勇者召喚に巻き込まれた水の研究者。言葉が通じず奴隷にされても、水魔法を極めて無双する

木塚麻弥

文字の大きさ
3 / 101
第1章 水の研究者、異世界へ

第3話 騙されて奴隷になる

しおりを挟む

「おい! どうなってんだ!? 話が違うだろ!」

 俺は地上に設置された牢屋に入れられていた。
 
 少し離れた所で、俺をこの街まで連れてきた男が小太りの男から硬貨らしきものを受け取っている。

「なぁ、助けてくれるんじゃないのか!?」
רוֹעֵשׁうるせぇ!」

 牢屋の鉄格子を強く蹴られて驚いた。
 蹴ったのは軽鎧を纏った男。俺を連れてきた奴だ。

אם אתה לא יכול לדא קי בלת שוחות מהאלה.言葉を話せねーってことは、女神からスキルを貰ってないんだろ

 男はまるでゴミを見るような目で俺を見てくる。

נתראה. אם תהפוך לגלדיאטור, אני מהמרじゃーな。お前が剣闘士になったら、一戦だけ賭けてやるよ

 全く何を言っているか分からない。
 そんな俺を見て、男は笑いながら去っていった。


 どうやら俺は、アイツに騙されたようだ。

 助けてくれるものと思ってここまでやって来た。街が見えた時は助かったと思い、あの男に何度も感謝の言葉を伝えたんだ。

 それが、こんなことに……。

 ここに着いて、軽鎧の男が小太りの男に何か話したと思うと、俺はいきなり屈強な男ふたりに身体を拘束され、この牢屋に放り込まれた。怪我の治癒などされるはずもなく、倒れ込んだ衝撃で足がひどく痛み、しばらく起き上がれなかった。

 この状況からして、俺は軽鎧の男に奴隷として売られたってことだろう。この場に来た時、どうして気付かなかったのか。落ち着いてよく周りを見渡せば、首を鎖で繋がれた人々があちこちにいた。

 足のケガが痛くて、早く治療してほしくて周りを気にできていなかった。


 それから少しして、小太りの男が周りの人々に何かの指示を出しながら俺のいる牢屋に近づいてきた。どうやらこいつがここを仕切っている人物のようだ。

לגלגל את זה אנייה בצרות אם אמותこれを付けろ。死なれたら困るからな

 小太りの男が鉄格子の隙間から汚い布を放り込んできた。布には白い薬品のようなものがベッタリと雑に塗られている。

 男が俺の怪我した方の足を指さしている。

 これで足を治療しろってことだろうか?
 成分も分からないモノを使いたくない。

「あの……。この白いものの成分は?」
הזדרז早くしろ!」

 絶対に教えてくれなさそうだ。
 仕方ないので兎に攻撃された部分に布を当てた。

「ぐっ。い、いてぇ」

 すごく染みた。でも小太りの男は満足そうに離れていったので、俺の行動は間違ってないんだろう。

 最初は染みたが、痛みが少しマシになった気がする。


「ちょっと、休むか……」

 未知の何かを傷口から自分の身体に取り込んでしまったことは不安だ。でもそれ以上に怪我したままかなりの距離を移動してきたことによる疲労が強く、俺は牢屋の壁にもたれ掛かるとすぐに意識を手放した。


 ──***──

 ガンガンと鉄格子を蹴られる音で目を覚ます。

 最低な目覚めだ。
 俺は牢屋の中にいた。

 意識を失う前のことが全て夢なら良かったのに。

 でも俺は今、間違いなく異世界にいた。

 頭部に獣耳を生やした少女が目の前を通って行ったんだ。彼女は首に繋がれた鎖を屈強な男に引かれ、強引に移動させられていた。

 また別の所ではトカゲのような皮膚をした男が、数人の少年少女を小太りの男に売っている様子だった。

 間違いない。ここは異世界で、そして俺がいるこの場は奴隷市だ。しかも昼間からこんな街中でやってるってことは、この世界で奴隷は一般的なものだということ。
 

האם התעוררת やっと起きたか

 俺が目を覚ましたことを誰かが伝えたらしく、小太りの男が近づいてきた。俺の近くに歩いてきながらも忙しく方々へ指示を出している。やはり彼がこの奴隷市を仕切っている奴隷商人ということで間違いないようだ。

בקרוב תורךもうすぐお前の出番だぞ

 奴隷商人はニヤニヤしながら何か言っていた。
 言葉は相変わらず分からない。

 パソコンのOSを更新した後、再起動するとアップデートが適用される。俺の言語理解も神の手違いでそうなってるんじゃないかって若干の期待をしていたのだけど……。

נראה שאין קוניםどうせ買い手は付かないだろうがな

 やっぱりダメだったみたい。

 一度意識を失った後でも、この世界の人々が何を言ってるのか検討すらつかない。俺は元居た世界の主要言語をいくつか理解できる。水に関する研究成果をまとめた論文の発表などで必要だったから覚えた。そんな俺でも意味の分からない発音だから、俺がいた世界とは違う言語の発達をしているようだ。

 魔法が使えるとか肉体強化ができるとか、そんな凄いスキルじゃなくて良い。いくつも要らない。

 望むのは、ただひとつだけ。
 言語理解スキルがマジで欲しい。

 俺は言葉が理解できない状況で自身の進退が勝手に決められていく状況に、強いストレスを感じていた。


היי פתח את זהおい、ここを開けろ

 奴隷商人が合図すると鉄格子が開けられた。俺をここに押し込んだのとは別の屈強な男ふたりによって強引に連れ出される。抵抗する気にはなれなかった。腕を掴んでいる奴らが怖すぎるんだ。

 そのまま俺は、奴隷市のメインステージらしき場所まで連行されていった。
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~

名無し
ファンタジー
 突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。  自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。  もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。  だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。  グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。  人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

【完結】おじいちゃんは元勇者

三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話… 親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。 エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…

処理中です...