ヒキアズ創作BL短編集

ヒキアズ

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11~20

(17)不死身執事と坊ちゃん

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少年セアはウォート家に代々伝わる魔石のせいで、日々命を狙われている。彼が今まで死なずにいたのは、謎の執事、メローゼがいたからだった。

メローゼ・メンシュ
不死身の執事

セア・ウォート
幼くして両親を殺された貴族の坊ちゃん
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 あるところに少年と執事がいました。
 少年、セア・ウォートは幼くして当主になった悲劇の子でした。
 セアは自分の命を奪おうとする者たちから、当て所なく逃げていました。
 自分の城で暮らしていたのも、もうずっと遠い昔のように思えました。
 セアは自分の胸に手を当てました。
 セアが追われている理由は、胸のブローチにありました。
 はめ込まれた石は赤く、まるで血に染まっているかのようにどす黒く、強い魔力を秘めていました。
 セアの先祖は代々これを使って城を繁栄させてきたのです。
 昔から魔石を狙う輩がいましたが、全て魔石の力で跳ね返し、代々守り受け継がれてきました。
 それほどまでに完成された強さをその魔石は持っていたのです。
 しかし、セアにはその力が使えませんでした。何度セアが祈っても、魔石は力を与えてはくれませんでした。
 それでもセアが無事でいられたのは、執事メローゼのおかげでした。
 メローゼはセアを守ることに必死でした。
 とにかく用心深く排他的で、セアに近づこうとするもの全てに凍てつく視線を刺すのです。
 そのおっかなさから、いつしか彼は「セアの亡霊」と呼ばれ、恐れられるようになりました。



『ウォートのガキがそっちに行ったぞ!』『探せ! なんとしてでもあの魔石を手に入れろ!』
 耳を覆いたくなる男たちの野太い声。
「セア様、こちらへ」
 それと対にある凛とした透き通るような声の持ち主が、僕を路地裏へ誘導する。
『ワタクシどもに石を渡していただければ、きっと貴方の身の安全を約束しましょう』
 雨の中、寂れた街でどこぞの貴族が僕たちを追い詰める。
 そんなことが何回も続く日常。僕はそれに抗うこともできず、ただただ執事に扮した男に促されるまま身を隠す。
『これは取引ですよ。貴方にとっても良い話のはずです』
 歌うように嘘を吐く腐れ貴族に反吐が出る。何が身の安全だ。荒くれ者を雇ってまで僕をしつこく追い回して来たくせに。
「セア様、絶対に返事はしないでください」
「わかっている!」
 子ども扱いするメローゼに、苛立ちを隠すことなく睨みを利かせる。
『おい、そっちから声がしたぞ』
「チッ」「うわっ」
 メローゼが舌打ちをしながら僕の手を掴み、走らせる。
 ざあざあと止む気配のない雨音と、靴が蹴り上げる水音が静かな街を賑やかす。
 ドッ。
 十字路に差し掛かった途端、目の前で炎が踊る。
「っ!」
 紙一重でメローゼが僕を抱きかかえて後退すると、炎を纏った男が舌打ちをする。
『雨じゃなきゃ当たってたんだがね!』
「それは幸運でした」
 間髪入れず、襲い来る炎をメローゼが剣を振るい叩き切る。
『チッ。さすがは「セアの亡霊」か』
「貴方こそ、さすがは名のある貴族様。子ども相手に容赦ない」
『なにぃ……?』
「まぁ、わかりますよ。そんなちっぽけな力も使いこなせないようじゃ、ねぇ?」
『馬鹿にする気か……。ワタシの力を……!』
 男が怒りに震えながら、炎を空高く身に宿す。
「それが貴方の限界ですか?」
『お前ら、ウォートのガキを狙え!』
「……馬鹿ではないようですね」
 メローゼが面白くなさそうに呟くと、貴族は誇らしげににたりと笑う。
『フン。亡霊といえど、無能を守り通す余裕はあるまい!』
「セア様、下がっていてください」
 メローゼが僕を背中に隠す。
『おい無能、お前は何のためにいる? お前がその石を守って何になる? 守られたままでいいのか? お前は何もできないまま、いつまでも赤子のように指を咥えてあやされるのか?』
「黙れ……!」
 メローゼの制止を振り払い、下品に笑い挑発を繰り返す男に掴みかかる。
「セア様!」
 メローゼの叫びにも似た呼びかけにハッとしたとき、ナイフが目の前で煌いて……。



 セアはウォート家の希望でした。
 両親は子どもに恵まれませんでした。すっかり歳をとってしまい、誰もが諦めかけたそのときに、ようやく生まれたのがセアでした。
 両親はセアを大層かわいがって育てました。
 セアは、幼いながらにとても幸せだと感じていました。
 しかし。

 しかし、悲劇は起こりました。
 この先もウォート家は安泰だと思われていた矢先の出来事でした。

 セアが目を覚ますと、そこはもう火の海でした。
 すべてが赤く燃え、あちこちから悲鳴が聞こえ、あまりの怖さにセアは声を出すことも歩くこともできませんでした。
 どんっ!
 どうしようもない恐怖にセアが押しつぶされそうになった時、部屋のドアが開きました。
「セア!」
 ドアを破って現れたのは、セアの両親でした。
 セアは、もちろん急いで二人の元へ駆け寄りました。
 でも、その足は途中で止まってしまいました。
「え……?」
 セアの目の前で、両親が後ろから突き刺されてしまったからです。
 その腹は赤く染まり、顔は苦悶の表情に満ちていました。
「ああ、セア……」「セア、これを、お前に、」
 母は頬を撫でようと、父はブローチを託そうと手を伸ばします。
「ひっ、」
 そのときセアは見ました。
 二人の後ろに死神のように黒く染まった男が立っているのを。

 結局、セアが二人の手を取ることもできないままに、両親はセアの目の前で死を迎えました。
 セアは狂ったように叫びました。
「出ていけ! 出ていけ死神! 幽霊! 化け物!」
 両親の後ろにいた男は、ゆらりと一歩近づき、無表情のまま、ゆらりゆらりと一歩ずつ体を引きずるようにセアに近づいてゆきました。
 もう駄目だ、とセアはぎゅっと目を瞑り、死を覚悟しましたが。
 男は、そっと血だまりの中からブローチを拾うと、セアの胸にブローチをつけ、よかった、とつぶやき、セアの頬を優しく拭いました。

 それからというもの、メローゼ・メンシュという男はセアとともにありました。
 セアがどれだけ嫌がろうとも、亡霊のようにいつもセアの後ろについてきました。

 セアにとっては両親の仇であるこの男、もちろん何度も殺そうとしました。
 しかし、いくらナイフを突き立てようと彼が死ぬことはありませんでした。



「う……」
「セア様、ご無事で……」
 目を覚ました瞬間、メローゼの顔が映り込む。
 ばちっ。
「っ……」
 伸ばされた手を払うと、メローゼは一瞬だけ傷ついた表情に変わる。
「アイツらは?」
「片付けました」
 無表情に戻ったメローゼから視線を外し、自分の体をあちこち動かしてみる。
 特に痛むところはない。つまり、コイツにまた守られたということか。
「お前は何がしたいんだ。父さんと母さんを殺して、全部台無しにした上で、僕を守ろうだなんて……」
「それは……」
「殺せばいいじゃないか! これならお前にやるよ。だから、もう僕に纏わりつくのはやめてくれよ!」
 言葉の勢いのままに、メローゼにブローチを押し付けてやるが、簡単に腕を取られ、そのまま覗き込まれる。
「貴方は死にたいのですか?」
「ああ。お前に守られるくらいなら死んだ方がマシだ」
 目が合う前に視線を地面に落とし、メローゼの手を振り払う。
「そうですか……。でも、私は貴方を守りたいんです」
「なんでだよ。僕にはお前の意図がわからない。何を企んでるんだよ、お前は一体何者なんだよ……!」
 もう何度目かもわからない問いを投げかける。
「……」
 メローゼはやはり押し黙る。答えなど返ってこない。いつもそうだ。僕がこんなにも答えを欲しているのに。彼はいつも……。だったら。
「だったら、今度こそ僕がお前を殺してやるよ。メローゼ」
「……私は死にませんよ」
「だとしても。今度こそは殺してやる!」
 勢いよく掴みかかると、メローゼの青い瞳が僅かに揺れ動く。
 それはまるで、海そのものであるかのようにきらきらと煌いていて……。
「っ……!」



『誰か! そこにいるのですか?! どうか、この封印を、解いてっ……!』
『だれかいるの……?』
『なんだ……。子ども、ですか』
『おにいさん……? きれいなこえ……!』
『綺麗……?』
『うん。すきとおるってる。うみみたい。ぼくね、もっとおにいさんのこえ、きいていたい! どこにいるの?』
『ええと、ここです。本棚の、青い背表紙の……』
『せびょうし……? あ、これ、うみのいろ!』
『ええと、それを開いてください』
『うんしょ』
『何も起きませんね……。やはり、開くだけでは駄目ですか』
『ええ~? おにいさんでてこれないの? いや! でてきてよ! もっとこえきかせてよ!』
『あの、あまり乱暴に扱わないで、』
『でも、おにいさん、だしてあげたいもん! おにいさんのこえだけじゃなく、すがたみてみたいもん!』
『それは……。きっと見たら貴方は怯えてしまいますよ』
『そんなことない! だって、ぼくは! おにいさんのことすきだもん!』
『好きって……』
『ほんとうだもん! ひとめぼれしたんだもん!』
『……ふふ。姿も見えないのに、一目惚れ、ですか。おかしな子ですね』
『ほんとだもん! おにいさんのこと、もっとしりたいもん!』
『馬鹿なことを』
『ねえ、おしえて。おにいさんのなまえ。そしたらぼくは、きっとおにいさんのことをわすれないでいられるから!』
『……メローゼ。メローゼ・メンシュです』
『メローゼ・メンシュ……』
『あの、貴方の名前は……?』
『ぼくはセア。セア・ウォートだよ』
『そう、ですか……』
『あ、メローゼ、ごめん。ぼくもういかないと。メイドからにげてるとちゅうだったんだ。でも、きっとあしたもくるからね! メローゼもちゃんといてね、やくそくだよ!』



「くそ。どうやったらお前は死ぬんだよ、メローゼ……!」
 セアは半狂乱になりながら、何度刺しても死なないメローゼを突き飛ばしました。
「セア様……。私は……、まだ死ぬわけには、いかないのです」
 突き飛ばされたメローゼは、ふらふらと立ち上がりながら迷いのある声で一語一語絞り出しました。
 そしてメローゼは、迷いを断ち切るように目を閉じ、首を振ると、セアを真っすぐに見据え……。
「貴方のことが好きなのです」
 空気を震わす透き通った声ではっきりとそう告げました。
「好きって……。お前が僕を? 笑わせるなよ」
「残念ながら、これは本心なのです。貴方が私の封印を解いてからずっと。私は貴方のことを……」

「は……? 封印って、何の話だよ」
「私は人間たちによって、力を石に、私自身を本に封印されてしまったのです」
「本……」
 セアは昔の記憶を辿るように目を閉じましたが、すぐに諦めた様子で首を振りました。
「貴方は覚えていないでしょう。でも、幼かった貴方は確かに私の呼びかけに答えてくれたのです」
「僕がそんなことを……」
 セアには確かに、幼い頃立ち入りを禁止されていた書庫に入り込んだ記憶がありました。
「そんな……。僕が封印を解かなければ、父さんも母さんも……」
「それは違います! 私が貴方のご両親を殺めたのには、理由があるのです……!」
 メローゼは瞳を揺らしながら、声を絞り出しました。
「代々引き継がれてきた魔石……“人魚の泪”は人々の邪念に触れ、穢れを少しずつ溜め込んでいました。それが時を経て、純粋な力とは異なる邪悪な魔石へと変化させたのです。そして、それに触れたお二人が、憑り殺されるのも時間の問題だったのです。だから、これ以上の被害を抑えるために必要なことだったのです! 私が殺さなくとも、ご両親はどの道……」
 真名を呼ばれたことにより封印の解けたメローゼは、それからセアと会うことなく、ひっそりと“人魚の泪”の在処を探りました。
 そして、それが穢れていることを知ったメローゼは穢れに囚われているセアの両親をなんとか助けようとしました。
 でも、メローゼの力ではどうすることも出来ないほどに穢れは膨れ上がって。
 セアがすっかりメローゼのことを忘れてしまった頃には、メローゼの加護を突き抜け、それは両親を蝕んでいったのです。
「それじゃあ、なんで僕は平気なんだよ」
「私が側で清めているからです。本当はその石自体を清めたいのですが……」
「……?」
「……いえ。私にそこまでの力はないので」
 しばらくの沈黙の後、メローゼは俯きそう告げました。
「どうして今まで全部黙っていた?」
「それは……。セア様がご自分に責任を感じるかと思いまして……」
 セアは、逃げるように目を逸らすメローゼに手をかざし……。
「メローゼ……。ああ、すまなかった。勘違いしていたとはいえ、僕は今までお前に酷いことを……」
 メローゼの頬をそっと撫でました。
「セア様……?」
「ああ、メローゼ。お前は本当にいい奴だ。どうか、これからも弱い僕を守ってはくれないか」
「セア、様……。私を許していただけるのですか?」
「許すも何も、お前は全く悪くないじゃないか」
 メローゼは信じられないという風に首を振り、溢れそうになる涙を堪え、自分の頬を撫でるセアの手を取り、そっと唇に寄せました。
「ええ。もとより、そのつもりです。貴方が死ぬまで、私はここにいましょう」
「メローゼ……」
 そして、どちらからともなく二人は抱き合いました。
 メローゼは、ついに溢れる涙を抑えることができず、膝を折り、全てをセアに委ねました。
 が。
「なんて言うわけないだろう? メローゼ」
「え……?」
 メローゼが顔を上げるとセアは、黒く、心底愉快そうに微笑みました。
 そして、自分の胸からおもむろにブローチを外し、地面に落とすと、何のためらいもなく踏みつけました。
「な……!」
 メローゼが急いで拾い上げたときには、既に遅く、ブローチはあっという間に粉々に砕けていました。
「壊れやすいとは聞いていたけど、まさかこんなに簡単に壊れちゃうなんてね」
「セア様……」
「メローゼ。お前は本当に馬鹿だね。あんなので油断するなんてさ。かわいそうに」
 真っ青になったメローゼはがたがたと震えました。怒り、悲しみ、嘆き。そんな行き場のない感情たちが彼の中で膨らみあがり、溢れ出すことさえも許されず、行き場なく抑え込まれているようでした。
「あ、ああ……」
「やっぱり。お前は人魚なんだな。それも、この魔石に力を封じられた馬鹿な人魚だ」
 人魚の魔力で人間の姿を保っていたメローゼの皮膚は、ブローチを砕かれたその瞬間、黒く固い鱗で覆われてゆきました。
 セアは、立つことも敵わず呆然とするメローゼの尾ひれを優しく撫で上げてみました。その固い鱗は指に凸凹とした感触を与え、彼が人間でないことを物語る肌触りの悪さでした。
「っ!」
 ばちっ。
 苦しみながらもメローゼが尾ひれでその手を弾くと、セアは忌々しそうに舌打ちをしました。
 そしてセアは怒りに任せ、その手でメローゼの髪を鷲掴むと、そのまま引っ張り上げて自分の顔に近づけました。
「僕はお前が思っている以上に、お前のことを憎んでいるんだよ。正義染みた理由なんていらないんだよ。なんであれ、母さんと父さんはお前に殺されたんだ。僕がひとりぼっちなのはお前のせいなんだ。自分を責める? 馬鹿を言うな。全部お前が悪いんだ。だから」
 セアは落ちていたナイフを拾い上げ、メローゼに振りかざします。
 そして。
「お前が死ね!」
 ざくっ。
「う……あああ!!!」
 ナイフは、メローゼの胸に深く刺さりました。
「僕のことが好き? ほんと、笑わせるなよ。人殺しの化け物が! 僕はお前なんて、最初っから大嫌いだ!」
 魔力を失い、不死が途切れたメローゼの胸からはおびただしい量の赤い血が流れました。
「待って、セア様……。私は、まだ死ねな……、わた、しが、しん、だら、セアさまが、危な……」
「魔石が砕けてなくなった以上、呪われることもない。強欲な人間に狙われることもない。お前はいらないんだよ。いや、むしろ邪魔だ」
「ちが、う……、せ、あ、さま、」
「だから、魔石とともに散れ!」
 メローゼの伸ばした腕は、セアの剣によって薙ぎ払われて。宙を舞う赤は華々しく。メローゼの青く澄んだ瞳によく生える、とても綺麗な色でした。

 ああ、セア様……。私は、貴方に恩を返すことすらできなかった……。
 ああ、仰る通り全部私のせいなのです。人間に力を奪われなければ。封印から目覚めなければ。貴方たちを助けようとしなければ。貴方に特別想いを抱かなければ……。
 ああ、こんな気持ち、抱える前に海に帰ればよかった。
「セア様、ごめんなさい……」

 メローゼの瞳から流れた泪は頬を溶かし、泡に変え。そこから連鎖するようにメローゼの体を全て泡と化し。
 ついにメローゼだったそれは跡形もなく消え、胸に突き刺さっていたナイフだけが、ぽつりと横たわっていました。



 そして。
 セアはブローチからもメローゼからも解放され、幸せに……。なれませんでした。
「な、なんで。どうしていきなり、こんな戦争が……?」
 人々の悲鳴、炎、剣戟の響き。その様子に愕然としながらセアは膝を折りました。
 人魚の泪に溜められた負の感情は、決してウォート家のものだけでありませんでした。
 そう。何百年ものとき、大きな戦争が起こらず、人々が穏やかに暮らせていたのは、全ての邪念が神聖な“人魚の泪”に吸い寄せられたからこそだったのです。
 そしてそれに気づいたメローゼは、側でセアを守りつつ、悪い力が外に漏れないよう、ぎりぎりまで自分の力を削り、封じていたのです。
 でも、その魔石も、メローゼも消えてしまいました。
 そう。
 世界に悪が戻ったのです。
 人間たちはメローゼに守られていた平和とも知らず、口々にあの平和な頃に戻してくれ叫び、嘆きます。
「そんな馬鹿なことが……。メローゼが、こんなもの抱えてたなんて、僕は、そんなの、知らない、知らなかったんだ……! メローゼ、戻ってこい、メローゼ……」
 セアは愚かしくも、メローゼを突き刺したナイフに縋り、震えました。
 セアがいくら忘れようとしても、メローゼの最後の言葉が頭から離れませんでした。
 透き通るように綺麗なその声はセアの心を掴んで、本人が消えた後も、呪いのように耳の中をぐるぐると渦巻いているようでした。
 いや、その声はもうずっと、昔からセアの中に渦巻いて、心の海に溶け込んで……。
「メローゼ……メンシュ……」
 セアは自分の呟きに、ハッとしました。
「そうだ……。メローゼだ。あれは……。メローゼだったのか……」
 最後に聞いたその声は、幼いセアがメローゼと会った翌日に書庫で聞いた幻と全く同じだったのです。
「僕は、ずっと書庫で待ってたけど、結局会えなくて……。ああ、まさか。そんなことが……」
 それから、セアがどんなに後悔しても、メローゼが生き返ることはなく。地獄ともつかぬ世の中で、セアは苦しみながら生きるのでした。
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