あの日、北京の街角で4 大連デイズ

ゆまは なお

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 大連からまず雲南省の省都、昆明《クンミン》に飛行機で飛んだ。

 昆明は別名「春城《チュンチョン》」と呼ばれるほど温暖な気候の町で、真冬でも平均気温は10度くらい。標高1900mの高地にあるため夏の最高気温も27度ほどで過ごしやすい。

「やっぱりあったかいね」

 飛行機を降りて最初に感じたのはむわっとした空気だ。気温は23度。湿度がほどよく肌にまとわりつく感じ。からっと乾燥した大連の空気にいつの間にか慣れて、しっとりした空気を吸うのが久しぶりだった。

「真冬でも昼間は15度くらいあるっていうからな」
 中国は広いとつくづく思う。

 暖かいことは最初から分かっていたので長袖シャツ一枚に薄手のパーカーという軽装で来たが、それでも暑いくらいだ。早速パーカーを脱いでリュックにしまう。

 ゲストハウスに泊まると決めてから、孝弘と買いに行った大きなリュックだ。いわゆるバックパッカースタイルの旅行など初めてで旅行準備から戸惑った。

 そもそも旅行好きでもないので、出張以外で泊まりに行ったことがほとんどない。孝弘は使い古したリュックにテキパキと荷物を詰めてしまい、祐樹の荷造りを手伝ってくれた。

「3泊以上だと1ヶ月でも2ヶ月でも荷物の量ってほとんど変わらないよ」
「え、そうなの?」

「長期になったら服なんて洗濯しながらだし、なんだったら現地調達で汚れたら捨てて買い直すから」
「そうなんだ。着替え持たなくていいんだ」

「冬だと特にかさばるし。今回は下着の替え2枚とシャツ1枚でいいよ。みやげ代わりに向こうで着替え買ってもいいし。薄手のパーカー着て行けば足りると思う。あとはタオルと洗面用具くらいかな」

 そう言われて見れば、孝弘のリュックはほとんど何も入っていない。こんな身軽に5日間の旅行に行けるものなのか。

「そんなんで大丈夫?」

「ああ、いつもこんなもん。あとは向こうに持ってくみやげ入れるから。ぞぞむと行くと帰りは荷物めちゃくちゃ増えるけど、今回はそんなことないだろうし」

 そのアドバイスに従って荷物を用意し、空いたスペースにみやげ用の日系スーパーで買った食品をたくさん詰めてきた。


 空港には松本美沙が迎えに来ていた。今年から櫻花貿易公司に入った日本人女性だ。

「上野《シャンイエ》、久しぶり~。こんにちは、高橋さん、初めまして、松本美沙です。ようこそ昆明《クンミン》へ」

 留学生時代からの友人という孝弘へは適当な声掛けをした松本は、高橋にはちゃんと向き合って名前を名乗って握手をした。駐在員の同僚を連れて行くと孝弘が連絡していたから気を使っているのかもしれない。

 26歳と聞いていたが、ぽっちゃりした丸顔がかわいいせいかもっと若く見えた。肩まで伸ばした髪を後ろでくくって、藍染で仕立てたチャイナドレス型の半袖ワンピースがよく似合っている。

「こちらこそ、わざわざ空港まで迎えに来てもらってすみません。高橋祐樹です、今回はお世話になります」

 松本の住む大理から昆明まで車で5時間ほどかかるとさっき孝弘から聞いたのだ。申し訳なく思った祐樹に気がついたのか、松本はにこっと笑う。

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