【完結】負けず嫌いが過ぎて、王子と婚約することになりました〜ただ言い返してただけなのに、どういう訳か気にいられてます〜

ぽぽよ

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33違和感の正体

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 フランシーヌは髪飾りを引き抜いた。
 細く尖った金属が、目の前に現れる。

 (これなら使える)  

 確かめるように、髪飾りの先端を指でなぞった。
 フランシーヌは、サリームを睨んだ。

「あなたにとって、私はどこまでいっても、物なのね。本当に、反吐が出る」

 吐き捨てるように呟いて、フランシーヌは髪飾りを握り締めた。
 細く冷たい金属が、掌に食い込む。

 (これしか、方法はない)

 フランシーヌは、まっすぐにサリームを見据えた。

「なんだ。誘惑してくれるのか?」

「馬鹿言わないで、逃げる算段を立ててたのよ」

「逃げる?どうやって」

 サリームは小馬鹿にしたように笑う。

 フランシーヌは握りしめた髪飾りを頬にあてがう。

 意図に気付いたサリームが一瞬にして表情を変えた。

「やめろ!!」

 怒声が響く。

 フランシーヌは、構わず頬に髪飾りを突き刺す。
 鋭い痛みが走る。しかし、そのまま力任せに引っ掻いた。
 セリーナにつけられた傷がさらに広がった。
 頬を伝って、血が滴り落ちる。
 サリームの慌てぶりに、胸の奥が満たされた。
 フランシーヌは薄く笑った。

「これ以上近づかないで、これ以上近づいたら、このまま突いて死ぬわよ」

「やめろ……分かったから、それを離せ」

「いやよ」

 フランシーヌは視線を逸らさぬまま、後ろ手で客車の鍵を開けた。
 ちらりと窓の外に視線を投げた。
 闇夜に染まる景色は、流れるように速かった。

「言ったでしょう。私は、私のものよ」
「エドワードに捨てられたからって、自分を捨てる理由にはならない」

 フランシーヌは、サリームを強く睨みつけた。

「貴族っていっつもそう。人の痛いところ突くのだけは本当に上手くて嫌になる」

 セリーナの言葉。サリームの言葉。全部、同じだ。

「でも、残念でした」

「おい、何を…」

 サリームが気づいた。

 けれど、遅い。

 フランシーヌは一気に扉を開け放つ。
 激しい風が吹き込み、髪とドレスを容赦なく巻き上げる。

「待て!」

 立ち上がったサリームを、フランシーヌは睨み返した。

「たとえ私が選ばれなくても、私を安売りしたりしない!私は私のものよ!」

 息を詰め、覚悟を決めた。
 フランシーヌは、客車を蹴って飛ぶ。

 身体が宙に浮き、風が一気に吹き抜ける。
 馬車との距離は、瞬く間に開いた。
 扉から身を乗り出すサリームの姿が、遠ざかる。

 次の瞬間、背中から地面に叩きつけられた。
 衝撃を殺しきれないまま、身体が転がる。
 無様に何度も地面を打ちながら、ようやく止まった。

 小さく呻き、フランシーヌは上体を起こした。
 全身が、悲鳴を上げていた。
 白いドレスには、鮮やかな赤が滲んでいた。
 けれど、構っている場合ではない。
 轍を見て、馬車が進んだ方向とは逆へ。フランシーヌは何とか立ち上がり、足を引きずりながら何とか進んだ。
 絶対に帰る。
 それだけがフランシーヌの心の支えだった。
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