盲目エルフは異世界勇者と旅をする

茜色蒲公英

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リボフラの城下町

王の企み

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ラーヴァナとの戦いを終えて部屋の扉を開けた隆を待っていたのは投げられた一本のカットラスだった。
油断していた隆によけられるはずがなく、カットラスは見事に命中する。

「命中!どう?私の投擲も少しはマシになったでしょ?」

(うんうん)

「ちっともなってねえんだけど!?何!?お前はそんなに俺を殺したいのか!?」

「あれ、ラーヴァナが出てきたと思ったら隆だ」

「俺で悪かったな!それにラーヴァナなら倒した、どっか行っちまったけどな」

「倒したのにどこかに行った?でもそれっぽい人には会ってないね」

(あってない)

「マジでか。それにしてもよくお前らここまで来れたな」

「あー、それは…」

ここに来るまでの説明をするリトス。
ラーヴァナのいた部屋に残っている男以外の盗賊が死んだことが分かって隆は複雑な気分になる。

「あいつらの中には人形を持ったやつもいたよな」

(ころした)

「そうか…線香でもありゃあげてえな」

「ん?何か言った?」

「いや、なんでもねえ。ラーヴァナのいる部屋に宝がめっちゃあるから持ち帰ろうぜ。以来のキャンセル料結構高かったからな」

リトス達はラーヴァナの部屋に入り、中にいた男の養分をラルアが吸い取ってから物色を始めた。

「杖とか色々あったけど俺はもう武器あるから要らねえんだよな」

「鎧は着てないようだけど要らないの?」

「要らねえな。俺の体と服は再生するけど鎧は再生しないだろうし、買い換えるのも面倒だからな。それに動きづらくなっちまうだろ?」

ドヤ顔で答える隆。

「君さぁ、相手が前後から刺してきたらとか考えないの?」

「その時は歯を食いしばればいいだろ、後ろはともかく前なら手甲でガードできる」

「そう、それならいいんだけどね」

とりあえず宝石を手にしていくリトス。
その横ではラルアが何かを噛み砕いていた。

(おいしい)

「うぉい!何食ってんだお前!?」

(いし)

隆が近寄ってみると杖の先端に付いていた真珠を食べていた。その他にも足から蔦を伸ばして様々なものを吸収していた。

「おいおい、こんなもん食って大丈夫なのか?」

「こんなもんって何を食べてるの?」

「宝石とか色のついた真珠とかだ。ヤバいもんじゃねえのか?」

「まぁ魔力の塊みたいなものだし危険といえば危険だけど、さっきまで結構魔力使ってたしお腹が減ってるんじゃないかな。杖とか剣を見れば分かると思うけどどこかに宝玉がついてるでしょ?あれが付いてる剣や杖を持っていれば魔力を持たない人でも魔法が使えるようになるの。宝玉の中の魔力がなくなると使えなくなっちゃうのがデメリットだけど頻繁に使わなければ大きさによって違うけど、大きいものだと一年以上は持つらしいよ」

「へぇ」と声を震わせて言いつついくつもの宝玉を吸収し、食べているラルアを見る隆。
気づけば部屋を埋め尽くしていた武器や鎧は十分の一程度まで減っていた。

アジトを後にした一行はリボフラに戻り、持ち帰った武器などを売って集会場へと向かった。

「よっ、キャンセルしに来たぜ」

「そうですか。ではこちらの紙にサインと千フルです」

隆が受付嬢に声をかけると何故か嬉しそうな表情をしていた。

「やけに嬉しそうだな、何かあったのか?」

「いえ、何もないですよ」

隆がお金を払うと受付嬢はそれを握り締めて着ている服のポケットの中に素早く入れた。

「…おい」

「なんでしょう?新しい依頼を受けますか?」

「違う。お前今俺が渡したキャンセル料をポケットの中に入れたよな」

「はい、それがどうかしましたか?」

「それって集会場の金じゃねえのか?」

「え?仰られていることがいまいち分からないのですが…」

「おうそうか、ならもっとわかりやすく言ってやるよ。その金はお前の金じゃねえだろって言ってんだよ」

「いえ、この集会所は私のお金で建ててそこに依頼が集まっているのでキャンセル料は私のものですよ。依頼達成料は依頼者から私に、私から依頼達成者へとなっていますし。キャンセル料が有料でなお高いのは悪ふざけで依頼を受けた方が放棄しないためです。ちなみに放棄しますと国から追われる身になりますよ」

「お、おう…すまねえ…」

顔を赤くして集会場をあとにしようとする隆。
しかし、受付嬢が「待ってください」と止めた。

「これあげます。誰もいないところで開けてくださいね」

受付嬢が渡したのは開封した形跡のある青色の便箋。
裏綿には「重要事項」と書いてある。

「これ開けてあんだけど…」

「私が一度目を通したものですので。この町の住民全員に行き渡っています。そして私がこれをあなたに渡す。とまぁあなたなら察してくれたと思いますがこれをあなたに渡したことが王に伝われば私は殺されるので取り扱いには注意してくださいね」

にこりと笑い、「それでは」と言ってカウンターを離れる受付嬢。
隆は貰った便箋をリトスのバッグの中に入れて宿屋で読むことにした。

その夜。便箋の中身を確かめるため隆の部屋に集まった。
青色の便箋から一枚の紙を出し、隆が読み上げた。

「王からの伝令。エルフを連れた男の殺害に失敗。三日後に男の暗殺を謀る。それまでは客として接せよ」

「へぇ、嫌われてるね。失敗したってことはどこからか私達を見てたかあの盗賊達の中に紛れ込んでたか。どちらにしろここから離れなきゃ君は、というか多分私達も大変な目に遭うわけなんだけど、どうする?」

「そりゃあここから離れてえ…けどあの受付嬢はなんで忠告したりこんなもん渡してくれたりするんだ?もしかして俺に惚れた?」

「君に惚れた?あっはっは!君に惚れる要素あるの!?」

床に転がって笑うリトス。
相当可笑しかったようで腹も抱えていた。

(笑いすぎだよ、リトス)

「うるせえな!ラルアも笑いすぎだって言ってるぞ!…え?」

(確かに隆は弱いしバカだし雑魚だし口悪いしで良い所一つもないけど)

「今すぐにでも殴りかかりてえけどちょっと待てラルア。お前そんなに流暢だったか?」

「え?この声ラルアなの?やった、ラルアの声が聞こえるようになった」

(うん、これで次の戦闘の時もっとうまくいくね)

「よし!じゃあ今日は寝よう!」

「待て待て待て!まだどうするか決めてないだろ!俺は危険を教えてくれたあの受付嬢を救いたいからここから逃げるわけには行かない。しかもヤバいことに王は盗賊と組んでいた!つまり、王を殺して新しく俺が王になる!」

拳を握り締め演説よろしく決意をする隆。
しかしふたりの反応は「呆れた」と冷たく、部屋に帰っていってしまった。
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