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ナイアシンの街
資料探し
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多くの人が歩いている大通りで駄々をこねる子供のように泣き始めてしまったリトス。
思い返してみれば出会った時から隆に対して冷たい態度や普通の人間だったら何回も死んでいるようなことを何度もしているので嫌われているのも考えてみれば当たり前のことだった。
資料探しに着いて来なかったのが何よりの証拠でもし自分に恋愛感情を持っていたら多少は面倒なことでも着いてくる。
リトスに彼氏がいたことはないのであくまでもリトスの思い込み。
しかし一緒にいてリトスが隆のことを好きだと知っていたラルアからしてみても「なにやってんだこいつ」としかも得ないような行動ばかりとっていたのは確かだった。
(リトス、そこに蹲ってると他の人の邪魔になるから他のところで話そう。隆もきっとリトスのこと嫌ったりなんかしてない)
「絶対嫌われてる…だって頭に何回もカトラス刺してるし冷たくしてるし…」
(でも隆はいつも杖を真っ先に持ってきてくれるだろう?本当に嫌っていたらそんなことすると思うかい?)
「う、ううん」
(だろう?ライナにはあとでお仕置きしておくからとりあえず立とうか。はい杖)
こくりと頷き杖を受け取って立ち上がるリトス。
泣かせたライナはというとラルアに締め上げれれることを察したのか見かけた服屋に逃げ込み、消耗品であるクナイと引き換えに新しい忍装束に着替え姿を消した。
(ライナは…あとで探せばいいか。リトス、ここの資料館というかそういうものが保存されている場所っていうのは…)
「少なくともこの通りにはないでしょうね。この街に住んでるのはトロルだけじゃなくアスモディアンやヒューマンもいるわけだしアスモディアン見つかっちゃまずいような資料だからね」
(そうなんだ。それはそうとリトスは一体何を知りたいんだい?具体的なことはあまり聞いてなかったから言った時に探しやすいように聞きたいんだけど)
「話してなかったっけ?私が知りたいのはアスモディアンの殺し方についてだよ」
(アスモディアンの殺し方って…ああそうか、魔王の城に行くためには死の街を通らなきゃいけなかったんだったね)
「そう。しかもアスモディアンって他の種族と違って心臓がある個体と無い個体がいるでしょ?だから一個体ずつ弱点とかを調べないといけないの。どれだけの種類がいるか分からないし面倒だけど知ってると知らないじゃ大きく違うからね」
(なるほど…リトスは真面目なんだね)
「えへへ…褒めても何も出ないよ?」
資料のある建物を探すためトロルが歩いている通りに出て通行人に話を聞いていく二人。
しかしそれらしき情報は得られず、話しているトロルの表情も村にいたトロルとは違い迷惑そうな、よそ者を見るような表情をしていた。
「うーん。おかしいね」
(…もしかしたら、もしかしたらだけど。エルフのリトスがいるからなんじゃないかな。誤解の無いように言っておくとトロルってアスモディアンと仲がいいだけであってエルフとは良くないんじゃないかって)
「まぁ私らは他の種族と関わりをほとんど持ってなかったからね」
(でもその割にリトスは色々なこと知ってるよね)
「あー、それは…尋問とか騙して聞いたりとか…わ、私が全部やったわけじゃないからね!あくまでみんなが聞いたことを一つの資料にまとめてそれで知識を得ただけだから!」
(それでも一部はやってるんだね…どうしようか、これ以上聞いても情報得られなさそうだしそれらしき建物を見ていくのが一番だと思うけど)
「それらしき建物か…ならいっそこの街のトップを襲って…」
(そういう考え方だから他の種族と仲良くなれないんじゃないかな…)
それらしき建物はすぐに見つかった。
この街の建物は店であり家であるものがほとんどだったが、一軒だけ営業していない建物があり、聞き耳をたてると建物の中から年を食ったような老人の声が聞こえた。
「声からして二人ってところかな。相手は老人だし多少嘘言ってもバレないか」
(本当に、なるべく穏便に頼むよ。指名手配なんてされたら魔王以上に僕達が恨まれる)
「…それもいいかもね」
(えっ?よく聞こえなかったんだけど)
「なんでもないよ。おじゃまするねー」
重い扉を二人がかりで開けて中に入り、玄関に誰もいないことを確認するとリビングへと向かった。
そこには老人のトロルが二人、ソファに座って向かいで話していた。
「こんにちはー。聞きたいことがあってきたよ」
リトスがフランクな挨拶をしたからなのか、リトスがエルフだからなのかは定かではないが明らかに苦い顔をするトロル。
「滅多に森を出ないエルフがこの街に何の用だ?」
「死の街を抜けて魔王の城に向かうためにアスモディアンの殺し方を知りたいの。この家ならそれらしき資料の一冊や二冊あると思ってね」
するともう片方の老人のエルフが「そんなものはないよ」と即答をする。
「ダウト。通行人に聞いてみたらここにあると気のいいトロルは言ってたよ」
余裕ぶって笑うリトス。もちろんこれは嘘でありかまをかけている。
「そんな分かりやすい嘘が通じると思うか?もう少し話術を磨いてから出直すのだな」
「へぇ、嘘だって言い切れるんだ。私の隣には念話や相手の心を読めるアルラウネのラルアがいるんだけどなー」
リトスが視線を送るとラルアは相手が発言する前に(馬鹿な、そんなアルラウネがいるわけがないだろう)と念話してみせる。
「ね?このまま私がエルフだからって資料渡さずに街を滅ぼされるよりさっさと見せて家から出て行ったほうが良くない?」
「くっ…でもねエルフのお嬢さん。あなた見たところ目が見えないんでしょ。そんな状態でどうやってみるの?」
(僕が読むさ。奴隷だった頃に文字はたくさん読んできたからね)
「…分かった。応接室に資料を置いておくから自由に見てくれ。」
「ちょっとお父さん!」
「いいんだ。そのアルラウネが奴隷だったと聞いて資料を見せる気になった。君達はチアミンから来たのだろう?だとすれば楽な道のりではなかったはずだ」
そう言って二人のトロルは席を外し、リトスとラルアは応接室で待っていると三十を超えるトロルサイズの資料の数々が運ばれ床に下ろされ、「見終わったら言ってくれ」とだけ言ってリビングへと戻っていった。
「さて!資料一冊ずつ読んでいかなきゃね!」
(読むのは僕なんだけどね…)
思い返してみれば出会った時から隆に対して冷たい態度や普通の人間だったら何回も死んでいるようなことを何度もしているので嫌われているのも考えてみれば当たり前のことだった。
資料探しに着いて来なかったのが何よりの証拠でもし自分に恋愛感情を持っていたら多少は面倒なことでも着いてくる。
リトスに彼氏がいたことはないのであくまでもリトスの思い込み。
しかし一緒にいてリトスが隆のことを好きだと知っていたラルアからしてみても「なにやってんだこいつ」としかも得ないような行動ばかりとっていたのは確かだった。
(リトス、そこに蹲ってると他の人の邪魔になるから他のところで話そう。隆もきっとリトスのこと嫌ったりなんかしてない)
「絶対嫌われてる…だって頭に何回もカトラス刺してるし冷たくしてるし…」
(でも隆はいつも杖を真っ先に持ってきてくれるだろう?本当に嫌っていたらそんなことすると思うかい?)
「う、ううん」
(だろう?ライナにはあとでお仕置きしておくからとりあえず立とうか。はい杖)
こくりと頷き杖を受け取って立ち上がるリトス。
泣かせたライナはというとラルアに締め上げれれることを察したのか見かけた服屋に逃げ込み、消耗品であるクナイと引き換えに新しい忍装束に着替え姿を消した。
(ライナは…あとで探せばいいか。リトス、ここの資料館というかそういうものが保存されている場所っていうのは…)
「少なくともこの通りにはないでしょうね。この街に住んでるのはトロルだけじゃなくアスモディアンやヒューマンもいるわけだしアスモディアン見つかっちゃまずいような資料だからね」
(そうなんだ。それはそうとリトスは一体何を知りたいんだい?具体的なことはあまり聞いてなかったから言った時に探しやすいように聞きたいんだけど)
「話してなかったっけ?私が知りたいのはアスモディアンの殺し方についてだよ」
(アスモディアンの殺し方って…ああそうか、魔王の城に行くためには死の街を通らなきゃいけなかったんだったね)
「そう。しかもアスモディアンって他の種族と違って心臓がある個体と無い個体がいるでしょ?だから一個体ずつ弱点とかを調べないといけないの。どれだけの種類がいるか分からないし面倒だけど知ってると知らないじゃ大きく違うからね」
(なるほど…リトスは真面目なんだね)
「えへへ…褒めても何も出ないよ?」
資料のある建物を探すためトロルが歩いている通りに出て通行人に話を聞いていく二人。
しかしそれらしき情報は得られず、話しているトロルの表情も村にいたトロルとは違い迷惑そうな、よそ者を見るような表情をしていた。
「うーん。おかしいね」
(…もしかしたら、もしかしたらだけど。エルフのリトスがいるからなんじゃないかな。誤解の無いように言っておくとトロルってアスモディアンと仲がいいだけであってエルフとは良くないんじゃないかって)
「まぁ私らは他の種族と関わりをほとんど持ってなかったからね」
(でもその割にリトスは色々なこと知ってるよね)
「あー、それは…尋問とか騙して聞いたりとか…わ、私が全部やったわけじゃないからね!あくまでみんなが聞いたことを一つの資料にまとめてそれで知識を得ただけだから!」
(それでも一部はやってるんだね…どうしようか、これ以上聞いても情報得られなさそうだしそれらしき建物を見ていくのが一番だと思うけど)
「それらしき建物か…ならいっそこの街のトップを襲って…」
(そういう考え方だから他の種族と仲良くなれないんじゃないかな…)
それらしき建物はすぐに見つかった。
この街の建物は店であり家であるものがほとんどだったが、一軒だけ営業していない建物があり、聞き耳をたてると建物の中から年を食ったような老人の声が聞こえた。
「声からして二人ってところかな。相手は老人だし多少嘘言ってもバレないか」
(本当に、なるべく穏便に頼むよ。指名手配なんてされたら魔王以上に僕達が恨まれる)
「…それもいいかもね」
(えっ?よく聞こえなかったんだけど)
「なんでもないよ。おじゃまするねー」
重い扉を二人がかりで開けて中に入り、玄関に誰もいないことを確認するとリビングへと向かった。
そこには老人のトロルが二人、ソファに座って向かいで話していた。
「こんにちはー。聞きたいことがあってきたよ」
リトスがフランクな挨拶をしたからなのか、リトスがエルフだからなのかは定かではないが明らかに苦い顔をするトロル。
「滅多に森を出ないエルフがこの街に何の用だ?」
「死の街を抜けて魔王の城に向かうためにアスモディアンの殺し方を知りたいの。この家ならそれらしき資料の一冊や二冊あると思ってね」
するともう片方の老人のエルフが「そんなものはないよ」と即答をする。
「ダウト。通行人に聞いてみたらここにあると気のいいトロルは言ってたよ」
余裕ぶって笑うリトス。もちろんこれは嘘でありかまをかけている。
「そんな分かりやすい嘘が通じると思うか?もう少し話術を磨いてから出直すのだな」
「へぇ、嘘だって言い切れるんだ。私の隣には念話や相手の心を読めるアルラウネのラルアがいるんだけどなー」
リトスが視線を送るとラルアは相手が発言する前に(馬鹿な、そんなアルラウネがいるわけがないだろう)と念話してみせる。
「ね?このまま私がエルフだからって資料渡さずに街を滅ぼされるよりさっさと見せて家から出て行ったほうが良くない?」
「くっ…でもねエルフのお嬢さん。あなた見たところ目が見えないんでしょ。そんな状態でどうやってみるの?」
(僕が読むさ。奴隷だった頃に文字はたくさん読んできたからね)
「…分かった。応接室に資料を置いておくから自由に見てくれ。」
「ちょっとお父さん!」
「いいんだ。そのアルラウネが奴隷だったと聞いて資料を見せる気になった。君達はチアミンから来たのだろう?だとすれば楽な道のりではなかったはずだ」
そう言って二人のトロルは席を外し、リトスとラルアは応接室で待っていると三十を超えるトロルサイズの資料の数々が運ばれ床に下ろされ、「見終わったら言ってくれ」とだけ言ってリビングへと戻っていった。
「さて!資料一冊ずつ読んでいかなきゃね!」
(読むのは僕なんだけどね…)
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