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しおりを挟む大した手間でもないので正しい歌い方や発音を教えてあげていたら、ここ数カ月でとても上達してきているのだ。
湯がいっぱいになって、祐樹は体の力を抜いて孝弘にもたれた。腰から前に回った腕が軽く抱きしめてくる。今日はワイン飲んだし、あまり長くつかるのはよくないかもしれない。
「へえ、アニメの曲も入ってる?」
「どうだろ? 入ってないかな」
「なくても朴さん、音無しでもうまいよね」
「そうだな。近いうちにまたカラオケ誘われるかもな」
「いいよ。朴さんのカラオケ楽しいから」
「そう言えば祐樹の課題曲って何だったっけ?」
祐樹や孝弘が中国語の歌を歌うと朴が教えてくれるのだ。面白半分で課題曲をお互い決めるということもこの前から始めた。
「えーと…「真夏の果実」。北京語でも「毎天愛《メイティエンアイ》ニー多一些《トゥイーシェ》」?」
「そう。広東語版は違った?」
「多分、タイトルは一緒だったと思う。歌詞は違うけど」
「あ、そうなんだ? 歌詞違う?」
「うん、おれもびっくりしたけど。日本語とも違うんだけど、これ、北京語歌詞けっこういいね」
「ああ、俺も北京語の好き。広東語版も張学友《ジャンシュエヨウ》?」
「うん。広東語版もジャッキー・チュンが歌ってた」
ジャッキー・チュンは香港人歌手で漢字では張学友と表記する。香港の四大天王と言われ、歌のうまさから歌神と称されたりもするほどの有名歌手だ。
南天群星《ナンティエンジュンシン》(サザンオールスターズ)は中国でも人気があり、北京語、広東語それぞれに翻訳されて大ヒットしている。
「じゃあ北京語版と両方歌ってるのか。広東語版聞いたことないな」
「こっちじゃ流れないでしょ」
「だな。広東語版歌える?」
「うーん…? 歌詞見ながらならなんとか…かなりうろ覚えだけど」
「今度歌ってもらおうかな」
「それより孝弘が北京語版歌ってよ」
などと話しているうちに、体がほかほか温まり風呂から上がった。それほどいちゃいちゃしなかったのは、これ以上入っていたらワインがどんどん回りそうだったからだ。
「やっぱオイル塗るようになってから、すべすべしてるよな」
「うん、そんな気がする」
ハンドクリームとベビーオイルを買って以来、風呂上りや手洗いのあとにまめに塗っていたら以前より肌がしっとりしてきた。
リビングのソファでオイルを塗ってくれているのだが、塗っているのかくすぐられているのだかわからない。さわさわと体を撫でる手が気持ちいい。
「でも孝弘の手もすべすべなんじゃない?」
「そうか?」
孝弘の大きな手で体のラインをたどられると、そこから熱を持っていく感じがする。まだ暑くて二人とも腰にバスタオルを巻いただけだ。風呂上りの火照った体の熱がまったく引かない。
肩から背中を撫で下ろされてぞくっと小さく電流が走る。
「くすぐったいって」
くすくす笑うと孝弘が肩甲骨に口づけて、今度はぺろりと舐めた。
「同じの使ってても、祐樹のほうがしっとりしてるよな」
「そう? でもこれ、ベタベタしなくて気持ちいいよ」
孝弘が勧めてくれたベビーオイルはさらさらしていて、塗ったあとにベタつかないのがよかった。交代して孝弘の背中に手を滑らせて、祐樹はくすりと笑う。
※youtubeで動画見れますので、気になる方は「真夏の果実、北京語or広東語」で検索してみてください!
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