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トロルの森
蠍のくノ一
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一つ一つの木が高くそびえ立ち、ときどき人間の背丈ほどある木の実を取りに巨大な怪鳥が風を起こして降りてくる。
隆たちはあらゆるものが巨大になっているトロルの森を歩いていた。
しかし、広い地図を持っているが森の中の地図は持っていないので迷っていた。
「ここってどこなんだろうな。さっきから景色が全く変わってねえ気がするぞ」
(そうかな?ちゃんと前に進んでる気がするけど)
「そりゃあひたすらまっすぐ歩いてるからな。だが一時間近く歩いてトロルが一人も見つからねえし、なんか誰かが作った結界にでも捕まったんじゃねえかって思っちまうんだよな」
「へえ、君結界なんて言葉知ってるんだね。お姉さん感心しちゃったよ」
希少な文献でしか載っていない用語をさらっと口にする隆に素直に驚くリトス。
「そりゃあ俺のいた世界じゃ有名だからな。札で作ったり呪文唱えたりするとできるんだろ?」
「違うよ。そうだよね、君が知ってるわけないよね」
「あん?だったらどうやってやるんだ?」
「教えたところでできるわけじゃないし、できたらそれはそれでまずいことになるから言わないよ」
「はぁ?じゃあお前はできるのか?」
「無理無理。やり方が分かっても私の魔力じゃ足りなすぎるし、一人二人でできるものじゃないから」
指で宙に何かを描き、「元々魔法って言うのはね」と説明を始め、数十分に渡ってこの世界の魔法について解説を始めた。
リトスが説明したのはこの世界の魔法の発動条件は二つあること。
一つは詠唱式魔法。
「ファイア」「サンダー」等唱えれば任意の場所から魔法を放つことができる。
唱えた瞬間に魔法が発動する事や魔法陣を必要としないことが強み。
しかし魔力の消費が書式魔法の二倍。更に魔法が強力になるほど消費は激しくなり、書式魔法より威力や効果は半減する。
もう一つは書式魔法。
魔法陣を完成させ、杖で魔法陣を突くことで魔法を放つことが可能。
例外として時限式、罠式が存在する。
どんな魔法でも低級魔法ほどの魔力で済み、強力になっても詠唱魔法の「ファイア」程度の魔力しか使わないことが強み。
しかし魔法が強力であるほど魔法陣は複雑になり、使用者は魔法陣の記憶、もしくは魔法について書かれた文献や本を常備していなければならない。
更に魔法陣を書く速度が求められ、上級者でないと「ファイア」の魔法陣を書くだけで数十秒かかる。
そのため高い魔力を消費してでも詠唱魔法を扱う魔法使いが多く、その割合は8割を占めている。
「―というわけ。私も詠唱式魔法使ってる八割の方の一人だけど魔力はそこまでないから期待はしないでね」
「なるほど…それじゃあ結界の魔法を覚えていても詠唱魔法じゃとんでもねえ魔力量を使うってことだな」
「そういうこと。しかもギリギリ足りたとしてもその結界は脆くなっちゃうの。強い結界を張るには魔法使い十人分の魔力、書式魔法だったら何時間もかかるような魔法陣を書かなくちゃいけないの。しかも少しでも間違えたら発動しないからね」
スマホを使ってメモをする隆に次々と説明していくリトス。
その横ではラルアが何かを言いたそうに俯いていた。
「ごめんねラルア、退屈だったでしょ?」
(いや、そんなことはないんだけど…これ)
ラルアは足から生えた枝を使って土から顔を含んだ全身を簀巻きにされた何かを取り出した。
中からは言っていることは分からないがくぐもった声が聞こえる。
(土の中で何か動いてると思ったから引き上げてみたんだ。呼吸はできるようにしてあるけど、このまま殺す?)
締め付ける力が強くなり、中にいる何かが暴れる。
「いや、もしかしたらトロルかもしれねえから―」
「絶対ないでしょ。トロルは土の中になんて潜らないし、そこまで大きくないでしょ?」
「まぁ大きさで言うとお前と同じくらいなんじゃねえか?ざっと百四十センチくらいで…てことはこいつガキか。ラルア、顔だけ出してやれ」
(分かった)
ラルアが顔の部分のみを解くと、紫色の瞳を持ち、幼くも端正な顔立ちをした少女の顔が出てきた。
そして「死ねぇ!」と叫ぶと目から紫色の液体を出し、話しかけようとして口を開けていた隆史の口の中に入った。
「うおっ!ぺっ!…てめえ、俺の口に何を入れやがった?」
「ふん!冥土の土産に教えるでござる!貴様の口の中に入れたのはどんな動物でも数秒で死ぬ毒でござる!いまお主はやせ我慢して痛みに耐えているのでござろうがもうすぐしぬのでござる!こうして話している間にもどんどん体は拙者の毒に侵されて腐食されて……なんで生きているのでござるか?」
分かりやすいほどに震える少女。
「長い解説どうも。俺は不死身と毒無効なんでな…さて、何か言い残すことはあるか?お前の親に伝えられねえだろうけど数秒くらいなら心に残してやるぞ」
「嫌でござる!死にたくないでござる!そうでござる!ここに来た理由を教えるでござる!」
「へぇ、教えて」
「おぬしら城下町にいたでござろう?おぬしらが町から出て行った時に拙者に暗殺指令が出たのでござるよ。拙者は自分で言うのもあれでござるが暗殺のプロフェッショナルでござる」
「はーん。で、いくらで雇われたんだ?」
「確か三千フルでござるが…それがどうかしたのでござるか?」
「一万フルやるから雇われろ」
「拙者の名はライナ!特技は暗殺趣味は毒殺好きなものはお金でござる!これからよろしくでござる!」
「やたら変な子が仲間になったなぁ…」
「歳は五百歳でござる!」
「ダウト。殺していいよ」
「嘘でござる!今年で十四でござるから締め付ける力を強くしないでほしいでござるぅぅ!」
リトスに睨まれつつも簀巻き状態から解放されたライナ。
動きやすく鎧を身につけておらず、サソリの尻尾が足首まで垂れていた。
「すげえ、くノ一みてえだな」
「みたいではないでござる。くノ一そのものでござる」
「ダウト」
「嘘じゃないでござる!だからその蔦を伸ばし始めているアルラウネを止めるでござる!」
こうして目立つような紺色の服装をしたサソリのくノ一、「ライナ」が仲間に加わった。
隆たちはあらゆるものが巨大になっているトロルの森を歩いていた。
しかし、広い地図を持っているが森の中の地図は持っていないので迷っていた。
「ここってどこなんだろうな。さっきから景色が全く変わってねえ気がするぞ」
(そうかな?ちゃんと前に進んでる気がするけど)
「そりゃあひたすらまっすぐ歩いてるからな。だが一時間近く歩いてトロルが一人も見つからねえし、なんか誰かが作った結界にでも捕まったんじゃねえかって思っちまうんだよな」
「へえ、君結界なんて言葉知ってるんだね。お姉さん感心しちゃったよ」
希少な文献でしか載っていない用語をさらっと口にする隆に素直に驚くリトス。
「そりゃあ俺のいた世界じゃ有名だからな。札で作ったり呪文唱えたりするとできるんだろ?」
「違うよ。そうだよね、君が知ってるわけないよね」
「あん?だったらどうやってやるんだ?」
「教えたところでできるわけじゃないし、できたらそれはそれでまずいことになるから言わないよ」
「はぁ?じゃあお前はできるのか?」
「無理無理。やり方が分かっても私の魔力じゃ足りなすぎるし、一人二人でできるものじゃないから」
指で宙に何かを描き、「元々魔法って言うのはね」と説明を始め、数十分に渡ってこの世界の魔法について解説を始めた。
リトスが説明したのはこの世界の魔法の発動条件は二つあること。
一つは詠唱式魔法。
「ファイア」「サンダー」等唱えれば任意の場所から魔法を放つことができる。
唱えた瞬間に魔法が発動する事や魔法陣を必要としないことが強み。
しかし魔力の消費が書式魔法の二倍。更に魔法が強力になるほど消費は激しくなり、書式魔法より威力や効果は半減する。
もう一つは書式魔法。
魔法陣を完成させ、杖で魔法陣を突くことで魔法を放つことが可能。
例外として時限式、罠式が存在する。
どんな魔法でも低級魔法ほどの魔力で済み、強力になっても詠唱魔法の「ファイア」程度の魔力しか使わないことが強み。
しかし魔法が強力であるほど魔法陣は複雑になり、使用者は魔法陣の記憶、もしくは魔法について書かれた文献や本を常備していなければならない。
更に魔法陣を書く速度が求められ、上級者でないと「ファイア」の魔法陣を書くだけで数十秒かかる。
そのため高い魔力を消費してでも詠唱魔法を扱う魔法使いが多く、その割合は8割を占めている。
「―というわけ。私も詠唱式魔法使ってる八割の方の一人だけど魔力はそこまでないから期待はしないでね」
「なるほど…それじゃあ結界の魔法を覚えていても詠唱魔法じゃとんでもねえ魔力量を使うってことだな」
「そういうこと。しかもギリギリ足りたとしてもその結界は脆くなっちゃうの。強い結界を張るには魔法使い十人分の魔力、書式魔法だったら何時間もかかるような魔法陣を書かなくちゃいけないの。しかも少しでも間違えたら発動しないからね」
スマホを使ってメモをする隆に次々と説明していくリトス。
その横ではラルアが何かを言いたそうに俯いていた。
「ごめんねラルア、退屈だったでしょ?」
(いや、そんなことはないんだけど…これ)
ラルアは足から生えた枝を使って土から顔を含んだ全身を簀巻きにされた何かを取り出した。
中からは言っていることは分からないがくぐもった声が聞こえる。
(土の中で何か動いてると思ったから引き上げてみたんだ。呼吸はできるようにしてあるけど、このまま殺す?)
締め付ける力が強くなり、中にいる何かが暴れる。
「いや、もしかしたらトロルかもしれねえから―」
「絶対ないでしょ。トロルは土の中になんて潜らないし、そこまで大きくないでしょ?」
「まぁ大きさで言うとお前と同じくらいなんじゃねえか?ざっと百四十センチくらいで…てことはこいつガキか。ラルア、顔だけ出してやれ」
(分かった)
ラルアが顔の部分のみを解くと、紫色の瞳を持ち、幼くも端正な顔立ちをした少女の顔が出てきた。
そして「死ねぇ!」と叫ぶと目から紫色の液体を出し、話しかけようとして口を開けていた隆史の口の中に入った。
「うおっ!ぺっ!…てめえ、俺の口に何を入れやがった?」
「ふん!冥土の土産に教えるでござる!貴様の口の中に入れたのはどんな動物でも数秒で死ぬ毒でござる!いまお主はやせ我慢して痛みに耐えているのでござろうがもうすぐしぬのでござる!こうして話している間にもどんどん体は拙者の毒に侵されて腐食されて……なんで生きているのでござるか?」
分かりやすいほどに震える少女。
「長い解説どうも。俺は不死身と毒無効なんでな…さて、何か言い残すことはあるか?お前の親に伝えられねえだろうけど数秒くらいなら心に残してやるぞ」
「嫌でござる!死にたくないでござる!そうでござる!ここに来た理由を教えるでござる!」
「へぇ、教えて」
「おぬしら城下町にいたでござろう?おぬしらが町から出て行った時に拙者に暗殺指令が出たのでござるよ。拙者は自分で言うのもあれでござるが暗殺のプロフェッショナルでござる」
「はーん。で、いくらで雇われたんだ?」
「確か三千フルでござるが…それがどうかしたのでござるか?」
「一万フルやるから雇われろ」
「拙者の名はライナ!特技は暗殺趣味は毒殺好きなものはお金でござる!これからよろしくでござる!」
「やたら変な子が仲間になったなぁ…」
「歳は五百歳でござる!」
「ダウト。殺していいよ」
「嘘でござる!今年で十四でござるから締め付ける力を強くしないでほしいでござるぅぅ!」
リトスに睨まれつつも簀巻き状態から解放されたライナ。
動きやすく鎧を身につけておらず、サソリの尻尾が足首まで垂れていた。
「すげえ、くノ一みてえだな」
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「ダウト」
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