幼なじみ彼女と俺の距離

茜色蒲公英

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裸の付き合い

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女湯が清掃中で静音に部屋で待つように言ったが男湯で一緒に入ろうと言ってくる静音。
小さい頃から一緒に入っていたからとかいうテンプレもあるわけがなく入れるわけがない。

「他の人がいたら困るだろ」

「だったら見に行って来て。他の人がいたら部屋で待ってる」

「いなかったとしても入ってくるかもしれないだろ?」

納得させようとしても意地でも一緒に入ってやるという顔をして着替え等を抱える静音。

「いいから見てきて…」

上目遣いで頼んでくる静音に負けて俺は確認することにした。
木造のタンスが綺麗に並べられており、浴場に入って見渡してみたが誰もいない。
こんなことをしていると「裸を見られたくない変な人」か「男湯とは書いてあったけれど本当は女湯なのかと疑っている人」みたいで俺だったら通報している。
一度脱衣所から出ると静音はいなくなっており、待っている間トイレでも行っているのかと少し待っていると清掃中である女湯の方から静音が出てきた。

「そっちはどうだった?」

「浴場には誰もいなかった。けど何やってたんだ?」

「清掃員の人に『男湯に人がいなかったら彼氏と一緒にお風呂入るからこっちも清掃中にしてほしい』って言ってきた」

そこまでして俺と一緒に風呂が入りたいのか。
俺は小学校の時から水泳で裸を見られているので大して恥ずかしくないが静音はそうはいかないだろう。

「最後にもう一回聞くぞ。本当に俺と一緒に入るのか?」

「……うん。」

顔を伏せて呟く静音。
俺が脱衣所に進むと静音は遅れてついて来た。
俺がタンスに入っているカごの中に服を脱ぎ入れていくが、隣の隣のタンスの前で服を脱ごうとしているが裾を持ったまま動いていない。

「なぁ…やっぱり清掃終わるの待ったほうがいいんじゃないか?」

「大丈夫…大丈夫だから…」

どう見ても大丈夫ではない。

「じゃあ先に身体洗ってるぞ」

「うん…」

浴場に入り、壁の仕切りがない場所で丸く小さな椅子に座って頭から洗い始めると扉の開く音がした。
足音がゆっくりで俺の隣に座ってきた。

「まだ…目開かないで」

俺にまだ恋は分からない。
だが俺は男だ。
だっこに頼んでこっそりエロゲをやらせてもらったこともある位には人並みに性欲はある。
なのでこの状況に「いけないことがおきる」と自分の中のサイレンが音割れするくらいに響いている。

「こっち向いて…って言っても目を閉じてるからそのまま頭伏せてて」

言われた通りにすると静音が優しく頭の泡を優しく流してくれた。

「もう目を開けていいか?」

「まだ…ダメ」

タオルのようなスポンジを手に取り強めに背中を洗ってくれる静音。
その後も腕や体を洗ったところで静音の手が止まった。

「…えっと…」

「そこから先は自分で洗うから!」

俺は察して目を開いてしまった。

「あっ…」

初めて見た静音の体はとても綺麗だった。
すぐに折れてしまいそうな白く細い体。

「っっ…!」

静音は手拭いと両腕を使って体を隠し、急ぎ足で掛け湯をして飛び込むように大きな風呂に入っていった。

「…洗うか」

静音が置いていった泡だらけのスポンジでを洗い、風呂に入って顔だけ浮かんでいる静音の所へ近づいていくと静音は顔を逸らす。
沈黙が続き、さっきのこともあって非常に気まずくなってしまった。
どうしたものかと天井を見上げると静音の方からこちらに近づき、肩がぶつかる。

「見ないでって言ったのに…」

「すまん…だけど綺麗だった」

「あ…ありがとう…進の体も筋肉質じゃないけど男の人って感じの体で良かったよ…」

「お、おう。洗ってくれたしもし良かったら背中流すぞ?」

「それは……ダメ」

言葉が出るまでだいぶ固まっていた。

「私体洗ってくるから…こっち見ないで」

後ろを向かされて静音は湯船から出て体を洗ってまたこちらに戻ってきた。
その間俺はずっと壁と向き合っていたのでシャワーの音や椅子に座ったりする音を聞くだけだったが想像するのは容易かった。
こんなことをだっこに言ったら「むっつり乙」などと言われるだろう。
静音がまた湯船に浸かり前を向くことを許可された。

「進はさ…私の体見たい?」

いきなり何を言うんだ。

「見たい」

何を言っているんだ俺は。
しかし思考と理性と本能が頭の中で乱闘している今の俺にまともな返答は出来そうにない。

「なら…こっち…見ても…い、いいよ」

そんな反応されたら見れなくなるだろうが。
のぼせて頭がおかしくなったのだろう。俺は立ち上がり静音の方へ顔をゆっくりと向けて胸を隠していた静音を見ると「先に出てる」と言い残して倒れないうちに脱衣場へと歩いていった。
体を拭くと徐々に頭が冷え、着替え終わる頃に静音が脱衣場に来た時一瞬だけマズいと思ってしまったが洗面台の方に逃げて静音の裸を見ずにすんだ。

「危なかった…」

「なんで逃げるの…?」

「それはまだ静音が着替えてないからっておまっ!?」

鏡に映っていたのは下着姿の静音。

「どうしたの?」

「どうって鏡に映ってるぞ!」

「うん…けど下着つけてるよ?」

「服を着ろ!」

「付き合ってるんだし下着くらい見られても平気なのに…」

裸はあんなに嫌がっていたのに下着はいいのか。
旅館で用意してくれた花柄の浴衣の着替えを手伝い、脱衣所を出ると女湯を清掃していた人がこちらに気づき駆け足で近づいてきた。

「ご不便をおかけして申し訳ございませんでした。また夜七時からどちらでも入れるようにしておきます」

清掃員は一礼すると男湯に入っていった。

「部屋に戻るか」

「うん」

階段を上がって部屋に戻ろうとするとその途中で少し遠くから女将さんが誰かと話している声がして、俺たちは立ち止まった。

「用意ができないってどういうことですか!?今日はお客様が来ているのに…他の店を当たれってないことを知ってるでしょう!?あっちょっと!」

スマホで話していたようで通話が終わると階段を降りるためこちらに近づき、上がっている俺と静音は聞かなかったフリをしてすれ違った。
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