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ナイアシンの街
大きな家、大きな資料
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アスモディアンに関する資料を一冊ずつ時間を掛けて読んでいくリトスとラルア。
村では知ることのできなかったアスモディアンの歴史や死の街のしくみ、更にはトロルとの関わりの深さをどんどん頭に叩き込んでいった。
(ねえリトス、こんなにたくさんの資料の内容、本当に覚えられるのかい?)
「覚える。知らなかった分を知らないと私の気がすまないし、何より『分からない』って言葉が嫌いだから知れることは全部知っておきたいの」
(へ、へぇ…)
気になるところは読み返してもらい、時々休憩しながら読み上げていくラルア。
そんな中ラルアが気になる一文を見つけ、読み上げが止まった。
「ん?読めない所でもあった?」
(いや、そうじゃないんだ。前にリトスは『この世界にはヒューマン、エルフ、トロル、アスモディアンの四種族いる』と言っていただろう。でも森で君が寝ていた時にリビという少女に出会ってその子はアンデッドといっていたんだ)
「アンデッドってアスモディアンの中のゾンビの一種でしょ」
(いや、彼女は五大種族の一つだと言っていた。君の知識が不足しているとは言わないが…)
「世が変わったってことか…まぁ私の知識も数年前のもので最新ってわけじゃないから細かった種族がそうでなくてもおかしくないけど…そっか、アンデッドが五大種族の一つにね…で、その資料にはそう書いてあるの?」
(いや、僕が気になったのはアンデッドの従順という文なんだ。リビはシショーという人物に従っていたんだ。そうなると存在する全てのアンデッドは主人が居るのかなと思ったんだ)
「うーん、操れる人が少ないしそもそも会ったことがないから私は何とも言えない。ネクアンデッドって死体に別の魂を入れ込むことでできる『非生物』なんだよ。だから死体が急に蘇ってアンデッドになることは無い。しかも死体の条件がかなり厳しくて死体が骨しかない状態だったり腐敗して魂入れても体がすぐに崩れる状態だったら使い物にならないんだよね」
(へぇ)と感心しつつ資料を読んでみると同じことが書いてあり、更には「入る魂はその体を持っていた者ではなくその場に偶然居合わせた魂が入る」とも書いてあった。
(こんな完成しても望むものが出来上がるとは限らないものをどうして…)
「そんなもの作る人に聞かなきゃ分からないよ。娘が死んだから、自分を守る道具として…そんなどうでもいい項目はいいから他のを読んで」
(うん…そうするよ)
様々な資料を読んでいくがネクロマンサーの文が頭から離れない。
理由はラルア自身にも分からなかったが心のどこかで変な気持ちを抱いていた。
そうしてすべての資料の半分ほど読み終えると日が暮れ始め、暗さで文もほとんど読めなくなっていた。
(もうすぐ夜になるし今日はここまでにして集合場所に行こうか)
「そうだね。読み終えた分はまとめて置いておじいさんに言っておかないと…」
こうして家を出た二人は集合場所に向かい隆と服を新調したライナと合流した。
「二人共~時間過ぎてるでござっ!?」
突如簀巻きにされるライナ。
「お、おい何してんだラルア!」
(よくしれっと合流できたねライナ…数時間前やったことを忘れたとは言わせないよ…?)
「ちょっ!なんのことでござるか!?拙者ラルア殿の言っている意味がわか…」
(もう一度森を彷徨ってこい!)
ラルアは地面から切り株を出してライナを打ち上げると太く曲がった木を切り株から生み出してライナを遠く彼方へと打ち飛ばした。
(はぁ…はぁ…森じゃないからちょっと力出しただけで疲れるな…)
「ラルア…せめて事情を話してくれよ。ライナと何があったんだ?」
(説明する必要なんかないよ。リトスもそう思うよね)
ラルアがリトスに視線を向けるとリトスは不思議そうな顔をしていた。
「今飛ばしたのってライナじゃないよね?」
「は?今声聞いてただろ?」
「聞いてたよ。でも明らかに声の高さが違ったよね。口調は同じだったけど」
リトスの言葉に混乱する二人。
そこに気まずそうにライナが現れた。
「あの…遅れて申し訳ないでござる…」
「ライナ!?お、お前ラルアに飛ばされたはずじゃ…」
「ラルア殿にでござるか?いや、拙者それが怖くてどうにかして許しを乞うと思って色々と情報を得てきたのでござるが…」
(…どういうことなんだい?)
「それはこっちが聞きたいでござるよ!まるで拙者の偽物が現れたみたいな雰囲気でござる!」
「実際その通りなんだよ。ほら、ライナから隆の匂いがついてるものがするもの付けてるでしょ」
隆とラルアはじっくりライナを見ると腰に隆の服が縛られていた。
「服を新調したのはいいでござるが隆殿の服は返さなければいけないと思って身に着けていたのでござる」
「そりゃ助かる。俺の一張羅だしな。それでライナに化けたやつっていうのは一体どんなやつなんだ?」
「さぁね。私達に恨みのある人なんかじゃないの?」
リトスがそう言うと視線はリトスに集中する。
「…なんか私に視線が向けられてる気がするんだけど」
「気のせいじゃねぇか?…あ、お前ら可愛くなったな」
「「!!??」」
(?)
隆の一言に顔を真っ赤にするリトスとライナ。
「ど、どどどどうしたのいきなり!?」
「頭でも打ったのでござるか!?」
(僕らの内に僕は入っているのかな…いや何も変わってないからそれはないか)
「ひでぇ言いようだなお前ら!俺だって男なんだからちっとくらいそういうこと言うんだよ」
溶かしがこんなことを言ったのはもちろん占い師にそう言えと言われたからであって実際は何も思っていない。
「そ…そうなんだ…ふ、ふーん。隆も少しは私のこと意識してくれるんだね…」
指で髪をくるくると弄るリトス。
その様子を見て隆はさすがに感づいたのか「さっさと宿を探すぞ」と後ろを向いて歩き出す。
その頃、トロルの森ではライナの偽物である一人の女性が上半身土に埋まっていた。
そしてそれに近づいて来るのは魔王。
「生きておるかー?」
「ぎ、ギリギリ生きてます…でもできれば抜いて欲しいなーなんて…」
魔王が片手で足を持つと軽々とライナの偽物を引き抜いた。
そのまま地面に下ろすとライナの偽物はアメジストへと姿を変えた。
「助かりましたー。いや変身がバレるとは思ってもみませんでしたよ。あいつらが別れてからライナってやつを観察してたんですけどねー」
「明らかにタイミングが悪かったじゃろ。最初に本物が来て吹っ飛ばされたあとにおぬしが行けば騙せたはずじゃぞ」
「ああ~なるほど…じゃあ明日はあの勇者に変身して…」
「それはやめておいたほうがいいかもしれんな。おぬし女の声真似はできても男は無理じゃろ?」
「そうでしたっけ?んっ!あー…俺!隆!」
出した声は普段聞いている人から聞けばすぐに分かるような高い声だった。
「こりゃ無理そうじゃな…というかわざわざあいつらに変身しなくても住人に返信すればいいじゃろうが。例えばじゃが隆の行っていた占い師とか…」
「それです!ナイスアイディアです魔王様!早速占い師殺してきますね!」
張り切ったアメジストは魔王が注意する暇もなく霧へと姿を変えて消えてしまった。
「あの馬鹿…隆が二日連続で同じ占い師を尋ねるわけがないじゃろうが…」
村では知ることのできなかったアスモディアンの歴史や死の街のしくみ、更にはトロルとの関わりの深さをどんどん頭に叩き込んでいった。
(ねえリトス、こんなにたくさんの資料の内容、本当に覚えられるのかい?)
「覚える。知らなかった分を知らないと私の気がすまないし、何より『分からない』って言葉が嫌いだから知れることは全部知っておきたいの」
(へ、へぇ…)
気になるところは読み返してもらい、時々休憩しながら読み上げていくラルア。
そんな中ラルアが気になる一文を見つけ、読み上げが止まった。
「ん?読めない所でもあった?」
(いや、そうじゃないんだ。前にリトスは『この世界にはヒューマン、エルフ、トロル、アスモディアンの四種族いる』と言っていただろう。でも森で君が寝ていた時にリビという少女に出会ってその子はアンデッドといっていたんだ)
「アンデッドってアスモディアンの中のゾンビの一種でしょ」
(いや、彼女は五大種族の一つだと言っていた。君の知識が不足しているとは言わないが…)
「世が変わったってことか…まぁ私の知識も数年前のもので最新ってわけじゃないから細かった種族がそうでなくてもおかしくないけど…そっか、アンデッドが五大種族の一つにね…で、その資料にはそう書いてあるの?」
(いや、僕が気になったのはアンデッドの従順という文なんだ。リビはシショーという人物に従っていたんだ。そうなると存在する全てのアンデッドは主人が居るのかなと思ったんだ)
「うーん、操れる人が少ないしそもそも会ったことがないから私は何とも言えない。ネクアンデッドって死体に別の魂を入れ込むことでできる『非生物』なんだよ。だから死体が急に蘇ってアンデッドになることは無い。しかも死体の条件がかなり厳しくて死体が骨しかない状態だったり腐敗して魂入れても体がすぐに崩れる状態だったら使い物にならないんだよね」
(へぇ)と感心しつつ資料を読んでみると同じことが書いてあり、更には「入る魂はその体を持っていた者ではなくその場に偶然居合わせた魂が入る」とも書いてあった。
(こんな完成しても望むものが出来上がるとは限らないものをどうして…)
「そんなもの作る人に聞かなきゃ分からないよ。娘が死んだから、自分を守る道具として…そんなどうでもいい項目はいいから他のを読んで」
(うん…そうするよ)
様々な資料を読んでいくがネクロマンサーの文が頭から離れない。
理由はラルア自身にも分からなかったが心のどこかで変な気持ちを抱いていた。
そうしてすべての資料の半分ほど読み終えると日が暮れ始め、暗さで文もほとんど読めなくなっていた。
(もうすぐ夜になるし今日はここまでにして集合場所に行こうか)
「そうだね。読み終えた分はまとめて置いておじいさんに言っておかないと…」
こうして家を出た二人は集合場所に向かい隆と服を新調したライナと合流した。
「二人共~時間過ぎてるでござっ!?」
突如簀巻きにされるライナ。
「お、おい何してんだラルア!」
(よくしれっと合流できたねライナ…数時間前やったことを忘れたとは言わせないよ…?)
「ちょっ!なんのことでござるか!?拙者ラルア殿の言っている意味がわか…」
(もう一度森を彷徨ってこい!)
ラルアは地面から切り株を出してライナを打ち上げると太く曲がった木を切り株から生み出してライナを遠く彼方へと打ち飛ばした。
(はぁ…はぁ…森じゃないからちょっと力出しただけで疲れるな…)
「ラルア…せめて事情を話してくれよ。ライナと何があったんだ?」
(説明する必要なんかないよ。リトスもそう思うよね)
ラルアがリトスに視線を向けるとリトスは不思議そうな顔をしていた。
「今飛ばしたのってライナじゃないよね?」
「は?今声聞いてただろ?」
「聞いてたよ。でも明らかに声の高さが違ったよね。口調は同じだったけど」
リトスの言葉に混乱する二人。
そこに気まずそうにライナが現れた。
「あの…遅れて申し訳ないでござる…」
「ライナ!?お、お前ラルアに飛ばされたはずじゃ…」
「ラルア殿にでござるか?いや、拙者それが怖くてどうにかして許しを乞うと思って色々と情報を得てきたのでござるが…」
(…どういうことなんだい?)
「それはこっちが聞きたいでござるよ!まるで拙者の偽物が現れたみたいな雰囲気でござる!」
「実際その通りなんだよ。ほら、ライナから隆の匂いがついてるものがするもの付けてるでしょ」
隆とラルアはじっくりライナを見ると腰に隆の服が縛られていた。
「服を新調したのはいいでござるが隆殿の服は返さなければいけないと思って身に着けていたのでござる」
「そりゃ助かる。俺の一張羅だしな。それでライナに化けたやつっていうのは一体どんなやつなんだ?」
「さぁね。私達に恨みのある人なんかじゃないの?」
リトスがそう言うと視線はリトスに集中する。
「…なんか私に視線が向けられてる気がするんだけど」
「気のせいじゃねぇか?…あ、お前ら可愛くなったな」
「「!!??」」
(?)
隆の一言に顔を真っ赤にするリトスとライナ。
「ど、どどどどうしたのいきなり!?」
「頭でも打ったのでござるか!?」
(僕らの内に僕は入っているのかな…いや何も変わってないからそれはないか)
「ひでぇ言いようだなお前ら!俺だって男なんだからちっとくらいそういうこと言うんだよ」
溶かしがこんなことを言ったのはもちろん占い師にそう言えと言われたからであって実際は何も思っていない。
「そ…そうなんだ…ふ、ふーん。隆も少しは私のこと意識してくれるんだね…」
指で髪をくるくると弄るリトス。
その様子を見て隆はさすがに感づいたのか「さっさと宿を探すぞ」と後ろを向いて歩き出す。
その頃、トロルの森ではライナの偽物である一人の女性が上半身土に埋まっていた。
そしてそれに近づいて来るのは魔王。
「生きておるかー?」
「ぎ、ギリギリ生きてます…でもできれば抜いて欲しいなーなんて…」
魔王が片手で足を持つと軽々とライナの偽物を引き抜いた。
そのまま地面に下ろすとライナの偽物はアメジストへと姿を変えた。
「助かりましたー。いや変身がバレるとは思ってもみませんでしたよ。あいつらが別れてからライナってやつを観察してたんですけどねー」
「明らかにタイミングが悪かったじゃろ。最初に本物が来て吹っ飛ばされたあとにおぬしが行けば騙せたはずじゃぞ」
「ああ~なるほど…じゃあ明日はあの勇者に変身して…」
「それはやめておいたほうがいいかもしれんな。おぬし女の声真似はできても男は無理じゃろ?」
「そうでしたっけ?んっ!あー…俺!隆!」
出した声は普段聞いている人から聞けばすぐに分かるような高い声だった。
「こりゃ無理そうじゃな…というかわざわざあいつらに変身しなくても住人に返信すればいいじゃろうが。例えばじゃが隆の行っていた占い師とか…」
「それです!ナイスアイディアです魔王様!早速占い師殺してきますね!」
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