14 / 124
第1章(序章)絶望の果て
第13話 絶対絶命
しおりを挟む
俺は分からなかったが、ベアスは、見覚えがあるようだ。しかも、かなり動揺している。
「イース、あいつは …。 3年前にムートを追われたトラフだ!」
ベアスに言われて思い出した。俺がムートに入った時、Eクラスのボスだった奴だ。
俺はトラフと直接関わった事はないが、ベアスはさんざんイジメられたようで、その時のトラウマで怯えていた。
「ベアス、恐れる事はない。 おまえはCクラスに上がった。 トラフはDクラスにさえ上がれなかった情け無い奴だ」
俺は、小声でベアスを励ました。彼も理解したのか、落ち着きを取り戻した。
そんな俺達に対し、トラフは、ズケズケと踏み込んで来て、俺の顔を舐めるように見た。
「3年前の事だけど、イースという女子が、カザフ達に乱暴されてよ。 俺も奴らの仲間として同罪にされたんだ。 それで、ムートを追放された。 当時、俺は、男子のボスで女子と不可侵条約を結んでいた。 そりゃ、有罪なら刑に服すのは当然だが …。 だが、なんとイースは、男だったって言うじゃねえか。 男なら罪に問えねえから、完全に冤罪だったんだ。 俺の人生、どうしてくれるんだ!」
カザフは俺を睨みつけて来たが、事実だから反論できない。
「ところでさ。 恐ろしいナーゼは、ムートを卒業したんだってな …。 今日は、おまえに償ってもらうけど、もう、ナーゼに助けちゃもらえねえぞ!」
トラフは、不敵に笑った。
「冤罪だった事は謝る。 でっ、俺にどうしろと?」
俺がトラフに答えると、彼はニヤけた。
「背が高くなったが、顔は相変わらず女見てえだな。 可愛いぜ、まずはキスさせろ!」
トラフは、顔を赤くした。どうやら、男色があるようだ。凄く、気持ち悪い。
「イースは、今ではBクラスに上がった。 トラフでは勝てっこないぞ!」
ベアスが言葉で攻撃すると、トラフは虫ケラでも見るような表情をした。
「おめえよお。 ベアスだよな。 逃げ回っていた奴が、出世したもんだ。 テメエには関係ねーだろ。 どっかに失せろ!」
トラフは、凶悪な顔で凄んだ。
「どこにも、逃げない。 俺は、イースに加勢する」
ベアスは、ビビリながらもハッキリと答えた。俺は、その言葉を聞いて、涙が出るほど嬉しかった。
しばし感激していると、どこからか、男女が連れ立って現れた。
「私はトラフに加勢するけど、ベアスは、逃げるなら今のうちよ」
ソニアだった。彼女は、薄気味の悪い笑みを浮かべた。
「俺も、トラフに加勢するぜ。 イースよ、おまえ、人を騙すなんて最低な奴だな! トラフを冤罪に陥れたんだから、殺されても文句を言えねえよな」
ジダンも現れ、トラフの横に立った。
そして2人は、剣を下段に構えた。間違いなく俺を殺そうとしている。
どうあがいても、勝ち目はなかった。
「ベアス、逃げてくれ!」
俺が叫んだ瞬間、ソニアの剣が俺の胸を突いて来た。
俺は丸腰だったが、何とか避けた。
「イース、応援を呼んで来る!」
そう言うと、ベアスはどこかに走って行った。
俺は、彼が逃げても仕方がないと思った。
シュッ
ボムッ
ジダンの放ったノーモーションの剣先が、右肩を突いて来たが、その瞬間、陽気を肩に集め凝縮し、剣を弾き飛ばした。
この陽気のコントロールは、ナーゼから教わったものだ。
「凄いじゃないか! その発勁はAクラスでも通用するぞ。 じゃあ、俺も剣に陽気を通すとするか」
ジダンは、剣に集中した。すると、剣先から赤い光が出て来た。通常はオレンジ色の光を発するのだが、赤色はかなり強力な陽気を意味する。
さらに上を行くと青色になるのだが、この色はナーゼにしか出せなかった。
トラフは、部外者のように呆気にとられている。彼も陽気を扱えるが、次元が違い過ぎるのだ。
ジダンが本気を出した段階で、他の2人は距離を取って離れた。
赤い光が制御を失うと、近くにいる物を滅多やたら切断するからだ。
ジダンは、言葉を発せず集中した。そして、剣と共に赤い光を飛ばす。
俺は、自分の持てる陽気を最大限に発勁し防御に徹した。それでも肉を斬られ、削がれて行く。まさに、なぶり殺しだ。
そして、俺の持てる陽気が弱まり、骨まで切断されそうになった時である。
ジダンは、なぜか攻撃をやめた。
「さあ、トラフ。 コイツにトドメを刺せ。 おまえが刺すんなら大義名分が立つ。 つまり、誰も文句を言えねえ。 万が一、ナーゼに知られても、復讐されねえ」
「えっ、俺がトドメを? 嫌だ、ナーゼが怖えよ」
トラフは、泣きごとを言った。
俺には優しいが、ナーゼはそれほどまでに、恐れられていた。
「何、ビビってるんだ。 男だろ!」
ソニアが、トラフの尻を剣で突いた。
「ひえっ」
情け無い声を上げた後、言われるままに、俺の左胸に剣を向けた。このまま、振り下ろせば終わりだ。
逃げようとしても、俺の血だらけの身体は動かない。
ナーゼに陽気を使い切ってはならないと教わっていたが、実践では余裕がなかった。
俺は、身体が動かせない状態で、トラフが振り下ろそうとしている剣先を、茫然と眺めるしかなかった。
「ああ、イース! なんて事なの。 来るのが遅れてごめんなさい」
意識が薄れて行く中で、ナーゼの懐かしい声が聞こえた気がした。
「イース、あいつは …。 3年前にムートを追われたトラフだ!」
ベアスに言われて思い出した。俺がムートに入った時、Eクラスのボスだった奴だ。
俺はトラフと直接関わった事はないが、ベアスはさんざんイジメられたようで、その時のトラウマで怯えていた。
「ベアス、恐れる事はない。 おまえはCクラスに上がった。 トラフはDクラスにさえ上がれなかった情け無い奴だ」
俺は、小声でベアスを励ました。彼も理解したのか、落ち着きを取り戻した。
そんな俺達に対し、トラフは、ズケズケと踏み込んで来て、俺の顔を舐めるように見た。
「3年前の事だけど、イースという女子が、カザフ達に乱暴されてよ。 俺も奴らの仲間として同罪にされたんだ。 それで、ムートを追放された。 当時、俺は、男子のボスで女子と不可侵条約を結んでいた。 そりゃ、有罪なら刑に服すのは当然だが …。 だが、なんとイースは、男だったって言うじゃねえか。 男なら罪に問えねえから、完全に冤罪だったんだ。 俺の人生、どうしてくれるんだ!」
カザフは俺を睨みつけて来たが、事実だから反論できない。
「ところでさ。 恐ろしいナーゼは、ムートを卒業したんだってな …。 今日は、おまえに償ってもらうけど、もう、ナーゼに助けちゃもらえねえぞ!」
トラフは、不敵に笑った。
「冤罪だった事は謝る。 でっ、俺にどうしろと?」
俺がトラフに答えると、彼はニヤけた。
「背が高くなったが、顔は相変わらず女見てえだな。 可愛いぜ、まずはキスさせろ!」
トラフは、顔を赤くした。どうやら、男色があるようだ。凄く、気持ち悪い。
「イースは、今ではBクラスに上がった。 トラフでは勝てっこないぞ!」
ベアスが言葉で攻撃すると、トラフは虫ケラでも見るような表情をした。
「おめえよお。 ベアスだよな。 逃げ回っていた奴が、出世したもんだ。 テメエには関係ねーだろ。 どっかに失せろ!」
トラフは、凶悪な顔で凄んだ。
「どこにも、逃げない。 俺は、イースに加勢する」
ベアスは、ビビリながらもハッキリと答えた。俺は、その言葉を聞いて、涙が出るほど嬉しかった。
しばし感激していると、どこからか、男女が連れ立って現れた。
「私はトラフに加勢するけど、ベアスは、逃げるなら今のうちよ」
ソニアだった。彼女は、薄気味の悪い笑みを浮かべた。
「俺も、トラフに加勢するぜ。 イースよ、おまえ、人を騙すなんて最低な奴だな! トラフを冤罪に陥れたんだから、殺されても文句を言えねえよな」
ジダンも現れ、トラフの横に立った。
そして2人は、剣を下段に構えた。間違いなく俺を殺そうとしている。
どうあがいても、勝ち目はなかった。
「ベアス、逃げてくれ!」
俺が叫んだ瞬間、ソニアの剣が俺の胸を突いて来た。
俺は丸腰だったが、何とか避けた。
「イース、応援を呼んで来る!」
そう言うと、ベアスはどこかに走って行った。
俺は、彼が逃げても仕方がないと思った。
シュッ
ボムッ
ジダンの放ったノーモーションの剣先が、右肩を突いて来たが、その瞬間、陽気を肩に集め凝縮し、剣を弾き飛ばした。
この陽気のコントロールは、ナーゼから教わったものだ。
「凄いじゃないか! その発勁はAクラスでも通用するぞ。 じゃあ、俺も剣に陽気を通すとするか」
ジダンは、剣に集中した。すると、剣先から赤い光が出て来た。通常はオレンジ色の光を発するのだが、赤色はかなり強力な陽気を意味する。
さらに上を行くと青色になるのだが、この色はナーゼにしか出せなかった。
トラフは、部外者のように呆気にとられている。彼も陽気を扱えるが、次元が違い過ぎるのだ。
ジダンが本気を出した段階で、他の2人は距離を取って離れた。
赤い光が制御を失うと、近くにいる物を滅多やたら切断するからだ。
ジダンは、言葉を発せず集中した。そして、剣と共に赤い光を飛ばす。
俺は、自分の持てる陽気を最大限に発勁し防御に徹した。それでも肉を斬られ、削がれて行く。まさに、なぶり殺しだ。
そして、俺の持てる陽気が弱まり、骨まで切断されそうになった時である。
ジダンは、なぜか攻撃をやめた。
「さあ、トラフ。 コイツにトドメを刺せ。 おまえが刺すんなら大義名分が立つ。 つまり、誰も文句を言えねえ。 万が一、ナーゼに知られても、復讐されねえ」
「えっ、俺がトドメを? 嫌だ、ナーゼが怖えよ」
トラフは、泣きごとを言った。
俺には優しいが、ナーゼはそれほどまでに、恐れられていた。
「何、ビビってるんだ。 男だろ!」
ソニアが、トラフの尻を剣で突いた。
「ひえっ」
情け無い声を上げた後、言われるままに、俺の左胸に剣を向けた。このまま、振り下ろせば終わりだ。
逃げようとしても、俺の血だらけの身体は動かない。
ナーゼに陽気を使い切ってはならないと教わっていたが、実践では余裕がなかった。
俺は、身体が動かせない状態で、トラフが振り下ろそうとしている剣先を、茫然と眺めるしかなかった。
「ああ、イース! なんて事なの。 来るのが遅れてごめんなさい」
意識が薄れて行く中で、ナーゼの懐かしい声が聞こえた気がした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます
なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。
だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。
……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。
これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
うちの冷蔵庫がダンジョンになった
空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞
ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。
そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。
無属性魔法しか使えない少年冒険者!!
藤城満定
ファンタジー
「祝福の儀式」で授かった属性魔法は無属性魔法だった。無属性と書いてハズレや役立たずと読まれている属性魔法を極めて馬鹿にしてきた奴らの常識を覆して見返す「ざまあ」系ストーリー。
不定期投稿作品です。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる