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第2章の2 新天地
第35話 魔獣の活用
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キングカイマンは、一瞬、後ろ足で立ち上がるような姿勢を取ったかと思うと、高く跳躍し、覆いかぶさるように、俺を潰そうとしてきた。
意表を突かれた行動であったが、これに対抗するかのように、無意識の内に体が動き、俺は剣を下段から切り上げていた。
その刹那、紫の光が弧を描き、魔獣の巨体を一刀両断した。
ドスン
鈍い音と共に、魔獣は地に落ちた。死骸は二分割されているが、まるで生きているかのようだ。
「なんと! あの、魔法の色は …」
マサンの声がした。
「マサン。 初めての実践だったけど、何とか倒すことができたぞ」
声をかけると、彼女は少し驚いたような表情をしていた。
「イースの放った剣の色は紫だったが、なぜだ?」
「ああ。 その事なら、師匠のジャームに聞いている。 俺が小さい頃、ナーゼという女子から魔力のコアの一部をもらったんだ。 師匠は、その影響だと言ってた」
「それは、本当か? 紫色は、神が放つ光の色だ」
「師匠は、ナーゼがオウゼという神の生まれ代わりかも知れないと言ってた。 でも、俺は信じない」
話を聞いて、マサンは、しばらく言葉を失っていたが、気を取り直したのか、違う話題を振ってきた。
「キングカイマンの皮膚は鋼鉄並みに強固だが、実は、弱点と思われる腹部は、更に強固なんだ。 それを、腹部から切断するとは …。 イースよ。 初めてにしては上出来だ。 おまえは、たしかに強いが …。 いや、無駄に強いとでも言おうか、そこに至るまでの、一般的な常識が欠けている」
「勝ったから良いのでは? 何がまずかったのか分からない」
俺は、反論した。
「我々は、魔導士なのだ。 敵に合わせた戦いを考えねばならない。 例えばキングカイマンを相手にした場合、剣で戦うのはよろしくない。 結界術で閉じ込めて、窒息させる方が効率的なんだ。 この方法なら、奴らが多くいても対応できるだろ。 まずは、相手の適性を知ることから始めねばならない」
「そうなのか。 結界術なら師匠から伝授されたから使えたが …。 その魔法が良いとは、気づかなかった」
「魔導書に代表的な魔獣のことが書いてあるから、後で読んでおきな!」
「分かった」
何とか返事をしたが、褒めて貰えなくて少しやる気を失った。
「それから、もうひとつ話しておく。 未開の地において、キングカイマンはかなり上位の魔獣に位置する。 奴らは魔光による攻撃もできるんだ。 イースに聞くが、なんで、こんな上位の魔獣が、今回、突然出て来たと思う?」
「エッ、そんな事を聞かれても …。 分からない」
マサンは、何かと理詰めで来るから、滅入ってしまう。そこが、師匠のジャームと違うところだ。
ジャームは褒めて育てるタイプだったが、マサンはスパルタに近い。意気消沈してしまう。
「分からないのか? なら、答えを言おう …。 未開の地で移動魔法を使い過ぎたからなんだ。 前にも言ったが、この魔法は、人に限らず、魔獣や魔人 …。 魔力を扱える者、全てに感知されてしまう。 キングカイマンは、餌が来たと思ったのだろう。 つまり、カモにされたのさ。 だから、ここから先は、移動魔法はなるべく使わずに、ダンジョンの街を目指す必要がある。 良いな!」
「歩くのは良いが、ダンジョンの街までどのくらいかかるんだ?」
「半年程度は、かかるだろう」
「そんなの …。 本気なのか?」
「慌てるな! 移動魔法を使わないと言ったんだ。 誰が、全て歩くと言った?」
「じゃあ、どうするんだ?」
「あれに乗る」
マサンは空を指さした。
かなり高いところを、鳥が翼を広げ大きく旋回していた。
「無茶な! あの鳥に乗るのか?」
「あれはロック鳥だ。 はるか彼方にいるから小さく見えるが、翼を広げると15m以上ある。 ロック鳥も上位の魔獣だ」
「それで、どうやって …。 調教でもするのか?」
俺は、わざと揶揄い半分に言った。
「キングカイマンの肉でロック鳥をおびき出し、生け捕りにする。 我々が背中に乗ってから放てば、ダンジョンまで、あっという間さ!」
「ロック鳥は、何処に行くか分からないぞ! どうしてダンジョンの街に向かうって言えるのさ」
「イースは、何も知らないんだな! ロック鳥の巣は、ダンジョンの中にあるんだ。 餌を確保すると、そこへ帰る。 常識だぞ!」
「そうなのか …。 知らなかった。 魔導書を読んで勉強するよ」
「当然だ。 但し、ロック鳥の巣がダンジョンにある事は、魔導書を読むまでもなく常識の範疇だぞ」
マサンは、嫌みたらしく俺を見た。
その後、キングカイマンを解体し、自分たちの食糧を確保した後、ロック鳥の餌をぶつ切りにした。
「ロック鳥の餌は、明日以降、歩きながらバラまいて行く。 いつかは食いつくだろうさ。 キングカイマンの皮は、剣や盾になるから価値があるんだ。 あと、魔力を凝縮した胆も高く売れるぞ」
マサンは、思わぬ収穫にとても嬉しそうだ。
全ての作業が終わった頃には、もう日が暮れていた。例によって、マサンのポーチから家を出し、俺たちは休んだ。
◇◇◇
翌日以降、俺たちは荒野をひたすら歩いた。
そして、7日目の事である。餌に見向きもしなかったロック鳥が、我慢できなくなったのか、ついに地上に舞い降りた。翼を広げると20mはあろうかと思われる大物である。
マサンはニヤリとしたかと思うと、直ぐに魔杖を取り出し、無詠唱で結界術を放った。焦った様子のロック鳥は、しばらくして地に倒れた。
「イース、向かうぞ! 急げ!」
マサンの足は速く、飛び跳ねるウサギのようだ。俺は、それを必死に追いかけた。
横たわるロック鳥は、人を乗せるに十分な大きさだった。
マサンは、ロック鳥に矢を放ち、素早く手綱を2箇所取り付けた。
「イース、早く! ロック鳥が目を覚ますぞ」
2人が背中に飛び乗り、手綱を握ってからしばらく経つと、ロック鳥はおもむろに立ち上がると、一気に、空高く飛び立った。ドンドンと地上は小さくなって行く。
ロック鳥は、身の危険を感じ、焦ったのだろう。どこかに、一目散に向かって行った。
意表を突かれた行動であったが、これに対抗するかのように、無意識の内に体が動き、俺は剣を下段から切り上げていた。
その刹那、紫の光が弧を描き、魔獣の巨体を一刀両断した。
ドスン
鈍い音と共に、魔獣は地に落ちた。死骸は二分割されているが、まるで生きているかのようだ。
「なんと! あの、魔法の色は …」
マサンの声がした。
「マサン。 初めての実践だったけど、何とか倒すことができたぞ」
声をかけると、彼女は少し驚いたような表情をしていた。
「イースの放った剣の色は紫だったが、なぜだ?」
「ああ。 その事なら、師匠のジャームに聞いている。 俺が小さい頃、ナーゼという女子から魔力のコアの一部をもらったんだ。 師匠は、その影響だと言ってた」
「それは、本当か? 紫色は、神が放つ光の色だ」
「師匠は、ナーゼがオウゼという神の生まれ代わりかも知れないと言ってた。 でも、俺は信じない」
話を聞いて、マサンは、しばらく言葉を失っていたが、気を取り直したのか、違う話題を振ってきた。
「キングカイマンの皮膚は鋼鉄並みに強固だが、実は、弱点と思われる腹部は、更に強固なんだ。 それを、腹部から切断するとは …。 イースよ。 初めてにしては上出来だ。 おまえは、たしかに強いが …。 いや、無駄に強いとでも言おうか、そこに至るまでの、一般的な常識が欠けている」
「勝ったから良いのでは? 何がまずかったのか分からない」
俺は、反論した。
「我々は、魔導士なのだ。 敵に合わせた戦いを考えねばならない。 例えばキングカイマンを相手にした場合、剣で戦うのはよろしくない。 結界術で閉じ込めて、窒息させる方が効率的なんだ。 この方法なら、奴らが多くいても対応できるだろ。 まずは、相手の適性を知ることから始めねばならない」
「そうなのか。 結界術なら師匠から伝授されたから使えたが …。 その魔法が良いとは、気づかなかった」
「魔導書に代表的な魔獣のことが書いてあるから、後で読んでおきな!」
「分かった」
何とか返事をしたが、褒めて貰えなくて少しやる気を失った。
「それから、もうひとつ話しておく。 未開の地において、キングカイマンはかなり上位の魔獣に位置する。 奴らは魔光による攻撃もできるんだ。 イースに聞くが、なんで、こんな上位の魔獣が、今回、突然出て来たと思う?」
「エッ、そんな事を聞かれても …。 分からない」
マサンは、何かと理詰めで来るから、滅入ってしまう。そこが、師匠のジャームと違うところだ。
ジャームは褒めて育てるタイプだったが、マサンはスパルタに近い。意気消沈してしまう。
「分からないのか? なら、答えを言おう …。 未開の地で移動魔法を使い過ぎたからなんだ。 前にも言ったが、この魔法は、人に限らず、魔獣や魔人 …。 魔力を扱える者、全てに感知されてしまう。 キングカイマンは、餌が来たと思ったのだろう。 つまり、カモにされたのさ。 だから、ここから先は、移動魔法はなるべく使わずに、ダンジョンの街を目指す必要がある。 良いな!」
「歩くのは良いが、ダンジョンの街までどのくらいかかるんだ?」
「半年程度は、かかるだろう」
「そんなの …。 本気なのか?」
「慌てるな! 移動魔法を使わないと言ったんだ。 誰が、全て歩くと言った?」
「じゃあ、どうするんだ?」
「あれに乗る」
マサンは空を指さした。
かなり高いところを、鳥が翼を広げ大きく旋回していた。
「無茶な! あの鳥に乗るのか?」
「あれはロック鳥だ。 はるか彼方にいるから小さく見えるが、翼を広げると15m以上ある。 ロック鳥も上位の魔獣だ」
「それで、どうやって …。 調教でもするのか?」
俺は、わざと揶揄い半分に言った。
「キングカイマンの肉でロック鳥をおびき出し、生け捕りにする。 我々が背中に乗ってから放てば、ダンジョンまで、あっという間さ!」
「ロック鳥は、何処に行くか分からないぞ! どうしてダンジョンの街に向かうって言えるのさ」
「イースは、何も知らないんだな! ロック鳥の巣は、ダンジョンの中にあるんだ。 餌を確保すると、そこへ帰る。 常識だぞ!」
「そうなのか …。 知らなかった。 魔導書を読んで勉強するよ」
「当然だ。 但し、ロック鳥の巣がダンジョンにある事は、魔導書を読むまでもなく常識の範疇だぞ」
マサンは、嫌みたらしく俺を見た。
その後、キングカイマンを解体し、自分たちの食糧を確保した後、ロック鳥の餌をぶつ切りにした。
「ロック鳥の餌は、明日以降、歩きながらバラまいて行く。 いつかは食いつくだろうさ。 キングカイマンの皮は、剣や盾になるから価値があるんだ。 あと、魔力を凝縮した胆も高く売れるぞ」
マサンは、思わぬ収穫にとても嬉しそうだ。
全ての作業が終わった頃には、もう日が暮れていた。例によって、マサンのポーチから家を出し、俺たちは休んだ。
◇◇◇
翌日以降、俺たちは荒野をひたすら歩いた。
そして、7日目の事である。餌に見向きもしなかったロック鳥が、我慢できなくなったのか、ついに地上に舞い降りた。翼を広げると20mはあろうかと思われる大物である。
マサンはニヤリとしたかと思うと、直ぐに魔杖を取り出し、無詠唱で結界術を放った。焦った様子のロック鳥は、しばらくして地に倒れた。
「イース、向かうぞ! 急げ!」
マサンの足は速く、飛び跳ねるウサギのようだ。俺は、それを必死に追いかけた。
横たわるロック鳥は、人を乗せるに十分な大きさだった。
マサンは、ロック鳥に矢を放ち、素早く手綱を2箇所取り付けた。
「イース、早く! ロック鳥が目を覚ますぞ」
2人が背中に飛び乗り、手綱を握ってからしばらく経つと、ロック鳥はおもむろに立ち上がると、一気に、空高く飛び立った。ドンドンと地上は小さくなって行く。
ロック鳥は、身の危険を感じ、焦ったのだろう。どこかに、一目散に向かって行った。
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