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【閑話】伝説と呼ばれた魔道士
その.5 そして最下層へ
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歪む空間移動ポイントの中を彷徨いつつ、そこを出ると、ダンジョンの最下層と思われる場所に到達した。
地下空間だというのに、ここは暗闇ではない。天井から強烈な光がさしており、まるで昼間のような明るさだ。
ここは、一つの世界と言えるほど広大で、天井に霞がかかって見えない。恐らくは、数千メートルの高さがあると思う。
また、目が眩むような光源も、太陽かと思える程に輝いていた。
桁違いに大きな空間であった。
ここに辿り着くのに、6年の歳月を費やしてしまった。
冒険者として苦楽を共にした、ミレーヌと、力を合わせ頑張った成果だと思う。
「なあ、ミレーヌ。 ついに最下層に辿り着いたぞ。 ここには、魔王自らが造った魔道具の数々がある。 至高の宝物を探すぞ!」
「でも、ここが最下層とは思えないわ。 魔道具も財宝も、既に十分にあるから …。 もう、良いんじゃない」
「いやダメだ。 魔王が造った魔道具を手に入れる。 それが、両親へ報いる事になるんだ。 なあ …」
「何よ?」
「守備良く、上手く終えたら …。 俺と、一緒になってほしい」
これまでの旅の事を思い、感極まり、ミレーヌにプロポーズをしてしまった。
「でも、ジャーム。 もしかして、ここはまだ最下層じゃないかもよ」
「変な事を言うなよ。 だとしたら …。 さっきのプロポーズは、どうしたら良いんだ?」
「魔王城に続く道があれば、ここが最下層と言えるけど …。 私は、このまま引き返したいわ」
「そんな事を言うなよ …。 とにかく、この階層を探索しよう!」
俺は、ポーチから小さな鳥の形をした駒を取り出すと、そこに息を吹きかけた。
すると、駒はぐんぐんと大きくなり、最後には翼長が20mはあろうかというロック鳥になった。
「さあ、これでヒトッ飛びだ!」
俺は、ミレーヌを抱えると、ロック鳥の背中に飛び乗り、ポンと叩いた。
次の瞬間、この大きな鳥は、空高く舞い上がった。
数千メートルは上がったというのに、天井は霞んで見えなかった。驚きの高さである。
俺は、ロック鳥を操り、ひたすら南を目指した。
ただ、やみくもに進んでいるのでは無い。これまでの、経験により染みついた勘が、俺を突き動かすのだ。
ロック鳥の飛行スピードは、とてつもなく速い。馬に乗って2ヶ月程度かかるところを、たったの半日で辿り着く事ができるのだ。
翌日の朝、赤い色の海が眼下に広がっていた。
俺は、海底に魔王城があると直感した。
そこで、鳥の背中をポンと叩くと、ゆっくりと旋回して砂浜に舞い降りた。
「さあ、ミレーヌ着いたぞ」
「着いたって、ただの砂浜よ。 それと血のような海が広がっているだけで、魔王城は無いわ」
「この階層は、異様なほど広大だが、他の階層と違い、魔物がほとんどいない。 なぜだと思う?」
「分からない …」
「魔王がいるからだよ。 海の中が怪しいと睨んでる」
「違う! 何も無さそうだから、引き返しましょう」
「ミレーヌ、どうした? いつになく消極的だな。 この海を切り開いて進むぞ!」
俺は、結界術により、大きな管を突き刺して、トンネル状にした。
「まずは、500mほどの長さだけど、これを延長しながら海底へと突き進めば良い」
「それは、ダメ! それ以上は …」
「ミレーヌ、何を言ってる? おまえ、まさか …」
さすがに、彼女の言動が変だと気づいた。
「ジャームとの冒険は楽しかったけど、ここで終わりよ」
「君は、いったい …」
俺は怖くて、それ以上、聞けなかった。
「私は、魔王の四天王の一人なの。 役目は、魔王城に侵入できるスキルのある者を探し出して排除する事よ。 あなたの両親を殺めたのも、この私なの。 それと …。 あなたに目を付けて、それなのに愛してしまった …。 ここに来て欲しくなかった。 ジャームと暮らせれば良かったのに、残念でならない …」
ミレーヌは、悲しそうに目を伏せた。
「俺の両親が所属する調査隊を、君が殲滅させたのか?」
「そうよ」
「でも …。 君は職務を果たしただけ …。 だから許すよ。 そうだ! ここを引き返して、夫婦になろう!」
ミレーヌがいない生活など考えられなかった。両親が殺された事など、どうでも良くなった。彼女が、魔族であっても良いとさえ思えた。
「ねえ、ジャーム。 私だって、こうはなりたく無かったさ。 だから、何度も引き返そうと言ったのに …。 人の欲望は際限なく広がるものよ。 私の正体を知った以上、もう、戻れない」
ミレーヌは、心に直接響くような不思議な声を発した。
そして、俺が愛したミレーヌの姿が、変貌して行く。
頭から角が盛り上がり、背中から黒色の翼が生えた。
しかし、美しい顔や表情は、ミレーヌのままだった。
地下空間だというのに、ここは暗闇ではない。天井から強烈な光がさしており、まるで昼間のような明るさだ。
ここは、一つの世界と言えるほど広大で、天井に霞がかかって見えない。恐らくは、数千メートルの高さがあると思う。
また、目が眩むような光源も、太陽かと思える程に輝いていた。
桁違いに大きな空間であった。
ここに辿り着くのに、6年の歳月を費やしてしまった。
冒険者として苦楽を共にした、ミレーヌと、力を合わせ頑張った成果だと思う。
「なあ、ミレーヌ。 ついに最下層に辿り着いたぞ。 ここには、魔王自らが造った魔道具の数々がある。 至高の宝物を探すぞ!」
「でも、ここが最下層とは思えないわ。 魔道具も財宝も、既に十分にあるから …。 もう、良いんじゃない」
「いやダメだ。 魔王が造った魔道具を手に入れる。 それが、両親へ報いる事になるんだ。 なあ …」
「何よ?」
「守備良く、上手く終えたら …。 俺と、一緒になってほしい」
これまでの旅の事を思い、感極まり、ミレーヌにプロポーズをしてしまった。
「でも、ジャーム。 もしかして、ここはまだ最下層じゃないかもよ」
「変な事を言うなよ。 だとしたら …。 さっきのプロポーズは、どうしたら良いんだ?」
「魔王城に続く道があれば、ここが最下層と言えるけど …。 私は、このまま引き返したいわ」
「そんな事を言うなよ …。 とにかく、この階層を探索しよう!」
俺は、ポーチから小さな鳥の形をした駒を取り出すと、そこに息を吹きかけた。
すると、駒はぐんぐんと大きくなり、最後には翼長が20mはあろうかというロック鳥になった。
「さあ、これでヒトッ飛びだ!」
俺は、ミレーヌを抱えると、ロック鳥の背中に飛び乗り、ポンと叩いた。
次の瞬間、この大きな鳥は、空高く舞い上がった。
数千メートルは上がったというのに、天井は霞んで見えなかった。驚きの高さである。
俺は、ロック鳥を操り、ひたすら南を目指した。
ただ、やみくもに進んでいるのでは無い。これまでの、経験により染みついた勘が、俺を突き動かすのだ。
ロック鳥の飛行スピードは、とてつもなく速い。馬に乗って2ヶ月程度かかるところを、たったの半日で辿り着く事ができるのだ。
翌日の朝、赤い色の海が眼下に広がっていた。
俺は、海底に魔王城があると直感した。
そこで、鳥の背中をポンと叩くと、ゆっくりと旋回して砂浜に舞い降りた。
「さあ、ミレーヌ着いたぞ」
「着いたって、ただの砂浜よ。 それと血のような海が広がっているだけで、魔王城は無いわ」
「この階層は、異様なほど広大だが、他の階層と違い、魔物がほとんどいない。 なぜだと思う?」
「分からない …」
「魔王がいるからだよ。 海の中が怪しいと睨んでる」
「違う! 何も無さそうだから、引き返しましょう」
「ミレーヌ、どうした? いつになく消極的だな。 この海を切り開いて進むぞ!」
俺は、結界術により、大きな管を突き刺して、トンネル状にした。
「まずは、500mほどの長さだけど、これを延長しながら海底へと突き進めば良い」
「それは、ダメ! それ以上は …」
「ミレーヌ、何を言ってる? おまえ、まさか …」
さすがに、彼女の言動が変だと気づいた。
「ジャームとの冒険は楽しかったけど、ここで終わりよ」
「君は、いったい …」
俺は怖くて、それ以上、聞けなかった。
「私は、魔王の四天王の一人なの。 役目は、魔王城に侵入できるスキルのある者を探し出して排除する事よ。 あなたの両親を殺めたのも、この私なの。 それと …。 あなたに目を付けて、それなのに愛してしまった …。 ここに来て欲しくなかった。 ジャームと暮らせれば良かったのに、残念でならない …」
ミレーヌは、悲しそうに目を伏せた。
「俺の両親が所属する調査隊を、君が殲滅させたのか?」
「そうよ」
「でも …。 君は職務を果たしただけ …。 だから許すよ。 そうだ! ここを引き返して、夫婦になろう!」
ミレーヌがいない生活など考えられなかった。両親が殺された事など、どうでも良くなった。彼女が、魔族であっても良いとさえ思えた。
「ねえ、ジャーム。 私だって、こうはなりたく無かったさ。 だから、何度も引き返そうと言ったのに …。 人の欲望は際限なく広がるものよ。 私の正体を知った以上、もう、戻れない」
ミレーヌは、心に直接響くような不思議な声を発した。
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