他力本願のアラサーテイマー ~モフモフやぷにぷにと一緒なら、ダークファンタジーも怖くない!~

雑木林

文字の大きさ
35 / 239
二章 子供たちの冒険編

35話 図書館

しおりを挟む
 
 ──商業ギルドに登録して、正規の商人になった私は、午後から街の図書館へと赴いた。
 そこは紙の香りが漂う広々とした空間で、高さが十メートルもある本棚が整然と並べられている。机や椅子なんかの調度品が高級感に溢れていて、上流階級の人が利用する場所っぽい。

 今の私は身形が百点満点だから、すまし顔でもしていれば問題なく利用出来ると思うけど、内心ではビクビクだよ。
 とりあえず、受付のお姉さんのところに行けばいいのかな。

「本を読みに来ました。受付をお願いします。それと、従魔は一緒でも大丈夫ですか?」

「入場料は銀貨三十枚になります。従魔の連れ込みは許可されていないので、こちらでお預かりさせていただきます」
 
「分かりました。……スラ丸、ティラ、大人しくしていてね」

 私が入場料を支払った後、スラ丸とティラはしょんぼりしながら、受付のお姉さんに連れて行かれた。
 ルークスたちもいないし、正真正銘の一人ぼっちで行動するのって、初めての経験かも……。
 図書館の中で誰かに襲われるなんて、まずないことだと思うけど、どうしても心細くて不安になってしまう。

 『早く調べ物を済ませて帰ろう!』という気持ちと、『銀貨三十枚も支払ったんだから、思う存分本を読もう!』という気持ちが、頭の中でせめぎ合っている。

「うーん……。お金が勿体ないから、沢山読んでおくべきだよね……」

 お目当ての本を探して歩いていると、すぐに発見した。
 職業関連の本棚に、魔物使いのための本が何冊もあったよ。それらを手に取って、ぺらぺらと頁を捲り、内容を確認していく。

 ヤングウルフは高い社会性と忠誠心を持ち合わせている魔物で、一度でも進化すれば戦闘力が大きく伸びる。けど、進化していない場合、レベル1の魔物使いでも倒せるほど弱い。……まぁ、小犬みたいなものだからね。
 そんな理由があって、ヤングウルフは新米の魔物使いに、従魔としてお勧めされている。だから、判明している進化条件も多かった。


 『シーウルフ』──手足に水掻き、尻尾にヒレが付いて、水中を泳げる狼の魔物。ただし、肺呼吸のままなので、長時間の潜水は出来ない。
 進化条件は水の魔石を沢山食べさせること。ペンギンが落とす魔石だから、安価で入手出来るよ。
 シーウルフはアクアヘイム王国に、広く分布している。この国に生息しているヤングウルフの大半は、シーウルフの親から生まれてくるみたい。

 進化して取得するスキルは【流水皮膜】──これは流れる水を体表に纏って、水中を素早く泳げるようになる他、威力が低い攻撃を受け流せるという効果もある。
 私が冒険者だったら、迷わずシーウルフに進化させていた。流水海域での活動が得意そうだからね。


 『アイスウルフ』──体毛が微かに冷気を放っている狼の魔物。その冷気は任意で抑えることが出来ないので、常に身体が冷たい。
 進化条件は氷の魔石を沢山食べさせること。アザラシが落とす魔石だから、安価で入手出来るよ。

 進化して取得するスキルは【氷牙】か【氷爪】の二通り。氷属性のダメージが追加される噛み付き攻撃か、切り裂き攻撃らしい。牙と爪、使用頻度が高い方のスキルが手に入る。
 分かりやすく戦闘力が上がるから、悪くないんだろうけど……ティラのモフモフが冷たくなるの、嫌だよね。


 『ロックウルフ』──体毛が石のような質感で、防御力がとても高い狼の魔物。ただし、敏捷性がヤングウルフよりも低い。
 進化条件は土の魔石を沢山食べさせること。この街に存在するダンジョンの一つ、無機物遺跡で沢山手に入る魔石だから、水と氷の魔石に並んで安価だよ。

 進化して取得するスキルは【岩石皮膜】──これは体表を岩のように硬くして、元々高い防御力を更に高くしてくれるみたい。ただし、元々低い敏捷性が更に低くなってしまう。

 どう考えても、ロックウルフは防御特化の魔物だね。役割はシュヴァインくんと同じタンクだけど、スキル【挑発】を持っていないから微妙かも……。
 敵視を集める道具、ヘイトパウダーを使えば活躍させられる。でも、突発的な有事の際に、道具を使っている暇があるか分からない。
 そもそも、ティラのモフモフが硬くなるのって、私としては大きなマイナスポイントだ。


 『シャドーウルフ』──暗い場所に溶け込むような、黒い体毛を持つ狼の魔物。不意打ちは得意だけど、正面切っての戦闘はあんまり得意じゃない。
 進化条件は闇の魔石を沢山食べさせること。聖女の墓標で手に入る魔石だから、スラ丸に拾って来て貰えばタダで集められるよ。

 進化して取得するスキルは【潜影】──これは影の中に潜って、身体を物理的に隠せるという効果があるみたい。影の中に誰かを連れ込んだり、道具を仕舞ったりすることは出来ないって書いてある。

 他にも幾つかの進化先があったけど、すぐに進化条件を達成出来るとしたら、この四種だけかな。

「消去法で、シーウルフかシャドーウルフだけど……うーん……」

 直接的な戦闘力は、シーウルフの方が若干高いっぽい。【流水皮膜】で防御力が上がるからね。多少だけど。
 シャドーウルフの利点は、従魔の連れ込みが禁止されている場所にも、同行させられそうなこと。私の影に潜ませれば、そう簡単にはバレないと思う。
 勿論、これはルール違反だけど、私はルールよりも我が身が大事だからね。

 今、こうして一人ぼっちの心細さを体感していると、どんどんシャドーウルフが魅力的に思えてきた。【他力本願】のデメリットで、他者に攻撃出来ないという事実が、私の心を脆弱にしているよ……。

「──うん、決めた。ティラはシャドーウルフに進化させよう」

 他に調べておくべきことは……身近でテイム出来そうな魔物の情報かな。
 お店の商品を増やせる生産系の従魔と、私の身を守るのに適した戦闘系の従魔。どっちも欲しい。
 この条件で調べてみると、無機物遺跡に生息しているブロンズミミックと、ブロンズボールという魔物の情報が目に付いた。

 ブロンズミミックは青銅の宝箱に擬態している魔物で、【宝物生成】というスキルが使えるみたい。
 世の中には、お宝の場所を探知出来るスキルやマジックアイテムが存在するから、そういうものを持っている人を誘き寄せるための、餌を作るんだろうね。

 【宝物生成】は魔力の消耗が激しいので、野生のブロンズミミックは一か月に数個とか、その程度の生成速度になるらしい。
 私には魔力を譲渡する手段と、回復させる手段があるから、お宝の生成速度はそこそこ早くなるはず……。
 生成されるお宝は、ダンジョン産の青銅の宝箱に入っているものの中から、完全にランダム。その種類は数千とも数万とも言われている。

 ブロンズボールは青銅の球体そのものの形をした魔物で、【浮遊】というスキルを使って宙に浮かべるみたい。
 大きさは一メートルくらいで、攻撃手段は敵の頭上から落下するというもの。

 青銅の塊であるが故に、相当重たいから、動きは結構遅いみたい。でも、防御力が高いし、何より不眠不休で活動出来るという点が、非常に魅力的だった。
 ブロンズゴーレムという人形の魔物も、青銅の身体を持っていて不眠不休で活動出来るんだけど、こっちは地面に足が付いているから、建物の中に入れると床が抜けそうで怖い。

「ブロンズミミックとブロンズボールをテイムするとして、無機物遺跡にはどうやって行こうかな……?」

 私のお目当ての魔物は、無機物遺跡の第一階層にいるんだけど、そこは流水海域の第二階層に匹敵する難易度らしい。
 バリィさんに護衛を頼めば楽勝だけど、あんまり頼り過ぎるのもどうかと思うし……ここは一つ、ルークスたちに頼んでみよう。当然、みんなの成長を待ってからね。

 そこまで決めて、パタンと本を閉じると、服の裾を誰かに引っ張られた。

 視線を向けてみると、一人の幼女と目が合う。
 彼女の髪は青色で、立っている状態でも毛先が床に届きそうなほど長い。しかも、少しだけクルクルしている癖っ毛だから、手入れが大変そう。……それなのに、隅々まで艶々だよ。
 もうね、これだけで良家のお嬢様だって分かる。
 瞳の色は右が灰色、左が金色のオッドアイで、肌の色は雪のように真っ白。着ている服は金糸で彩られた、白い絹のローブ。

 ……やっぱり、どう見ても、市井の子供じゃないよね。
 背が私よりも頭一つ分小さいから、五歳くらいだと思う。けど……この子、ジト目で虚無を体現しているような、恐ろしいまでの無表情だ……。
 生きることを諦めた人が、丁度こんな顔をしているんじゃないかな。

「えっと、どうしたの? もしかして、迷子?」

 私がおずおずと声を掛けると、幼女は小さく頭を振る。それから、私が手に持っている魔物使い関連の本と、私の顔を交互に見遣った。

「……スイ、迷子ちがう。……あなた、魔物使い?」

「う、うん。私は魔物使いだよ。貴方のお名前は、スイちゃんって言うの?」

「……スイはスイミィ」

 スイミィちゃんは表情を微動だにさせないまま、簡潔な自己紹介をしてくれた。
 どうしよう、迷子の自覚がない迷子かもしれない。受付のお姉さんに預けるべきか、私が保護者を探して上げるべきか、悩ましいところだよ。

「スイミィちゃん、ご家族と一緒に来たの? 逸れちゃったなら、探すの手伝うけど」

「……スイ、迷子ちがう。……あなたに、お願いがある」

「と、唐突だね……。安請け合いは出来ないけど、とりあえず聞かせて?」

「……ミミックで、これのセット、作って欲しい」

 スイミィちゃんはのんびりした口調で、そう言いながら、自分の頭に付けている髪飾りを指差した。
 それは、ペンギンを模した青い石があしらわれている髪飾りだ。

 うーん……。この意匠には見覚えがある。
 アレだよね、ルークスたちが流水海域で見つけたマジックアイテム、気儘なペンギンの耳飾り。アレと同じ意匠だよ。
 
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...