あの日、北京の街角で4 大連デイズ

ゆまは なお

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「こういうの、きれいかな?」

 祐樹はまるでキャンバスに絵を描いたみたいにクリームでデコレーションされたホールケーキが10種類以上並ぶウィンドウを写真に撮った。

 子供が大きな誕生日ケーキを買ってもらって笑顔いっぱいで箱を受け取っている。側に立つ両親がこれまた大きなプレゼントの箱を抱えていた。基本的に一人しか子供がいないので、誕生日などは豪華にお祝いするのだ。
 
「ちょっとコーヒー買っていい?」
 その向かいの中国系のファーストフードで孝弘は足を止めた。

「いいよ、味見?」
「ああ。最近こういう店のコーヒー飲んでないけど、どの程度になったんだろ?」

 カップに入って来たコーヒーは当然インスタントで、まあこんなものだろうという味だった。中国人全体がコーヒーにこだわりがないから、ほとんど進化していない。一口飲んで、孝弘はコーヒーを捨ててしまう。

「この辺で店出すの?」

「検討中。今エージェントに頼んで物件探ししてるとこ。大連駅周辺か星海広場かなってレオンは言ってたけど。でも開発区内もいいかもな」

 観光客や地元中国人向けなら市内中心部、駐在外国人が多いエリアというなら断然開発区となる。二つのエリアは20キロほど離れている。

「確かに開発区のほうが客はつきそうな気がするけど…。星海広場って新しくできたとこだっけ?」
 市内中心部からは離れているので、孝弘もまだ行ったことがない。


「そう、あとで行ってみる? 海沿いだから寒いかもだけど」
「うん。櫻花珈琲店出すかもなんでしょ、行ってみたい」

 来たついでに他の飲食店のコーヒーも買ってみたが、どれも孝弘は一口飲んで捨ててしまった。コーヒー文化が根付いてないから仕方ないが、もう少しどうにかならないかなと思う。

 もっとも、最近はホテルのカフェならおいしいコーヒーを飲める店も増えてきたが。

 巨大迷路のような勝利広場から地上に出て連鎖街に向かった。歩いてすぐの場所だが最新の商業ビルから来るとずいぶんと古びた商店街と言った雰囲気だ。

 日本統治時代の商店や住宅がまだ残っている一角で、写真を撮るならこちらのほうが独特の雰囲気がある。さっきいたのが最新の大連ならこっちは昭和初期の街並みと言った感じだろうか。

 急ぐわけではないので、のんびりと街歩きをしながら目についた路上の物売りや屋台で麺打ちする料理人や散髪屋などを撮って回った。

「そのうちここも再開発されちゃうかな?」
「だろうな。駅前の一等地だし、今は街中が総入れ替えって感じだもんな」

 あちこちで古い建物が壊され建築中のビルがあり、工事の音が響いている。大連は急速に発展中の街なのだ。

 新しい物と古い物が入り混じって、最新の家電から手回しのレトロな機械まで雑多に詰め込まれているおもちゃ箱のような状態だ。時々、孝弘はそれを不思議に思う。

 外を歩いているうちに冷えたので、昼食は海鮮の店に入った。海がすぐ側だから鮮度に問題はないが刺身を食べる習慣はないので、海鮮の店と言えば茹でた海老や海鮮鍋だ。

 けっこう体が冷えていたから温かい鍋はおいしかった。

「やっぱ冷えるね」
「でもビール飲んじゃうんだよなあ」

 大連黒獅ビールを頼む。
 中国はどこに行っても地ビールがあるから孝弘にはなかなか楽しい。

「鍋食べるから平気じゃない?」
「うん。それに昼のビールは最高」

「だよね。あ、おいしい」
 二人で一瓶だけにして、海鮮鍋を食べたらお腹の中からほこほこと温まった。

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