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とある王国の エピソード
神話 砦攻防戦 下
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「いかがでしたか? 王子」
「面白かった。いつ聞いてもファトストが話す神話は、別の者と違って面白い」
「別の方の様に戦術など話はせずに、情緒を語った神話の方が面白いと思いますが、王子はこういったものの方がお好きなのですね」
「聖人として語り継がれているドルリート王も、実は悪戯っ子だったと王宮の書を読んで知った。ファトストの話からは、そんなドルリート王が垣間見れて面白いのだ」
「王子、ドルリート王に憧れるのは結構ですが、奇策や奇襲ありきの戦は行ってはいけません。寡兵での戦いなど、以ての外です。敵を個別に分けることができなかったり、敵の何倍もの数で囲むことができなければ、戦をしてはなりません。これはいつも、その心に留めておいて下さい」
「分かった」
幼き次代の王は頷く。
「それでは敵本隊との決戦をお話した後に、それぞれの戦いを紐付けて戦術についてお話しをいたします」
「分かった」
まだ王位とは無縁の幼な子は、机へ身体を向ける。
「拠点を狙った敵兵を追い払うことに成功したドルリート王は、湖に棲む大魚の群れを手懐け、兵を一夜にして対岸へと渡しました」
「湖の主の子孫がこの国に来て、ベイナイ家となったんだよね」
次代の王は、鼻を高くする。
「良くご存知で」
ファトストは微笑む。
「つぎ、つぎ」
「それでは。前哨戦となるサクラスの戦いでは、軍神ソージェロが敵を完全に封じ込め、意表を突いた突撃により敵将を討ちました」
「サクラスの戦いは、軍神ソージェロが大活躍するから大好き」
「私も好きな戦の一つです。後ほど、軍神ソージェロがどの様にして敵を惑わし、意表を突いたのかをお話しいたします」
「分かった。それより早く、カスティリオスの戦いの話をして」
「ガルーダ湖の戦いから繋がる砦攻城戦は、カスティリオスの戦いで決戦となります。ドルリート王は焼いた橋の近くで大魚の背中から降りると、山に身を隠します」
「敵将ダジールムは鳥が飛び立つことで、伏兵を見破るんだよね」
「そうです。しかし、狩りの名手が名を連ねる王軍が、そんな失敗を犯すわけがありません」
「知ってる」幼き王は笑う。「伏兵を追い払ったと油断したダジールムのことを、別の場所に潜んでいた王の本隊が襲って、ダジールムは命からがらに逃げ出したんだよね」
「そうなのです。戦での油断は禁物ですぞ、王子。しかしながら、結果を知っている私たちだからこそ言える言葉なのかもしれません。王軍と敵対したダジールムになって、今一度だけ考えてみて下さい。元から北からの応援はありえず、橋も王軍自ら焼き払った。王は既に湖を越えていることを知らない為、主力は拠点付近でこちらを迎え撃つ準備を進めていると考えるでしょう。鳥が飛び立って気が付いた場面でも、そうです。たった一羽が飛び立ったところで、誰もそれを気には留めません。おかしいと、僅かに思わせる程度に鳥を飛び立たせるのが難しいのです」
次代の王は、目を丸くして輝かせる。
「本当だ!」
「ダジールムの性格についてもです。理をもって物事を判断するというのを知っていたのか、見抜いたのか。どちらにせよ、その性格を手玉に取ってドルリート王は策を立てました。もし願いが叶うなら、ドルリート王にお会いして策について幾つかお聞きしたいです」
「確かに! やはりファトストの考え方は面白い、勉強になる」
「それならば、これも気になりませんか?」
「なに、なに?」
「大魚を使えば大量の兵を驚くべき速さで運べます。上陸地点は間違いなくあの場所です。山を使えば敵の目から隠れられるのは分かります。言われてみれば当たり前のことですが、何を以って判断し策を組み立てたのか、気になりませんか? その上、上陸地点に選んだその場所は、最初の移動の際に目的地と定めたその場所です。初めから考えたいたのか、途中で思いついたのか、それともたまたまなのか。ドルリート王への興味は尽きません」
「確かに!」
再び、悲しき次代の王はその目を輝かせる。
「面白かった。いつ聞いてもファトストが話す神話は、別の者と違って面白い」
「別の方の様に戦術など話はせずに、情緒を語った神話の方が面白いと思いますが、王子はこういったものの方がお好きなのですね」
「聖人として語り継がれているドルリート王も、実は悪戯っ子だったと王宮の書を読んで知った。ファトストの話からは、そんなドルリート王が垣間見れて面白いのだ」
「王子、ドルリート王に憧れるのは結構ですが、奇策や奇襲ありきの戦は行ってはいけません。寡兵での戦いなど、以ての外です。敵を個別に分けることができなかったり、敵の何倍もの数で囲むことができなければ、戦をしてはなりません。これはいつも、その心に留めておいて下さい」
「分かった」
幼き次代の王は頷く。
「それでは敵本隊との決戦をお話した後に、それぞれの戦いを紐付けて戦術についてお話しをいたします」
「分かった」
まだ王位とは無縁の幼な子は、机へ身体を向ける。
「拠点を狙った敵兵を追い払うことに成功したドルリート王は、湖に棲む大魚の群れを手懐け、兵を一夜にして対岸へと渡しました」
「湖の主の子孫がこの国に来て、ベイナイ家となったんだよね」
次代の王は、鼻を高くする。
「良くご存知で」
ファトストは微笑む。
「つぎ、つぎ」
「それでは。前哨戦となるサクラスの戦いでは、軍神ソージェロが敵を完全に封じ込め、意表を突いた突撃により敵将を討ちました」
「サクラスの戦いは、軍神ソージェロが大活躍するから大好き」
「私も好きな戦の一つです。後ほど、軍神ソージェロがどの様にして敵を惑わし、意表を突いたのかをお話しいたします」
「分かった。それより早く、カスティリオスの戦いの話をして」
「ガルーダ湖の戦いから繋がる砦攻城戦は、カスティリオスの戦いで決戦となります。ドルリート王は焼いた橋の近くで大魚の背中から降りると、山に身を隠します」
「敵将ダジールムは鳥が飛び立つことで、伏兵を見破るんだよね」
「そうです。しかし、狩りの名手が名を連ねる王軍が、そんな失敗を犯すわけがありません」
「知ってる」幼き王は笑う。「伏兵を追い払ったと油断したダジールムのことを、別の場所に潜んでいた王の本隊が襲って、ダジールムは命からがらに逃げ出したんだよね」
「そうなのです。戦での油断は禁物ですぞ、王子。しかしながら、結果を知っている私たちだからこそ言える言葉なのかもしれません。王軍と敵対したダジールムになって、今一度だけ考えてみて下さい。元から北からの応援はありえず、橋も王軍自ら焼き払った。王は既に湖を越えていることを知らない為、主力は拠点付近でこちらを迎え撃つ準備を進めていると考えるでしょう。鳥が飛び立って気が付いた場面でも、そうです。たった一羽が飛び立ったところで、誰もそれを気には留めません。おかしいと、僅かに思わせる程度に鳥を飛び立たせるのが難しいのです」
次代の王は、目を丸くして輝かせる。
「本当だ!」
「ダジールムの性格についてもです。理をもって物事を判断するというのを知っていたのか、見抜いたのか。どちらにせよ、その性格を手玉に取ってドルリート王は策を立てました。もし願いが叶うなら、ドルリート王にお会いして策について幾つかお聞きしたいです」
「確かに! やはりファトストの考え方は面白い、勉強になる」
「それならば、これも気になりませんか?」
「なに、なに?」
「大魚を使えば大量の兵を驚くべき速さで運べます。上陸地点は間違いなくあの場所です。山を使えば敵の目から隠れられるのは分かります。言われてみれば当たり前のことですが、何を以って判断し策を組み立てたのか、気になりませんか? その上、上陸地点に選んだその場所は、最初の移動の際に目的地と定めたその場所です。初めから考えたいたのか、途中で思いついたのか、それともたまたまなのか。ドルリート王への興味は尽きません」
「確かに!」
再び、悲しき次代の王はその目を輝かせる。
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