他力本願のアラサーテイマー ~モフモフやぷにぷにと一緒なら、ダークファンタジーも怖くない!~

雑木林

文字の大きさ
88 / 239
三章 スライム騒動編

87話 レベル20

しおりを挟む
 
 ルークス 暗殺者(20)
 スキル 【鎧通し】【潜伏】【加速】

 トール 戦士(20)
 スキル 【鬨の声】【剛力】【強打】

 シュヴァイン 騎士(20)
 スキル 【低燃費】【挑発】【炎熱耐性】【堅牢】

 ──さて、みんなのレベルが20になったから、取得した新しいスキルを一つずつ確認していこう。

 ルークスの【加速】は、瞬間的に自分自身が素早く動けるスキルだよ。
 通常時の二倍くらいまで素早くなるけど、連発しているとすぐに体力がなくなるから、注意が必要らしい。
 私は以前、ランサーモスキートという大きな蚊の魔物が、このスキルを使っていたことを覚えている。
 シンプルかつ強力なスキルだから、大当たりって言えるんじゃないかな。

 トールの【強打】は、通常の二倍くらいの威力で敵を殴打するスキルだよ。
 人間にとっても、魔物にとっても、かなりメジャーな攻撃系のスキルらしい。
 セイウチソードで有効活用出来ないのが残念だけど、全然悪くないと思う。

 シュヴァインくんの【堅牢】は、防御力を二倍にする常時発動型のスキルで、騎士に必要不可欠だと言われている。
 常に能力を上げてくれるスキルは、リソースを消耗することもないし、総じて大当たりだね。

 確認が終わった後、新スキル込みでスノウベアーと戦ってみたけど、かなり余裕で倒せるようになっていた。

「オイオイ、歯応えがなくなっちまったなァ!! もうここじゃ物足りねェぞ!!」

「あたしが暇になるって、最初の頃が懐かしいわねー」

 スノウベアーの頭部を鈍器で粉砕したトールが、喜び混じりの不満を露わにした。その後ろで、フィオナちゃんはスラ丸をぷにぷにして、戦場とは思えないほどリラックスしているよ。

 今ならみんな、スノウベアーと一対一で戦って、勝てるんじゃないかな。無論、私を除いて。
 シュヴァインくんだけは時間が掛かりそうだけど、持久戦の末に勝てるはず……。スノウベアーの攻撃なら、全部受け止められるようになったからね。

 これでもう、第三階層で恐れるものは何もない。そう思っていたところで、ティラが流氷の進行方向を見据えて、唸り声を上げ始めた。
 これは『警戒して!』という合図だけど、スノウベアーの存在を感知したときよりも、緊迫している。

 前方にあるのは、雪が降り積もっている氷の孤島。第三階層のスタート地点じゃなくて、幾つか点在している内の一つだよ。

「ルークス、あの孤島に何か見える? ティラが凄く警戒しているんだけど……」

「んー……。いや、特に何も見えないよ」

 私が問い掛けると、ルークスは首を横に振った。
 この中で一番目が良いのはルークスだから、彼が何も発見出来ないなら、他のみんなも同じだね。
 ティラの勘違いだとは考え難いから、スノウベアーよりも強い魔物、あるいは人間が隠れているのかもしれない。

「隠れてンなら探して殺ろうぜッ!! スノウベアーよりも歯応えのある敵なら、大歓迎じゃねェか!!」

「番犬、それは軽率だ。今はアーシャがいることを忘れるな」

 トールは未知の脅威に挑む気満々で、ニュート様は慎重になるべきだと諭した。
 今は護衛対象の私がいるから、それを忘れないで貰いたい。

「あたしはむしろ、アーシャがいる今こそチャンスだと思うわよ? ティラが敵の居場所を感知しているみたいだし」

 フィオナちゃんはトール寄りの意見で、シュヴァインくんは静観している。
 私は勿論、挑みたくない。……けど、ここで見て見ぬ振りをすると、ティラの索敵能力がない状態で、後日みんなが未知の脅威に襲われるかもしれない。 

 だから──

「みんなさえよければ、ティラが警戒している脅威を確かめに行かない? ティラの様子を見た感じ、手も足も出ないってことはないと思うから」

「っしゃァ!! そうこなくっちゃなァ!!」

「アーシャがそう言うのであれば、反対はしない。正直に言えば、ワタシも挑んでみたかった」

 トールが凶悪な笑みを浮かべながら気炎を揚げて、ニュート様は静かに闘志を燃やした。
 ルークスが気遣うような目を私に向けてきたけど、『大丈夫だよ』ってアイコンタクトを送る。

「──うん、分かった。それじゃあ、上陸しよう!」

 ルークスの号令で、男の子たちがスラ丸の中から、雪掻き道具を取り出した。
 そして、上陸と同時にせっせと雪掻きを行い、ティラの誘導に従って道を作っていく。
 積雪は五十センチくらいあるけど、スラ丸が重機みたいな活躍をしてくれるから、かなり簡単に進めるよ。

 こうして、辿り着いた先で、私たちは雪に覆われた巨大な氷塊を発見した。
 大きさが二十メートルくらいあるから、この先へ進むなら迂回するか、フィオナちゃんに溶かして貰うしかない。

「ワンワン!! ワンワン!!」

「え、あれ……? ティラ、この氷を警戒しているの……?」
 
 私が問い掛けると、ティラは何度も首を縦に振った。
 大きいけど、ただの氷塊。そんなものを警戒する意味が分からない。

「無機物遺跡のゴーレムみたいな魔物……? みんな、ちょっと下がってて」

 ルークスがみんなを下がらせて、自分一人で調査を始めた。何かあっても、彼一人ならすぐに距離を取れるからね。


 ──調査の結果、なんと氷塊の中に、一匹のマンモスが閉じ込められていると判明した。体長が十五メートルをやや超えるくらいで、長い牙と鼻を持つ象に似た魔物だよ。

 普通なら、こんな氷漬けの状態で、マンモスが生きている訳がない。
 でも、私はこのマンモスが生きていると、確信を持ってしまった。……だって、氷塊の中にはマンモスと一緒に、銀色の宝箱が入っているんだもの。
 これってさ、宝箱が欲しければマンモスと戦えっていう、分かりやすいイベントだよね?

「オイっ、フィオナ!! さっさとこの氷を溶かしやがれッ!! マンモスをブッ殺して宝を手に入れンぞ!!」

「ええっ、任せて!! これであたしたち、間違いなく大金持ちよ!!」

 興奮したトールが鈍器を振り被り、フィオナちゃんが魔力を漲らせた。
 通説によれば、銀色の宝箱には無価値なものなんて、一つも入っていないらしい。これは一攫千金の大きなチャンスだ。

 我を忘れるのも無理はない状況で、ニュート様が冷静に二人を制止する。

「待て、相談もなく勝手に決めるな。ルークス、どうする? 戦うのか?」

「マンモスって、第四階層だと群れている魔物だよね。ここには一匹しかいないし、試しに戦ってみたいな」

「ならば、まずは情報収集からだ。各々、ステホで奴のスキルを確認しろ」

 ニュート様に促されて、みんながステホでマンモスを撮影した。
 あの魔物のスキルは、【強打】【牙突】【氷雨】【氷乱柱】の四つ。

 【強打】と【牙突】は存知のスキルだね。

 【氷雨】は雹でも降らせるのかと思ったけど、詳細を確認してみると、超低温の液体を降らせるスキルだった。
 液体窒素の雨が降ってくると思えばいいかな……。恐ろし過ぎる。

 【氷乱柱】はニュート様の新スキルと同じに見えたけど、一文字違いだった。彼が取得したのは、【氷乱針】だからね。
 マンモスが使えるのは、自分の足元を中心に、放射状に氷の柱を乱立させるスキルだよ。

 対応し難い上下からの魔法攻撃と、強靭な巨躯から繰り出される二種類の物理攻撃。それらを使って暴れる魔物、それがマンモスなんだ。

「うーん……。とりあえず、私たちに有利な戦場を作ってみる……?」

「戦場を作る……? アーシャ、何をするつもりなのよ?」

「えっと、上下左右に【土壁】を出して、前後は開ける。この形の箱モドキを周辺に幾つも作っておけば、【氷雨】か【氷乱柱】を使われたときに、サッと逃げ込めるでしょ?」

 フィオナちゃんの質問に答えながら、私は次々と箱モドキを作っていく。一つ一つが、全員で入れるくらいの大きさだよ。
 パワーレベリングのおかげで、土の魔法使いのレベルが8まで上がっているから、とてもスムーズに作業を熟せた。

「ほぅ、アーシャは機転が利くな……。確かにこれなら、足元と上空からの攻撃に対応出来る」

 そうでしょう、そうでしょう。準パーティーメンバー、役に立つでしょう。
 私が得意げになり、ニュート様が感心している横で、シュヴァインくんがフィオナちゃんに意見を出す。

「ふぃ、フィオナちゃん……!! 【火炎槍】で、氷塊ごとマンモスを貫けたり、しない……?」

「貫けるかもしれないけど、それでいいの? あたしたちが第四階層へ挑めるかどうか、その試金石にするなら、真っ向勝負がいいわよね?」

 ここでもまた、意見が割れてしまった。
 トール、フィオナちゃん、ニュート様が真っ向勝負派。
 私、ルークス、シュヴァインくん、スラ丸×2、ティラが不意打ち派だよ。

「じゃあ、多数決で不意打ちということで」

 どう考えても、まずは不意打ちが通用するか、それを確かめるべきだと思う。
 私がそう纏めると、トールが噛み付いてきた。

「待てコラ!! 痴れっと従魔まで決に入れてンじゃねェ!!」

「スラ丸とティラだって立派な仲間なんだから、入れない方がおかしいよ。仲間外れは可哀そうでしょ」

 従魔たちは私に意見を合わせてくれるから、この場では私が四票も持っていることになるんだけど、細かいことは気にしない。
 私がトールを丸め込んだ後、マンモスの周辺で動きやすい空間を確保するべく、みんなは自発的に雪掻きを行ってくれた。

 箱モドキの設置も終わらせたところで、フィオナちゃんの先制攻撃が始まる。
 彼女が片腕を掲げると、頭上で轟々と燃え盛る炎が凝縮されて、一本の槍が形成された。

「さぁ、行くわよッ!! そーーーれッ!!」

 実際に槍を握っている訳じゃないけど、堂に入った投擲フォームを披露するフィオナちゃん。
 彼女の掛け声と共に放たれた【火炎槍】は、凄まじい速度で真っ直ぐ飛んでいく。

 そして、緋色の軌跡を描きながら氷塊を貫き、マンモスの左目に命中した。
 氷塊が溶けて水となり、あっという間に水蒸気へと変わったので、視界が遮られてしまう。

 あわよくば、これで倒せていると嬉しいんだけど──
 
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

処理中です...