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しおりを挟む「せっかくだから買ってみた」
テーブルに孝弘が出したのはこんがり焼かれたローストチキンだ。絵本で見るような一羽丸焼きのチキンはいい匂いがする。
「すごいね。丸焼きって初めて食べるかも」
「俺も。日本でこの状態でそんなに買わないよな?」
「うん。うちでは母親が大量に唐揚げ作ってたから、ローストチキンじゃなかったけど」
「唐揚げうまいよな。男子四人だと相当食いそう」
「すごかったよ。中高生の時とか。肉とかキロ単位で買ってたと思う」
兄弟に食事当番の日は割り振られていたけれど、それでも男子四人の食事作りはかなり大変だっただろう。
「だろうな。あと、魚介のマリネとサラダと適当なスープ作ったけど」
「十分じゃない? 仕事終わってからよく時間あったね」
「たまたま直帰したから。スーパー寄って帰ってきたんだ」
開発区内のスーパーは外国人が多く住んでいるため、品揃えが外国人仕様になっている。今日はクリスマスだから、ちゃんとローストチキンやケーキが大量に並んでいた。
「混んでた?」
「それなりに。でも昼間のうちに阿姨《アーイー》さん(メイド)や奥さんたちは買い物済ませてるんじゃないかな、そこまで混んでなかった」
「そうだね。家族帯同だとこういう行事もちゃんとやるんだろうね」
今日は青木も早めに仕事を切り上げて帰っていた。クリスマスイブだから、サンタにならないといけないのだ。
青木の子供は小学1年生で、サンタさんが大連まで来てくれるか心配していると話していた。今まで住んでいたドイツのクリスマスとあまりに雰囲気が違うので、サンタが来るのか不安になったらしい。
「聖誕老人《ションタンラオレン》が来るよって言われても、って感じなんだろうな」
「やっぱりサンタって信じてるんだな、今どきでも」
「小学1年て…7歳? まだかわいいもんだよね」
「そっか、7歳か。あいつも信じてるのかな?」
日本にいる弟を思い出したようで、孝弘は首を傾げた。
「弟さん? 信じてるんじゃない? お父さんが夜中にサンタになって枕元にプレゼント置いてあげてる頃でしょ」
「そうか、父さんがそういうことしてるんだ。……なんか変な感じだな」
グラスと皿を運びながら微妙な顔で笑っている。祐樹はスープカップを運ぶ。
「サンタさんっていつまで信じてた?」
「うーん、いつまでだったかな。小3とかそれくらい?」
「わりと信じてたんだ」
「うん。祐樹は?」
「弟の宿命で幼稚園でサンタはいないって兄が教えてくれた。年中かな?」
「そっか。兄弟いるとそういう情報が回っちゃうんだ」
「マンガとかアニメとか音楽とかも自分の好みとか見つける前に全部目や耳に入ってきちゃうから」
「兄弟多いとそういう影響も受けるのか」
「うん。これでいい?」
テーブルに料理が並ぶと、一気にクリスマス気分になる。
「チキンが大きいからケーキ買わなかったんだけど欲しかった?」
「ううん、いい。これで十分だよ」
二人で過ごすクリスマスは初めてだ。別にロマンチックなクリスマスに憧れているわけじゃないし、孝弘がちゃんとこうしてディナーを用意してくれていただけでも祐樹は嬉しい。
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