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とある王国の エピソード
神話 砦攻防戦 中
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「それ、今じゃ」
ドルリートの声が響き渡ると、その言葉を追い返すかの如く、「敵襲!」と敵兵から声が上がる。が、それら何もかもを覆い尽くす様に矢が降り注ぐ。
王の狩りが始まった。
敵の進軍は矢により急に止められ、後ろから押されるままに前から詰まっていく。これ以上の混乱を防ぐために後続は停止し、それにより影響を受けた場所との間に隊の隙間が生まれる。
「次だ」
「はっ!」
レイモンドの張りのある声が戦場に響くと、時を置かずしてぴたりと矢は止み、アンテノスが率いる騎馬隊がその隙間を真一文字に突き抜けて行く。
「マールジョン」
「はっ!」
マールジョンの強弓から、しなる音が漏れ出す。
「射貫け」
その言葉と同時にマールジョンの手から放たれた矢は、澱みのない高い音を立てながら一直線に敵兵を貫き、その後ろにいた兵の右足を貫き切る途中で止まる。
大隊程度が切り離された敵の先頭は一瞬だけ動きを止めるが、更に密集していき盾を重ねていく。
「オインツ」
「はっ!」
オインツの弓が綺麗にしなる。
「あいつじゃ」
「承知!」
絶妙に加減された矢は、綺麗な放物線を描きながら多くの頭を越え、先頭を率いる敵指揮官の兜を射抜く。
王は手首の振り方により、己を見つめるプリゲンに向かって『狩りの準備が整った』と、合図を送る。
プリゲンが率いる弓兵が敵を襲う。
敵陣では列を整えた後続が、先頭を救うために前進を開始する。
「マールジョン、あいつだ」
「はっ!」
まだ遠くにいる、後続の一番先頭で兵を率いる敵将らしき男をマールジョンの矢が貫く。
「オインツ、お前はあいつじゃ」
「承知!」
まだ動揺が収まらない敵先頭の兵と兵の隙間を縫って、オインツの矢は別の指揮官の横にいる参謀らしき男を射抜く。
「注文通りじゃ」
王は次の獲物を探る。
「オインツ」
「はっ!」
「おっと残念じゃ、敵が気付きおった。それならば奥に隠れようとしている角の兜を被った、マントをつけたあいつじゃ。できるか?」
「無理難題を申される」
その身を護ろうと集まり始めた敵兵の間を通し、オインツの矢が上級兵の首元に刺さる。
「上出来じゃ」
王は手を叩いてオインツを労う。
「マールジョン」
「はっ!」
「どぎついやつじゃぞ」
先ほどとは違う、兵士でも簡単にはお目にかかれない程の強弓からギリギリと引き絞る音が鳴る。
「放て」
矢尻を変えたマールジョンの矢を受けた敵兵は、轟音と共に後ろに吹き飛び、数人を巻き込んで動きを止める。
戦場から音が消える。
「上出来じゃ、退くぞ」
「はっ!」
レイモンドの指揮により、ドルリート王軍は兵站拠点へと退いていく。
追撃を仕掛けてきた敵を嘲笑うかの様に、ドルリートは大規模に道を焼いた。火が落ち着くまでの僅かな時間だが、敵兵はそこで生じた距離を詰められずに諦めて引き返していく。それをドルリートが見逃すわけは無く、逆に敵部隊は厳しい追撃を受けてしまう。
「敵本隊は砦へと到着したとのこと」
「それでこちらの攻城兵器は?」
レイモンドは訊ねる。
「はっ! 指示通り丸一日見張りましたが、破壊されませんでした」
「ご苦労。敵の砦からの出兵を第一にし、進む方向を逐一連絡をしてくれ」
「承知しました。失礼します」
ドルリートはそのやり取りを聞いて、ニヤリと不敵に笑う。
「敵はこちらが撤退したと思ってくれました。いっそのこと、このまま攻城兵器は壊さないでもらいたいですね」
レイモンドは砕けた口調で言う。
「流石にそれは虫がよすぎるな」王は笑う。「いや、奴等ならやりかねん。こちらの拠点を攻めあぐねたら使ってしまおうなどと、姑息なことを考えているやもしれん」
レイモンドもつられて笑う。
「砦で待ち構えるつもりなら直ぐにでも壊すはずじゃ、これで決まったな」
「はい、あの砦の規模では三万の兵は抱えきれません。攻城兵器は位置的に、砦の外に陣を構えるには邪魔でしかありません。壊さないということは、兵糧の補給や砦を守る兵の入れ替えが済み次第、こちらへと軍を進めてくるでしょう」
「三万ずつの兵で挟み込めば必ず勝てると、誰しも思うであろうな」
ドルリートは、相対する敵の別動隊に目を向ける。
「はい」
レイモンドも同じく、白兵戦となっている戦場を見つめる。
「しかしながら敵将は、遠回りとなる別働隊の動きに合わせ先ずは砦の解放を行い、三万という兵数でこちらの拠点を狙うことで王をこの地に誘い込んだところを見ると、優秀な人物だということが分かります」
「化かし合いは得意ではなさそうだがな」
レイモンドは小さく首を横に振る。
「相手が悪かったのです。誰しもが背に三万の兵を抱えた状態で、別の三万の兵に襲いかかるとは思いませんし、考え付きもしません」
戦場からは味方の声で、「お前たちの本隊は敗走した」との叫び声が聞こえる。
「拠点の守りを割いてまで全軍を集めたのです。この規模の軍が追撃も無く目の前に現れたとなると、敵本隊の撤退という噂も信じてしまうでしょうね」
「お主が用意した薪をふんだんに使って、追撃戦に青筋を立てた相手ごと橋を焼いたのだ。あの煙を見れば、こちらとあそこで戦さがあったのは承知しているだろうからな」
「はい」
敵本隊は橋付近での戦闘と橋の修復を諦め、川下にある橋を通る道を選び直し、当初の予定より大きく迂回して砦を目指した。先の追撃が失敗したことにより慎重になった敵側は、王軍に対して兵を差し向けることはしなかった。
これにより敵本隊は王軍を見失うことになり、今現在、敵本隊は王軍が別働隊の攻撃に転じていることに気が付いていないと思われる。もちろん、敵の伝令には十分対応済みの話となる。
ここで、一人の兵が王に近付いて来る。
「プレキレマス隊、準備完了」
「よし、湖沿いから駆け上がらせろ」
「はっ!」
伝令がその場から離れる。
「丁度よし、こちらの仕掛けた嘘が効き始めた頃じゃ。仕掛けるぞ」
「はっ!」
新たな王軍の登場により敵本隊の敗走を信じてしまった敵の別働隊は、この後、王軍の苛烈な攻撃に負けが嵩んでいき、三回目の突撃にとうとう耐えきれなくなり敗走となる。
ドルリートの声が響き渡ると、その言葉を追い返すかの如く、「敵襲!」と敵兵から声が上がる。が、それら何もかもを覆い尽くす様に矢が降り注ぐ。
王の狩りが始まった。
敵の進軍は矢により急に止められ、後ろから押されるままに前から詰まっていく。これ以上の混乱を防ぐために後続は停止し、それにより影響を受けた場所との間に隊の隙間が生まれる。
「次だ」
「はっ!」
レイモンドの張りのある声が戦場に響くと、時を置かずしてぴたりと矢は止み、アンテノスが率いる騎馬隊がその隙間を真一文字に突き抜けて行く。
「マールジョン」
「はっ!」
マールジョンの強弓から、しなる音が漏れ出す。
「射貫け」
その言葉と同時にマールジョンの手から放たれた矢は、澱みのない高い音を立てながら一直線に敵兵を貫き、その後ろにいた兵の右足を貫き切る途中で止まる。
大隊程度が切り離された敵の先頭は一瞬だけ動きを止めるが、更に密集していき盾を重ねていく。
「オインツ」
「はっ!」
オインツの弓が綺麗にしなる。
「あいつじゃ」
「承知!」
絶妙に加減された矢は、綺麗な放物線を描きながら多くの頭を越え、先頭を率いる敵指揮官の兜を射抜く。
王は手首の振り方により、己を見つめるプリゲンに向かって『狩りの準備が整った』と、合図を送る。
プリゲンが率いる弓兵が敵を襲う。
敵陣では列を整えた後続が、先頭を救うために前進を開始する。
「マールジョン、あいつだ」
「はっ!」
まだ遠くにいる、後続の一番先頭で兵を率いる敵将らしき男をマールジョンの矢が貫く。
「オインツ、お前はあいつじゃ」
「承知!」
まだ動揺が収まらない敵先頭の兵と兵の隙間を縫って、オインツの矢は別の指揮官の横にいる参謀らしき男を射抜く。
「注文通りじゃ」
王は次の獲物を探る。
「オインツ」
「はっ!」
「おっと残念じゃ、敵が気付きおった。それならば奥に隠れようとしている角の兜を被った、マントをつけたあいつじゃ。できるか?」
「無理難題を申される」
その身を護ろうと集まり始めた敵兵の間を通し、オインツの矢が上級兵の首元に刺さる。
「上出来じゃ」
王は手を叩いてオインツを労う。
「マールジョン」
「はっ!」
「どぎついやつじゃぞ」
先ほどとは違う、兵士でも簡単にはお目にかかれない程の強弓からギリギリと引き絞る音が鳴る。
「放て」
矢尻を変えたマールジョンの矢を受けた敵兵は、轟音と共に後ろに吹き飛び、数人を巻き込んで動きを止める。
戦場から音が消える。
「上出来じゃ、退くぞ」
「はっ!」
レイモンドの指揮により、ドルリート王軍は兵站拠点へと退いていく。
追撃を仕掛けてきた敵を嘲笑うかの様に、ドルリートは大規模に道を焼いた。火が落ち着くまでの僅かな時間だが、敵兵はそこで生じた距離を詰められずに諦めて引き返していく。それをドルリートが見逃すわけは無く、逆に敵部隊は厳しい追撃を受けてしまう。
「敵本隊は砦へと到着したとのこと」
「それでこちらの攻城兵器は?」
レイモンドは訊ねる。
「はっ! 指示通り丸一日見張りましたが、破壊されませんでした」
「ご苦労。敵の砦からの出兵を第一にし、進む方向を逐一連絡をしてくれ」
「承知しました。失礼します」
ドルリートはそのやり取りを聞いて、ニヤリと不敵に笑う。
「敵はこちらが撤退したと思ってくれました。いっそのこと、このまま攻城兵器は壊さないでもらいたいですね」
レイモンドは砕けた口調で言う。
「流石にそれは虫がよすぎるな」王は笑う。「いや、奴等ならやりかねん。こちらの拠点を攻めあぐねたら使ってしまおうなどと、姑息なことを考えているやもしれん」
レイモンドもつられて笑う。
「砦で待ち構えるつもりなら直ぐにでも壊すはずじゃ、これで決まったな」
「はい、あの砦の規模では三万の兵は抱えきれません。攻城兵器は位置的に、砦の外に陣を構えるには邪魔でしかありません。壊さないということは、兵糧の補給や砦を守る兵の入れ替えが済み次第、こちらへと軍を進めてくるでしょう」
「三万ずつの兵で挟み込めば必ず勝てると、誰しも思うであろうな」
ドルリートは、相対する敵の別動隊に目を向ける。
「はい」
レイモンドも同じく、白兵戦となっている戦場を見つめる。
「しかしながら敵将は、遠回りとなる別働隊の動きに合わせ先ずは砦の解放を行い、三万という兵数でこちらの拠点を狙うことで王をこの地に誘い込んだところを見ると、優秀な人物だということが分かります」
「化かし合いは得意ではなさそうだがな」
レイモンドは小さく首を横に振る。
「相手が悪かったのです。誰しもが背に三万の兵を抱えた状態で、別の三万の兵に襲いかかるとは思いませんし、考え付きもしません」
戦場からは味方の声で、「お前たちの本隊は敗走した」との叫び声が聞こえる。
「拠点の守りを割いてまで全軍を集めたのです。この規模の軍が追撃も無く目の前に現れたとなると、敵本隊の撤退という噂も信じてしまうでしょうね」
「お主が用意した薪をふんだんに使って、追撃戦に青筋を立てた相手ごと橋を焼いたのだ。あの煙を見れば、こちらとあそこで戦さがあったのは承知しているだろうからな」
「はい」
敵本隊は橋付近での戦闘と橋の修復を諦め、川下にある橋を通る道を選び直し、当初の予定より大きく迂回して砦を目指した。先の追撃が失敗したことにより慎重になった敵側は、王軍に対して兵を差し向けることはしなかった。
これにより敵本隊は王軍を見失うことになり、今現在、敵本隊は王軍が別働隊の攻撃に転じていることに気が付いていないと思われる。もちろん、敵の伝令には十分対応済みの話となる。
ここで、一人の兵が王に近付いて来る。
「プレキレマス隊、準備完了」
「よし、湖沿いから駆け上がらせろ」
「はっ!」
伝令がその場から離れる。
「丁度よし、こちらの仕掛けた嘘が効き始めた頃じゃ。仕掛けるぞ」
「はっ!」
新たな王軍の登場により敵本隊の敗走を信じてしまった敵の別働隊は、この後、王軍の苛烈な攻撃に負けが嵩んでいき、三回目の突撃にとうとう耐えきれなくなり敗走となる。
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