他力本願のアラサーテイマー ~モフモフやぷにぷにと一緒なら、ダークファンタジーも怖くない!~

雑木林

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六章 聖女の墓標攻略編

185話 新しい従魔

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 ──熟考の末、私はリリィをテイムすることにした。
 今現在、私のお店に並べているポーションは、スキル【土塊兵】を使って、土の人形に作らせている。
 この人形だと、ポーションの品質を向上させたり、改良することは出来ない。
 その辺りをリリィに任せれば、大きな利益になると思うんだ。

 それと、スライム騒動の発端は私なので、リリィが処刑されてしまったことに、少しだけ罪悪感が湧いた。
 九割九分九厘、悪いのは暗躍していた大商人だけどね……。
 私自身の僅かな罪悪感を払拭するために、リリィの面倒を見よう。

 彼女の心に、目に見えない繋がりを伸ばすと、過去最速で受け入れられた。
 なんだか、ねっとりと繋がっている感じで、背中がゾワゾワする。

「うへぇ……。なにこの感覚……」

「ふひっ、ふひひひひっ、美少女にテイムされてしまいましたわ……ッ!! あぁっ、めくるめく官能の従魔生活が、今日から始まりますのね……!!」

 顔を顰めている私の周りで、リリィは上機嫌に円舞曲のステップを踏んでいる。
 かなり様になっているのに、だらしない表情のせいで台無しだ。

「アーシャ、本当によかったの? こいつ、どう考えてもヤバイ奴よ?」

 フィオナちゃんが私を見遣って、心配そうに声を掛けてくれた。

「うーん……。早くも後悔しそうだけど……一度決めたことだし、きちんと面倒を見るよ。リリィ、私のことはアーシャって呼んでね」

「了解ですわぁ!! アーシャさんっ、末永く可愛がってくださいまし!!」

 リリィは花が咲くような笑顔を浮かべて、綺麗なカーテシーを披露してくれた。
 衣服が襤褸じゃなくてドレスだったら、見惚れていたかもしれない。

「それじゃあ、早速だけどポーション作りを任せるね」

「はいっ!! それで、わたくしはどなた様に、【憑依】すれば宜しいんですの?」

「えっ、あ、そっか……。誰かに憑りつかないと、物に触れないんだ……。これ、使える?」

 私がスキル【土塊兵】を使って、土の人形を用意すると、リリィはこれに飛び込んで【憑依】した。
 人形の頭に金髪縦ロールが生えたので、成功だと一目で分かる。
 リリィはその身体を軽く動かしてから、すぐに【憑依】を解除したよ。

「この身体は……指先が硬すぎて、繊細な作業が出来そうにありませんわね……。味覚や嗅覚もないので、ポーション作りには致命的かと……」

「えぇぇ……。つまり、人の身体に【憑依】したいってこと……?」

「はい、可能であれば……」

 私はリリィの要求を聞いて、難しい顔をしながら腕を組む。
 自分の身体を快く貸してくれる人なんて、簡単に見つかるとは思えない。
 奴隷を買って無理やり借りるというのは、絶対に嫌だし……困ったね。
 ここで、スイミィちゃんが両腕を広げて、リリィに身体を貸し出す構えを取る。

「……スイ、ちょっとだけ、興味ある。……リリィ、ばっちこーい」

「び、美少女とわたくしが、合体……っ!? いいんですの!? いえっ、今更ダメと言われてもイキますわよッ!!」

「ちょっ、待っ──」

 私が制止する前に、リリィはスイミィちゃんの身体に、頭から突っ込んで──呆気なく弾かれた。
 霊体なのに、リリィの頭にはたんこぶが出来ている。
 彼女は自分より強い相手に、乗り移れないんだ。

「い、痛いですわぁ……!! ど、どうしてっ!? どうして美少女と合体出来ませんの!? わ、わたくしが女だから!? おち〇ちんが生えていないから!? 嗚呼っ、憎い!! わたくしに生やしてくれなかった神様が憎いですわっ!!」

 地団駄を踏むリリィから、私たちは一歩だけ距離を取った。
 この一歩は、物理的に大した距離じゃなくても、心理的には長大な距離だと思って貰いたい。

「ねぇ、アーシャの分身を貸してあげたら?」

「えぇっ!? 分身とは言え、リリィに私の身体を貸すのは……」

 フィオナちゃんの提案を聞いて、私は頬を引き攣らせた。
 スキル【遍在】で生み出した分身は、職業選択をしていない状態の私だから、リリィでも問題なく乗り移れると思う。
 彼女が動かしてくれるなら、私の並列思考を割く必要もないし、実益だけを考えたら最適解だよ。

 いやでも、でもなぁ……。リリィは私の分身を使って、エッチなことをするかもしれない。
 その危惧をみんなに伝えると、リリィが私にしがみ付いてきた。

「しませんわ!! エッチなことは絶対にしないと、心のおち〇ちんに誓いますのでっ、美少女の身体と合体させてくださいましっ!! それだけでっ、それだけでわたくしは!! 馬車馬の如く働くと誓いますの!!」

「う、うわぁ……」

 リリィの懇願には、さっきの命乞いよりも、鬼気迫るものが籠められていた。

「にゃあ……? フィオナ、心のおち〇ちんって、どういう意味にゃ?」

「馬鹿ミケ、あたしに聞くんじゃないわよ」

 リリィの言動に翻弄されているミケが、ぐるぐると目を回しながら、フィオナちゃんに質問した。
 フィオナちゃんはそんなミケの頭を小突いて、小さく溜息を吐く。
 これ以上、リリィに構っていると、みんなの正気度が下がりそうだね。

「分身、分身かぁ……。どうしようかなぁ……」

 リリィに私の分身を貸したとしても、スラ丸に見張らせれば、エッチなことは防止出来るかもしれない。
 私は暫し逡巡してから、監視があっても構わないかと、リリィに尋ねてみた。
 すると、彼女は首が千切れそうな勢いで、頻りに頷く。

「監視でもなんでもっ、受け入れますわよ!! だからっ、アーシャさんの身体を貸してくださいましぃ!!」

「うーーーん……。まぁ、うん。分かった、貸してあげる。でも、変なことをしたら、即成仏させるからね?」

「うっひょおおおおおおおおおおっ!! ですわ!! 合体!! 合体!! 美少女と合体!!」

「……リリィ、ばいばい早そう」

 スイミィちゃんが、みんなの気持ちを代弁したところで、私は一旦自室に移動する。
 それから、新しく生み出した分身に衣服を着させて、お屋敷に常駐しているスラ丸五号を呼び出し、スイミィちゃんの部屋へと戻った。
 ちなみに、この分身の名前はウーシャだよ。

「はいこれ、大切に使ってね」

「──ッ!!」

 リリィは返事をする時間も惜しいと言わんばかりに、ウーシャの身体に突っ込んだ。
 今度はスッと中に入って、無事に憑依出来たみたい。
 ウーシャは金髪縦ロールになって、顔立ちがリリィに寄った気がする。

「こ、これが、アーシャさんの温もり……っ!! ふひっ、ふひひひひっ、ぬ、温もりがしゅごいですわぁ……!! 嗚呼っ、合体したことで、わたくしの心のおち〇ちんが、アーシャさんの心の──」

 リリィがうっとりしながら、自分で自分を抱き締めて、看過出来ないことを言おうとした。
 私が命じるまでもなく、スラ丸五号が【浄化】を使って、彼女の言葉を遮る。
 リリィは再び『あばばばばばば!!』と、大きな悲鳴を上げて、ウーシャの身体から剥がれ落ちた。

「スラ丸、その調子でお願いね」

「!!」

 五号は大きく縦に伸縮して、私の尊厳を守る決意を示してくれたよ。
 今日からこの子が、リリィの監視役だ。


 ──さて、リリィの一件は、これでヨシ。
 私たちは厨房に移動して、朝食の準備を始める。フィオナちゃんには料理を教えて、スイミィちゃんには味見を任せるんだ。
 その最中、私は次のテイムに関して、二人に相談を持ち掛けてみた。

「新しい魔物をテイムして、二軍のメンバーに入れたいんだけど、どんな魔物がいいかな?」

 フィオナちゃんが真っ先に挙手をして、自分の意見を私にぶつけてくる。

「そんなのペンギン一択よ!! 前は家のスペースの問題で却下されたけど、今ならいいわよね!?」

「……フィオナ、いいこと言う。たまに」

 スイミィちゃんはペチペチと拍手して、フィオナちゃんの意見を支持した。

「あんたね、『たまに』は余計なのよ! あたしの言葉は一言一句、値千金なんだからっ!」

 二人とも、どうしても私に、ペンギンをテイムして欲しいみたい。
 出来るだけ希望に沿ってあげたいけど、ペンギンは弱いから悩ましい。

「本当にペンギンでいいの? 戦力にならないと思うよ?」

「進化させればいいじゃない! どんな魔物でも、進化させれば強くなるはずだわ!」

「それは、そうなんだけど……何事にも、限度があるから……」

 愛玩用にペンギンを一匹くらいテイムするのは、全然構わないんだ。
 でも、二軍メンバーに同行させるのは、ちょっと躊躇われる。
 進化するまでは足手纏いだし、一段階、二段階と進化させた程度で、ペンギンが役に立つのかどうか……。
 私がそんなことを考えていると、スイミィちゃんが服の裾をギュッと握り、上目遣いで見つめてきた。

「……姉さま、おねがい。……スイ、ペンギンがいい」

「うっ、その目は……!?」

 ウルウルしているジト目に、思いっきり心が揺さぶられてしまう。
 これは、末っ子根性が染みついている眼差しだよ。
 私の首は自ずと縦に動いて、スイミィちゃんのお願いを受け入れた。

「スイミィっ、よくやったわ!! アーシャが心変わりしない内にっ、流水海域へ行くわよ!!」

「……フィオナ、待つ。……これで、ペンギン呼べる」

 今すぐ駆け出そうとしたフィオナちゃんを制止して、スイミィちゃんが自分の髪飾りと首飾りを差し出した。
 それは、ペンギンを模した青い石が嵌められている代物、気儘なペンギンの装飾品だよ。
 戦闘時に装備していると、仲間ペンギンが低確率で召喚されるという、微妙なマジックアイテムなんだ。

 フィオナちゃんの耳飾りも、気儘なペンギンの装飾品なので、この場には三種類が揃っている。
 彼女はきょとんとしながら、小首を傾げて私を見遣った。

「ねぇ、これで呼び出したペンギンって、テイム出来るの?」

「さぁ、どうだろう……? 仲間ペンギンは一定時間で消えるから、普通の魔物とは違うんだよね……」

 私は戸惑いながらも、面白い試みだと思った。純粋に、どうなるのか気になる。
 ちなみに、気儘なペンギンの装飾品は、髪飾り、首飾り、耳飾りの三つが揃うと、セット効果が発動するよ。
 これによって、仲間ペンギンを任意のタイミングで、召喚出来るようになるんだ。
 
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