あの日、北京の街角で4 大連デイズ

ゆまは なお

文字の大きさ
48 / 95

8-9

しおりを挟む
「辣椒《ラージャオ》入れ過ぎたかも」
「喉痛い?」

「少し。でもうまいからつい入れ過ぎるんだよな」

 テーブルに置いてあった唐辛子の調味料がやたらおいしかったので、ラベルを覚えておく。後でスーパーで買って帰ろう。

「次、どこ行く?」
「せっかくだから、ロシア街行ってみようかな」

「写真撮るにはいいかもな、ここから近いし」
「なんだかんだ言って、用事ないから行ったことないんだよね」

「俺もそうだよ」
 ロシア街までは腹ごなしに歩くことにした。

 ロシア街と言っても旧日本人街と同様で、現在ロシア人が住んでいるわけではなくロシア統治時代に造成された街だ。大連駅から10分も歩くと日本統治時代には日本橋と呼ばれていた勝利橋に着く。

「確かにちょっと東京の日本橋に似てるね」
 橋を渡りながら祐樹が言う。

 横から見ると二重橋の装飾の感じが似ていた。
 そこからもうロシア統治時代の建築群が見えた。

「ロシア統治っていつだっけ、1900年代だよね?」
「うーん、俺もはっきり覚えてないな。確か1900年直前にロシアが租借したと思う」

 1800年代の最後あたりにロシアが租借地となった覚えがある。その後、日露戦争を経て日本統治が始まったのは1905年のことだ。

「てことは、100年くらい前の建築物ってことだよね」
「だな。そう考えると歴史的な街なんだって感じがするよな」

「うん。開発区内に住んでると全然実感ないけどね」
「確かに。開発区内から出ないで生活してると中国感ってほとんどないしな」

 最新のビル群の中で仕事をして生活区のマンションに帰るという生活なので、こうして街に出て来なければ大連にいることを実感することはない。

 大通りをぶらぶら歩いて写真を数枚撮った。通りにはロシア商品の土産物屋やロシア料理店がいくつかあるが、売り子は中国人でざっと商品を見た限りロシア製というわけでもないようだ。

 中国人や韓国人の観光客がマトリョーシカと毛皮の帽子を買っている。それを横目に大通りを進んでいくが、建築物以外にはさほど見るものもない感じだった。

「すごい観光地っていうわけでもないんだね」
「そうだな。別に特に何かあるわけじゃないし」

「建物見るだけだもんね。そんなに人来ないか」
「でも再開発するって噂も出てるよ」

「そうなんだ。洋風建築を保存しておこうって感じ?」
「たぶんな」

 通りを進んだ一番奥にずいぶんと立派な建物がある。ロシアが建てたダーリニー市役所だ。

 その後、日本統治時代には初代の大連市役所として使用され、南満州鉄道本社となり、のちにヤマトホテルなどいくつかの施設に使われた。

 さらに大連市自然博物館として使用されていたがそれも今年移転して、現在は立入禁止となっている。

 結局、写真を数枚撮っただけで勝利橋に戻り、そこから路面電車に乗った。大連駅に戻りながら、孝弘は古い車両内を眺めた。これも日本が満州時代に敷設したものだ。

「でもやっぱり大連はきれいな街だよね」
「そうだな。全体的にきれいなんだよな」

 広州みたいにごちゃごちゃしていないし、北京ほどほこりっぽくないし、道幅も広くて街を走るバスの車両も新しい。

 もっとも二人が乗っている路面電車はまだ旧型車両も走っている。旧型のレトロ感がいい味を出していて、欧風建築の残る通りを走っているとちょっと時代がいつなのか分からなく感じだった。






 作者注:現在のロシア街は再開発されて観光地になっています。


しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

甘くてほろ苦い、恋は蜜やかに。

米粉あげぱん
BL
紅い唇は、物足りなさそうに震えるーー。 御堂 和樹(みどう かずき)と三神峯 景(みかみね けい)は、都内の大手有名製薬会社に勤める営業部の主任と薬事研究課で日々研究を重ねる薬剤師。 普段の業務ではなかなか関わらない二人だが、大阪での仕事で一緒になったことがきっかけで互いに惹かれ合う。 同じ会社の社員同士で、男同士。これ以上踏み込んではいけないと思いつつ、その感情は止まることを知らない。感情のままに噛みついた唇は、拒まれればすぐに離すつもりだった。 彼に会うたび、触れるたび、夢中になっていく。 ーー嬉しいことも辛いことも、一緒に背負っていきたい。 甘くほろ苦い、二人だけの秘密の恋。 ※表紙は漫画家の星埜いろ様に描いていただきました!!

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

【創作BL】溺愛攻め短編集

めめもっち
BL
基本名無し。多くがクール受け。各章独立した世界観です。単発投稿まとめ。

宵にまぎれて兎は回る

宇土為名
BL
高校3年の春、同級生の名取に告白した冬だったが名取にはあっさりと冗談だったことにされてしまう。それを否定することもなく卒業し手以来、冬は親友だった名取とは距離を置こうと一度も連絡を取らなかった。そして8年後、勤めている会社の取引先で転勤してきた名取と8年ぶりに再会を果たす。再会してすぐ名取は自身の結婚式に出席してくれと冬に頼んできた。はじめは断るつもりだった冬だが、名取の願いには弱く結局引き受けてしまう。そして式当日、幸せに溢れた雰囲気に疲れてしまった冬は式場の中庭で避難するように休憩した。いまだに思いを断ち切れていない自分の情けなさを反省していると、そこで別の式に出席している男と出会い…

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

死ぬほど嫌いな上司と付き合いました【完結】

三宅スズ
BL
社会人3年目の皆川涼介(みながわりょうすけ)25歳。 皆川涼介の上司、瀧本樹(たきもといつき)28歳。 涼介はとにかく樹のことが苦手だし、嫌いだし、話すのも嫌だし、絶対に自分とは釣り合わないと思っていたが‥‥ 上司×部下BL

【完結】それより俺は、もっとあなたとキスがしたい

佑々木(うさぎ)
BL
一ノ瀬(27)は、ビール会社である「YAMAGAMI」に勤めていた。 同僚との飲み会に出かけた夜、帰り道にバス停のベンチで寝ている美浜部長(32)を見つけてしまう。 いつも厳しく、高慢で鼻持ちならない美浜と距離を取っているため、一度は見捨てて帰ろうとしたのだが。さすがに寒空の下、見なかったことにして立ち去ることはできなかった。美浜を起こし、コーヒーでも飲ませて終わりにしようとした一ノ瀬に、美浜は思いも寄らないことを言い出して──。 サラリーマン同士のラブコメディです。 ◎BLの性的描写がありますので、苦手な方はご注意ください *   性的描写 *** 性行為の描写 大人だからこその焦れったい恋愛模様、是非ご覧ください。 年下敬語攻め、一人称「私」受けが好きな方にも、楽しんでいただけると幸いです。 表紙素材は abdulgalaxia様 よりお借りしています。

処理中です...