を軽快に避ける。
「やっぱり、剣は身軽だな。なら、これはどうだ?!」
カタレットは大剣を構えてその場に留まる。
(何をする気だ?)
サーミルは一瞬、判断に戸惑う。
(いや、考えるな。)
サーミルは剣をカタレットにむかって突き出す。 「かかったな!」
カタレットは大剣を振る。サーミルは瞬時に体を反らして範囲外に出る。
「今のは……カウンターか。」
「そうだ。大剣は動きが遅い。自分から攻めに行くのは悪手だからな。まぁ、慣れてるやつは例外だ。」
カタレットは大剣の先端を地面に置く。
「燃やし尽くせ!」
カタレットは大剣を地面をなぞるようにして振る。大剣から炎がほとばしる。
「炎が邪魔だな……」
「早くしねぇと、炎に囲まれるぞ!」
カタレットは大剣を振り下ろす。炎の斬撃が、地面に亀裂を作りながら飛んでくる。
「私の魔法を、見せてやる!」
サーミルは剣に水を纏わせる。剣を振ると、纏った水が斬撃となって放たれる。2つの斬撃がぶつかった瞬間、爆発して蒸気が発生する。
「水の魔法か。俺にとっては相性が悪いな。」
カタレットは大剣をサーミルに向ける。
「だが、相性を覆してこそ、一流の魔道士だ。」
サーミルは剣に水を集める。カタレットは大剣に炎を集めだす。
(来る……!)
カタレットは大剣を勢いよく振る。サーミルは剣で防ぐが、勢いに押される。
「何が起きた?」
カタレットの大剣から、炎が溢れ出ている。
「さぁ、もっと盛り上がろうぜ!」
カタレットは大剣を振り払う。
(次が来るまでの猶予で、背後に回り込めれば……)
カタレットは、サーミルに向かって大剣を薙ぎ払う。
「なっ?!」
サーミルは咄嗟に剣で防ぐ。
「どうだ、速いだろ?だが、まだまだ止まらないぜ!」
カタレットはサーミルを押しのけると、大剣を立て続けに振り回す。
「どんな力してるんだ!」
サーミルは大剣を剣で受け止める。
「よく止めたな。苦しくないか?」
「ふっ、戦闘で……苦しくないことなんて……あるのか?」
サーミルは腕を震えさせながら答える。
「そりゃそうか。」
カタレットはサーミルと顔を合わせる。
「俺は女性をいたぶるのは嫌いだが、今回ばかりは仕方ない。勝たせてもらうぜ!」
カタレットは大剣を頭上に振り上げる。サーミルは剣に力を込める。2人は武器を相手に向かって振る。武器がぶつかると、風圧が会場を襲う。風圧が消えた時、サーミルは地面に膝から倒れる。カタレットはサーミルを担ぐ。
「今のは……なんだ?」
カタレットは大剣にできた大きな傷を見る。
「まぁ、こんなものか。彼女からすると、相手が悪すぎた。」
「あら、私はそんなことは思わなかったけど?」
椿は男の背後で武器の手入れをしながら会話する。
「なぜだ?カタレットと彼女の間には高い壁ができている。」
「それは事実ね。だからと言って、勝てないわけではない。」
椿は立ち上がって、男の前に2つの石を置く。
「大きくて刺々しい方をカタレット。小さくて整っている方をサーミルと例えよう。」
「これは何か意味があるのか?」
「カタレットの弱点みたいなものよ。石にあるこの隙間。これをカタレットの懐、この尖っているところが武器とすると、懐は安全地帯になる。逆にサーミルは、変な隙間がない。攻撃を受けやすいけど、攻撃に安全地帯がない。」
「何が言いたい?」
「簡単な話、彼女が接近していたら、カタレットが負ける可能性もあった。おまけに、彼女の魔法はカタレットが苦手とする水魔法。」
「なるほど、勝算はあったのか。」
「そう。」
椿は石を魔法で砕く。
「弱点は誰にでもある。そこを突かれたら、負ける可能性があるのも同じ。だけど、1人だけ。1人だけ、弱点が分からないやつがいる。」
「お前にも、弱点が分からないやつがいるんだな。」
「しかも、そいつの実力は未知数。おそらく、今回の合同訓練で、最も警戒すべき魔道士よ。」
「あ、帰ってきた。」
控室にアメジストが戻ってくる。
「どうだった?」
「なんとか勝利しました。」
「そう。よかったよかった。」
美桜は水を飲む。
「次は、私の番はまだか……」
「そのようですね。少し、お散歩でもしますか?」
「大丈夫なの?」
「えぇ、従者の務めに支障が出ないように戦いましたので。」
「そう。ならついて来て。」
美桜はアメジストを連れて控室から出る。
一方その頃、すでにBグループの試合は始まっていた。2回戦は、ガーネットと玖羽の勝負だ。流石は上位陣の2人だ。他の追従を許さない、圧巻の試合を行っている。その様子を、カーネリアは客席から観戦していた。
「やっぱり、素晴らしいな。だけど……」
カーネリアは玖羽の動きに違和感を感じる。玖羽はその場からあまり動かず、ガーネットにカウンターの形で攻撃を行っている。
(なんだこの感じ……)
カーネリアは立ち上がってどこかに向かう。
カーネリアが廊下を歩いていると、椿が廊下に立っていた。
「また君か。今度はなんだ?」
「別に。あんたの監視。」
「そうか。でも丁度いい。僕は君を探していたんだ。」
カーネリアは椿との距離を縮めない。
「彼、鶴城 玖羽に何か指示をしたのか?」
「どうしてそんなことを聞くの?」
「僕は今回の参加者の戦闘スタイルを学習してきた。彼の場合は、ひたすら攻めるタイプだったはずだが?」
「そうね。疲れてるだけなんじゃない?」
「言い訳をしても無駄だ。僕はずっと、君を監視していた。」
「道理で、ずっと誰かの気配を感じたわけね。」
「その結果、君は彼と常に行動していることがわかっている。離れていることもあったが、監視した時間の半分以上は行動を共にしていた。それに昨日の夜、君は彼に何か指示をしていたことも知っている。」
椿はため息をつく。
「全部知ってるわけ?」
「会話の内容までは知らない。」
「そう……なら、あんた、腕を見せなさい。そして、私の質問に答えなさい。そうすれば、会話の内容を少しだけ教えてあげる。」
「へぇ、それはいい取引だ。」
カーネリアは袖をまくる。左腕をには何もない。
「右も見せなさい。」
カーネリアは右袖をまくる。
「……やっぱりね。」
右腕には、不気味な文字が螺旋状に記されていた。
「じゃあ、質問をするわ。」
椿はカーネリアに近づきながら質問をする。
「それは、自分でかけたものか?」
「いいえ。」
「それは、一員になるときに、契約としてかけられたものか?」
「はい。」
「それは、呪いか?」
「……はい。」
椿はカーネリアの右隣で足を止める。
「お前は……いつでも、死ぬことができるか?」
カーネリアはしばらく目をつぶる。
「……はい。」
カーネリアは目を開けて静かに答える。
「そうか。」
椿はカーネリアの右肩に手を置く。
「私に、いや、魔道士全体にとって重要な情報がわかった。お前には私の企みを教えてやる。」
「へぇ、それはありがたいね。ちなみに、会話の内容はなんだったんだい?」
「……試合ではしゃぎすぎるなと注意しただけだ。」
「なんだそんなことか……」
カーネリアは額に手を当てる。
「で、君の企みとやらはどんなものだい?」
椿は肩から手を離す。
「……魔道士の、"覚醒"だ。」
椿はカーネリアを見ずに廊下を進む。
「……"覚醒"?」
カーネリアがその言葉を発した途端、内側から体を貫かれる。
「がっ……?!」
カーネリアはその場に倒れる。床には赤い液体が広がる。
(くそっ、不意打ちか……)
「結構経ったよね?」
アメジストは時間を確認する。
「そうですね。美桜様は……まだ選出されておりません。」
「次もなし?もう半分ぐらいじゃない?」
「えぇ、それに、今の試合が終わったら昼食の時間かと。」
「じゃあ、先に食べちゃおうか。」
「承知しました。」
2人が食堂に着くと、落ち込んでいるサーミルと、隣で紅茶を飲んでいるカーネリアがいた。
「何してるの?」
「丁度いいところに来た。彼女を慰めてやってくれないか?僕は生憎、人を慰めるのが得意じゃないんだ。」
「………。」
美桜はカーネリアを観察する。
「何かあった?」
「何も?」
「そっ。」
美桜はサーミルに事情を聞く。
「……負けた。」
「………。」
美桜はサーミルの背中を撫でる。
「美桜さんはどうだったの?」
「まだだよ。」
「はぁぁぁぁぁ……」
サーミルは長いため息をつく。
「えーと、何か食べたいのある?」
「……ショートケーキ。」
美桜は自身の昼食とショートケーキを持ってくる。
「……どうも。」
(相当落ち込んでるなぁ……)
「じゃあ、行ってくる。」
「ご武運を。」
アメジストは美桜を見送る。美桜が選出されたのは最終試合だった。
(なんで一番最後になるのやら……で、肝心の対戦相手は?)
会場には相手の姿はない。
「どうやら、待たせてしまったようですね。」
反対の入口からホーリーが歩いてくる。美桜はポカーンと口を開ける。
「あなたの対戦相手はこの私、ホーリー・サラブレットです。」
(嘘ー?!)
美桜は平然を装うが、内心、非常に焦っている。
(なんでこの人と戦わせるわけ?!意味が分かんないんだけど!)
「面白いくなりそうだな。」
青が小声で美桜に話しかける。
(私はそんな気分じゃないんだけど……)
「今の状況は、互いに4勝4敗。故に、私も手加減は行いません。それに、本日の最後の試合でもあります。フィナーレに相応しい試合を行いたいのです。」
「まぁ、そうだよね。」
美桜は薙刀を手に持つ。
「勝つためには、本気を出さないと。」
「では、尋常に勝負!」
ホーリーはレイピアを抜く。レイピアの先端がこちらに向けられる。
(さて、どうしたものか……)
「我らがいるんだ。そう慎重になる必要はない。」
美桜は青の助言を聞くが、参考にはしない。
(慎重に、慎重に。)
美桜はジリジリと間合いを詰める。ホーリーは間合いを詰めず、左回りに歩きながら美桜から視線を逸らさない。
(攻める隙は……無いか。構えに無駄がない。こうなったら、少し強引に攻めるしかないかも。)
美桜は自身の魔力量を確認する。
(体調は万全。青と赤も待ちくたびれてる。)
ホーリーがまばたきをする。
(今!)
美桜はホーリーに接近して、右方に薙刀を振る。
「っ?!」
美桜は身の危険を感じて、後ろに跳ぶ。ホーリーは微塵も動いていない。
(攻撃の予兆はなかった。でも、本能で危険だと感じた。)
美桜はホーリーの全体を観察する。
(特に何かあるわけじゃない。じゃあさっきのは、心配しすぎ?)
美桜は首を振って雑念を晴らす。
(今は戦うことに集中する。)
「どうしました?」
ホーリーが喋りだす。
「あなたが来ないのなら、こちらから仕掛けさせてもらいます。」
美桜は身構えて攻撃に備える。ホーリーは少し息を吸うと、レイピアを突き出す。美桜は反射的に右側に倒れる。
(あっ……ぶない!)
美桜が倒れた直後、左側を強烈な閃光が走る。
(軽く地面を抉る威力。まともにくらってたらどうなってたか……)
「今のを避けますか。やはり、実力は確かですね。」
ホーリーはこちらに向かって歩き出す。
「次は、接近戦です。」
ホーリーは美桜に近づいてレイピアを絶え間なく突き出す。薙刀で防ぎ続けるが、ホーリーから無言の圧を感じる。
(隙を見せたら負け!)
美桜は薙刀を下から振り上げて、レイピアを弾く。ホーリーの体勢が崩れたところを狙うが、そう簡単にはいかない。
「下がれ!」
青の助言で、美桜は飛ぶようにして後ろに離れる。直後、落雷が起こる。美桜は薙刀を握り直す。
(今のは魔法、だけど、自然のものに近い。魔力が薄いせいで、察知するのが難しい。)
砂煙を突き破って、ホーリーのレイピアが飛び出してくる。美桜は体を反らして躱す。そして、ホーリーに足払いを仕掛ける。転んだところを攻めるが、ホーリーはレイピアに雷を落とす。
「あがっ……」
直撃はしなかったが、美桜は左腕が痺れた。レイピアは雷を纏っている。
「来るぞ!」
青が警告する。ホーリーはレイピアは振って、雷の斬撃を飛ばす。
「速っ……?!」
美桜は飛び込むようにして斬撃を躱す。美桜が立ち上がろうとするが、斬撃が迫ってきたため、前方に転がる。転がったあとは、すぐに立ち上がって走り出す。ホーリーは休むことなくレイピアを振る。斬撃は高速で迫る。
「やっぱり、なんか速くない?!」
「おそらくあいつの武器も、お前のと同じように特殊なものなのだろう。油断してると、一瞬で終わりだぞ。それに、あいつの雷は変だ。」
ホーリーは腕を止め、美桜に向かってレイピアを突き出して突進する。美桜はなんとか躱す。レイピアは壁に突き刺さった。
(あぶっ……)
美桜が反撃に転じようとすると、壁に電流が走る。
「待って……」
美桜は急停止してバク宙をする。直後に、壁から電撃が飛び出す。
「いい反応ですね。しかし、逃げてばかりでは、勝てませんよ。」
ホーリーはレイピアを引き抜いて、美桜に向ける。
(これでいい。いつでも青を呼び出せる。)
美桜は薙刀の刃を地面につける。
(来ますね。)
美桜はホーリーに向かって薙刀を振る。ホーリーは薙刀を受け流し、レイピアを突き出そうとする。
「させるか!」
美桜はホーリーの背後に風の刃を作り出し、奇襲を仕掛ける。ホーリーは背後に一瞬気を取られるが、すぐに美桜のほうを見る。
「やはり……」
美桜の姿がない。ホーリーは、雷で風の刃を消す。
「違う、狙いはこれか!」
ホーリーの周りに竜巻が発生する。ホーリーは吹き飛ばされないようにこらえるが、竜巻は軽々と上空に吹き飛ばす。ホーリーは雷で竜巻を消そうとする。
「まて、彼女はどこに行った?」
ホーリーは美桜を探すが、どこにも見当たらない。
「まさか、下か?!」
美桜はホーリーの真下から、風の刃を飛ばす。
(今ならいける。)
ホーリーは美桜に向かって突進する。美桜は左に避けるが、レイピアが袖を破る。
(さっきより速くなった?!そんなわけない……はず。)
ホーリーが着地した衝撃で、竜巻が消える。レイピアは地面に刺さっている。
(これは攻め時じゃない!)
美桜はホーリーから視界から外すことなく距離をとる。
(次はどうくる?)
美桜はホーリーとの距離を確認する。
(これくらいなら、突進されても避けられ……)
ホーリーは美桜の左方に潜り込む。
(えっ……?)
美桜は一瞬戸惑うが、反射的に体が動く。後ろに倒れて、すぐに起き上がる。
「はっ……?!」
ホーリーの体には魔力が纏わりついている。
「まずい、魔纏(まてん)だ。」
青が警告する。
(これ……絶対普通の魔纏じゃない!)
美桜の予想は的中する。ホーリーの体には、電気が流れている。
(来るっ……)
美桜が感じた頃には、ホーリーは真横を通り過ぎていた。
(速っ……過ぎない?!)
美桜が考えた頃には、ホーリーは美桜の反対にまわっていた。反応する頃には、美桜の背後に回り込む。
「そうか、磁石と同じ原理か。」
「どういうこと?」
「周りの壁をよく見ろ。」
壁には電気が流れている。
「いつの間に……」
「おそらく、壁に武器が刺さった時に流したのだろう。あとは体に電気を纏えば、人間磁石の出来上がり、ということだろう。」
ホーリーはレイピアを美桜に向ける。
「今のあいつに触れるのはやめておけ。感電するぞ。」
ホーリーは美桜に迫る。美桜はレイピアを薙刀で受け流す。
「あっ……れ?」
美桜は電気の影響を受けない。ホーリーは驚いた様子を見せる。
「なるほど。その薙刀の柄は、高い絶縁性を持っているようですね。」
ホーリーはレイピアを払ったのち、自身の周りに磁場を発生させる。
「気をつけろ、引き寄せられるぞ。」
ホーリーは美桜に向かって再び突進する。美桜はかろうじて避けるが、今までとは比にならない速度だ。
「うえっ?!」
美桜はホーリーに引き寄せられる。薙刀を地面に突き刺して、なんとか堪える。
(これ……やばい!磁力が強すぎる!)
美桜が止まっている隙を、ホーリーは逃さない。「動け!」
美桜の頭上から雷が落ちる。雷が着弾して、砂煙が発生する。
「勝負あり………ではないようですね。」
砂煙の中から、ホーリーは何か強大な存在の気配を感じる。砂煙を突き破って青が現れる。青は雄叫びをあげる。
「まさか、こんな化け物を従えているとは……」
砂煙が晴れると、膝をついた美桜を青が守っていた。
「さて、どうする?」
「あんたの落雷は通じると思う?」
「あいつがどこまで耐えられるかだ。我の雷は、自然のものの何倍の威力を持つ。普通の人間なら即死するだろう。」
ホーリーは青を見る。
(これが龍神。本に記された情報よりも、かなり大きい。百聞は一見に如かず、ということですね。)
ホーリーはレイピアを青と美桜に向ける。
「こいつを捻り潰せばいいのか?」
「あんたは基本、手出ししないで。一回だけ。一回だけ、雷を落としてくれたらいい。タイミングは私が教える。」
青はすんなりと美桜の言う事を聞く。
「続きといきますか?」
「えぇ、そうね。」
(その前に……)
「俺の出番か。」
赤は美桜に力を与える。薙刀の刃が赤く染まる。ホーリーは薙刀を警戒しながら、美桜にレイピアを突き出す。美桜はゆっくりと避ける。
「突きは通用しませんか……」
ホーリーはレイピアを振って、全方位に斬撃を放つ。美桜はホーリーに接近して斬撃を躱す。
「近づきましたね。」
ホーリーは見越していたかなように、全ての斬撃を引き寄せる。
「ちぃっ……」
美桜は斬撃の隙間をくぐり抜けるが、裾が斬撃に触れる。斬撃はレイピアに吸収される。
「はっ!」
ホーリーは美桜に向かってレイピアを投げる。壁に吸い寄せられるようにして、レイピアは加速しながら美桜に迫る。
「っぶない!」
レイピアは美桜の足元に突き刺さる。
「しまっ……」
美桜は急いでレイピアから離れようとする。しかし、美桜はレイピアに引き寄せられる。
「せいっ!」
ホーリーは頭上から腕を振り下ろす。レイピアに向かって雷が落ちる。その雷はレイピアに着弾すると周囲に電撃を放つ。雷の閃光は雲に届きそうなものだった。
「まさか、これほどの落雷を起こせるとは……」
男は立ち上がって会場を見下ろす。
「あいつは大丈夫なのか?」
「さぁね。少なくとも、青の加護があるから死にはしない。」
椿は髪を下ろしている。
「……気をつけなさい。次がくる。」
男は後ろに下がる。
「はぁ……はぁ……」
ホーリーは息を切らす。
(これほどまで……消耗したのは……初めてだ。今までの数十倍もの落雷を起こした。)
ホーリーの体から電気が消える。
(魔力が少なくなっている。もう魔纏は使えないか。)
ホーリーは砂煙のほうを見る。
……………
辺りに沈黙が走る。ホーリーはこの感覚を何度も経験してきた。
「そうか……まだか。」
砂煙の中に人影が見える。ホーリーは残った魔力で体に雷を纏う。突然、空に雷鳴が走る。ホーリーは全てを察する。直後、ホーリーに雷が直撃する。
「…………。」
ホーリーは地面に座り込む。砂煙が晴れ、美桜が現れる。
「まったく、ハラハラさせるな。」
「仕方ないでしょ。レイピアを離してほしかったんだもん。」
青は美桜の腕をつつく。美桜は腕をおさえながら痛みに耐える。
「あれほどの雷をもろに受けたんだ。我の加護があるとはいえ、完全には防ぎきれない。だが、真に心配すべきはあいつだ。」
青はホーリーを指差す。
「我の雷が直撃したぞ。」
美桜はホーリーに近づく。ホーリーは動かない。
「生き……てる?」
青がホーリーの顔をつつく。
「ん……?」
ホーリーはゆっくりと目を開ける。
「はっはっはっ!驚いたぞ!我の雷を直に受けて生きているとはな!」
ホーリーは喋ろうとするが、上手く言葉を発せない。どうやら、体が麻痺しているようだ。青はホーリーの頭に指を置く。ホーリーは体から痺れが消えるのを感じる。
「……私の負けだ。いい勝負だった。」
美桜はホーリーの手を掴んで引き上げる。
「おめでとう。」
「おめでとうございます。」
「うん、祝ってくれるのはうれしいよ。だけどね……」
美桜はグラスを持ったまま、プルプルと震えている。
「私の部屋でする必要ある?!狭いのに!」
「まあまあそう言わずに。はいカンパ~イ!」
「乾杯はするけど……」
サーミルと美桜とアメジストは、グラスを当てて乾杯をする。
「お食事はまだまだありますよ。」
アメジストは美桜の皿に夕食を盛っていく。
(食べきれるかな……)
美桜は食事をしながら2人と会話をする。
「でも、まだ明日があるよ?むしろ、明日のほうが大事では?」
3人が話していると、誰かがドアをノックする。
「はーい。」
美桜がドアを開けると、ガーネットが立っていた。手にはウイスキーの瓶が握られている。
「何してるの?」
「えぇ~だって~、部屋の前にこんなのあったら~、気になっちゃうよね~。」
部屋の前には、食事を運ぶ台車が置いてあった。
「私がお借りしました。」
アメジストは軽く手をあげながら答える。
「というか、めちゃくちゃ酔ってない?」
「う~ん、そだね~。」
「どんだけ飲んだの?」
「うーん、瓶1本!」
ガーネットははっちゃけたように答える。
「うるさっ。」
美桜はストレートに言葉を発する。
「ちょっと~、辛辣じゃな~い?こう見えて~、自分の部屋から~歩いてきたんだよ~。」
「違う、そうじゃない。」
サーミルは困ったようにため息をつく。
「ガーネットさんはたまに、思い立ったかのように外出してワインやウイスキーを飲みに行くんだ。ただ、いつも1人で飲みに行くんだ。」
「そうですね。帰ってきた頃には、当たり前のように顔を赤くしています。」
美桜はガーネットのほうを見る。
(実はガーネットって、相当だらしない?)
「てかちょっと待って。瓶1本って言わなかった?!」
ガーネットは3本のウイスキーを持っていた。1本は空になっている。
「ほんとに1人で飲んだの?!」
「そだよ~、おいしかった~。」
美桜はガーネットの顔を掴んで叫ぶ。
「馬鹿じゃないの?!ウイスキーって、めちゃくちゃアルコール強いんだよ?!」
「知ってるよ~。あ、一杯飲む~?」
「飲まない!」
美桜は2人のほうを見る。
「取り上げたほうがいい?」
「いえ、大丈夫ですよ。ガーネット様はその程度では死にませんから。」
「え?」
「少し昔、ガーネット様と1時間ほど飲み比べをしたのですが。私はワイン、ガーネット様はウイスキーです。」
「そんなことをしてたのか?」
サーミルも知らないようだ。
「私がワイン3本、ガーネット様がウイスキー2本を飲み干しました。」
「1時間でウイスキー2本って……冗談はやめてもらっても……」
「実話です。本人に直接聞いてみてはどうですか?」
「ほんとに飲んだの?」
「うん~、飲んだよ~。ちなみに~、ちびちび飲んでたから~、普通に飲めば~もっと飲めるよ~。」
美桜は反応に困る。
「まぁ、いつもは真面目に責務を全うしておられますので、多目に見てやって下さい。」
「いや保護者か。」
サーミルはアメジストにツッコミを入れる。
「……飲んでみる?」
サーミルがウイスキーの瓶を持って2人に聞く。2人は頷く。ガーネットはサーミルの持っている瓶を掴もうと、赤子のように手を伸ばしている。
「はい。」
美桜は少量だけ注がれたウイスキーを覗く。
(私って、お酒そんなに強くないんだよなぁ……そういえば、アリスもお酒に強かったような?その辺りは似てるんだ。)
アメジストは少量のウイスキーを躊躇なく飲む。
「うーん、やはりアルコールが強いですね。私には向いていません。」
続けてサーミルも飲む。
「意外といけるな。まぁ、頻繁に飲むものではないが…」
美桜は覚悟を決めて飲み干す。
「あ゙ぁ゙っー!」
美桜はアルコールに耐えられず蒸せる。
「大丈夫か?」
サーミルは美桜の背中をさする。
「ふふっ、私にはノンアルコールがお似合いね。」
美桜は枯れた声で負け惜しみを言う。
「じゃあ、また明日。」
「うん、また明日。」
サーミルとアメジストは部屋を出る。アメジストはガーネットを部屋まで運ぶようだ。
「はぁ、疲れた。」
美桜はソファに寝転がる。
「ふんっ、こんなものか。」
カーネリアは机に置かれたトランプをめくる。トランプはエースだった。
「エース………ふっ、楽しみだ。」
カーネリアは窓の外を見る。
「何が楽しみだって?」
椿がカーネリアの死角から話しかける。
「またか。一体いつまで、僕につきまとうつもりだ?」
「あんたが本性をあらわすまで。」
椿はトランプをめくる。
「へぇ、あんたにとって、私はJOKERなのね。しかもちゃんと、私のイメージカラーと言ってもいい赤色。あんたがどれだけ、私を警戒しているかがよくわかるわぁ~。」
「さっさと出ていってくれないか?僕はもう寝たいんだ。」
「はいはい、そんな苦し紛れの言い訳はしないで。眠いんだったら、トランプなんかせずに、早く寝ればいいのに。」
カーネリアはトランプを片付ける。
「君は何をしに来たんだ?僕とトランプがしたかったのか?」
「そうねぇ、せっかくだし、ポーカーでもしましょ。」
2人は静かにポーカーをする。終盤に差し掛かった時、椿がカーネリアに話しかける。
「あんたは、自分が強いと思う?」
「いいや。そうは思わないね。」
「ふ~ん。」
椿はカードを1枚引くと、動きを止める。
「どうした?降参したか?」
「あんたは最初、さっきの質問に、"はい"と答えた。だけど今は、違うと答えた。どちらか嘘をついているはずだ。呪いが発動しないな。」
「当然さ。強い、弱い。どっちも本当のことだからね。」
「なるほどねぇ。」
椿はトランプを裏向きにして机に置く。
「全てわかった。」
椿はトランプを表向きにする。
「ストレート・フラッシュか。君の勝ちかな?」
「いいえ、私の負けよ。だって、あんたは……」
椿はカーネリアの手札を机の上に表向きにして置く。
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