54 / 73
世界樹の子 前編
限界のその先
しおりを挟む
アランの放った黒い槍は魔王の体を貫いたあとすぐに消え、貫かれた魔王の体には穴が空いた。
しかし血は出ずその代わりに黒い液体が噴き出した。
「やるの…ああー…姿を保てんな」
流れた黒い液体は沸騰したかのように音を立てて魔王の体へと戻っていく。
骨の砕く音、折れる音を響かせながら幼い少女の姿から「化け物」と呼ばれる大きな姿へと形を変えていく。
「あまりにも目立つからこの姿では出歩けなくてなぁ…リトスよ、妾が見えなくてよかったな」
「本当にね…見たら卒倒しちゃってたかも」
魔王の腕は増えて虫のように這い、体から垂れる黒く粘着性のある液体が地面に落ちるとそこから煙が出ている。
下半身は蛇の尻尾を思わせるがその先端には鉄球のようなものがついている。
背中には鋭い棘が生えあからさまに毒であろう煙が噴出していた。
「おいおい…変身ってレベルじゃねえぞ…」
魔王の攻撃を警戒する一行。
それを見て笑みを浮かべる魔王は煙の噴出力を上げて辺りを毒々しい煙で覆い始める。
「あの煙に何かあるぞ!」
「そんなこと見ればわかるでござるよ!ここは早急に片を付けるでござる!」
クナイを投げつけたライナだが魔王の体から出ている液体に刺さり一瞬で朽ちてしまった。
「そういう感じかよ…アラン!また俺らが時間を稼ぐから頼んだぞ!」
しかしアランからの返事はない。
何かあったのかと隆がアランのほうを向こうとすると風を切る音がしたすぐ後に民家に叩きつけられた。
「敵から眼を逸らしてはいけないと教わらなかったのか?」
身動きができないまま地面に引きずられて森の方へと投げ飛ばされた隆。
ラルアは動きを止めようと何度も枝や木を生やしていたが黒い液体と煙によって腐ってしまっていた。
そしてラルア自身も煙によって意識が遠のきほぼ何も見えなくなっている。
(また…役に立てなかったな…)
意識が落ちる直前、魔王が目に前に映るとラルアは静かに目を閉じた。
「どうする…どうすればいいのでござるか…」
近くから聞こえた激しくたたかれた音に魔王が誰かを殺したことを確信したライナ。
どうにでもなれと音のするほうに走ると潰されて死んでいるラルア。
驚く暇もなく振り下ろされた尻尾を短刀で受け止めようとするがあっけなく折れる。
「打つ手なし…でござるな」
「そこぉっ!」
ライナを叩き潰そうとした尻尾にリトスの武器が刺さると軌道がずれた。
「何かっこつけて死のうとしてんの!」
「最初棒立ちしてたリトス殿に言われたくないでござるなぁ…!」
ライナは震える手でクナイを取り出して尻尾に刺さった武器を頼りに投げる。
「これで姿は見えるでござるな…ごふっ」
口から出てきたのは黒い液体。
歯を食いしばって折れた短刀を握り魔王の方へと走っていく。
「リトス殿の方にはいかせないでござる!」
「遅い」
魔王がリトスを掴もうとすると魔王の顔面に力強いこぶしが入りよろけさせた。
「遅れたな。戻ってきたぞ」
「今度は間に合ったね」
リトスの周りには口から吐いたであろう黒い液体。
「まだやれるのか?」
「この状況で休めないでしょ」
お互い近くに寄ってカウンターを狙う二人。
魔王の尻尾に刺さったクナイを引きずる音がするとリトスはしゃがみ、薙ぎ払われた尻尾についた鉄球を隆が拳で砕いた。
「ライナ!生きてるか!?」
「勝手に殺さないでほしいでござるよ!」
鉄球が砕け怯んでいる魔王の尻尾を掴んだ隆は背中を地面に叩きつける。
「今だライナ!」
「この勝機逃さないでござる!『稲妻』!」
腹にライナの尻尾が深く刺さり、続いて隆も腹に乗り連打を決めた後右ストレートを打ち込む。
「だっらぁぁぁぁぁぁ!」
「ぐっ…ぶほぉ!」
吐かれた液体を回避した二人。
起き上がった魔王の後ろに周った隆がもう一度尻尾を掴もうとしたが後ろに跳ばれ腕で腹を潰されてしまった。
「ここまでやるとはな…だがもう限界だろう?」
「限界なんてとっくに超えてるでござるよ!」
振り上げた魔王の腕を避けて短刀を刺しこみ、隆が踏み潰されている腕にクナイを両手で流すように切る。
「ちっ!」
別の腕で振り払おうとするも頬に掠り、ライナのやりたいことを察したリトスが武器をライナに投げ渡した。
「腕上がったでござるな」
「初めのころなんて知らないでしょ」
受け取ったカットラスで魔王の腕を断ち隆をリトスの方へと蹴り飛ばしたライナ。
その勢いのまま腕を避けては腕を切り落とし、残り二本となったところで隆の意識と肉体が戻った。
「悪い!気を抜いた」
「そんなこといいから早く行ってあげて」
リトスに膝枕をされていたことを気にすることなく魔王へと走っていく隆。
隆の顔に液体をかけないように我慢していたリトスは一気に吐き出し、満足したかのように笑顔で力尽きた。
しかし血は出ずその代わりに黒い液体が噴き出した。
「やるの…ああー…姿を保てんな」
流れた黒い液体は沸騰したかのように音を立てて魔王の体へと戻っていく。
骨の砕く音、折れる音を響かせながら幼い少女の姿から「化け物」と呼ばれる大きな姿へと形を変えていく。
「あまりにも目立つからこの姿では出歩けなくてなぁ…リトスよ、妾が見えなくてよかったな」
「本当にね…見たら卒倒しちゃってたかも」
魔王の腕は増えて虫のように這い、体から垂れる黒く粘着性のある液体が地面に落ちるとそこから煙が出ている。
下半身は蛇の尻尾を思わせるがその先端には鉄球のようなものがついている。
背中には鋭い棘が生えあからさまに毒であろう煙が噴出していた。
「おいおい…変身ってレベルじゃねえぞ…」
魔王の攻撃を警戒する一行。
それを見て笑みを浮かべる魔王は煙の噴出力を上げて辺りを毒々しい煙で覆い始める。
「あの煙に何かあるぞ!」
「そんなこと見ればわかるでござるよ!ここは早急に片を付けるでござる!」
クナイを投げつけたライナだが魔王の体から出ている液体に刺さり一瞬で朽ちてしまった。
「そういう感じかよ…アラン!また俺らが時間を稼ぐから頼んだぞ!」
しかしアランからの返事はない。
何かあったのかと隆がアランのほうを向こうとすると風を切る音がしたすぐ後に民家に叩きつけられた。
「敵から眼を逸らしてはいけないと教わらなかったのか?」
身動きができないまま地面に引きずられて森の方へと投げ飛ばされた隆。
ラルアは動きを止めようと何度も枝や木を生やしていたが黒い液体と煙によって腐ってしまっていた。
そしてラルア自身も煙によって意識が遠のきほぼ何も見えなくなっている。
(また…役に立てなかったな…)
意識が落ちる直前、魔王が目に前に映るとラルアは静かに目を閉じた。
「どうする…どうすればいいのでござるか…」
近くから聞こえた激しくたたかれた音に魔王が誰かを殺したことを確信したライナ。
どうにでもなれと音のするほうに走ると潰されて死んでいるラルア。
驚く暇もなく振り下ろされた尻尾を短刀で受け止めようとするがあっけなく折れる。
「打つ手なし…でござるな」
「そこぉっ!」
ライナを叩き潰そうとした尻尾にリトスの武器が刺さると軌道がずれた。
「何かっこつけて死のうとしてんの!」
「最初棒立ちしてたリトス殿に言われたくないでござるなぁ…!」
ライナは震える手でクナイを取り出して尻尾に刺さった武器を頼りに投げる。
「これで姿は見えるでござるな…ごふっ」
口から出てきたのは黒い液体。
歯を食いしばって折れた短刀を握り魔王の方へと走っていく。
「リトス殿の方にはいかせないでござる!」
「遅い」
魔王がリトスを掴もうとすると魔王の顔面に力強いこぶしが入りよろけさせた。
「遅れたな。戻ってきたぞ」
「今度は間に合ったね」
リトスの周りには口から吐いたであろう黒い液体。
「まだやれるのか?」
「この状況で休めないでしょ」
お互い近くに寄ってカウンターを狙う二人。
魔王の尻尾に刺さったクナイを引きずる音がするとリトスはしゃがみ、薙ぎ払われた尻尾についた鉄球を隆が拳で砕いた。
「ライナ!生きてるか!?」
「勝手に殺さないでほしいでござるよ!」
鉄球が砕け怯んでいる魔王の尻尾を掴んだ隆は背中を地面に叩きつける。
「今だライナ!」
「この勝機逃さないでござる!『稲妻』!」
腹にライナの尻尾が深く刺さり、続いて隆も腹に乗り連打を決めた後右ストレートを打ち込む。
「だっらぁぁぁぁぁぁ!」
「ぐっ…ぶほぉ!」
吐かれた液体を回避した二人。
起き上がった魔王の後ろに周った隆がもう一度尻尾を掴もうとしたが後ろに跳ばれ腕で腹を潰されてしまった。
「ここまでやるとはな…だがもう限界だろう?」
「限界なんてとっくに超えてるでござるよ!」
振り上げた魔王の腕を避けて短刀を刺しこみ、隆が踏み潰されている腕にクナイを両手で流すように切る。
「ちっ!」
別の腕で振り払おうとするも頬に掠り、ライナのやりたいことを察したリトスが武器をライナに投げ渡した。
「腕上がったでござるな」
「初めのころなんて知らないでしょ」
受け取ったカットラスで魔王の腕を断ち隆をリトスの方へと蹴り飛ばしたライナ。
その勢いのまま腕を避けては腕を切り落とし、残り二本となったところで隆の意識と肉体が戻った。
「悪い!気を抜いた」
「そんなこといいから早く行ってあげて」
リトスに膝枕をされていたことを気にすることなく魔王へと走っていく隆。
隆の顔に液体をかけないように我慢していたリトスは一気に吐き出し、満足したかのように笑顔で力尽きた。
0
あなたにおすすめの小説
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】
きたーの(旧名:せんせい)
ファンタジー
自身のクラスが勇者召喚として呼ばれたのに乗り遅れてお亡くなりになってしまった主人公。
その瞬間を偶然にも神が見ていたことでほぼ不老不死に近い能力を貰い異世界へ!
約2万年の時を、ぼっちで過ごしていたある日、いつも通り森を闊歩していると2人の子供(幼女)に遭遇し、そこから主人公の物語が始まって行く……。
―――
当作品は過去作品の改稿版です。情景描写等を厚くしております。
なお、投稿規約に基づき既存作品に関しては非公開としておりますためご理解のほどよろしくお願いいたします。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~
eggy
ファンタジー
もと魔狩人《まかりびと》ライナルトは大雪の中、乳飲み子を抱いて村に入った。
村では魔獣や獣に被害を受けることが多く、村人たちが生活と育児に協力する代わりとして、害獣狩りを依頼される。
ライナルトは村人たちの威力の低い攻撃魔法と協力して大剣を振るうことで、害獣狩りに挑む。
しかし年々増加、凶暴化してくる害獣に、低威力の魔法では対処しきれなくなってくる。
まだ赤ん坊の娘イェッタは何処からか降りてくる『知識』に従い、魔法の威力増加、複数合わせた使用法を工夫して、父親を援助しようと考えた。
幼い娘と父親が力を合わせて害獣や強敵に挑む、冒険ファンタジー。
「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。
《完結》当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!
犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。
そして夢をみた。
日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。
その顔を見て目が覚めた。
なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。
数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。
幼少期、最初はツラい状況が続きます。
作者都合のゆるふわご都合設定です。
日曜日以外、1日1話更新目指してます。
エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。
お楽しみ頂けたら幸いです。
***************
2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます!
100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!!
2024年9月9日 お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます!
200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!!
2025年1月6日 お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております!
ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします!
2025年3月17日 お気に入り登録400人達成 驚愕し若干焦っております!
こんなにも多くの方に呼んでいただけるとか、本当に感謝感謝でございます。こんなにも長くなった物語でも、ここまで見捨てずに居てくださる皆様、ありがとうございます!!
2025年6月10日 お気に入り登録500人達成 ひょえぇぇ?!
なんですと?!完結してからも登録してくださる方が?!ありがとうございます、ありがとうございます!!
こんなに多くの方にお読み頂けて幸せでございます。
どうしよう、欲が出て来た?
…ショートショートとか書いてみようかな?
2025年7月8日 お気に入り登録600人達成?! うそぉん?!
欲が…欲が…ック!……うん。減った…皆様ごめんなさい、欲は出しちゃいけないらしい…
2025年9月21日 お気に入り登録700人達成?!
どうしよう、どうしよう、何をどう感謝してお返ししたら良いのだろう…
処刑回避のために「空気」になったら、なぜか冷徹公爵(パパ)に溺愛されるまで。
チャビューヘ
ファンタジー
「掃除(処分)しろ」と私を捨てた冷徹な父。生き残るために「心を無」にして媚びを売ったら。
「……お前の声だけが、うるさくない」
心の声が聞こえるパパと、それを知らずに生存戦略を練る娘の、すれ違い溺愛物語!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる