あの日、北京の街角で4 大連デイズ

ゆまは なお

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 工場前で3人並んで撮った写真を見て、その時の気持ちを思い出して祐樹は訊ねた。

「もう工場って稼働してるよね、どんな調子?」

「ああ、けっこう順調って聞いてる。最初はかなりトラブルあったみたいだけど、責任者がきちんとした人で、今はうまくいってる」

「そっか。よかったね」
「ああ。近いうちに、松本は大理を引き上げることになるから、それまでに軌道に乗せたかったんだ」

「え、異動? どうして?」
「大理の店も今、中国人スタッフを入れて店長研修させてるんだ。春節明けに昆明に櫻花珈琲店をオープンさせるから、松本は1月にそっちに赴任予定」

「そっか。カフェもオープンするんだ」
「ああ。花博で観光客が絶対増えるから、その前にオープンさせとこうってことで」

「着々と進んでるね」
「まあ何とかな」

 カフェはすでに上海3店舗、北京2店舗が開店していて、大連と瀋陽でも開店準備に入っている。昆明は初めての内陸部の店舗だ。

「実際はトラブルも多いけど。ぞぞむがあんな感じだし、レオンがしっかりしてるから、失敗しても何とかやっていけてる」

「きっとぞぞむも同じこと思ってると思う。孝弘とレオンがしっかりしてるから大丈夫って」
「そうだといいけどな」

 次の写真をめくる。大理古城を孝弘と並んで歩いている写真は撮られた覚えがなかった。背後からのアングルだ。

 二人で寄り添うように歩いていて、通りのみやげ物屋でも見ているのか二人で横を向いて何か指差して笑っている。

 うわ…と思った。こんな顔してるのか、おれ。

 孝弘の隣で安心して笑っている自分を見て、なんとなく頬が熱くなる。松本にこんな顔を見られたと知ってちょっと動揺した。

「へえ、いいじゃん。ラブラブカップルって感じ」
「…うん」

 返事のしようがなくてうなずいた。松本からしたら同僚同士でただ通りを見て歩いているだけで、別にどうってことはないはずだ。うん、何も言われなかったし。

「この通り好きだったな。雰囲気がよかったよね」
「ああ。俺も大理はのんびりしてて好きだな」

「また行きたいけど、次に行ったら変わってるのかな」
「そうかもな。俺が初めて行ったの2年半前だけど、その頃から比べてもかなり観光化してるもんな」

「そっか。もっとゆっくり行けたらよかったね」
「あの時はかなり強行軍だったもんな」

 初日は村に寄り道をしたせいで大理に着いたのはもう夜だった。

「二人とも疲れたでしょ」
「この車だから大丈夫。でも長距離バスだったら無理だったと思う」

 祐樹がため息交じりに答えた。途中で路線バスを抜いたりすれ違ったりしたが、座席も狭そうだったしバスの上にはこぼれ落ちそうなほどの荷物が積み上がっていた。何よりどのバスも満員で、あの中にはとても乗りこめそうになかった。

「俺もあのバスには乗る気になれないって」
「でも以前は長距離バスに乗ったりしてたんでしょ?」

「ぞぞむと新疆行ったときな。まだ学生で他に交通手段がなかったし。仕事では車チャーターすることがほとんどだよ、時間がもったいないから」

「そっか」
「二人は夕食はどうする? 食事してから宿に送ろうか? それとも古城内で食べる?」

 時間を見たら道路が混んだせいで結構遅かった。運転手を家に帰したほうがいいと孝弘が言って、車は古城前で帰した。気のいい運転手はにこにこと帰って行った。
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