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文字数 64,620
最終更新日 2024.04.16
登録日 2023.08.15
暖かく優しい風と共に甘い香りが鼻をくすぐる。
「恋はあせっちゃダメよ」
ドライヤーの風切音を超えてママの声が優しく耳に届く。
「ゆっくりと時間をかけて育めばいいの」
三面鏡と仲良しな、まあるくて柔らかい椅子。ママが綺麗になる魔法の椅子。
ママのお化粧道具でイタズラするから勝手に座るとしかられるけれど、お風呂上がりにはいつもお尻を優しく包んでくれる。
床に届かない足をぶらつかせた私にとって、それはすごく幸せな時間。
「なぜって?素敵な恋はそう簡単には訪れないものよ」
暖かい風と共に髪の間をジグザグに指が動く。
忙しなく動いていた手は最後にそっと肩に触れる。
「与え与えられる事に幸せを感じられたらそれが恋よ」
優しく微笑むママの顔は鏡の奥まで続いていた。
お陰様で私、宇佐美 鈴香は恋愛に対して不器用に育ちました。
文字数 36,144
最終更新日 2024.04.13
登録日 2023.08.04
枕元に置かれたスマホの画面が振動音と共に明るくなる。
ゆっくり体を起こして物音を立てぬ様に慎重に歩き、寝室のドアをそーっと閉める。まだ明るいスマホの画面には、たーちゃんという登録名の下に、もう直ぐ着くよ(ピース)の文字。
お付き合いしている頃から変わらない夫の登録名に、大丈夫だよ(笑顔)と返信をする。
台所へと移動して冷蔵庫からサラダボウルを取り出し、ラップを外してからテーブルに置く。コンロの前に立ち、お鍋の蓋をとる。おたまでかき混ぜると淡い香りが鼻をくすぐる。
小さめのジャガイモを手でつまんで口に入れようとした時に、リビングのドアが開き、大きな荷物を抱えた夫がそーっと帰ってきた。
小さい「ただいま」という声に、口をもごつかせながら「お帰り」と返す。照れ笑いを浮かべる私に、イタズラを見つけた母親みたいな笑顔が向けられていた。
クリスマスイブからクリスマスにかけての三瀬家が舞台です。
夫婦の会話がメインとなります。
文字数 22,755
最終更新日 2024.01.21
登録日 2023.12.15
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