他力本願のアラサーテイマー ~モフモフやぷにぷにと一緒なら、ダークファンタジーも怖くない!~

雑木林

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四章 流水海域攻略編

114話 仲間入り

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 ──私がバリィさんに、決意表明した翌日。
 早朝から、彼が私のお店にやって来た。……何故か、ツヴァイス殿下と一緒に。
 一目で強者だと分かる護衛の騎士たちを引き連れて、なんだか物々しい雰囲気だよ。ローズとミケは早々に、私を置いて裏庭へ逃げちゃった。

「よう、相棒。昨日振りだな」

「いやいやいやっ、『よう』じゃないですよ……!! なんで殿下がいらっしゃるんですか……!?」

 気軽に挨拶してきたバリィさんに、私はあわあわしながら詰め寄った。

「裏ボス攻略に参加するなら、殿下に許可を貰わないといけないだろ? だから、連れて来たんだ」 

 ツヴァイス殿下の許可は必要だろうけど、それなら私が侯爵家のお屋敷へ赴くべきだった。
 どう考えても、態々足を運ばせていい身分の人じゃないでしょ。
 私の家には客間がないから、おもてなしなんて出来ないよ?

 どうしよう、どうしようと焦っていると、笑顔のツヴァイス殿下に声を掛けられる。

「バリィの相棒がアーシャさんだったとは、とても驚きました。商人ではなく、冒険者だったんですか?」

 彼の笑顔は、物凄く白々しいものだった。声色も平坦で、全然驚いている風じゃない。多分、こんな笑顔と声色を態と作っているんだ。
 そうじゃないかとは思っていたけど、やっぱり私の情報を集めていたと見て、間違いない。

 私は自分から、ツヴァイス殿下の仲間に加わると言い出した。だから、彼は敢えて白々しい態度を見せることで、言外に『貴方を調べていました』と私に伝え、誠意を見せているんだと思う。
 これが殿下なりの、歩み寄りなのかもしれない。

 ……ここまで考えが及ぶ人間か、私を試す意味もありそう。この人、結構怖いかも。

「わ、私は商人です……。その、バリィさんの相棒呼ばわりは、あんまり気にしないでいただけると……」

「お二人の馴れ初めを聞きたいところですが、そう仰るのであれば、本題に入りましょう。とは言え、ワタシはバリィから、『俺の相棒を裏ボス攻略に参加させたい』としか、聞かされていませんが……」

 馴れ初め……。別に恋人同士じゃないんだけど、まぁいいや。スルーしよう。
 バリィさんは本当に碌な説明もなく、私とツヴァイス殿下を対面させたみたい。
 せめて私の方には、一報だけ欲しかったよ。そう思いながら、バリィさんに非難の目を向けると、彼はばつが悪そうな表情で頭を掻く。

「すまん。第一王子派の間者が、どこに潜んでいるのか分からないんだ。ツヴァイス殿下が連れてきた軍団の中に、数人くらいは混じっていても、不思議じゃないからな」

 数千人規模の軍団に、一人たりとも間者が紛れ込んでいないなんて、ちょっと考え難い。それは私にも理解出来る話だよ。

「つまり、内緒話を侯爵家のお屋敷でやるのは、危ないってことですか?」

「ああ、そうなる。相棒としては、自分の情報を知る人間なんて、出来るだけ少ない方がいいだろ?」

「そ、そうですね……。気を使ってくれて、ありがとです」

 私に一報を入れなかったのは、極力情報が漏れないように、今回の密会を行うため。そういうことなら、バリィさんを責める訳にはいかないね。
 私は彼にお礼を言ってから、お店の外に『閉店中』の看板を出して、内緒話が出来る状況を整えた。
 ツヴァイス殿下は私に気を使って、バリィさん以外の護衛を外で待機させてくれたよ。

「それでは、アーシャさん。話を聞かせて貰えますか? 貴方がどのように、裏ボス攻略に貢献出来るのか」

「はい、私に出来ることは──」

 私が実行可能な九割方の支援。その内容を恙なく、ツヴァイス殿下に伝えたよ。
 どうして九割方なのかというと、事前に決めていた通り、【再生の祈り】に追加されている特殊効果だけは、教えていないからだ。

 ……バリィさんの命と天秤に掛けても、この秘密は教えられないと判断した。
 この一線を踏み越えられないことが、私の人間性の本質を物語っている気がしてならない。
 前世の自分と比べると、これでも大分マシになったと思うんだけどね。

「──なるほど、アーシャさんの有用性は理解しました。では、肝心の志望動機は?」

「それは、バリィさん……いえっ、相棒を死なせないために!」

 ツヴァイス殿下の質問に対して、私は堂々と胸を張りながら答えを返した。
 バリィさんが表情を柔らかくして、私を見つめてくる……。ちょっと気恥ずかしい。
 殿下はそんな私とバリィさんを見遣り、眩しい光でも直視したかのように目を細めて、小さく微笑んだ。

「羨ましい関係ですね……。是非とも、ワタシも仲間に入れて貰いたいな……」

「え、あの、裏ボス攻略の仲間に入れて貰いたいのは、私の方なんですけど……」

「ああ、それは勿論、歓迎しますよ。早速ですが、アーシャさんの各種スキルの運用方法を決めましょう」

 ツヴァイス殿下は表情を改めて、キリッとしながら話を進めていく。
 まず、体力と魔力を自動回復させる【光球】は、戦場のあちこちにばら撒くことになった。
 流水海域の裏ボスは魔力が無尽蔵で、息切れを狙えないらしい。だから、敵味方の双方を照らし出しても、その恩恵は味方にしか及ばないみたい。

 移動速度を劇的に上げてくれる【風纏脚】は、カマーマさんにだけ使えばいいとのこと。
 今回の裏ボスとの戦いは、基本的に双方が距離を取った状態で、遠距離攻撃の応酬が繰り広げられるそうだよ。

 かなりの強度を誇る【土壁】は、戦場のあちこちに配置することになった。遠距離攻撃の応酬において、遮蔽物は非常に重要らしい。
 【再生の祈り】は主力メンバーの四人、ツヴァイス殿下、ライトン侯爵、バリィさん、カマーマさんに対して、使うことになった。

 複合技に関しては、必要なタイミングがくるまで温存だね。
 ここで、バリィさんが一つ、ツヴァイス殿下に注文を付ける。

「なぁ、殿下。相棒のスキルは、出来るだけ隠しながら運用してくれよ。殿下が希少なマジックアイテムを使ったとか、適当な理由を作れるだろ?」

「構いませんが、本当にいいんですか? その場合、名声がワタシのものになってしまいますが……」

 二人にチラっと視線を向けられたから、私は大きく首を縦に振る。

「全然いいですよ! 私は名声なんていらないので、殿下が有効活用してください!」

「そうですか……。正直、助かります。ワタシの求心力が高まるので」

 目立ちたくない私と、目立ちたいツヴァイス殿下。双方の利益が一致した。
 話が纏まったところで、殿下は『そうだ』と呟き、言葉を続ける。

「ワタシばかりが、アーシャさんの情報を知っているというのも、なんだか申し訳ない。ワタシのステホをお見せしておきましょう」

 いつかのバリィさんみたいに、ツヴァイス殿下が自分のステホを私に差し出してきた。こういう配慮をして貰えると、好感度が上がるね。

 ツヴァイス=アクアヘイム 雷の魔導士(10)
 スキル 【電球】【発電】【雷撃】【電撃網】
     【気配感知】【加速】【迅雷】【雷雲招来】

 雷の魔法使いレベル1→40を経て、上位職の雷の魔導士に転職。その後、現在のレベルまで上げたみたい。
 魔導士のレベル1→10って、魔法使いのレベル40→50に匹敵する経験が必要だとか……。
 そう考えると、ツヴァイス殿下って凄い人だね。王族という立場でありながら、レベル相応の経験をしているはずだもの。

 一つ目のスキルから順番に、『触れると感電する拳大の球を浮かべる』『運動すると雷属性の魔力が回復する』『対象に向かって雷を撃つ』『対象を電気の網で拘束して痺れさせる』というもの。

 【気配感知】と【加速】は、魔法使いの職業スキルではない。殿下曰く、ウルフ系の魔物が出現するダンジョンから、運よく出土したスキルオーブを使って、取得したものらしい。
 前者は周囲の存在の気配を感知するスキルで、ティラも持っているやつだよ。
 後者は一時的に素早く動けるスキルで、魔導士に必要なのか疑問だったけど、これを使えば書類仕事が捗るんだって。手を素早く動かせるからね。

 【迅雷】は一定時間、任意の対象の敏捷性を上げる支援スキルで、私が物凄く欲しいやつだった。羨ましい。
 【雷雲招来】は雷雲を発生させて、敵味方を問わず落雷で無差別に攻撃するという、恐ろしいスキルだよ。これは雷の魔導士の職業スキルで、上級魔法に分類されている。

 魔法使いは下級、中級魔法しか取得出来なくて、魔導士になると上級魔法が取得出来るようになるみたい。
 私の場合、攻撃系のスキルは取得出来ないんだけど、上級魔法の支援スキルとかあるのかな……?
 そんな疑問を抱きながら、私はステホを殿下にお返しする。

「知らないスキルがいっぱいありました……!! 物凄く強そうですね……!!」

「ええ、自慢のマジックアイテムもあるので、戦力としては期待しておいてください」

 ツヴァイス殿下はそう言って、自信に満ちた微笑みを浮かべたよ。
 この後も少し話を聞いてみたら、彼は資金力に物を言わせて、【雷雲招来】を強化するマジックアイテムを買い集めたらしい。

 魔導士になり、上級魔法を一つ取得して、それを強化するためのマジックアイテムを五つ集める。それが、王侯貴族の流行なんだとか。
 ライトン侯爵も、その流れに乗った貴族の一人だね。

 裏ボス攻略の決行は、三日後。
 それまでに、私は出来る限りの準備をしておこう。
 
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