他力本願のアラサーテイマー ~モフモフやぷにぷにと一緒なら、ダークファンタジーも怖くない!~

雑木林

文字の大きさ
87 / 239
三章 スライム騒動編

86話 パーティー名

しおりを挟む
 
 ゴマちゃんはスラ丸の【転移門】を使って、私のお店に直送した。
 門の向こう側にいるミケに、ゴマちゃんを手渡すと、彼はカッと目を見開いて戦慄する。

「にゃにゃっ!? こ、こいつぅ!! みゃーの強力なライバルだにゃあ!!」

「なんでライバル視……? ゴマちゃんとは仲良くしなきゃ駄目だよ」

「ご主人を癒すのはみゃーの役目にゃ!! フシャーーーッ!!」

 ミケはすっかりと、ゴマちゃんを敵視してしまった。これにはゴマちゃんも困り顔だよ。
 ここで、ローズがミケの頭を叩いて、ゴマちゃんを優しく引き取ってくれた。

「ゴマちゃんのことは妾に任せよ。ミケの調教もしておくのじゃ」

「うん、ありがとう。よろしくね」

 ローズに任せておけば安心かな。私は彼女に感謝してから、スラ丸の【転移門】を閉じた。
 この後、ペンギンと子供アザラシの襲撃を受けたけど、みんなは呆気なく一掃したよ。
 ゴマちゃんを仲間にした直後だったから、子供アザラシと戦うのは苦しかった。

 そんなこんなで、私たちは無事に第二階層へと到着。
 この階層の天候は、どんよりと曇っている。景色を楽しむような観光気分が消えて、私は気持ちを引き締めた。
 第一階層の魔物なんて、小動物だから全然怖くなかったけど、第二階層で出現する大人アザラシとセイウチは、普通に怖い。

 大人アザラシは、【吹雪】と【氷塊弾】を使って戦う後衛タイプ。
 セイウチは、【牙突】と【水壁】を使って戦う前衛タイプ。
 どちらも容易く、新米冒険者を屠れるだけの強さを持っている。

 私たちが流氷に乗って、先へ進むこと数分──

「アーシャ、セイウチの突進を【土壁】で受け止められるか、試して貰ってもいい?」

「わ、分かった! やってみる!」

 セイウチの群れが流氷に乗り込んできたとき、私はルークスにお願いされて、突進してくる奴らの前に【土壁】を出した。
 スキル【牙突】は、通常の二倍くらいの威力がある刺突攻撃だ。
 セイウチはそのスキルと長い牙を使って、【土壁】に激突したけど──無傷。
 微動だにしていないし、流石はみんなの壁師匠だね。

「ワタシの【氷壁】より、遥かに硬いな……。これなら、スノウベアーの攻撃も受け止められそうだ」

 ニュート様は私のスキルに感心しながら頷き、【氷乱針】を使ってセイウチたちを一掃する。
 扇状に広がった氷の針の絨毯が、セイウチの下腹部に突き刺さって、そのまま氷結させちゃったよ。……つ、強すぎるかも。
 セイウチは身体が重たくて、跳躍することが出来ないので、回避する素振りすら見せなかった。

「ニュートの新スキル、ちょっと強くて生意気ね! 魔法攻撃の主役はあたしなのに!」

「フン……。今まではフィオナに、活躍の機会を譲ることが多かった。しかし、今後はそうはいかないぞ」

「へぇ、宣戦布告ってことね……!? いいわっ、上等じゃない!! このパーティー最強の魔法使いの座は、絶対に譲らないんだからっ!!」

 フィオナちゃんとニュート様が、お互いを好敵手と認め合って、宣戦布告を交わした。
 競い合う相手がいると、実力ってどんどん伸びるものだよね。
 私も魔法使いだけど、攻撃魔法が使えないから、二人と同じ土俵には上がれない。

「ちょっとだけ、羨ましいなぁ……」

 私がそう呟いて、フィオナちゃんとニュート様に羨望の眼差しを向けていると、トールが二人に噛み付いた。

「オイっ、テメェらに魔法をバンバン撃たれたら、俺様が活躍出来ねェだろォが!! せめて俺様のレベルが20になるまで、引っ込ンでろや!!」

「トールってば、それが人に物を頼む態度なの? そんなに喧嘩腰だと、今まで以上に魔法を使いたくなっちゃうわよ?」

「ワタシもフィオナと同意見だ。番犬、そろそろ場を丸く収めるための物言いを覚えろ。今は仲間内のやり取りだから構わないが、部外者を前にしてもそんな調子だと、余計な諍いを生むぞ」

 フィオナちゃんとニュート様が、二人揃って文句を言いながら、トールにジトっとした目を向けた。
 トールは反省することなく、むしろ逆切れしそうになったけど、その前にルークスが割って入る。

「トールだけじゃなくて、オレとシュヴァインのレベルも20にしたいんだ。だから、フィオナとニュートは少し手加減して! お願いっ!」

 ルークスが手を合わせて頭を下げたことで、フィオナちゃんとニュート様は毒気を抜かれて、すんなりと引き下がった。
 ルークスは仲間とのこういうやり取りも楽しいのか、いつもニコニコして場の空気を弛緩させてくれる。やっぱり、このパーティーを纏められるのは、彼しかいないね。

 話が付いたところで、シュヴァインくんがおずおずと手を挙げる。

「あ、あのさ、ここから先は、敵に先手を譲って、師匠の【土壁】で防いで貰ってから、攻勢に移る……よね? ボクたちの今日の目的、師匠のレベル上げだから……」 

「そうだね、それがいいと思う。アーシャは大丈夫そう?」

「うんっ、勿論! スノウベアーの攻撃も、きちんと受け止めてみせるから!」

 ルークスが私に確認を取って、このパーティーの戦い方が決まった。

「そ、それなら、ボクは【挑発】を控えて、体当たりしてみる……!!」

 シュヴァインくんは珍しく、アタッカーとして参加するみたい。やる気があっていいね。
 この後、私たちは戦闘を繰り返して──第二階層を抜ける頃には、土の魔法使いのレベルが8になっていたよ。
 レベル10までは上がりやすいんだけど、それにしても早い。パワーレベリングの凄さを思い知らされる。

 そしていよいよ、私たちは第三階層に到着した。
 空を覆う鉛色の雲から、冷たい粉雪が降ってくる環境だけど、ここでも私とフィオナちゃんは寒さを感じない。

 男の子たちは少し寒そうだけど、スノウベアーの毛皮を使った防寒具に装備を更新しているから、大きな問題はなさそう。こっちはマジックアイテムじゃなくて、普通の装備だよ。
 最初期に私が買ってあげた中古の防寒具は、もう用済みだから、下取りに出していた。また別の新米冒険者が、使うんだと思う。

 第三階層では、流氷の上の雪掻きという一手間が必要になる。この苦労を分かち合ってから、私たちは探索を開始したよ。
 たまに大雪が降って、視界が悪くなる。そういうときは高確率で、スノウベアーが襲撃してきたけど、私たちにはティラがいるから、不意を突かれる心配はない。

 ティラにはスキル【気配感知】があるからね。
 スノウベアーの攻撃は私が難なく【土壁】で受け止めて、トールとシュヴァインくんが挟撃する。
 隙を見て背後に忍び寄ったルークスが、着実にダメージを与えて、三分も掛からずに一匹を始末出来た。

 攻撃魔法がなくても楽勝だから、みんながレベル20になったら、スノウベアーじゃ物足りなくなりそう。かと言って、マンモスの群れは絶対にまだ早い。

「ふぅ……。アーシャとティラのおかげで、一気に安定感が増したよ。レベル上げの手伝いって話だったけど、普通に肩を並べて戦えるね」

「いやぁ、そう言って貰えると嬉しいなぁ……」

 ルークスの素直な感想を聞いて、私の頬がニマニマと緩む。
 ここで、フィオナちゃんが私に抱き着いて、本格的に勧誘してきた。

「ねぇっ、アーシャ! あんた、このまま冒険者を本業にしなさいよ! あたしたちなら、どこまでも高みを目指せるわ!」

「うーん……。たまに冒険するのは楽しいんだけど、これが日常になるのは性に合わないかも……」

「むーーーっ!! じゃあ、たまにならいいのよね!? 準パーティーメンバーってことにするわよ!?」

「何も責任を負わない立場なら、全然いいよ」

 でも、そんな中途半端な立場、他のみんなは許してくれるのかな?
 そう疑問に思って周りを見回すと、誰も不満を抱いている様子はなかった。
 こうして、私は満場一致で、準パーティーメンバーという扱いになったよ。
 このタイミングで、ニュート様が何かを思い付いて、ルークスに話し掛ける。

「ルークス、折角だからアーシャに、あの件を任せてみるのはどうだ?」

「あの件って……あっ、パーティー名のこと?」

「そうだ。全員の意見がバラバラで、このままではいつまで経っても、決まらないだろう」

「確かに……。アーシャ、オレたちのパーティーの名前、決めて貰ってもいい?」

 銀級冒険者以上の固定パーティーは、名前を決める必要があるらしい。
 ルークスたちは、その名付けに難航しているんだって。

「な、なんで私が……? ネーミングセンスには自信があるけど、そんな大事なこと、みんなで話し合って決めた方がいいよ」

「それがね、トールとフィオナがお互いの案をぶつけ合って、一歩も引かないんだ」

「えぇ……。聞くのが怖いけど、二人が考えたパーティー名って……?」

 私が尋ねると、トールが自慢げに『天下無双の最強英雄軍団!!』という、男の子らしい案を発表したよ。
 そして、フィオナちゃんが挙げた案は、『ペンギン大好きクラブ』だった。
 私の感性からすると、トールの案は論外。フィオナちゃんの案は……他のみんなが、ペンギン大好きって訳じゃないから、ちょっと微妙かな。

「ほらっ、アーシャ! トールに言ってやりなさい!! あんたのネーミングセンスは酷過ぎるって!!」

「チッ、ざけンじゃねェ!! テメェのネーミングセンスの方が酷いだろォがッ!! ンな浮ついたパーティー名じゃ、有象無象に舐められちまう!!」

 トールの意見を聞いて、私は少しだけ納得しちゃった。
 荒事に関わることが多い冒険者のパーティーなんだから、名前で侮られるのはよくないよね。
 可愛い系の名前はなしにしよう。……ただ、トールの案みたいに尖り過ぎると、絡み難い印象を与えてしまう。
 横の繋がりって大切だと思うから、もっとシンプルで憶えやすい名前にしたい。

「うーーーん……。黎明、なんてどうかな?」

 熟考の末に、私が出した案。それを聞いて、ルークスが小首を傾げる。

「れいめい……? 綺麗な響きだけど、どういう意味?」

「夜明けっていう意味だよ。私たち、みんな孤児でしょ? 最初はお先真っ暗だったけど、みんなで力を合わせて未来が明るくなったから、黎明」

「「「おおー……っ!!」」」

 ルークス、シュヴァインくん、フィオナちゃんの三人からは、好感触を得られた。賛成っぽいね。

「ワタシが孤児になったのは最近で、最初からお先真っ暗だった訳ではないが……。ふむ、悪くない。名前の響きにも品がある。賛成させて貰おう」

 ニュート様も賛成してくれたから、私は最後にトールを見遣る。
 彼は感心しながら頷いているけど、やや物足りないと言いたげに、首を捻っていた。

「まァ、俺様も概ね賛成だが……一つ付け足して、強く見せてェな。『黎明の牙』──これでどうだ?」

「それいいね! 格好いいと思う! オレは賛成!」

「ぼ、ボクも、いいと思う……!! 賛成……!!」

「品格は多少落ちるが、冒険者らしいな。悪くない」

 男の子たちの意見は、『黎明の牙』で纏まったよ。
 私はフィオナちゃんと顔を見合わせて、大丈夫だよねって頷き合う。

「それじゃあ、これで決まり!! みんなっ、改めてよろしく!!」

 ルークスがそう締め括って、私たちの団結力はより強固なものになった。

 この後、スノウベアーを狩りまくって、みんなは次々とレベル20に到達したよ。
 
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

処理中です...