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第3章 孤独の先に
第82話 傭兵の契約
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アモーンは、俺との傭兵契約を条件にベスタフへの10億シーブルの請求を取り下げると言う。
そこまでする価値が、この俺にあるのだろうか?
ベスタフを見ると、下を見て落ち込んでいる。
「さあ、どうするんだ!」
アモーンが、ドスの効いた声を出して言い放つ。
それは、男かと思うほどの低い声だった。
「ギルド長を辞めた俺に、10億シーブルの支払い能力はない。 だからと言って、イースに迷惑を掛けられない。 一生、働いたとして、全額を返せると思えないが …。 その条件で良ければ、この俺を雇ってくれ」
ベスタフは、蚊の鳴くような小さな声を出した。
「イースは、それで良いのか?」
アモーンは、俺に話しかけてきた。
その声は、さっきと違い、優しい女性らしい声だ。
器用に使い分けているようだ。
「傭兵になった場合、どこへ派遣されるんだ?」
「今なら …。 戦争をしてるベルナ王国かサイヤ王国、他には、ギルドの治安維持要員や貴族の私兵あたりかな …」
「俺は、ベルナ王国に対して恨みを抱いているから、そこに派遣されるのは嫌だ」
「だったら、サイヤ王国が良い! 私は、パウエルの知り合いなんだ。 会えるようにしてやる。 敵国であるベルナ王国に、その恨みとやらを晴らしてやれ!」
「パウエルと知り合いなのか?」
アモーンの話に、ベスタフが驚いたような声を出したが、俺には意味が分からなかった。
「パウエルって、誰なんだ?」
「知らないのか? 北部戦線に派遣された、統括最高司令官だ。 前線において、国王の権限を与えられた、ある意味、国の参謀以上の地位の男だ」
アモーンは、少し呆れたような声で話した。
「もしかして、ワムと繋がっているんじゃないのか?」
「パウエルは、どの派閥にも入っていない。 元々は近衛騎士団長で、国王の信任が厚く、勅令により北部戦線統括最高司令官を仰せつかった。 彼は、戦略に長けた魔法剣士だ。 剣技に優れ、神殿の石柱を崩さずに一刀両断するほどの腕前があるが、イースにできるか?」
「大木はできるが、石柱はやって見ないと分からない。 それより、そいつと直に話せるのか?」
「ああ、もちろんさ。 パウエルが、近衛騎士団長だった頃からの知り合いさ。 VIPトラベルカードで、いつでも情報交換できるのさ。 実を言うと、奴とはマブ達なんだ! フフッ」
アモーンは、得意げに笑った。
「その前線には、どのくらいの傭兵を派遣してるんだ?」
「1,000名ほど派遣している。 これは、企業秘密だからな。 最も、50万の兵と、200名の魔道士を集めているから、1,000名なんて数からいえば微々たるものさ」
「ベルナ王国にも派遣してるんだろ?」
「それは言えない、企業秘密さ。 でも、イースの派遣先は、サイヤ王国で決まりだな」
「いや、引き受けると決めた訳じゃないが …。 ここは、最南端にあるエジプサン共和国だが、どうやって戦場まで行くんだ?」
「我が社のVIPトラベルカードを無償で貸与する」
「VIPトラベルカードって何だ?」
「トラベルカードを知らないのか?」
アモーンが呆れたような声を出すと、そこにベスタフが口を挟んできた。
「イース。 トラベルカードとは、アモーンの空間魔力を活用した移動魔道具なんだ。 カードでアモーンと交信できるようになっていて、彼女に移動要請をして、認められれば望む所に飛ばしてもらえるんだ。 普通のカードだと5千万シーブルで販売されていて、定期的に更新が必要なんだ。 そのカードなら、俺も持っている」
ベスタフは、自慢げに話した。
「よし、良い雰囲気になった。 これから、傭兵契約の条件を説明するが良いな!」
アモーンは、俺とベスタフの方に、交互に顔を向けた。
フードを被っているから表情は見えないが、唯一見える口元の口角が上がっている。
俺とベスタフが頷くと、アモーンは話し始めた。
「まず、契約期間は10年だ。 イースが1年働くと1億シーブル減る。 10年の期間中にベスタフが死んだ場合は、契約は解消となる。 ベスタフには、呪い虫を飲んでもらうが、期間中にイースが傭兵を辞めた場合は、呪いを発動し残額を請求する。 契約期間満了や、残額を返済した場合は、虫下しをベスタフに与える。 契約の制約はベスタフに一方的にある。 イースにとっては、どうって事ない内容だろ」
「呪い虫を飲むのか?」
ベスタフの顔が青くなっている。
「あたり前だろ! あんたは担保なんだよ。 でも、呪い虫といっても世間一般の物と違い、私が作った特別製だ。 気持ち悪くないから、安心しな」
アモーンの声は、弾んでいる。
しかし …。
尖った三角帽子を被り、引きずるようなマントを羽織り黒ずくめの服装で、手に杖を持ち、童話に出てくる魔女のようで怪しさが半端ない。
俺とベスタフは、不安で顔を見合わせた。
「ウダウダ考えてるんじゃないよ。 覚悟を決めな!」
アモーンは、自信に満ちた声を出した。
「イースは、良いのか?」
ベスタフの縋るような目を見て、俺は断れなかった。
「ああ」
俺は、覚悟を決めた。
「決まりだな!」
アモーンは、遮るように会話に割り込んで来ると、目の前に黒い丸薬を置いた。
小さな種ほどの大きさだが、よく見ると、無数に足がある虫が丸まっており、モジャモジャと動いていて、紫の目が光っている。
鳥肌が立つほどに気持ち悪い。
「ベスタフ! 上を向いて口を開けて、契約を受け入れると心の中で叫べ」
アモーンに言われ、ベスタフが口を開けると、丸薬が吸い込まれるように口に飛び込んだ。
その瞬間、ベスタフはブルッと震えた。
そこまでする価値が、この俺にあるのだろうか?
ベスタフを見ると、下を見て落ち込んでいる。
「さあ、どうするんだ!」
アモーンが、ドスの効いた声を出して言い放つ。
それは、男かと思うほどの低い声だった。
「ギルド長を辞めた俺に、10億シーブルの支払い能力はない。 だからと言って、イースに迷惑を掛けられない。 一生、働いたとして、全額を返せると思えないが …。 その条件で良ければ、この俺を雇ってくれ」
ベスタフは、蚊の鳴くような小さな声を出した。
「イースは、それで良いのか?」
アモーンは、俺に話しかけてきた。
その声は、さっきと違い、優しい女性らしい声だ。
器用に使い分けているようだ。
「傭兵になった場合、どこへ派遣されるんだ?」
「今なら …。 戦争をしてるベルナ王国かサイヤ王国、他には、ギルドの治安維持要員や貴族の私兵あたりかな …」
「俺は、ベルナ王国に対して恨みを抱いているから、そこに派遣されるのは嫌だ」
「だったら、サイヤ王国が良い! 私は、パウエルの知り合いなんだ。 会えるようにしてやる。 敵国であるベルナ王国に、その恨みとやらを晴らしてやれ!」
「パウエルと知り合いなのか?」
アモーンの話に、ベスタフが驚いたような声を出したが、俺には意味が分からなかった。
「パウエルって、誰なんだ?」
「知らないのか? 北部戦線に派遣された、統括最高司令官だ。 前線において、国王の権限を与えられた、ある意味、国の参謀以上の地位の男だ」
アモーンは、少し呆れたような声で話した。
「もしかして、ワムと繋がっているんじゃないのか?」
「パウエルは、どの派閥にも入っていない。 元々は近衛騎士団長で、国王の信任が厚く、勅令により北部戦線統括最高司令官を仰せつかった。 彼は、戦略に長けた魔法剣士だ。 剣技に優れ、神殿の石柱を崩さずに一刀両断するほどの腕前があるが、イースにできるか?」
「大木はできるが、石柱はやって見ないと分からない。 それより、そいつと直に話せるのか?」
「ああ、もちろんさ。 パウエルが、近衛騎士団長だった頃からの知り合いさ。 VIPトラベルカードで、いつでも情報交換できるのさ。 実を言うと、奴とはマブ達なんだ! フフッ」
アモーンは、得意げに笑った。
「その前線には、どのくらいの傭兵を派遣してるんだ?」
「1,000名ほど派遣している。 これは、企業秘密だからな。 最も、50万の兵と、200名の魔道士を集めているから、1,000名なんて数からいえば微々たるものさ」
「ベルナ王国にも派遣してるんだろ?」
「それは言えない、企業秘密さ。 でも、イースの派遣先は、サイヤ王国で決まりだな」
「いや、引き受けると決めた訳じゃないが …。 ここは、最南端にあるエジプサン共和国だが、どうやって戦場まで行くんだ?」
「我が社のVIPトラベルカードを無償で貸与する」
「VIPトラベルカードって何だ?」
「トラベルカードを知らないのか?」
アモーンが呆れたような声を出すと、そこにベスタフが口を挟んできた。
「イース。 トラベルカードとは、アモーンの空間魔力を活用した移動魔道具なんだ。 カードでアモーンと交信できるようになっていて、彼女に移動要請をして、認められれば望む所に飛ばしてもらえるんだ。 普通のカードだと5千万シーブルで販売されていて、定期的に更新が必要なんだ。 そのカードなら、俺も持っている」
ベスタフは、自慢げに話した。
「よし、良い雰囲気になった。 これから、傭兵契約の条件を説明するが良いな!」
アモーンは、俺とベスタフの方に、交互に顔を向けた。
フードを被っているから表情は見えないが、唯一見える口元の口角が上がっている。
俺とベスタフが頷くと、アモーンは話し始めた。
「まず、契約期間は10年だ。 イースが1年働くと1億シーブル減る。 10年の期間中にベスタフが死んだ場合は、契約は解消となる。 ベスタフには、呪い虫を飲んでもらうが、期間中にイースが傭兵を辞めた場合は、呪いを発動し残額を請求する。 契約期間満了や、残額を返済した場合は、虫下しをベスタフに与える。 契約の制約はベスタフに一方的にある。 イースにとっては、どうって事ない内容だろ」
「呪い虫を飲むのか?」
ベスタフの顔が青くなっている。
「あたり前だろ! あんたは担保なんだよ。 でも、呪い虫といっても世間一般の物と違い、私が作った特別製だ。 気持ち悪くないから、安心しな」
アモーンの声は、弾んでいる。
しかし …。
尖った三角帽子を被り、引きずるようなマントを羽織り黒ずくめの服装で、手に杖を持ち、童話に出てくる魔女のようで怪しさが半端ない。
俺とベスタフは、不安で顔を見合わせた。
「ウダウダ考えてるんじゃないよ。 覚悟を決めな!」
アモーンは、自信に満ちた声を出した。
「イースは、良いのか?」
ベスタフの縋るような目を見て、俺は断れなかった。
「ああ」
俺は、覚悟を決めた。
「決まりだな!」
アモーンは、遮るように会話に割り込んで来ると、目の前に黒い丸薬を置いた。
小さな種ほどの大きさだが、よく見ると、無数に足がある虫が丸まっており、モジャモジャと動いていて、紫の目が光っている。
鳥肌が立つほどに気持ち悪い。
「ベスタフ! 上を向いて口を開けて、契約を受け入れると心の中で叫べ」
アモーンに言われ、ベスタフが口を開けると、丸薬が吸い込まれるように口に飛び込んだ。
その瞬間、ベスタフはブルッと震えた。
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