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付き合ってるから
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食事が終わり皿洗いを手伝い終わると俺は風呂に入るため一度帰ることにした。
シャンプーが合わないとかそういうわがままではなく我が家は浴槽に浸かることが滅多に無いため待たせることは無いし待つことも無い。
紫水さんに「風呂入りに一度帰ります」と言って玄関で靴を履いていると壁から顔を出した静音が「帰るの…?」と震えた声で言う。
「風呂入りに一旦戻るだけだ。明日学校だしその準備もしなくちゃな」
「一緒に入ろうと思ったのに…」
何かとんでもないことを言って二階に戻っていったが気にしない。
我が家に戻って風呂に入り、部屋に入って準備をしてからまた静音の家へと戻る。
静音の部屋に行くと誰もおらずドライヤーがベッドの上に置いてある。
入浴中なのだろう。
スマホでもいじって待つことにした。
温泉の時は二人で入って二人で出たので静音が一人で入った時の入浴時間は知るはずもない。
しかし我が家がシャワーのみなので女性の入浴時間も知らない。
浸かっている時間に小説や漫画、動画を見る人もいるらしいので男性でも三十分以上かかる人はいるとどこかで見た気がする。
だがスマホ慣れしていない静音のことなのでそんなことはしないはず。
待つこと三十分、まだ出てこない。
長湯するのだなとクローゼット前の文庫本に手を伸ばす。
手に取ったものは推理小説。
文庫本は推理小説が多くで元の大きい本を文字を小さくしたり行間を詰めたりして持ち運びに便利な大きさになっているものが有名な作品だと多い…のだが。
逆に俺みたいなあまり小説を読まない人にとっては字が小さくて、行間が狭くて少し読みづらかったりしてしまう。
中には無理矢理一冊に収めましたと言わんばかりに厚い文庫本があるので持っているだけで筋トレになりそうなものもあるくらいだ。
半分読んだところで部屋のドアが開き、静音がお酒でも飲んだかのような顔をして入ってきた。
「うぅ~…」
呻きながらベッドの方へ歩いていき、座って顔を伏せる。
ドライヤーがすぐそばにあるのに髪を乾かさないのでドライヤーの電源を入れる。
机の上にくしがあったのでそれで髪をとかしながら風を当てる。
こういうことをやるのは初めてで引っかかて痛い思いをさせないか心配になるがそんなことは全くない。
前髪を乾かすため顔を横に向けさせると目を閉じて笑っていた。
「くすぐったいか?」
「ううん…こうやって髪を触ってくれたの初めてだなぁ…って」
乾かし終えると静音の顔は赤くなくなり、立ってくしとドライヤーを持ち一洗面所へと返して部屋へとすぐに戻ってきた。
「いつもあんなに顔を赤くするほど長湯してるのか?」
「そんなわけない…一回お母さんが心配して覗きに来たし…」
それ以上は教えてくれなかった。
その後は俺が呼んでいた小説の前半を語り合ったり作者について教えてくれたりとした後静音は先にベッドに入った。
確実に触れるそのスペースを早く来いと叩く静音。
無心だ。
心を無にすれば人間が二人で寝ているだけ。
何もやましいことなどない。
ベッドに横たわり「おやすみ」と言って目を閉じる。
アラームは設定してあるから寝坊をすることは無い。
肌が触れているが気にすることは無い。
意識が落ち次に目覚めた時は朝なのだ。
「…ふっ」
「ぬぅお!?」
耳にかかった静音の息。
俺の体は寒くもないのに震えていた。
「ふふっ、やっとこっち向いてくれた…」
「そりゃ向くぞ…やっぱり顔近いな」
「うん…照れちゃうね」
「そうだな…けど学校じゃこういうことするなよ。俺がだっこに殺されかねない」
「そんなことする勇気ないよ…だからその代わりに家だとこういうことしていいでしょ?」
いくら付き合っているとはいえ毎日のようにこんなことをされたら心臓と理性が持たない。
返事はせず「今度こそおやすみ」と言って目を閉じた。
「沈黙は承認のしるし…」
次の日、アラームの音で起きて我が家に戻り洗顔と歯磨きを済ませて制服に着替えてバッグを持ち家を出る。
静音も起きて制服に着替えているだろうから部屋にはいかずにリビングへ行く。
すると紫水さんが俺と静音のお弁当を作っていてくれた。
「すみません、俺の分まで」
「いいの。それより静音を起こしてきてもらえないかしら?あの子自分じゃ中々起きなくて…」
それなら大丈夫だろう。
アラームが鳴った時に起きているのを確認しているので二度寝をしていなければ今頃着替えているはず。
「あの子着替えるまで見てないと二度寝しちゃうの」
急いで静音の部屋まで戻った。
ノックをしても返事はなく部屋に入ると気持ちよさそうに寝ている。
「起きろ静音。朝だぞ」
「うん…お母さんのお弁当美味しいね…」
夢の中の時間は進んでいるのか。
無理矢理体を起こすとようやく目を覚まし、クローゼット前の本棚をスライドさせて制服をとった。
「あの…着替えるんだけど…」
「すまん、出ていく」
さすがにまじまじと見るわけにはいかない。
部屋を出て行って何度か起きているか確認すると小さい声ながらも「起きてる」と返す。
これで大丈夫だと紫水さんに報告して朝ご飯をいただくが静音が起きてくる気配がない。
「着替えるまで何度も受け答えしてたはずなんだが…」
「扉は開けた?」
「いや、着替え途中だったらと思って開けてないです」
「ならあの子本読んでるわね」
何をやっているんだ。
また急いで二階に上がり今度はノックもせず部屋に入ると紫水さんの言った通り本を読んでいた。
それも一時間や二時間では読破できないような分厚い本を。
「あれ…ご飯できてる?」
「できてるぞ」
紫水さんは毎日こんなやりとりをしているのだろうか。
そして今日から俺がその役を任されることになるのか。
そう考えると静音が彼女というより手のかかる妹か娘にすら見えてきた。
シャンプーが合わないとかそういうわがままではなく我が家は浴槽に浸かることが滅多に無いため待たせることは無いし待つことも無い。
紫水さんに「風呂入りに一度帰ります」と言って玄関で靴を履いていると壁から顔を出した静音が「帰るの…?」と震えた声で言う。
「風呂入りに一旦戻るだけだ。明日学校だしその準備もしなくちゃな」
「一緒に入ろうと思ったのに…」
何かとんでもないことを言って二階に戻っていったが気にしない。
我が家に戻って風呂に入り、部屋に入って準備をしてからまた静音の家へと戻る。
静音の部屋に行くと誰もおらずドライヤーがベッドの上に置いてある。
入浴中なのだろう。
スマホでもいじって待つことにした。
温泉の時は二人で入って二人で出たので静音が一人で入った時の入浴時間は知るはずもない。
しかし我が家がシャワーのみなので女性の入浴時間も知らない。
浸かっている時間に小説や漫画、動画を見る人もいるらしいので男性でも三十分以上かかる人はいるとどこかで見た気がする。
だがスマホ慣れしていない静音のことなのでそんなことはしないはず。
待つこと三十分、まだ出てこない。
長湯するのだなとクローゼット前の文庫本に手を伸ばす。
手に取ったものは推理小説。
文庫本は推理小説が多くで元の大きい本を文字を小さくしたり行間を詰めたりして持ち運びに便利な大きさになっているものが有名な作品だと多い…のだが。
逆に俺みたいなあまり小説を読まない人にとっては字が小さくて、行間が狭くて少し読みづらかったりしてしまう。
中には無理矢理一冊に収めましたと言わんばかりに厚い文庫本があるので持っているだけで筋トレになりそうなものもあるくらいだ。
半分読んだところで部屋のドアが開き、静音がお酒でも飲んだかのような顔をして入ってきた。
「うぅ~…」
呻きながらベッドの方へ歩いていき、座って顔を伏せる。
ドライヤーがすぐそばにあるのに髪を乾かさないのでドライヤーの電源を入れる。
机の上にくしがあったのでそれで髪をとかしながら風を当てる。
こういうことをやるのは初めてで引っかかて痛い思いをさせないか心配になるがそんなことは全くない。
前髪を乾かすため顔を横に向けさせると目を閉じて笑っていた。
「くすぐったいか?」
「ううん…こうやって髪を触ってくれたの初めてだなぁ…って」
乾かし終えると静音の顔は赤くなくなり、立ってくしとドライヤーを持ち一洗面所へと返して部屋へとすぐに戻ってきた。
「いつもあんなに顔を赤くするほど長湯してるのか?」
「そんなわけない…一回お母さんが心配して覗きに来たし…」
それ以上は教えてくれなかった。
その後は俺が呼んでいた小説の前半を語り合ったり作者について教えてくれたりとした後静音は先にベッドに入った。
確実に触れるそのスペースを早く来いと叩く静音。
無心だ。
心を無にすれば人間が二人で寝ているだけ。
何もやましいことなどない。
ベッドに横たわり「おやすみ」と言って目を閉じる。
アラームは設定してあるから寝坊をすることは無い。
肌が触れているが気にすることは無い。
意識が落ち次に目覚めた時は朝なのだ。
「…ふっ」
「ぬぅお!?」
耳にかかった静音の息。
俺の体は寒くもないのに震えていた。
「ふふっ、やっとこっち向いてくれた…」
「そりゃ向くぞ…やっぱり顔近いな」
「うん…照れちゃうね」
「そうだな…けど学校じゃこういうことするなよ。俺がだっこに殺されかねない」
「そんなことする勇気ないよ…だからその代わりに家だとこういうことしていいでしょ?」
いくら付き合っているとはいえ毎日のようにこんなことをされたら心臓と理性が持たない。
返事はせず「今度こそおやすみ」と言って目を閉じた。
「沈黙は承認のしるし…」
次の日、アラームの音で起きて我が家に戻り洗顔と歯磨きを済ませて制服に着替えてバッグを持ち家を出る。
静音も起きて制服に着替えているだろうから部屋にはいかずにリビングへ行く。
すると紫水さんが俺と静音のお弁当を作っていてくれた。
「すみません、俺の分まで」
「いいの。それより静音を起こしてきてもらえないかしら?あの子自分じゃ中々起きなくて…」
それなら大丈夫だろう。
アラームが鳴った時に起きているのを確認しているので二度寝をしていなければ今頃着替えているはず。
「あの子着替えるまで見てないと二度寝しちゃうの」
急いで静音の部屋まで戻った。
ノックをしても返事はなく部屋に入ると気持ちよさそうに寝ている。
「起きろ静音。朝だぞ」
「うん…お母さんのお弁当美味しいね…」
夢の中の時間は進んでいるのか。
無理矢理体を起こすとようやく目を覚まし、クローゼット前の本棚をスライドさせて制服をとった。
「あの…着替えるんだけど…」
「すまん、出ていく」
さすがにまじまじと見るわけにはいかない。
部屋を出て行って何度か起きているか確認すると小さい声ながらも「起きてる」と返す。
これで大丈夫だと紫水さんに報告して朝ご飯をいただくが静音が起きてくる気配がない。
「着替えるまで何度も受け答えしてたはずなんだが…」
「扉は開けた?」
「いや、着替え途中だったらと思って開けてないです」
「ならあの子本読んでるわね」
何をやっているんだ。
また急いで二階に上がり今度はノックもせず部屋に入ると紫水さんの言った通り本を読んでいた。
それも一時間や二時間では読破できないような分厚い本を。
「あれ…ご飯できてる?」
「できてるぞ」
紫水さんは毎日こんなやりとりをしているのだろうか。
そして今日から俺がその役を任されることになるのか。
そう考えると静音が彼女というより手のかかる妹か娘にすら見えてきた。
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