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世界樹の子 前編
追われる忍び
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世界樹を目指してリトスの故郷である村を出た一行。
しかし森を出るとアランは「自分には別の目的ができました」と地図も持たず一行と別れてどこかに行ってしまった。
心強い魔法使いが抜けてしまったがこれから魔王の部下に襲われることもないだろうと気を取り直した。
「しっかし魔王のやつ死の街にぐらい送ってくれてもいいと思うんだけどな」
「あそこに移動されてもそこにいるアスモディアンのやつらに囲まれるだけでしょ?それに魔王であるティアマトが私たちを死の街に連れ込んだとなれば魔王としての威厳がなくなりかけないの」
百年前魔王はヒューマンと結んだ条約により魔王対人間の争いはほぼ魔王の負けという形で終わっている。
しかし互いに被害は甚大なものでありアスモディアンはヒューマンを嫌い、ヒューマンはアスモディアンを嫌っている。
アスモディアンの王であるティアマトがヒューマンである隆達を連れているとなれば「魔王に何かあったに違いない」と死の街にいるアスモディアンが思わないわけがない。
そのためどうしても一行の足で死の街に行き突破せざるを得ない。
(でもアスモディアンの住人も背後に世界樹があるのによく住めるものだね。わざわざ姿を潜めなくても強いんだし他の場所に行けばいいのに)
「全くでござるな。時が経つにつれて武器が進化してヒューマン側が強くなったとはいえアスモディアンはもとからの強さがあるのでござるし拙者のいた町も攻め込まれればすぐに落ちるでござるよ」
自虐をするように笑うライナ。
すると一行の前にティアマトが姿を現した。
「妾もそうなると思っているのじゃがな。何故そうせんと思う?リトス、おぬしは分かっているのじゃから答えるなよ」
答えようとしていたリトスは何かを言いかけると慌てて口を手でふさぐ。
エルフの村人を生き返らせて疲れていたのかティアマトは両手を上に伸ばして答えを待つと隆が閃いた。
「魔王がヒューマンとの争いを抑えるために指示してる。これだろ」
「不正解。おぬし条約の内容を聞いておらんのか?」
「聞いてないわけないだろ。魔王が征服しないってことを誓うためのものだ…」
「分かったようじゃな。今思うても穴だらけな文書だったが妾がヒューマンを支配することを禁じておっただけでほかのアスモディアンが人間を殺そうが食おうが妾には関係のない話。妾に忠誠を誓うものはおるが皆やることは基本自由で法律などあったものではない」
(法律がない…なら死の街は何故あるんだ?法律がなければ同族同士で殺しあうこともあるだろう)
「いいところに気が付いたの。これは妾にも分からぬことなのじゃが死の街の連中はアスモディアンには珍しく種族違いにも関わらず仲間意識があるんじゃ。ヒューマンとは違い長もおらんし店も一切ない。地図で見ての通り広くなく資源が取れるわけでもない。不思議じゃろ」
「なら普段は群れたりしないということでござるな。ヒューマンと違い助けを求めても仲間じゃないから助けない。誰かが町を自分のものにしても交流がないから土地が余るだけ…」
「大正解じゃ。政治になど興味のないものが栄えた町を運営できるわけがない。それを理解しておるからおのずと誰も町を襲わんのじゃ。魔力が欲しければ旅人を襲えばよい。肉が欲しければ絶滅しないほどに調節すればよい」
生まれたばかりのアスモディアンにはそう教えないと狙っている他のアスモディアンに殺される。
法律がなくとも暗黙の了解があった。
魔王が帰ろうとする直前、「死の街の連中は長い付き合いだから油断をしていると殺されかねんぞ」と言い残して去っていった。
「と…とりあえず武器の補充はしておきたいでござるなー…」
「そうだね。元々まっすぐ向かう予定じゃなかったしそうしよっか。ライナの武器ってどこで売ってるの?」
思い返してみると今まで行った町の武器屋にライナの持っていた武器が売っている場所は一つもなかった。
「あれは拙者のいた町で作っているのでござる。使いこなせる人がいないからと他の町には売り出せないのでござるよ」
仕方ないとため息をついてライナのいたリボフラの城下町へと向かう一行。
その道の途中、隆、リトス、ライナが寝ている間に下半身が蛇のアスモディアンに近づかれるが起きていたラルアにあっさりと吸収された。
その翌日、夕方になって城下町の入り口についた一行は門番の見えないところで隠れていた。
「それじゃ俺らはここにいるから早く行って来いよ」
「拙者だけで行くのでござるか…何かあった時助けてほしいのでござるが」
(僕たちは顔が知れてるしライナ一人なら追われても逃げられるよ)
「そうそう。バレる前に帰ってくればいいだけのことなんだし早く行ってきなよ」
「三人して冷たいでござるな…それじゃ行ってくるでござる」
忍者らしく静かに素早く走っていくライナ。
手のひらほどの石を投げて注意を背けさせるとその隙に門を飛び越えていった。
壁を下りたライナが真っ先に向かったのは自宅だった。
自分のせいで家族がひどい目にあっていないか窓から中を見てみると両親、飼っている犬は健在。
胸をなでおろし中には入らず武器屋へと向かった。
武器屋にいくと顔なじみのちょび髭を生やした主人がおりライナの方を見ると驚いた表情を見せた。
「おっちゃん久しぶり、景気はどう?」
「ライちゃんの使ってるもん以外は売れてるってそうじゃねぇだろ。ライちゃん、帰ってきて大丈夫なのか?」
「大丈夫じゃないよ。武器を買ったらすぐに出る」
品揃えが増えて迷っていると主人は「金なんていらねぇからどれでも好きなだけもってけ」と硬そうな革の袋を渡すと持っていた袋と合わせて惜しみなく詰めていく。
「親父さんたちには会ったのか?」
「会いたくなるから会ってない。それにこれ以上迷惑かけたくないし」
「はぁ…あいつらもヒューマン一人逃してこんな可愛い子を殺そうとするなんてえげつねぇな…ライちゃん今何してるんだ?」
「ひ・み・つ。お金は今度来たときまとめて払うよ」
「何やってるか知らんがちゃんと帰って来いよーって行っちまったな」
建物の屋根を伝って壁へ向かうライナを見送ると椅子に座ってタバコに火をつける主人。
ライナの行った方向をみて煙を吐くとその方向に向かってライナを追いかける何者かがいた。
しかし森を出るとアランは「自分には別の目的ができました」と地図も持たず一行と別れてどこかに行ってしまった。
心強い魔法使いが抜けてしまったがこれから魔王の部下に襲われることもないだろうと気を取り直した。
「しっかし魔王のやつ死の街にぐらい送ってくれてもいいと思うんだけどな」
「あそこに移動されてもそこにいるアスモディアンのやつらに囲まれるだけでしょ?それに魔王であるティアマトが私たちを死の街に連れ込んだとなれば魔王としての威厳がなくなりかけないの」
百年前魔王はヒューマンと結んだ条約により魔王対人間の争いはほぼ魔王の負けという形で終わっている。
しかし互いに被害は甚大なものでありアスモディアンはヒューマンを嫌い、ヒューマンはアスモディアンを嫌っている。
アスモディアンの王であるティアマトがヒューマンである隆達を連れているとなれば「魔王に何かあったに違いない」と死の街にいるアスモディアンが思わないわけがない。
そのためどうしても一行の足で死の街に行き突破せざるを得ない。
(でもアスモディアンの住人も背後に世界樹があるのによく住めるものだね。わざわざ姿を潜めなくても強いんだし他の場所に行けばいいのに)
「全くでござるな。時が経つにつれて武器が進化してヒューマン側が強くなったとはいえアスモディアンはもとからの強さがあるのでござるし拙者のいた町も攻め込まれればすぐに落ちるでござるよ」
自虐をするように笑うライナ。
すると一行の前にティアマトが姿を現した。
「妾もそうなると思っているのじゃがな。何故そうせんと思う?リトス、おぬしは分かっているのじゃから答えるなよ」
答えようとしていたリトスは何かを言いかけると慌てて口を手でふさぐ。
エルフの村人を生き返らせて疲れていたのかティアマトは両手を上に伸ばして答えを待つと隆が閃いた。
「魔王がヒューマンとの争いを抑えるために指示してる。これだろ」
「不正解。おぬし条約の内容を聞いておらんのか?」
「聞いてないわけないだろ。魔王が征服しないってことを誓うためのものだ…」
「分かったようじゃな。今思うても穴だらけな文書だったが妾がヒューマンを支配することを禁じておっただけでほかのアスモディアンが人間を殺そうが食おうが妾には関係のない話。妾に忠誠を誓うものはおるが皆やることは基本自由で法律などあったものではない」
(法律がない…なら死の街は何故あるんだ?法律がなければ同族同士で殺しあうこともあるだろう)
「いいところに気が付いたの。これは妾にも分からぬことなのじゃが死の街の連中はアスモディアンには珍しく種族違いにも関わらず仲間意識があるんじゃ。ヒューマンとは違い長もおらんし店も一切ない。地図で見ての通り広くなく資源が取れるわけでもない。不思議じゃろ」
「なら普段は群れたりしないということでござるな。ヒューマンと違い助けを求めても仲間じゃないから助けない。誰かが町を自分のものにしても交流がないから土地が余るだけ…」
「大正解じゃ。政治になど興味のないものが栄えた町を運営できるわけがない。それを理解しておるからおのずと誰も町を襲わんのじゃ。魔力が欲しければ旅人を襲えばよい。肉が欲しければ絶滅しないほどに調節すればよい」
生まれたばかりのアスモディアンにはそう教えないと狙っている他のアスモディアンに殺される。
法律がなくとも暗黙の了解があった。
魔王が帰ろうとする直前、「死の街の連中は長い付き合いだから油断をしていると殺されかねんぞ」と言い残して去っていった。
「と…とりあえず武器の補充はしておきたいでござるなー…」
「そうだね。元々まっすぐ向かう予定じゃなかったしそうしよっか。ライナの武器ってどこで売ってるの?」
思い返してみると今まで行った町の武器屋にライナの持っていた武器が売っている場所は一つもなかった。
「あれは拙者のいた町で作っているのでござる。使いこなせる人がいないからと他の町には売り出せないのでござるよ」
仕方ないとため息をついてライナのいたリボフラの城下町へと向かう一行。
その道の途中、隆、リトス、ライナが寝ている間に下半身が蛇のアスモディアンに近づかれるが起きていたラルアにあっさりと吸収された。
その翌日、夕方になって城下町の入り口についた一行は門番の見えないところで隠れていた。
「それじゃ俺らはここにいるから早く行って来いよ」
「拙者だけで行くのでござるか…何かあった時助けてほしいのでござるが」
(僕たちは顔が知れてるしライナ一人なら追われても逃げられるよ)
「そうそう。バレる前に帰ってくればいいだけのことなんだし早く行ってきなよ」
「三人して冷たいでござるな…それじゃ行ってくるでござる」
忍者らしく静かに素早く走っていくライナ。
手のひらほどの石を投げて注意を背けさせるとその隙に門を飛び越えていった。
壁を下りたライナが真っ先に向かったのは自宅だった。
自分のせいで家族がひどい目にあっていないか窓から中を見てみると両親、飼っている犬は健在。
胸をなでおろし中には入らず武器屋へと向かった。
武器屋にいくと顔なじみのちょび髭を生やした主人がおりライナの方を見ると驚いた表情を見せた。
「おっちゃん久しぶり、景気はどう?」
「ライちゃんの使ってるもん以外は売れてるってそうじゃねぇだろ。ライちゃん、帰ってきて大丈夫なのか?」
「大丈夫じゃないよ。武器を買ったらすぐに出る」
品揃えが増えて迷っていると主人は「金なんていらねぇからどれでも好きなだけもってけ」と硬そうな革の袋を渡すと持っていた袋と合わせて惜しみなく詰めていく。
「親父さんたちには会ったのか?」
「会いたくなるから会ってない。それにこれ以上迷惑かけたくないし」
「はぁ…あいつらもヒューマン一人逃してこんな可愛い子を殺そうとするなんてえげつねぇな…ライちゃん今何してるんだ?」
「ひ・み・つ。お金は今度来たときまとめて払うよ」
「何やってるか知らんがちゃんと帰って来いよーって行っちまったな」
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