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第3章 孤独の先に
第99話 攻撃するマサン
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広大とはいえ、地下空間での大爆発である。
しばらくの間は、落盤や、その土煙により確認できなかったが、次第にホロブレスの巨体が見えてきた。
奴は、無傷だった。
「爆炎系の魔法は効かなかった。 かと言って、結界で囲んでも、口からの衝撃波によって破られてしまう。 地底竜だから、冷却系にも耐性があるはずだ。 口の中は急所と思われるから、剣による波動攻撃が有効かも知れない。 しかし、衝撃波や火炎ブレスを避けて攻撃できるだろうか? 命懸けになってしまう …。 いや、その前に、あれがあった!」
マサンは、地面に魔方陣を素早く書いて立つと、魔杖を高く掲げ、高らかに呪文を唱えた。
ホロブレスは、直ぐにマサンを見つけて、尻尾の先端にあるハンマーのような部位で、彼女を叩き潰そうとした。
ドドドッーン!!!!
尻尾の先端が当たった地面に、巨大なクレーターが出現したが、マサンの姿はどこにも無い。
恐らくは、移動魔法を併用したのだろう。
次の瞬間、ホロブレスの背後に、強烈な稲妻が走った。
巨大な身体を次々と蝕むようにバチバチと火花を散らしながら、最後には青白い炎が全身を包む。
それは、大規模な雷撃攻撃であった。
伝説の魔獣といえど、動けないようだ。
雷撃による炎は極めて高温だ。
次第に、巨大な消し炭になると思い、マサンは注意深く観察した。
そして、再び、魔杖を高く掲げ、高らかに呪文を唱えた。
ホロブレスの全身に、さらに、強烈な稲妻が走り、バチバチと火花を散らし、青白い炎に包まれる。
まるで、電気溶融されているようだ。
「今のは、特別なおまけだぞ!」
マサンは、苦しそうに叫ぶ。
度重なる極大魔法の消費に、彼女の顔は歪んでいた。
しばらく時間が経過した。
かなり長く感じられたが、実際には10分程度だろう。
それでも …。
魔石により、かなり魔力の回復をはかる事ができた。
ホロブレスを包む青い炎が弱くなり、やがて、その巨大な姿があらわになる。
全身が、焦げたように真っ黒に変化していた。
「効いたようだな …。 最後の引導を渡してやる!」
マサンは、ポーチから幅広の長剣を取り出すと、下段に構えた。
そして、ありったけの魔力を込めて、下から振り上げる。
金色の波動が弧を描き、ホロブレスの首筋に当たり、線を描くように強く光った。
「さあ、落ちろ!」
ホロブレスのゴツゴツした巨大な頭部を見て、マサンの口角が上がった。
◇◇◇
その頃、ベルナ王国のパル村の大規模駐屯地では、ビクトリアが姿を消した事が知れ渡り大騒ぎになっていた。
べアスが一人で出てきた事を不振に思った魔石鉱山の警備兵から、連絡があった事により露見したのだ。
この大規模駐屯地は、徴兵制の拡大による兵士の増員に対応できず、機能不全に陥っていた。
命令系統は、参謀であるガーラをトップに、5人の将軍と20名の大隊長が中心となり仕切っているのだが、将軍以上の上級貴族は、普段は国都に居るため、実質的には大隊長の協議により事を決定していた。
つまり、強力なリーダーシップを取れる人材が不在だったのだ。
このような中、国都に連絡を入れ、それと並行し、魔石鉱山にビクトリアの捜索隊を送った。
また、べアスについては、捕獲のための精鋭部隊を派遣した。
ビクトリアの捜索隊は、魔石鉱山に深く入った所で、突然、連絡が途絶えてしまった。
現地の警備兵からの連絡によると、地震による落石に巻き込まれた可能性が高いとの事であった。
地震については、大規模駐屯地でも観測しており、いつになく頻発する自然現象に、不吉なものを感じていた。
また、べアス捕獲のための部隊は、森の奥深くまで追ったのだが、途中で足取りが途絶え、先に進めなくなっていた。
「べアス大隊長は、騎士だから移動魔法を使えない。 周辺に、何か痕跡があるはずだ。 探せ!」
隊長のギブスは、険しい顔で部下に命令した。
彼は、ムートのBクラス出身の魔法使いで、探索系の魔法には、絶対の自信を持っていた。
そんな時である。
魔石鉱山の方向で、大規模な土煙が上がった。
隊員全員が注目すると、いきなり山腹が崩壊した。
ドドドッーン!!!!
少し遅れて、地響きのような音が聞こえてくる。
「山が噴火したのか?」
「今まで、あの山が火山なんて聞いた事がないぞ」
隊員達は、呆気に取られ見ている。
少し遅れて、皆が度肝を抜かれる事態が起こった。
いきなり巨大な竜が出現したのだ。
かなり遠くに見えるのだが、山の大きさと比較しても、この竜が、いかに巨大であるか分かる。
グフォーンン!!!!!
巨大な翼を広げると、竜は、雄叫びとも取れる声を発した。
その直後、呼応するかのように地面が激しく揺れる。
「何だ、あれは!」
「竜なのか?」
「どこから来た?」
隊員は、口々に叫んだ。
その、あまりにも恐ろしい光景に、ベアスの捕獲どころでは無くなってしまった。
隊長のギブスは、慌てふためきつつも、魔法の水晶を介し、大規模駐屯地に緊急連絡を入れるのだった。
しばらくの間は、落盤や、その土煙により確認できなかったが、次第にホロブレスの巨体が見えてきた。
奴は、無傷だった。
「爆炎系の魔法は効かなかった。 かと言って、結界で囲んでも、口からの衝撃波によって破られてしまう。 地底竜だから、冷却系にも耐性があるはずだ。 口の中は急所と思われるから、剣による波動攻撃が有効かも知れない。 しかし、衝撃波や火炎ブレスを避けて攻撃できるだろうか? 命懸けになってしまう …。 いや、その前に、あれがあった!」
マサンは、地面に魔方陣を素早く書いて立つと、魔杖を高く掲げ、高らかに呪文を唱えた。
ホロブレスは、直ぐにマサンを見つけて、尻尾の先端にあるハンマーのような部位で、彼女を叩き潰そうとした。
ドドドッーン!!!!
尻尾の先端が当たった地面に、巨大なクレーターが出現したが、マサンの姿はどこにも無い。
恐らくは、移動魔法を併用したのだろう。
次の瞬間、ホロブレスの背後に、強烈な稲妻が走った。
巨大な身体を次々と蝕むようにバチバチと火花を散らしながら、最後には青白い炎が全身を包む。
それは、大規模な雷撃攻撃であった。
伝説の魔獣といえど、動けないようだ。
雷撃による炎は極めて高温だ。
次第に、巨大な消し炭になると思い、マサンは注意深く観察した。
そして、再び、魔杖を高く掲げ、高らかに呪文を唱えた。
ホロブレスの全身に、さらに、強烈な稲妻が走り、バチバチと火花を散らし、青白い炎に包まれる。
まるで、電気溶融されているようだ。
「今のは、特別なおまけだぞ!」
マサンは、苦しそうに叫ぶ。
度重なる極大魔法の消費に、彼女の顔は歪んでいた。
しばらく時間が経過した。
かなり長く感じられたが、実際には10分程度だろう。
それでも …。
魔石により、かなり魔力の回復をはかる事ができた。
ホロブレスを包む青い炎が弱くなり、やがて、その巨大な姿があらわになる。
全身が、焦げたように真っ黒に変化していた。
「効いたようだな …。 最後の引導を渡してやる!」
マサンは、ポーチから幅広の長剣を取り出すと、下段に構えた。
そして、ありったけの魔力を込めて、下から振り上げる。
金色の波動が弧を描き、ホロブレスの首筋に当たり、線を描くように強く光った。
「さあ、落ちろ!」
ホロブレスのゴツゴツした巨大な頭部を見て、マサンの口角が上がった。
◇◇◇
その頃、ベルナ王国のパル村の大規模駐屯地では、ビクトリアが姿を消した事が知れ渡り大騒ぎになっていた。
べアスが一人で出てきた事を不振に思った魔石鉱山の警備兵から、連絡があった事により露見したのだ。
この大規模駐屯地は、徴兵制の拡大による兵士の増員に対応できず、機能不全に陥っていた。
命令系統は、参謀であるガーラをトップに、5人の将軍と20名の大隊長が中心となり仕切っているのだが、将軍以上の上級貴族は、普段は国都に居るため、実質的には大隊長の協議により事を決定していた。
つまり、強力なリーダーシップを取れる人材が不在だったのだ。
このような中、国都に連絡を入れ、それと並行し、魔石鉱山にビクトリアの捜索隊を送った。
また、べアスについては、捕獲のための精鋭部隊を派遣した。
ビクトリアの捜索隊は、魔石鉱山に深く入った所で、突然、連絡が途絶えてしまった。
現地の警備兵からの連絡によると、地震による落石に巻き込まれた可能性が高いとの事であった。
地震については、大規模駐屯地でも観測しており、いつになく頻発する自然現象に、不吉なものを感じていた。
また、べアス捕獲のための部隊は、森の奥深くまで追ったのだが、途中で足取りが途絶え、先に進めなくなっていた。
「べアス大隊長は、騎士だから移動魔法を使えない。 周辺に、何か痕跡があるはずだ。 探せ!」
隊長のギブスは、険しい顔で部下に命令した。
彼は、ムートのBクラス出身の魔法使いで、探索系の魔法には、絶対の自信を持っていた。
そんな時である。
魔石鉱山の方向で、大規模な土煙が上がった。
隊員全員が注目すると、いきなり山腹が崩壊した。
ドドドッーン!!!!
少し遅れて、地響きのような音が聞こえてくる。
「山が噴火したのか?」
「今まで、あの山が火山なんて聞いた事がないぞ」
隊員達は、呆気に取られ見ている。
少し遅れて、皆が度肝を抜かれる事態が起こった。
いきなり巨大な竜が出現したのだ。
かなり遠くに見えるのだが、山の大きさと比較しても、この竜が、いかに巨大であるか分かる。
グフォーンン!!!!!
巨大な翼を広げると、竜は、雄叫びとも取れる声を発した。
その直後、呼応するかのように地面が激しく揺れる。
「何だ、あれは!」
「竜なのか?」
「どこから来た?」
隊員は、口々に叫んだ。
その、あまりにも恐ろしい光景に、ベアスの捕獲どころでは無くなってしまった。
隊長のギブスは、慌てふためきつつも、魔法の水晶を介し、大規模駐屯地に緊急連絡を入れるのだった。
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