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34私の立つ場所
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温かくて、ほっとする匂いがした。
意識が浮上して、薄く瞼を開けた。
視界に白い天井が映る。
柔らかな上掛けが身体を包んでいた。
どこなのか分かって、ほっと息をついた。
無事に帰ってこれた。
フランシーヌの身体から力が抜けた。
(……そうだ、エドは……)
フランシーヌは首を上げた。
刹那。
身体に激痛が走る。
あまりの痛さに、フランシーヌは息を詰めた。
「……っ!! 」
腕も、背も、脚も。
あらゆるところが痛い。
痛みを意識したのがいけなかったのか。
そこかしこが脈打つように疼き出した。
唐突に、フランシーヌの脳裏に昨夜のことが浮かんだ。
闇夜と、地面と、風と。
遠ざかる馬車に、暗い街道。
それと、異国の香水のかおり。
そこまで思い出して、諦めた。
フランシーヌは再び寝台に沈んだ。
「…フラン?」
聞きなれた声が聞こえた。
優しい声。
あの時ずっと恋しかった声だ。
エドワードが、ベッドの横で眉尻を下げてこちらを見ていた。
彼の碧い目に、瞬く間に涙の幕が張る。
目が赤い。
「……泣いてたの?」
聞くと、エドワードが両手でフランシーヌの手を包み込んだ。彼が背中を丸めて額を寄せる。握った手に彼の柔らかな髪が触れた。
エドワードは俯いたまま「良かった」と言った。
彼の声は震えていた。
「ここ、天国じゃないよね?」
鼻をすする音が聞こえた。
一拍置いて、「……当たり前だろ?」と返事が返ってきた。
それを聞いて、フランシーヌは、ようやく強ばっていた心が解けた気がした。
もう平気。もう大丈夫。心からそう思えた。
「ねぇ、エド?」
フランシーヌは、エドワードの手を握り返した。
鼻をすすりながらエドワードが顔を上げた。
やはり目は赤い。
「あのね、私。今回の件で身に染みてよく分かったの」
エドワードが眉を寄せてこちらを見た。
「怖い目にあったから……」
エドワードが呟くように言ったのを、フランシーヌは緩く頭を振って否定した。
「そうじゃなくてね」とフランシーヌは、真っ直ぐエドワードを見つめた。
「私、エドワードが好き。大好き」
エドワードが息を飲む音が聞こえた。
「今回のことでよく分かった。私は、あなたじゃないとダメなの。だから、エドワードも私を選んで」
真剣に願えば願うほど、胸がひりついた。
「うん」と頷いて、と願いながら見つめた。
エドワードが苦しげに顔を歪め、
滲んだ彼の碧色から、とうとう涙がこぼれ落ちた。
「反則だよ」と言って、彼は乱暴に目元を拭った。
返事を催促するより早く、エドワードが苦笑して言った。
「そんなものとっくに決まってる」
そう言って、エドワードが身を屈めて、唇にそっと触れるだけの口付けをした。
フランシーヌの額に、エドワードが額を押し付けた。彼のまつ毛が雫で光って見えた。
「良くなったら、絶対僕から改めて言うから」
拗ねたように言った彼の口調が、どうしようもなく、温かかった。
*
その後。
医師に簡単な問診を受けた。
打撲と擦過傷。全治2週間と言われた。
その間は絶対安静。
フランシーヌは、ベッドの住人になった。
案外暇をするものかと思いきや、代わる代わる人が来て、フランシーヌはそれほど退屈はしなかった。
あの日、城で起きたことは、皆の話を少しずつ聞くうちに状況が掴めてきた。
脱出後、王城へ向けて歩いている途中で気絶してしまったらしい。倒れていたのをエドワードが発見し、救出したようだ。エドワードが言うには、街道に血だらけで倒れている姿を見て、死んでしまったのかと、本当に心配したそうだ。今更ながら、相当に危ない行為だったのだと反省した。
セリーナのことは、救出の話を聞く時にエドワードから聞かされた。
しっかりと罪状のある罪で驚いた。随分なことをしたものだと呆れはしたが、同情は出来なかった。彼女が選んだ選択だ。きちんと責任と向き合ってもらいたいとフランシーヌは思った。
セリーナとは逆に、サリームは、罪に問うことが出来なかった。あの日、セリーナやフランシーヌの他にサリームを見た人間がいなかったことと、証言だけで物的証拠がないこと、外交上の問題などの理由で、結局諦めるしかなかった。
たぶん、あの男のことだから、そういった所も理解して行動していたのだろう。
罪に問えないと知って、エレナとハンスが怒り狂って暴れて、むしろそっちの方が大変だったように思う。ゴーシュとエドワードは意外と冷静そうに見えたのだが、影では相当怒り狂っていると世話をしてくれた侍女から聞いた。
それから、アレクシスはセリーナの正体を黙っていたことを謝罪してくれた。いきなり目の前で平伏された時は目玉が飛び出しそうになった。
その後も平身低頭で、あのアレクシスが別人のようだった。
「フランシーヌとセリーナのキャットファイトを見たかったから」という理由にはさすがに苛立ったが、エドワードがアレクシスに鉄拳制裁を食らわしたそうなので、良しとすることにした。
なんやかんやと日々は騒がしく、帰ってきたのだと実感した。
あの時、頑張って良かったと素直に思えた。
ただ、あの時つけた頬の傷は、塞がりはするものの、完全には消えないだろうと医師から言われた。
その話を聞いた時、漠然とサリームはもう自分を欲しがらないだろうと思った。
平穏にほっとしたのも束の間。
最近、フランシーヌには新たな悩みができた。
「フラン、あ~ん」
スプーンに乗ったゼリーを差し出され、フランシーヌは大人しくそれを頬張った。
「美味しい?」
「あ、うん……美味しいです」
フランシーヌが半目で見つめる先で、エドワードが嬉しそうに微笑んでいる。そのゆるゆるに緩んだ頬はここ最近、さらに酷くなったように思う。
もうとっくに回復しているのだが、エドワードは世話を焼くことを止めない。
「エド?私もう回復してるんだけど」
「いーや、フランシーヌはまだお世話が必要だよ」
そう言って、またスプーンを差し出され、促されるまま食いつくと、背景に小花が飛びそうなほどエドワードは喜んだ。
上機嫌なエドワードに、フランシーヌは呆れてしまう。
とっくに傷も癒えているというのに、「傷が完全に治らないとダメだ」とエドワードは言う。
さすがに病人でもないのに、そんなにベッドに寝てなんて居られない。暇すぎてどうにかなりそうだった。
フランシーヌは「嫌だ」と抗議するのだが、エドワードは首を横に振るばかり。
(わたし、このままベットから出られないの?)
フランシーヌは段々と不安になってきた。
「ねぇ、エド。外に出たい!歩きたいの!身体が鈍っちゃうわ」
「だめだめ、先生が安静にって言ってたでしょ?」
「それ2週間前の話よ?今はもう平気だってば」
「だーめ、フランはもう少し休まなきゃ。不安で僕の身がもたない」
フランシーヌはムッとした。
「それって、医師の判断ではなくエドワードの判断ってことでしょ?」
じっとエドワードを睨む。
エドワードと目が合うと、にこにこの笑顔で「そうだけど何か?」と首を傾げた。
「君が攫われて、しかも街道でボロボロで倒れてるフランを見つけた時の僕がどんな気持ちだったか!フランを失ったらどうしようかって、君の目が覚めるまで何度心臓が止まるかと思ったか!」
(……また、始まった……)
エドワードが語り出し、フランシーヌは渋い顔をした。
あの一件はエドワードに相当な衝撃を与えたらしく、看病をされるようになってから「あの時どれだけ絶望したか」を何十回と聞かされた。あまりに繰り返すものだから、反省を通り越して今ではすっかり慣れてしまった。
「だからさ、もう少し安静にしていて欲しいんだよ、いいだろ?」
エドワードが上目遣いで「お願い」と言った。エドワードの願いは叶えてあげたいとフランシーヌは思う。けれど承諾できないことだってある。
「気遣ってくれるのは素直に嬉しいわ。でも過剰なのは嫌」
フランシーヌがむくれっ面のまま答えると、エドワードは目に見えて傷付いた顔をする。
いじめてるみたいじゃないか。そんな顔はしないで欲しい。フランシーヌはじっとりとした視線を向けた。
だが、ふと考えがよぎり、フランシーヌの悪い癖が顔をのぞかせた。
エドワードは世話を焼きたいと言う。
つまりは甘えて欲しいということだ。
ならば、とことんこちらが甘えればいい。
フランシーヌはエドワードに向かって両腕を伸ばした。
「抱っこして」
上目遣いでお願いしてみると、エドワードがぴしりと固まった。
彼の手からスプーンが滑り落ち、かつん、と音を立てた。
エドワードの顔がみるみると赤くなってゆく。
トドメとばかりにフランシーヌは言った。
「外に行きたいの。抱っこして連れてって?それならいいんでしょ?」
笑顔で言うと、エドワードは両掌で顔を覆ってしまった。
「まいりました」
エドワードの呟きに、フランシーヌは勝利を確信した。
「早く!抱っこして!連れてって!」
フランシーヌは、エドワードに伸ばした両腕を振って見せた。
エドワードが観念したように身を屈め、力強く抱き上げられた。軽々と身体が浮く。
「重くない?」
「全然」
返ってきた言葉に、フランシーヌはほっとした。
間近にエドワードの顔がある。
フランシーヌは笑って彼に顔を寄せた。
「庭に行きましょう!マリウスに会いたいの!」
困った顔をしながらもエドワードは「はいはい」と応えてくれた。
回廊を風が吹き抜けた。
ほんのりと草の匂いがして、庭からマリウスの吠える声が聞こえた。
久しぶりに見る青空は、目が覚めるほど美しかった。
【おわり】
_____________________
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
意識が浮上して、薄く瞼を開けた。
視界に白い天井が映る。
柔らかな上掛けが身体を包んでいた。
どこなのか分かって、ほっと息をついた。
無事に帰ってこれた。
フランシーヌの身体から力が抜けた。
(……そうだ、エドは……)
フランシーヌは首を上げた。
刹那。
身体に激痛が走る。
あまりの痛さに、フランシーヌは息を詰めた。
「……っ!! 」
腕も、背も、脚も。
あらゆるところが痛い。
痛みを意識したのがいけなかったのか。
そこかしこが脈打つように疼き出した。
唐突に、フランシーヌの脳裏に昨夜のことが浮かんだ。
闇夜と、地面と、風と。
遠ざかる馬車に、暗い街道。
それと、異国の香水のかおり。
そこまで思い出して、諦めた。
フランシーヌは再び寝台に沈んだ。
「…フラン?」
聞きなれた声が聞こえた。
優しい声。
あの時ずっと恋しかった声だ。
エドワードが、ベッドの横で眉尻を下げてこちらを見ていた。
彼の碧い目に、瞬く間に涙の幕が張る。
目が赤い。
「……泣いてたの?」
聞くと、エドワードが両手でフランシーヌの手を包み込んだ。彼が背中を丸めて額を寄せる。握った手に彼の柔らかな髪が触れた。
エドワードは俯いたまま「良かった」と言った。
彼の声は震えていた。
「ここ、天国じゃないよね?」
鼻をすする音が聞こえた。
一拍置いて、「……当たり前だろ?」と返事が返ってきた。
それを聞いて、フランシーヌは、ようやく強ばっていた心が解けた気がした。
もう平気。もう大丈夫。心からそう思えた。
「ねぇ、エド?」
フランシーヌは、エドワードの手を握り返した。
鼻をすすりながらエドワードが顔を上げた。
やはり目は赤い。
「あのね、私。今回の件で身に染みてよく分かったの」
エドワードが眉を寄せてこちらを見た。
「怖い目にあったから……」
エドワードが呟くように言ったのを、フランシーヌは緩く頭を振って否定した。
「そうじゃなくてね」とフランシーヌは、真っ直ぐエドワードを見つめた。
「私、エドワードが好き。大好き」
エドワードが息を飲む音が聞こえた。
「今回のことでよく分かった。私は、あなたじゃないとダメなの。だから、エドワードも私を選んで」
真剣に願えば願うほど、胸がひりついた。
「うん」と頷いて、と願いながら見つめた。
エドワードが苦しげに顔を歪め、
滲んだ彼の碧色から、とうとう涙がこぼれ落ちた。
「反則だよ」と言って、彼は乱暴に目元を拭った。
返事を催促するより早く、エドワードが苦笑して言った。
「そんなものとっくに決まってる」
そう言って、エドワードが身を屈めて、唇にそっと触れるだけの口付けをした。
フランシーヌの額に、エドワードが額を押し付けた。彼のまつ毛が雫で光って見えた。
「良くなったら、絶対僕から改めて言うから」
拗ねたように言った彼の口調が、どうしようもなく、温かかった。
*
その後。
医師に簡単な問診を受けた。
打撲と擦過傷。全治2週間と言われた。
その間は絶対安静。
フランシーヌは、ベッドの住人になった。
案外暇をするものかと思いきや、代わる代わる人が来て、フランシーヌはそれほど退屈はしなかった。
あの日、城で起きたことは、皆の話を少しずつ聞くうちに状況が掴めてきた。
脱出後、王城へ向けて歩いている途中で気絶してしまったらしい。倒れていたのをエドワードが発見し、救出したようだ。エドワードが言うには、街道に血だらけで倒れている姿を見て、死んでしまったのかと、本当に心配したそうだ。今更ながら、相当に危ない行為だったのだと反省した。
セリーナのことは、救出の話を聞く時にエドワードから聞かされた。
しっかりと罪状のある罪で驚いた。随分なことをしたものだと呆れはしたが、同情は出来なかった。彼女が選んだ選択だ。きちんと責任と向き合ってもらいたいとフランシーヌは思った。
セリーナとは逆に、サリームは、罪に問うことが出来なかった。あの日、セリーナやフランシーヌの他にサリームを見た人間がいなかったことと、証言だけで物的証拠がないこと、外交上の問題などの理由で、結局諦めるしかなかった。
たぶん、あの男のことだから、そういった所も理解して行動していたのだろう。
罪に問えないと知って、エレナとハンスが怒り狂って暴れて、むしろそっちの方が大変だったように思う。ゴーシュとエドワードは意外と冷静そうに見えたのだが、影では相当怒り狂っていると世話をしてくれた侍女から聞いた。
それから、アレクシスはセリーナの正体を黙っていたことを謝罪してくれた。いきなり目の前で平伏された時は目玉が飛び出しそうになった。
その後も平身低頭で、あのアレクシスが別人のようだった。
「フランシーヌとセリーナのキャットファイトを見たかったから」という理由にはさすがに苛立ったが、エドワードがアレクシスに鉄拳制裁を食らわしたそうなので、良しとすることにした。
なんやかんやと日々は騒がしく、帰ってきたのだと実感した。
あの時、頑張って良かったと素直に思えた。
ただ、あの時つけた頬の傷は、塞がりはするものの、完全には消えないだろうと医師から言われた。
その話を聞いた時、漠然とサリームはもう自分を欲しがらないだろうと思った。
平穏にほっとしたのも束の間。
最近、フランシーヌには新たな悩みができた。
「フラン、あ~ん」
スプーンに乗ったゼリーを差し出され、フランシーヌは大人しくそれを頬張った。
「美味しい?」
「あ、うん……美味しいです」
フランシーヌが半目で見つめる先で、エドワードが嬉しそうに微笑んでいる。そのゆるゆるに緩んだ頬はここ最近、さらに酷くなったように思う。
もうとっくに回復しているのだが、エドワードは世話を焼くことを止めない。
「エド?私もう回復してるんだけど」
「いーや、フランシーヌはまだお世話が必要だよ」
そう言って、またスプーンを差し出され、促されるまま食いつくと、背景に小花が飛びそうなほどエドワードは喜んだ。
上機嫌なエドワードに、フランシーヌは呆れてしまう。
とっくに傷も癒えているというのに、「傷が完全に治らないとダメだ」とエドワードは言う。
さすがに病人でもないのに、そんなにベッドに寝てなんて居られない。暇すぎてどうにかなりそうだった。
フランシーヌは「嫌だ」と抗議するのだが、エドワードは首を横に振るばかり。
(わたし、このままベットから出られないの?)
フランシーヌは段々と不安になってきた。
「ねぇ、エド。外に出たい!歩きたいの!身体が鈍っちゃうわ」
「だめだめ、先生が安静にって言ってたでしょ?」
「それ2週間前の話よ?今はもう平気だってば」
「だーめ、フランはもう少し休まなきゃ。不安で僕の身がもたない」
フランシーヌはムッとした。
「それって、医師の判断ではなくエドワードの判断ってことでしょ?」
じっとエドワードを睨む。
エドワードと目が合うと、にこにこの笑顔で「そうだけど何か?」と首を傾げた。
「君が攫われて、しかも街道でボロボロで倒れてるフランを見つけた時の僕がどんな気持ちだったか!フランを失ったらどうしようかって、君の目が覚めるまで何度心臓が止まるかと思ったか!」
(……また、始まった……)
エドワードが語り出し、フランシーヌは渋い顔をした。
あの一件はエドワードに相当な衝撃を与えたらしく、看病をされるようになってから「あの時どれだけ絶望したか」を何十回と聞かされた。あまりに繰り返すものだから、反省を通り越して今ではすっかり慣れてしまった。
「だからさ、もう少し安静にしていて欲しいんだよ、いいだろ?」
エドワードが上目遣いで「お願い」と言った。エドワードの願いは叶えてあげたいとフランシーヌは思う。けれど承諾できないことだってある。
「気遣ってくれるのは素直に嬉しいわ。でも過剰なのは嫌」
フランシーヌがむくれっ面のまま答えると、エドワードは目に見えて傷付いた顔をする。
いじめてるみたいじゃないか。そんな顔はしないで欲しい。フランシーヌはじっとりとした視線を向けた。
だが、ふと考えがよぎり、フランシーヌの悪い癖が顔をのぞかせた。
エドワードは世話を焼きたいと言う。
つまりは甘えて欲しいということだ。
ならば、とことんこちらが甘えればいい。
フランシーヌはエドワードに向かって両腕を伸ばした。
「抱っこして」
上目遣いでお願いしてみると、エドワードがぴしりと固まった。
彼の手からスプーンが滑り落ち、かつん、と音を立てた。
エドワードの顔がみるみると赤くなってゆく。
トドメとばかりにフランシーヌは言った。
「外に行きたいの。抱っこして連れてって?それならいいんでしょ?」
笑顔で言うと、エドワードは両掌で顔を覆ってしまった。
「まいりました」
エドワードの呟きに、フランシーヌは勝利を確信した。
「早く!抱っこして!連れてって!」
フランシーヌは、エドワードに伸ばした両腕を振って見せた。
エドワードが観念したように身を屈め、力強く抱き上げられた。軽々と身体が浮く。
「重くない?」
「全然」
返ってきた言葉に、フランシーヌはほっとした。
間近にエドワードの顔がある。
フランシーヌは笑って彼に顔を寄せた。
「庭に行きましょう!マリウスに会いたいの!」
困った顔をしながらもエドワードは「はいはい」と応えてくれた。
回廊を風が吹き抜けた。
ほんのりと草の匂いがして、庭からマリウスの吠える声が聞こえた。
久しぶりに見る青空は、目が覚めるほど美しかった。
【おわり】
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最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
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