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テルティア
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一日の中でパウルス家に訪問することが楽しみになったプブリウスだが、実はアエミリウスと話をすること以外に楽しみがあった。
アエミリア・テルティア。ルキウス・アエミリウス・パウルスの三番目の娘で、自分よりも三歳年下になる少女の美しさにプブリウスは惹かれた。
マッシリアで出会ったニーケーは一緒にいて楽しい存在だが、テルティアは見ているだけで胸が高鳴る存在であった。愛らしく、守ってあげたいと思える女性に出会ったのは初めてであった。
「テルティアと話がしたい」
とはアエミリウスには言えなかった。修行のために通っている身分でそんなことを言えば、
「お前さんはここに何しに来ているんだ」
と、アエミリウスに叱られそうだったからだ。無論、テルティア本人と会話する機会もなく、ただ視線の端を横切る少女を意識するだけであった。
しかし、パウルス家に通い詰めるようになって数か月が経ち、気温が上がってきた春の朗らかな昼過ぎ、ついにその日がやってきた。
この日、アエミリウスは家族とプブリウスを連れて近くの丘に向かった。男子だけでなく、女子も馬術に励むべきという考えの元、アエミリウスは自分の娘らに馬術の指導をしていた。そこで、プブリウスはテルティアの面倒を見るようアエミリウスに頼まれたのだ。
馬に乗るのは今回がまだ二回目というテルティアは、
「よろしくお願いします」
と、自分を指導してくれる立場にあるプブリウスに緊張した面持ちで頭を下げた。
声も美しい。初めて聞くテルティアの声に胸を高鳴らせたプブリウスは、自然と笑みがこぼれた。
テルティアは器量がよいとは言えなかったが、プブリウスの言うことをよく守った。一回目よりも上手く乗れるようになったようで、徐々に彼女の顔にも笑みがこぼれていった。
「これほど上達したのはあなたのおかげです。ありがとうございました。あなたは人に何かを教える才能に溢れているのでしょう」
「とんでもない。あなたが人の話をよく聞き、馬の気持ちになって励んだからだよ。あなたには馬術の才能があるのかもしれない。うかうかしているとそのうち私があなたに馬術を習う日がくるかもしれない」
「まあ、嬉しい。教えるだけでなく、人を喜ばすのもお上手なのですね」
「ただ、正直に言ったまでだよ。私が馬に乗り始めた時は、何度馬に振り落とされたかわからない。今のあなたぐらいになるまでに随分と時間がかかった。男なのに恥ずかしいね」
ローマ郊外の丘で、馬に乗った若い男女は会話を弾ませた。この機を境に、プブリウスとテルティアは言葉を交わすようになり、次第に惹かれあっていく。
パウルス家での修行とテルティアとの胸躍る日々が何日も続いたある日、ローマ中を震撼させる報せが入ってくる。
アエミリア・テルティア。ルキウス・アエミリウス・パウルスの三番目の娘で、自分よりも三歳年下になる少女の美しさにプブリウスは惹かれた。
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「テルティアと話がしたい」
とはアエミリウスには言えなかった。修行のために通っている身分でそんなことを言えば、
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しかし、パウルス家に通い詰めるようになって数か月が経ち、気温が上がってきた春の朗らかな昼過ぎ、ついにその日がやってきた。
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馬に乗るのは今回がまだ二回目というテルティアは、
「よろしくお願いします」
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声も美しい。初めて聞くテルティアの声に胸を高鳴らせたプブリウスは、自然と笑みがこぼれた。
テルティアは器量がよいとは言えなかったが、プブリウスの言うことをよく守った。一回目よりも上手く乗れるようになったようで、徐々に彼女の顔にも笑みがこぼれていった。
「これほど上達したのはあなたのおかげです。ありがとうございました。あなたは人に何かを教える才能に溢れているのでしょう」
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「まあ、嬉しい。教えるだけでなく、人を喜ばすのもお上手なのですね」
「ただ、正直に言ったまでだよ。私が馬に乗り始めた時は、何度馬に振り落とされたかわからない。今のあなたぐらいになるまでに随分と時間がかかった。男なのに恥ずかしいね」
ローマ郊外の丘で、馬に乗った若い男女は会話を弾ませた。この機を境に、プブリウスとテルティアは言葉を交わすようになり、次第に惹かれあっていく。
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