盲目エルフは異世界勇者と旅をする

茜色蒲公英

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ナイアシンの街

もしかして  女難

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ラルアからもうすぐで森を抜けられ、街まではもうすぐと伝えられて歓喜する一同。
それから移動すること二日。ようやく一同は森を抜けることができた。
目の前には草原と大きな街が見えていた

「やっと…やっと森を抜けたな!」

「広かったでござるな…もうあのサイズのものとは出会いたくないでござる」

「何言ってんの、これから行く街もトロルがほとんどで普通のサイズの人間なんてほとんどいないよ」

「本当でござるか…」

このまま歩く木で移動しているとあまりに目立つため一同は木から降り、歩いて街を目指すことにした。
途中、旅人を狙った盗賊が現れたがあっけなくラルアの養分となり、無事に街に着くことができた。
全開に空いた門をくぐるとほとんどの建物が木製だった村とは違い鉄や石を使っており、他種族の家の素材を最小しているところが見られるが建物のサイズはトロルのサイズだった。

「さて、私は図書館に行きたいから誰か付き合って欲しいんだけど…誰か付き合ってくれる?」

「俺はパスだ。ラノベは好きだけど難しい本は読みたくねえ」

「拙者はオーケーでござるよ。その前に隆殿の上着をずっと着ているからそろそろ着替えたいのでござるが…」

(じゃあ服を貰ったあと図書館に行こうか。どこかにライナが着れる服があればいいんだけど…)

こうして夕方五時になったら時計台に集合すると約束してリトス達は服屋を探しに、隆は暇つぶしができる場所を探して別れた。

そして隆達が分かれているのを見ている影が一つあった。
三人とは別に行動をすることにした隆はヒューマン用の道を通り、ぶらぶらと散策をしていた。
しかし、村で一度裏道に入って痛い目を見たので人通りの多い道ばかりを選んでいる。

「すれ違うやつらはアスモディアンが多いな。そういやリトスはトロルはアスモディアンと仲がいいって言ってたっけな」

首がない騎士やゴブリンなど隆から見ればダンジョンゲーム最大のピンチというくらいにアスモディアンは多く、見かける店の店員も大半がアスモディアン。
売っているものもトカゲの丸焼きや何かの動物の骨でできたネックレスなど不気味なものばかり。
その中でも異彩を放っていたのが「占い」と書かれた看板が吊り下げられた大きめのテント。
元々いた世界にあったなら「適当に言われた挙句変なものを買わされる」とスルーする隆だがここは異世界。魔法のある世界なら本物の可能性は大いにあるのではないか。
そう考えた隆は中の見えないテントの中へと入っていった。
中に入ると外から見たときとは違い、意外にも狭い。
天井から吊らされた薄暗い電気のような明るさがいかにも怪しい占い師を照らしていた。
シーツが敷かれた机の上には大きな水晶と重ねられたカードが置いてあり、いつ客が来ても大丈夫と言わんばかりに準備ができている。

「来ましたね…」

布で顔が見えないが声で女性だと分かる。

「占い師特有の当てずっぽうか…期待できそうにないから帰るか」

「ふふ、斎藤隆さん。そう言わずにそちらの席に掛けてください」

話してもいないのに隆の名前を当てる占い師。
これを聞いて隆は本物だと確信し、無言で椅子に座った。

「ここに来る人というのは何かに縋りつきたい人、未来のことがとにかく心配な人がほとんどですが興味本心でここに来られる方はあなたが初めてです」

「そういうもんなのか」

「そういうものなのです。さて、あなたが占いたものの要望は特に無いようですのでこちらで勝手に占ってもよろしいですか?」

「ああ、でも難しいことは分からねえから簡単に説明してくれ」

「はい。では…」

占い師が指を振ると水晶玉がその場に浮いて回転を始めた。
水晶玉はやがて青からピンクになり、そのまま占い師は説明を始める。

「今から映すものは未来に起きる悪いことです。今は近い未来に起きるピンクに留めていますがここから少し遠い未来になることに三回色が変わるので見ていてください」

説明が終わると水晶玉はピンクから赤へ、赤から緑へ、緑から黒へと変わっていった。

「ピンク、赤、緑、黒か。黒っていうのは死を意味するんだろうが俺は不死身だしな」

「ではそれは順を追って説明しましょう。まずピンクですがこれは女難ですね」

「色通りだな」

「見たところ女性を二人…いや三人連れていますね。それもかなり美人さんです」

「そうか?いつも一緒にいると分からん」

「あはは…それでですが近いうちに隆さんを巡って軽い争いが起きます。死人が出るわけではないので心配はいりませんが再開した時に『二人共可愛くなったな』と声をかけると機嫌が良くなりますよ」

「俺を巡って…ラブコメか!?」

「…言葉の意味は理解しかねますが恐らくそうかと思います。そして赤ですが…」


一方、リトス達はライナの着る服を探すため「ヒューマンスクエア」という隆が歩いていたところとは別の、ヒューマン専用の通りを歩いていた。

(リトスはバカだよね)

「急にどうしたの…ストレートすぎて心がめり込むほど痛いよ」

(だってあそこで一声あれば隆はついて来たよね)

「まぁ…多分ついて来てたけどそこまで強制することじゃないし…ラルア達が着いてきたから問題ないでしょ?」

首をかしげるリトスにラルアは大きなため息をつく。

「え?本当にどうしたの?」

(それでも隆のこと好きなの?)

「ハァーッ!?」

「とんでもなく変な声が出てるでござるよ!?」

「あのねぇ!前にも言ったけど私はあいつのことを好きなんかじゃないから!どこをどうみてもあんなやつを好きになる理由なんてないでしょうが!」

「そうでござるか?拙者は割といい人だと思うのでござるが。ほら、隆殿って顔も整っているし優しい所あるでござ…なんで二人して拙者を初対面の時みたく睨むのでござるか?」

「別にぃ!あんなやつをライナが好きになろうが付き合おうが結婚しようが子供産もうが幸せになろうが私はどうもこうも思いませんけどぉ!?」

「話飛びすぎではござらんか…というか何故顔を真っ赤にして泣いているのでござるか!?」

「うっさい!痴女ぉ!」

「だーれが痴女でござるか!そんなことだから隆殿に嫌われるのでござるよ!」

「えっ…私…隆に嫌われてたの…?」

(ちょっとライナ、適当なことは…)

「適当なんかじゃないでござる。聞いたところ隆殿は何回かリトス殿に頭やら体やらをその武器で刺されたとのことでござるよ。いくら隆殿が不死身だとはいえ仲間に何度も殺されるようなことを受けていれば嫌わない方がおかしいでござる」

「う…」

(リ…リトス?)

「うわぁぁぁぁぁん!!!」

杖を放り投げてあらぬ方向へ走り出したリトス。
ラルアが蔦を出して止めようとしたがその必要もなく十メートルも走らないうちに転んでしまい、最年長とは思えないほど泣きじゃくり始めてしまった。
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