【神とも魔神とも呼ばれた男】

初心TARO

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第3章 孤独の先に

第86話 旅立ち

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 ベスタフは、気を使っていたようで、最初こそ戸惑っていたが、メディアの気さくな性格が良かったのか、次第に打ち解けていった。

 メディアに、これまでの経緯を打ち明けると、彼女はとても心配した。
 しかし、ワムの気性が変わってしまった事については、寂しそうな顔をしただけで、何も言わなかった。
 彼女が傷ついているのが分かるから、俺とベスタフも、その事については触れないようにした。


 一緒に過ごしていて分かったのだが、メディアもベスタフも、頭が良くて、とても頼りになる存在であった。
 傭兵として派兵された時に、2人は、俺の司令塔の役目を果たしてくれるだろう。
 孤独な展開が待ち受けていたとしても、2人と繋がっていると思うと、とても気が楽になった。

 俺は、アモーンから預かった特大水晶以外に、通信手段となり得る水晶と、大切な魔道書を置いて行く事にした。
 魔道書を見ていると、マサンを思い出してしまう。彼女が居てくれたらと思うが、いまだに連絡がつかない。その事を考えると、やりきれない気持ちになってしまう。
 
 
 マサンが造った亜空間では、狩りをしたり美味しい料理を造って食べたりした。
 こんな穏やかな日々を過ごせるなら、復讐など、どうでも良いように思えてきた。
 
 自分は何をしたいのか?
 自分の生きる意味が、分からなくなり始めていた。

 そんな数日が経った頃の事である。
 突然、ポーチの中の、VIPトラベルカードが鳴り出した。


「イース。 ついに、呼び出しが来たな」

 ベスタフが、俺の方を見て言った。
 メディアは、心配そうに肩に手を置いた。

 俺は、2人に目配せをした後、VIPトラベルカードをポーチから取り出して覗き込んだ。


「いつまでも遊んでるんじゃないよ! その亜空間から、直ぐに出な!」

 あいかわらず、威張った口調の音声が聞こえる。


「ここから、俺の身体を前線まで飛ばせば良いだろ!」

 ここの生活を邪魔されたため、アモーンに対し不機嫌に返答をしてしまった。


「ずいぶん、偉そうな態度だな …。 まあ、良い。 いくら私が高魔力でも、さすがにマサンの造った亜空間には力が及ばない …。 でもね、特大水晶は操れるから、あんたが妙な真似をしたら、ベスタフの中の呪い虫を暴れさすよ!」

 アモーンの容赦のない声が聞こえると、ベスタフは青い顔をして震えた。


「直ぐに、その亜空間を出な!」

 再び、アモーンの大きな声が聞こえた。


「分かった、直ぐに出るから …」

 俺は、ベスタフとメディアに挨拶をして、マサンの亜空間を出た。
 そして、異空間に着くと、例の一本道をひたすらに歩いた。
 
 歩いていると、不思議な事に、段々と辺りが薄暗くなってきた。
 気が付くと、俺は、星空が輝く夜の景色の中に立っていた。


「ここは、何処だ?」
 
 俺は、凄く惨めな気持ちになった。


「そのまま、歩きな。 そうすれば、その内に陣営にたどり着くさ。 着いたら、VIPトラベルカードを出して、マサンの弟子が来たと告げるんだぞ!」

 ポーチの中から、アモーンの声がした。
 始終、彼女に見張られているようで、また、惨めな気持ちになった。


◇◇◇


 あれから、10キロほど歩いただろうか?
 遠くに、街の灯りが見えてきた。

 しかし、だんだん近づくにつれ、その様相は変わってきた。
 灯りの正体は、数えきれないほどの多くのテントであり、一目見て、戦場の野営地である事が分かった。

 テントの大きさは20人程度が入れるだろうか?
 星の数ほどあるが、かなりの人数がいる事が伺える。


「おい! おまえは誰だ?」

 早速、見張りの兵士に発見されてしまった。
 俺は、アモーンに言われた通り、VIPトラベルカードを出して、マサンの弟子だと告げた。

 すると、相手は酷く恐縮した態度に変わり、上官の元に案内された。


「私は、小隊長のコスターだ」

 上官は、筋骨隆々の、いかにも軍人といったタイプの男だ。


「イースと言います」

 軽く会釈すると、コスターは、俺の顔を食い入るように見つめた。


「ダンジョンの街での事は聞いている。 早速だが、パウエル統括最高司令官に会ってもらう。 用意した馬車があるから、一緒に乗ってくれ」

 その後、コスターと一緒に馬車に乗り込んだ。
 改めて見ると、テントの灯りが遥かかなたにまで見える。


「なあ。 君は、かの有名なマサンの弟子なんだろ。 美しいと聞いたが、彼女は、どんな感じの人なんだ?」

 コスターは、武骨な雰囲気に似合わず、気軽に話しかけてきた。
 マサンは姉弟子だが、ここまできたら否定しない方が良いように思えた。


「うーん、見た目は確かに美しいけど …。 性格は、男みたいだよ」


「性格が男みたいだと …。 伝説の魔導士ジャームの弟子だから、普通じゃないという事か」


「いや、サバサバした性格と言うだけで、とても優しい人だ」


「そうか、美しくて優しいのか …。 一度、会ってみたいものだ」

 コスターは、強面の顔でニヤっと笑った。


「ところで。 この戦線には、どの位の兵が投入されているんだ?」


「テントの灯りの数を見て驚いたんだろ。 ベルナ王国軍より遥かに多い数だが、まだ、足りない」

 
「エッ! まだ、増えるのか …」

 俺は、兵士の数の多さに思わず息を呑んだ。

 
「それより …。 パウエル統括最高司令官が居るテントまでは、かなり時間がかかるから、少し寝ておけ」

 コスターは、座面を叩いてニヤッと笑った。
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