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とある王国の エピソード
神話 拠点建設(下)
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選ばれた十人の弓兵が王の元に残り、将たちは王を中心に三つ角に広がる。
「まだじゃ、まだじゃ」
王は、上手く兵たちの気を削ぐ。
持ち場を交換した兵が疲れと傷の痛みで、医療場まで行けずに近くで倒れ込む。
「まだじゃ、まだじゃ」
倒れた兵を工兵が医療場へと引き摺る。使用人たちは、水を飲ませて鎧を脱がし、直ちに治療を始める。
「我慢せい、我慢せい」
若い兵は歯を食い縛る。それを肌で感じつつ、王は前のめりに身を屈める。
兵たちは矢を番える。
ある部隊がこちらに近付いて来る。王は手首を何度か振り、これから狩りの対照を指示する。という合図を送る。兵は王の指差す方向に視線を移し、その部隊を目に捉える。
王はゆっくりと腕を動かし、兵に確認を促す様に、指先で対照の部隊を追いかける。
「進路を妨害するのが目的じゃ。先頭から狩っていけ」
王は、手を挙げる。
兵たちは弓を引き絞る。
筒に用意した弓を放ち終わり、敵部隊が流れから離脱する寸前を狙って王の手が振り下ろされる。十に近い敵兵が馬から落ちる。
後ろに続く敵兵は、目の前の出来事を上手く回避できずにぶつかってしまう。さらに後続が巻き込まれる形となり、縺れて小さな壁となる。
その壁より王軍側は弓兵の射程圏内となる。無理に壁を、王軍と反対側に避けた隊により流れが詰まる。
「マールジョン。あの隊より三つ後ろ、肩に羽根を付けたやつの隊じゃ」
「はっ!」
取り囲む敵兵の最内を進んでいた羽根の隊は、押し出される様にしてこちらに膨らんでくる。
「あの隊が上手くバランスを取っておる。仕損じるなよ」
マールジョンの矢が羽根の内側に刺さる。
部隊長がやられたことで気が抜けた部隊は、不用心に王軍側へ近付く。
王の手が振られる。
戦には常なれど、先ほどより大きな壁ができる。
「あの手のものを狩るのが、イノ狩りの基本じゃ。これをするとイノは、ばらばらに逃げていくから狩りやすくなる。覚えておけよ」
近くの兵が頷く。
「次、プリゲン」
「はっ!」
王は、矢を補給して戻って来た敵兵を指差す。
「あやつは周りの兵を鼓舞して回っている。ちと面倒だ」
東側の中ほどまで来たところで、敵兵は矢を番えて王軍側に近付いてくる。それを狙って、王は手を振る。
敵の部隊長が、プリゲンの弓で後ろに吹き飛ぶ。驚いて視線をこちらから逸らしてしまった部隊に、矢が降り注ぐ。
想定を超える弓の飛距離に、付近の敵兵に動揺が走る。
「コヌは簡単じゃ。驚いてこちらに来たやつを狩れば良い」
王軍を囲む騎馬の流れの中に、除き難い障害物がもたらされる。
「オインツ」
「はっ!」
「ロウを狩るなら、どれを狙えば良いか分かっておるよな?」
「愚問」
南側の指揮兵が崩れ落ちる。
「正解じゃ。ロウは群れの頭を狩るにかぎる」
「この群れの数ならもう一狩り」
東側で発生した事態の沈静化のために駆け付けた指揮官に矢が刺さる。
「さらにもう一つ」
その付近で退却の拠点を築いている指揮兵の腕に矢が刺さる。
「ロウとは違うというところか。王よ、辱めを。打ち損じました」
「上出来じゃ。ついでにその近くで退却の指示を出してる奴にも矢を射掛けておいてくれ」
「承知」
オインツの射掛けた矢を目印に、その敵部隊に矢が降り注ぐ。
「マクベの狩り方は、それに見合った敵の時に教えてやる」
弓兵は、近付いてくる敵兵に向かって矢を射始める。
王は、使用人から手綱を受け取る将に顔を向ける。
「アンテノス」
「はっ!」
非戦闘員を内部で守るため、馬の搬入を制限した関係で、防御陣地内の騎馬兵は数が少ない。
「蹴散らしてこい」
「承知」
いくら相手が騎馬民族だとしても、アンテノスの隊であれば、矢を防ぎつつでなければ逃がしはしない。
敵騎馬兵の流れを正す者がいないため、滞りが各所で見られ始める。その滞っている箇所目掛けて騎馬が走る。機動性を失われた敵兵は弓を剣に持ち替えるが、次々と各個撃破されていく。
東側の兵が最初にアンテノスが突撃した箇所に傾れ込み、拠点を広げていく。これにより北側は完全に切り離された。
対岸の拠点で待機していた騎馬部隊が湿地を避けるため、山側を迂回して南の戦場に近づいているのが見える。渡河を助けるため、サンドロスが兵を連れて川沿いへ進む。
南側の、敵兵による流れが歪み始める。
「オインツ、プリゲン」
王は、敵が作る流れの分岐点付近を指差す。オインツとプリゲンが部隊を南東方向に移し、矢を次々と射る。闇雲に撃たれているのではなく、部隊長クラスが主に狙われるため、流れに騎馬の供給が止まっていく。
サンドロスが騎馬の渡河に合わせて、戦線を南から東に向かって押し上げていく。
「行くぞ」
メトリアスに率いられて、南西にある流れの分岐点に向かって兵が進軍を開始する。
南側の敵兵が敗走を開始する。
王軍の騎馬兵が追い討ちをかけながら、敵の拠点への退路を塞ぎにかかる。アンテノスが敵兵をすり潰していく。
「次はどうする?」
王は問う。
「もうそろそろ、北の騎馬隊が渡河を終える頃です。残された騎馬隊を放つ時かと」
「プレキレマスを向かわせろ」
「はっ!」
レイモンドはプレキレマスの元に走る。
「マールジョン」
「はっ!」
「お前はワシの話し相手じゃ」
マールジョンは一礼する。
「味方の治療並びに陣地内の修復に取り掛かれ。拠点に敵兵が現れるかもしれん。気を抜くなよ」
戦場に入り仲間を引き摺ってくる者、陣地内の動線を確保する者、それぞれ散っていく。
北ではレイモンドの指揮の元、掃討作戦が開始される。
こうしてドルリートは、都市攻略における重要な拠点を手に入れる。
「まだじゃ、まだじゃ」
王は、上手く兵たちの気を削ぐ。
持ち場を交換した兵が疲れと傷の痛みで、医療場まで行けずに近くで倒れ込む。
「まだじゃ、まだじゃ」
倒れた兵を工兵が医療場へと引き摺る。使用人たちは、水を飲ませて鎧を脱がし、直ちに治療を始める。
「我慢せい、我慢せい」
若い兵は歯を食い縛る。それを肌で感じつつ、王は前のめりに身を屈める。
兵たちは矢を番える。
ある部隊がこちらに近付いて来る。王は手首を何度か振り、これから狩りの対照を指示する。という合図を送る。兵は王の指差す方向に視線を移し、その部隊を目に捉える。
王はゆっくりと腕を動かし、兵に確認を促す様に、指先で対照の部隊を追いかける。
「進路を妨害するのが目的じゃ。先頭から狩っていけ」
王は、手を挙げる。
兵たちは弓を引き絞る。
筒に用意した弓を放ち終わり、敵部隊が流れから離脱する寸前を狙って王の手が振り下ろされる。十に近い敵兵が馬から落ちる。
後ろに続く敵兵は、目の前の出来事を上手く回避できずにぶつかってしまう。さらに後続が巻き込まれる形となり、縺れて小さな壁となる。
その壁より王軍側は弓兵の射程圏内となる。無理に壁を、王軍と反対側に避けた隊により流れが詰まる。
「マールジョン。あの隊より三つ後ろ、肩に羽根を付けたやつの隊じゃ」
「はっ!」
取り囲む敵兵の最内を進んでいた羽根の隊は、押し出される様にしてこちらに膨らんでくる。
「あの隊が上手くバランスを取っておる。仕損じるなよ」
マールジョンの矢が羽根の内側に刺さる。
部隊長がやられたことで気が抜けた部隊は、不用心に王軍側へ近付く。
王の手が振られる。
戦には常なれど、先ほどより大きな壁ができる。
「あの手のものを狩るのが、イノ狩りの基本じゃ。これをするとイノは、ばらばらに逃げていくから狩りやすくなる。覚えておけよ」
近くの兵が頷く。
「次、プリゲン」
「はっ!」
王は、矢を補給して戻って来た敵兵を指差す。
「あやつは周りの兵を鼓舞して回っている。ちと面倒だ」
東側の中ほどまで来たところで、敵兵は矢を番えて王軍側に近付いてくる。それを狙って、王は手を振る。
敵の部隊長が、プリゲンの弓で後ろに吹き飛ぶ。驚いて視線をこちらから逸らしてしまった部隊に、矢が降り注ぐ。
想定を超える弓の飛距離に、付近の敵兵に動揺が走る。
「コヌは簡単じゃ。驚いてこちらに来たやつを狩れば良い」
王軍を囲む騎馬の流れの中に、除き難い障害物がもたらされる。
「オインツ」
「はっ!」
「ロウを狩るなら、どれを狙えば良いか分かっておるよな?」
「愚問」
南側の指揮兵が崩れ落ちる。
「正解じゃ。ロウは群れの頭を狩るにかぎる」
「この群れの数ならもう一狩り」
東側で発生した事態の沈静化のために駆け付けた指揮官に矢が刺さる。
「さらにもう一つ」
その付近で退却の拠点を築いている指揮兵の腕に矢が刺さる。
「ロウとは違うというところか。王よ、辱めを。打ち損じました」
「上出来じゃ。ついでにその近くで退却の指示を出してる奴にも矢を射掛けておいてくれ」
「承知」
オインツの射掛けた矢を目印に、その敵部隊に矢が降り注ぐ。
「マクベの狩り方は、それに見合った敵の時に教えてやる」
弓兵は、近付いてくる敵兵に向かって矢を射始める。
王は、使用人から手綱を受け取る将に顔を向ける。
「アンテノス」
「はっ!」
非戦闘員を内部で守るため、馬の搬入を制限した関係で、防御陣地内の騎馬兵は数が少ない。
「蹴散らしてこい」
「承知」
いくら相手が騎馬民族だとしても、アンテノスの隊であれば、矢を防ぎつつでなければ逃がしはしない。
敵騎馬兵の流れを正す者がいないため、滞りが各所で見られ始める。その滞っている箇所目掛けて騎馬が走る。機動性を失われた敵兵は弓を剣に持ち替えるが、次々と各個撃破されていく。
東側の兵が最初にアンテノスが突撃した箇所に傾れ込み、拠点を広げていく。これにより北側は完全に切り離された。
対岸の拠点で待機していた騎馬部隊が湿地を避けるため、山側を迂回して南の戦場に近づいているのが見える。渡河を助けるため、サンドロスが兵を連れて川沿いへ進む。
南側の、敵兵による流れが歪み始める。
「オインツ、プリゲン」
王は、敵が作る流れの分岐点付近を指差す。オインツとプリゲンが部隊を南東方向に移し、矢を次々と射る。闇雲に撃たれているのではなく、部隊長クラスが主に狙われるため、流れに騎馬の供給が止まっていく。
サンドロスが騎馬の渡河に合わせて、戦線を南から東に向かって押し上げていく。
「行くぞ」
メトリアスに率いられて、南西にある流れの分岐点に向かって兵が進軍を開始する。
南側の敵兵が敗走を開始する。
王軍の騎馬兵が追い討ちをかけながら、敵の拠点への退路を塞ぎにかかる。アンテノスが敵兵をすり潰していく。
「次はどうする?」
王は問う。
「もうそろそろ、北の騎馬隊が渡河を終える頃です。残された騎馬隊を放つ時かと」
「プレキレマスを向かわせろ」
「はっ!」
レイモンドはプレキレマスの元に走る。
「マールジョン」
「はっ!」
「お前はワシの話し相手じゃ」
マールジョンは一礼する。
「味方の治療並びに陣地内の修復に取り掛かれ。拠点に敵兵が現れるかもしれん。気を抜くなよ」
戦場に入り仲間を引き摺ってくる者、陣地内の動線を確保する者、それぞれ散っていく。
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