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「そう言えば松本《ソンベン》から荷物届いてた」
昨日のパエリアの残りにチーズをかけたドリアと蒸し野菜のブランチの後、小さめの段ボール箱を孝弘が部屋から持って来た。
「大理《ダーリー》の松本《ソンベン》?」
「そう。何だろうな」
開けてみたらクリスマスカードと封筒が入っていた。その下には布地があるようだ。
中国の指導部である共産党は基本的に宗教を警戒するので、キリスト教の行事であるクリスマス、聖誕節《ションタンジエ》はイベント的にはそれほど大きくない。
サンタクロースは聖誕老人《ションタンラオレン》と訳されているが、クリスマスだからサンタが子供にプレゼントという習慣も浸透していない。
外資系ホテルなどではツリーやイルミネーションを飾るが日本のように街全体がクリスマスで彩られるということはないので、そのカードを見て「あ、もうすぐクリスマスか」とようやく思い出したくらいだった。子供がいない大人の二人ではその程度の認識だ。
「これは?」
カードの下の布地を開くと、ぱっとカラフルな色が広がった。
「試作品だけどタペストリーを一枚送ります。よかったら飾ってねだって」
「悪くないんじゃないか?」
「うん。クリスマスっぽくなった気がする」
タペストリーにはクリスマスツリーが色鮮やかな布と糸で刺繍されていた。祐樹にはよくわからないが、これはパッチワークだろうか。幅1m、長さ1.5mくらいの大きさでなかなかきれいだ。
せっかくだから部屋の壁に飾っておくことにした。布が折り返されて上のほうは筒状になっていて、そこに棒を通して吊るせるようだから適当な棒を買いに行くことにする。
「ていうかこういう棒ってどこで買うの?」
祐樹の疑問に孝弘も首を傾げた。
「えー、どこだろ? …手芸屋? 文房具屋か?」
そんなものを買ったことが一度もない。
「まあどっかしらで見つかるだろ。見つからなかったら誰かに適当に頼んでもいいし」
きわめて中国的な発言を孝弘がして、祐樹は笑う。
「え、何?」
「ううん、何でもない」
誰かに頼むというのはいわゆる口コミだ。欲しいものや探し物を職場や友人に話しておくと「友人に頼んであげる」とか「知人にできる人がいる」とか「この店で買える」というようにいつの間にか見つかるのだ。人でも物でもたいていがそれで手に入るようになっている。
日本でもあるやり方だが、中国での口コミ利用の頻繁さと情報の早さはちょっとびっくりするくらいだ。それにすっかり慣れている孝弘は自分の発言の中国度合いに気づいてない。
「これは?」
「あ、写真だ。…国慶節の時のか」
封筒には遅くなってごめんねと言うメモと写真が20枚ほど入っていた。雲南省に行ったときに撮った写真を送ってきてくれたのだ。
広州と深センで勤務して、国内の主要都市に出張も行ってそれなりに中国を知ったつもりでいたが、初めて足を踏み入れた雲南省は祐樹が持っていた中国のイメージを大きく覆した。
「もう2ヶ月以上経ったんだね。時間経つのが早いな」
「毎日バタバタしてるからだろ」
二人で並んでソファに座り、一枚一枚ゆっくりめくっていくと、その写真を撮った場面がぱっと蘇ってきた。
昨日のパエリアの残りにチーズをかけたドリアと蒸し野菜のブランチの後、小さめの段ボール箱を孝弘が部屋から持って来た。
「大理《ダーリー》の松本《ソンベン》?」
「そう。何だろうな」
開けてみたらクリスマスカードと封筒が入っていた。その下には布地があるようだ。
中国の指導部である共産党は基本的に宗教を警戒するので、キリスト教の行事であるクリスマス、聖誕節《ションタンジエ》はイベント的にはそれほど大きくない。
サンタクロースは聖誕老人《ションタンラオレン》と訳されているが、クリスマスだからサンタが子供にプレゼントという習慣も浸透していない。
外資系ホテルなどではツリーやイルミネーションを飾るが日本のように街全体がクリスマスで彩られるということはないので、そのカードを見て「あ、もうすぐクリスマスか」とようやく思い出したくらいだった。子供がいない大人の二人ではその程度の認識だ。
「これは?」
カードの下の布地を開くと、ぱっとカラフルな色が広がった。
「試作品だけどタペストリーを一枚送ります。よかったら飾ってねだって」
「悪くないんじゃないか?」
「うん。クリスマスっぽくなった気がする」
タペストリーにはクリスマスツリーが色鮮やかな布と糸で刺繍されていた。祐樹にはよくわからないが、これはパッチワークだろうか。幅1m、長さ1.5mくらいの大きさでなかなかきれいだ。
せっかくだから部屋の壁に飾っておくことにした。布が折り返されて上のほうは筒状になっていて、そこに棒を通して吊るせるようだから適当な棒を買いに行くことにする。
「ていうかこういう棒ってどこで買うの?」
祐樹の疑問に孝弘も首を傾げた。
「えー、どこだろ? …手芸屋? 文房具屋か?」
そんなものを買ったことが一度もない。
「まあどっかしらで見つかるだろ。見つからなかったら誰かに適当に頼んでもいいし」
きわめて中国的な発言を孝弘がして、祐樹は笑う。
「え、何?」
「ううん、何でもない」
誰かに頼むというのはいわゆる口コミだ。欲しいものや探し物を職場や友人に話しておくと「友人に頼んであげる」とか「知人にできる人がいる」とか「この店で買える」というようにいつの間にか見つかるのだ。人でも物でもたいていがそれで手に入るようになっている。
日本でもあるやり方だが、中国での口コミ利用の頻繁さと情報の早さはちょっとびっくりするくらいだ。それにすっかり慣れている孝弘は自分の発言の中国度合いに気づいてない。
「これは?」
「あ、写真だ。…国慶節の時のか」
封筒には遅くなってごめんねと言うメモと写真が20枚ほど入っていた。雲南省に行ったときに撮った写真を送ってきてくれたのだ。
広州と深センで勤務して、国内の主要都市に出張も行ってそれなりに中国を知ったつもりでいたが、初めて足を踏み入れた雲南省は祐樹が持っていた中国のイメージを大きく覆した。
「もう2ヶ月以上経ったんだね。時間経つのが早いな」
「毎日バタバタしてるからだろ」
二人で並んでソファに座り、一枚一枚ゆっくりめくっていくと、その写真を撮った場面がぱっと蘇ってきた。
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