封印されし欲深な龍と半龍混じりの契約者 ~イリオス・アーティファクト~

重弘 茉莉

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『第3章 黒い霧、悪夢の織り手』

巨躯、化け物-1

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 日が陰るほどの黒い霧の中、薄暗くなった森の中をすぐ目の前のヴィスラの背を追って歩く悠。
不愉快に濡れた足下の雑草に足を取られそうになりながらも、悠はなんとかヴィスラの後を追う。


「……なあ、ヴィスラ。この先に俺が元の世界に帰れるアーティファクトがあるのか?」


「さァね」


 ヴィスラは真っ直ぐにとある地点を目指して突き進んでいく。
ヴィスラが一歩ずつ歩みを進める度に、霧はさらに濃さを増していく。


「アタシが分かるのは、あくまでアーティファクトがあるかどうかさね」


「えぇ……」


「まァ、違うならまた次を探せば良いさね。 ……ん?」


 ヴィスラは何かに気が付いて歩みを止める。
悠はヴィスラが急に立ち止まったために、思い切りそのヴィスラの背に鼻をぶつけてしまう。


「っ~!?? きゅ、急に立ち止まらないでくれよ」


「シッ」


 ヴィスラは口に指を当てて、悠の言葉を遮る。
そして目を閉じると、耳を澄まして辺りの”声”を聞く。


(……ぃ。 ……タぃ……。 わ……)


(何の声さね……?)


 ザワザワとまるで雑踏のように、様々な囁きが”万物の声”を通してヴィスラの耳へと入る。人型の生き物の声のみならず小さな虫や空を滑空する生き物、近くにそびえ立つ大樹からはては足下に転がる小石の”声”までアーティファクト”万物の声”は拾い上げる。
薄くノイズ掛かった声々。それは段々とクリアになっていく。


(怖いぃ痛い苦しいなんでなんで苦しい怖い苦しいなんでなんで苦しい怖いいなんでなんでなんでなんで)


「先はあまり良い状況じゃなさそうさね。近くに意識のある生き物は居そうだけど」


 ヴィスラは悠に向かって話しかけながら振り返る。
悠の方を振り返ったヴィスラ。


「悠、危ないさねっ!」


「へっ?」


 その瞬間、ヴィスラは悠の服を思い切り引っ張る。
同時に悠の時間もまたほとんど”止まる”。


(何だ何だ何だっ!?)


 悠は胸の辺りを掴まれて半ば浮いた状態で振り替える。
そこには悠の体の三倍の巨躯はある化け物がいた。それは不細工な人間の頭、カマキリのような体と鎌、脚の代わりに4対人間の腕を持ち、裂けた口から汚らしく涎が零れ落ちていた。


(何だこのバケモンはっ!??)


 その化け物はその鋭い鎌を悠に向かって振り下ろしていたのであった。
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