あの日、北京の街角で4 大連デイズ

ゆまは なお

文字の大きさ
63 / 95

10-1

しおりを挟む
「そう言えば松本《ソンベン》から荷物届いてた」

 昨日のパエリアの残りにチーズをかけたドリアと蒸し野菜のブランチの後、小さめの段ボール箱を孝弘が部屋から持って来た。

「大理《ダーリー》の松本《ソンベン》?」
「そう。何だろうな」

 開けてみたらクリスマスカードと封筒が入っていた。その下には布地があるようだ。

 中国の指導部である共産党は基本的に宗教を警戒するので、キリスト教の行事であるクリスマス、聖誕節《ションタンジエ》はイベント的にはそれほど大きくない。

 サンタクロースは聖誕老人《ションタンラオレン》と訳されているが、クリスマスだからサンタが子供にプレゼントという習慣も浸透していない。

 外資系ホテルなどではツリーやイルミネーションを飾るが日本のように街全体がクリスマスで彩られるということはないので、そのカードを見て「あ、もうすぐクリスマスか」とようやく思い出したくらいだった。子供がいない大人の二人ではその程度の認識だ。

「これは?」
 カードの下の布地を開くと、ぱっとカラフルな色が広がった。

「試作品だけどタペストリーを一枚送ります。よかったら飾ってねだって」
「悪くないんじゃないか?」

「うん。クリスマスっぽくなった気がする」

 タペストリーにはクリスマスツリーが色鮮やかな布と糸で刺繍されていた。祐樹にはよくわからないが、これはパッチワークだろうか。幅1m、長さ1.5mくらいの大きさでなかなかきれいだ。


 せっかくだから部屋の壁に飾っておくことにした。布が折り返されて上のほうは筒状になっていて、そこに棒を通して吊るせるようだから適当な棒を買いに行くことにする。

「ていうかこういう棒ってどこで買うの?」
 祐樹の疑問に孝弘も首を傾げた。

「えー、どこだろ? …手芸屋? 文房具屋か?」
 そんなものを買ったことが一度もない。

「まあどっかしらで見つかるだろ。見つからなかったら誰かに適当に頼んでもいいし」
 きわめて中国的な発言を孝弘がして、祐樹は笑う。

「え、何?」
「ううん、何でもない」

 誰かに頼むというのはいわゆる口コミだ。欲しいものや探し物を職場や友人に話しておくと「友人に頼んであげる」とか「知人にできる人がいる」とか「この店で買える」というようにいつの間にか見つかるのだ。人でも物でもたいていがそれで手に入るようになっている。

 日本でもあるやり方だが、中国での口コミ利用の頻繁さと情報の早さはちょっとびっくりするくらいだ。それにすっかり慣れている孝弘は自分の発言の中国度合いに気づいてない。

「これは?」
「あ、写真だ。…国慶節の時のか」

 封筒には遅くなってごめんねと言うメモと写真が20枚ほど入っていた。雲南省に行ったときに撮った写真を送ってきてくれたのだ。

 広州と深センで勤務して、国内の主要都市に出張も行ってそれなりに中国を知ったつもりでいたが、初めて足を踏み入れた雲南省は祐樹が持っていた中国のイメージを大きく覆した。

「もう2ヶ月以上経ったんだね。時間経つのが早いな」
「毎日バタバタしてるからだろ」

 二人で並んでソファに座り、一枚一枚ゆっくりめくっていくと、その写真を撮った場面がぱっと蘇ってきた。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

売れ残りオメガの従僕なる日々

灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才) ※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!  ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。  無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。

【完結】毎日きみに恋してる

藤吉めぐみ
BL
青春BLカップ1次選考通過しておりました! 応援ありがとうございました! ******************* その日、澤下壱月は王子様に恋をした―― 高校の頃、王子と異名をとっていた楽(がく)に恋した壱月(いづき)。 見ているだけでいいと思っていたのに、ちょっとしたきっかけから友人になり、大学進学と同時にルームメイトになる。 けれど、恋愛模様が派手な楽の傍で暮らすのは、あまりにも辛い。 けれど離れられない。傍にいたい。特別でありたい。たくさんの行きずりの一人にはなりたくない。けれど―― このまま親友でいるか、勇気を持つかで揺れる壱月の切ない同居ライフ。

僕の恋人は、超イケメン!!

八乙女 忍
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる

水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。 「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」 過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。 ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。 孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

【完結】※セーブポイントに入って一汁三菜の夕飯を頂いた勇者くんは体力が全回復します。

きのこいもむし
BL
ある日突然セーブポイントになってしまった自宅のクローゼットからダンジョン攻略中の勇者くんが出てきたので、一汁三菜の夕飯を作って一緒に食べようねみたいなお料理BLです。 自炊に目覚めた独身フリーターのアラサー男子(27)が、セーブポイントの中に入ると体力が全回復するタイプの勇者くん(19)を餌付けしてそれを肴に旨い酒を飲むだけの逆異世界転移もの。 食いしん坊わんこのローグライク系勇者×料理好きのセーブポイント系平凡受けの超ほんわかした感じの話です。

処理中です...