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第2章 魔法学園
第28話 魔法学園と「お約束」
しおりを挟むリエルと一緒に街の中央にある城のような建物までやって来た。
ここが魔法学園。ちなみに街全体を管理する機能もあるらしい。
「こんにちは。編入希望の方ですか?」
お城の城門の所に受付が設置されていて、そこにいたお姉さんに声をかけられた。
「はい。そうです」
「ではこちらの用紙に氏名や種族などを記入して下さい。終わったらこの水晶に触れてくださいね」
「これは何ですか?」
「魔人がヒトに化けていないか確認するためのモノです」
「へぇ。そうなんですね」
異世界モノの漫画でおなじみの、魔力量を測定する魔具だったりするのかと思ったがそうではないらしい。
魔族かどうかをどうやって判断してるんだろ?
魔力量が多すぎて誤判定されちゃったりしないかが心配だった。
「リエルさんはハーフエルフですね。ではこちらの水晶に触れてください」
「はーい!」
リエルが水晶に触れると、それは青く光った。
「問題ありません。次はユーマさん、お願いします」
少しドキドキしながら水晶に触れる。
普通に青く輝いた。ちょっと安心。
「おふたりとも大丈夫そうですね。この学園についてや、編入試験のことをご説明します。この道をまっすぐ進んでください」
「はい。ありがとうございました」
「編入試験、頑張ってくださいねー!」
お姉さんに見送られ、俺とリエルは言われたお城への道を進んでいった。
「編入試験ってどんなのかな?」
「わかんない。けど複数体のオークを倒せるユーマなら絶対に余裕だよ」
試験自体は余裕でも、それじゃダメなんだ。俺には金が無いから、入学金や授業料が無料になるくらいの成績にしなきゃいけない。といっても、実技試験で俺が全力を出せばヤバいことになるのは間違いなかった。
なんせ今の俺は、魔力量が20万を超えている。
無自覚系主人公みたいなムーブはしないように注意せねば。
リエルと雑談しながら少し歩くと、いかにも魔法使いって感じのローブを着た男性が椅子に座って本を読んでいた。
「こんにちは。俺たち編入希望者です」
「……ん」
男性は俺たちに目を向けることもなく、水晶玉を差し出してきた。
「あの、これは? 魔人かどうかの確認は入り口でやりましたけど」
「こっちは魔力量測定用の水晶だ。さっさと触れ」
相変わらず男性は俺たちの方を見てくれない。
本当に触っちゃっても良いのか?
お約束だと、この水晶は俺が触れた瞬間に割れる。
「リエル、お先にどーぞ」
「うん」
まずはリエルに触らせてみた。
水晶が青色に輝く。
「ほう……、サファイア級か。いいだろう、合格だ」
「やった!」
リエルが小さくガッツポーズをする。
えっ、もしかして編入試験って、魔力量を見るだけ?
「次はお前だ。早くしろ」
「すみません。例えばこれ、魔力がすごく多い人が触ると割れたりしませんか?」
「そんなことはない。魔人が触れたって割れねーよ」
「もし割れても、俺のせいにしないでくださいね」
「チッ、うぜーな。じゃあ逆に割れなかったら、お前がダイヤモンド級の魔力を持っていたとしても次の試験には進ませない」
ここは魔力量を見る試験で、魔法を使ったりする試験は別にもあるみたい。
せっかくだからここで交渉してみよう。
「絶対に割れないんですよね? 俺が触れてこの水晶が割れたら、入学金や授業料を免除してください」
「てめぇ、ふざけんなよ!? 絶対割れないって言ってんだろ!」
もしかしたら魔力量がいくら多くても、彼が言うように水晶は割れない仕組みになっているのかもしれない。
ダメだったらリエルには悪いけど、俺が魔法学園に入らないだけ。普通に街で過ごしてクラスメイトたちが戻ってくるのを待てばいい。
ここに来たのはただの暇つぶしなんだ。
だから強気で行く。
「でも俺の魔力は凄く多いですよ」
「あー、もう分かった。そこまで言うならいいだろう。もし魔力測定水晶を割れたら、俺がお前の入学推薦状を書いてやる。入学金免除だけじゃなく、奨学金も貰えるぞ。その代わり割れなかったら、お前は二度と魔法学園の敷地に足を踏み入れるな」
「わかりました。ありがとうございます!」
さて、ここまで言って水晶が割れなかったら恥ずかしいな。
指で水晶をちょんっと突いてみる。
パァン! ──っと軽快な音を立て、水晶は粉々に砕け散った。
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