盲目エルフは異世界勇者と旅をする

茜色蒲公英

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リボフラの城下町

ラーヴァナとの死闘

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盗賊たちに運び込まれる形で洞窟に入ってアジトに着いた隆。
そこで目にしたのは十数人もの盗賊たちが盗ってきたものを自慢しあい、酒を飲み交わす光景だった。

「お前ら!珍しいもんが手に入ったぞ!」

ブーメランを持っていた女の盗賊が大声を上げると一斉に気絶している隆の方に目線が行く。

「そんな大声上げると…目を覚ます…」

「そうだぞー、それにお前何もしてないだろ。早くボスの所に持っていこうぜ」

「高価そうなものはラーヴァナ様に持っていくというのがルールだからな。全員で行っても鬱陶しいと思われかねんから小生が行ってこよう」

「うん…お願い…」

隆を担いでいる男が盗賊達のボスであるラーヴァナのいる部屋をノックすると「入れ」という声が。
「失礼します」と言って男がドアを開けると部屋には高価そうな武器や鎧、金銀財宝が所狭しと置かれており、部屋の中央にある玉座にラーヴァナと呼ばれる大きな二つの角をつけた女性は座っていた。

「ラーヴァナ様、今回の獲物を持って来ました」

「ああ、だが獲物ってもしかして肩に乗ってる男かい…?悪いがアタシはそういう趣味はないよ」

「それは存じています。獲物はこの男が装備している手甲です。外そうと思ったのですが力ずくで外そうとすると腕がちぎれる可能性があるのでここまで持って来ました」

「なるほど。それでアタシにこいつを脅して嬲って武器を外させるか、腕を切り落として手に入れるか選べって言いたいのか」

「失礼ながらその通りです」

「ふーん。ならそいつ早く下ろさないと殴られるよ」

「それはどういう…」

「こういう意味だボケがぁ!」

隆は右腕を顔面に叩きつけ、まともに食らった男は鼻血を吹き出してその場に倒れた。
担がれていた隆はうまく着地ができなかったが、なんとか立ち上がる。

「よっ、お前が手配書に書いてあったラーヴァナってやつか。眼帯してねぇし女とは思わなかったな」

「女で悪かったね、それに手配書に書いてあったやつはとっくの前に死んだ。今はアタシがここのボスをやってんだが…さっきの話聞いてたんだろ?痛い目見ないうちにその手甲よこしな」

「断る。これは俺が大金払って手に入れた手甲だからな。奪えるもんなら奪ってみやがれ!」

「ふっ…その言葉忘れるんじゃないよ!」

隆に向かって椅子を蹴り飛ばすラーヴァナ。
隆は飛んできた椅子を壊すがラーヴァナは視界から消えていた。

「『顎砕き(クラッシュアウト)』!」

ドゥン!と何かが爆発した音が轟き、隆の顎に炎を纏った拳大の石が当たった。
硬いものでアッパーを食らったような衝撃を受けた隆は一瞬だけ宙に浮き、仰向けに倒れる。

「今ので歯が砕けただろ?はやく降参しないとその割とイケてる面が台無しになるよ」

「誰が…渡すかよ…ペッ!この世界に銃があるとは思ってなかったがそんなもんで俺がビビると思ってんのか!」

地と二本の歯を吐き出す隆。
しかし隆の歯は一本も欠けておらず、吐いた歯はすぐに灰となって消えた。

「次は俺の番だな!おらぁ!」

隆は近くにあった宝箱を蹴り飛ばし、中身が飛び出した所を狙う。

「アタシの真似事か!そんなのに引っかかるわけがないだろう!」

横に避けたラーヴァナ。
だが隆は読んでいた。

「ふん!」

隆の放ったボディブローが直撃した。

「クフッ…素人かと思ったけどそうじゃないな!ならアタシは全力でお前を殺す!『湯煙殺人空間(フォグスタジアム)!』」

ラーヴァナが大きく息を吸うと大きな角が赤く輝き、息を吐くと角から湯気が吹き出し、部屋が湯気に包まれた。

「おいおい…マジかよ…」

「蒸し暑いだろ?何も見えず、何も分からないままアタシに殺されな!」

一瞬だけ視界に映っては斬られ、殴られ、撃たれる隆。

「ほらほら!反撃すらしないのかい!!?」

「くっ…うらぁ!」

「当たらないね!」

殴られた瞬間に振り払おうとするが、その時にはもう別の方向から刺されていた。

「このまま…相手が疲れるのを待つのもあるが…そんなかっこ悪いことできねえよな…グハアッ!」

腹に三本目の剣が刺さる。

「何を独り言言ってるのか知らないけどこれで止めだよ!『赤き角の砲撃(フレイムホーク)!』

真っ直ぐに突進を仕掛けてくるラーヴァナ。
薄れゆく意識の中、隆は腰を落とし、拳を握りしめて最後の一撃を繰り出した。

「やるじゃ…ないか…」

大きな音を立ててラーヴァナが倒れると湯気は晴れ、同時に隆もその場に倒れた。
そして、それを見ていたかのように空間を裂いて黒いフードをかぶった少女が部屋に降り立った。

「暑い部屋じゃのぅ…さて、せっかく自力で倒したのだから剣ぐらい抜いてやるとするか」

隆の体に刺さった剣を引き抜き、適当に捨てる少女。

「で、アメジスト。どうじゃった?こやつは」

少女が問いかけるとラーヴァナは頭をさすりながら起き上がった。

「負けたアタシに聞きます?…まぁ動きはラーヴァナに比べれば素人そのものでしたけど成長の余地はあるんじゃないですかね。じゃあこのアメジストは帰らせていただきますよー」

「おい待て。それだとこやつがおぬしを倒したという証拠がなくなるだろう。せめてこやつの仲間が来て自慢くらいさせてやれ」

「嫌ですよ。下手したらそのまま連れて行かれて殺されちゃうじゃないですか。そんなわけで先に帰らせていただきますよー」

そう言ってアメジストは霧になって消えていった。

「まったく…何の為に妾がここまで手を回したと思っておるんじゃ…」

そう言って少女もどこかに消えていった。

隆が目を覚ますとラーヴァナは消えており、部屋には大量の財宝があるだけだった。

「あいつ…何処に行きやがったんだ?リトス達は来てねえし、何故か腹に刺さってた剣は抜けてるし…何が何だか分からねえな…とりあえず金目のもの奪っておくか!」

部屋に落ちている宝石やネックレスなどを袋に詰められるだけ詰め、ドアの前に倒れていた男をどかして隆は部屋を出た。
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