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高配当
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機嫌が悪いのか、桜庭はいつも以上に乱暴だった。
「ふっ……んうっ……」
後ろ手に両手を縛られ、股を完全に開いた状態で、正面から突かれる。穴が丁度いい角度になるよう、尻の下にはクッションが敷かれている。頭が低い位置に来て、血が昇る。
口に咬まされた布は唾液でぐちゃぐちゃだった。激しく擦られて、中は気持ちいいどころか痛いくらいだ。両目から涙をボロボロと溢す瑠衣を見て、桜庭は薄く笑う。
三十二歳、会社経営者の桜庭にはサディスティックな面があり、ベッドの上だとひどく手荒に瑠衣を抱く。最中はめちゃくちゃキツイ。けれど「時の人」とか「敏腕社長」などと持て囃されるような人が自分に夢中になっているのだと思うと気分が良い。それに彼の場合、乱暴なのはプレイだけで、普段はとても優しい。
このマンションも、生活費も、全て桜庭に出してもらっている。おかげで瑠衣は成績を落とすことなく大学生活を送れている。
「んっ……う、んんっ……」
桜庭の両手が、瑠衣の首に回された。グッと力強く絞められ、視界が霞んだ。脳が膨張し、血管がブチブチと切れていくようだった。命の危険を感じ、瑠衣は激しく首を横に振る。
首を絞めながらも、桜庭は腰を止めない。ラストに向かっていっそう激しく腰を振る。
「んっ、うっ、んんっ……」
ぐわんと頭が痺れ、瑠衣は意識を失った。
スマホの着信音で目が覚めた。拘束は解かれている。瑠衣はベッドに横たわったまま、手だけを動かしスマホを取った。
知らない番号だった。心当たりは一人しかいない。体を起こし、応答する。
「なに?」
『なにとはなんやねん。瑠衣、今どこおんねん。トークイベントはじまんで』
「え……うそ……」
意識を失って、そのまま朝まで寝てしまったようだ。この日は尼崎競艇場で若手レーサーのトークイベントがあり、奥秀人も出演予定だった。
『どこおんねん』
拓也は現地にいるのだろう。電話口は騒がしい。
「家……」
『いえー? ラブレター渡すんやないんか』
「だって……」
『まあええわ。質問コーナーもあるらしいで、何か聞きたいことがあるなら聞いたるよ』
「えっと……じゃあ、八百長のこと聞いて」
『ほんま? ど直球やないか』
「いいじゃん。聞いてよ」
自分にはできないが、拓也ならできそうだ。
『ええよ。おもろそうやし』
「……じゃあ、よろしく」
『オーケイ。ほな行くわ』
「寿司っ!」
通話を切られそうな気配に、思わず言った。
「寿司、奢ってあげるから、ちゃんと聞いてきてね」
拓也は高らかに笑った。
『心配せんでも、ちゃんと聞いたるよ。ほなまた電話するわ』
通話が切れた。なぜか頬が熱くなった。寿司と言ったら、もっと喜ぶかと思ったのに、まるであいつ、こっちが心配性みたいな反応だった。
瑠衣は首を回した。皮膚の中でゴキッと音が鳴る。次に体をひねり、筋を伸ばした。この動作で、だいたいの体のダメージがわかる。これは長引きそうだと思った。重い体を引き摺るようにして風呂場へ行く。脱衣所の鏡を見ると、首にくっきりと痣が浮いていた。
両親が離婚した後、瑠衣は母と共に北陸に引っ越した。母は自宅に男を連れ込んで日銭を稼いでいたが、ある日、顧客の一人が瑠衣としたいと言い出した。肛門で性交できるようになるまで、一ヶ月掛かった。
母は瑠衣で客を取ることに味をしめ、その筋の男たちを自宅に連れ込むようになった。
だから体を売ることに抵抗はない。母にピンハネされることもなく、全て自分の金になるのだから、今の生活にはなんの不満もない。
体を流した後、スマホでトークイベントの様子をチェックした。拓也は本当に八百長について質問したらしく、『こいつ失礼すぎ』と写真付きでSNSに晒されていた。
投稿から十分も経っていないのに、既に多くのコメントが寄せられていた。
『奥秀人が八百長なんかするわけないだろ』
『このバカ何言ってんだ。ボートに八百長はつきものだろ』
『確かに住之江の12Rは怪しかった』
『本人に聞くとか草』
『で、奥はなんて答えたん?』
探しても、奥秀人がなんと答えたかは見つからず、瑠衣は待ち切れずに拓也に発信した。
『どうしたん。俺のこと大好きか』
「質問したんでしょ。奥、なんて答えたの?」
『せっかちなやっちゃのう。そない気になるのになんで来なかったんや』
「体調が悪いんだよ」
『なんや、それならそうと言わんかい。確か一人暮らしやったな。見舞い行ったろか』
「いい。奥秀人はなんて」
『お子ちゃまが遠慮してどうすんねん。ええから住所言い。奥がなんて言ったかはそれからや』
瑠衣は迷ったが、住所を教えることにした。どちらにせよ、この体ではコンビニに行くのもままならない。
鏡を見る。首には絞められた痣がくっきりと残っているが、隠そうとは思わなかった。拓也は定職にも就いていないギャンブル狂い。すなわち社会の底辺だ。クズにどう思われようが構わない。
拓也は三十分ほどでやってきた。瑠衣を見るなり、「なんやその痣っ」と大袈裟に驚く。
「恋人に絞められた」
「はあ?」
驚く拓也を玄関に残し、瑠衣はさっさと部屋の奥へ行く。拓也もすぐさまついてきた。
「自分、首絞めるようなイカツイ女と付き合っとるんかっ……」
「いいだろ別に。それより八百長の質問に奥秀人はなんて答えたの?」
瑠衣はソファに座った。マンションは2LDKで、寝室とリビングは別だ。
「……んまあ、好みは人それぞれやしな」
拓也は広いリビングを物珍しそうに見回す。
「で、奥秀人はなんて答えたのさ」
「『俺はやらない』……即答や。あいつは白や」
「でも……」
住之江の12Rは怪しかった。他にも、あのレースを怪しいと思っている人がいる。
「もうええやろ。確かにあのレース、奥の動きは不自然やった。せやけど奥は八百長するようなタマやない。これ以上探るんはよせ。奥のファンに刺されるで」
「でも……」
「見てみい、これ」
拓也は体を捻るようにして背中を見せた。カーキ色のジャケットにシミが広がっている。
「ラーメンの汁や。ふざけんなってぶっかけられた」
「えっ……」
「係員にも注意されたんやで? 今日は酷い目に遭うたわ」
「……ごめん」
「かまへんよ。俺も聞きたかったことやしな。人気者と喋れてラッキーやわ。あれは確かにええ男やな」
「寿司、頼もうか。僕もお腹空いたし」
「あほう。体調悪いんやろ。そういう時は雑炊か鍋って決まっとんねん。卵とカニカマはあるか? 白米は当然あるわな?」
言いながら拓也はキッチンへ向かう。
「ご飯はあるけど卵もカニカマもないよ」
「殺風景な冷蔵庫やな」
冷蔵庫を開けながら拓也は言った。
「じゃあ買ってきて」
食欲不振ではないのだから、何を食べても良いのだが、拓也の手料理を食べてみたくなった。
「ええよ。材料費はもらうで」
「そこのリュックに財布が入ってる」
床に置かれたリュックを視線で示す。拓也は財布の中を見て、「なんや、千円しか入っとらんやんけ」と言った。
「カード使って。暗証番号は3486」
「他に欲しいもんは」
拓也は黒色のクレジットカードをまじまじと見つめている。桜庭が持たせてくれたものだ。
「ロキソニン」
拓也が顔を上げた。
「病院、連れてったるよ」
「大丈夫」
「恋人はなにしとんねん」
「仕事が忙しいんだよ」
拓也は怪訝にこちらを見ていたが、呆れたような、諦めたようなため息をひとつつくと、ポケットから使い古した財布を取り出し、中から免許証を引き抜いた。
それを、「たんぽ」と言って、瑠衣に差し出す。
「なに?」
「大事なカード預けるんやで。心配やろ」
頼み事を、寿司をチラつかせることで強制しようとしたように、この男は免許証を預けることで不安を和らげようとしているのだ。
寿司を奢ると言った時の、高らかな笑い声を思い出し、瑠衣はムッとした。
「いい、いらない」
拓也は不思議そうに目を丸くした。
「別に、心配してない」
拓也は目を細めた。
「ほんま、可愛いやっちゃ。俺のこと信用しとるんか」
「信用はしてないけど……」
「なんやねん」
拓也は肩を揺すった。
「じゃあもっとき。二十分は待たせんわ」
拓也は免許証をソファに置くと、去っていった。
拓也が去った後、部屋はいつも以上に広く、静かに感じられた。
「ふっ……んうっ……」
後ろ手に両手を縛られ、股を完全に開いた状態で、正面から突かれる。穴が丁度いい角度になるよう、尻の下にはクッションが敷かれている。頭が低い位置に来て、血が昇る。
口に咬まされた布は唾液でぐちゃぐちゃだった。激しく擦られて、中は気持ちいいどころか痛いくらいだ。両目から涙をボロボロと溢す瑠衣を見て、桜庭は薄く笑う。
三十二歳、会社経営者の桜庭にはサディスティックな面があり、ベッドの上だとひどく手荒に瑠衣を抱く。最中はめちゃくちゃキツイ。けれど「時の人」とか「敏腕社長」などと持て囃されるような人が自分に夢中になっているのだと思うと気分が良い。それに彼の場合、乱暴なのはプレイだけで、普段はとても優しい。
このマンションも、生活費も、全て桜庭に出してもらっている。おかげで瑠衣は成績を落とすことなく大学生活を送れている。
「んっ……う、んんっ……」
桜庭の両手が、瑠衣の首に回された。グッと力強く絞められ、視界が霞んだ。脳が膨張し、血管がブチブチと切れていくようだった。命の危険を感じ、瑠衣は激しく首を横に振る。
首を絞めながらも、桜庭は腰を止めない。ラストに向かっていっそう激しく腰を振る。
「んっ、うっ、んんっ……」
ぐわんと頭が痺れ、瑠衣は意識を失った。
スマホの着信音で目が覚めた。拘束は解かれている。瑠衣はベッドに横たわったまま、手だけを動かしスマホを取った。
知らない番号だった。心当たりは一人しかいない。体を起こし、応答する。
「なに?」
『なにとはなんやねん。瑠衣、今どこおんねん。トークイベントはじまんで』
「え……うそ……」
意識を失って、そのまま朝まで寝てしまったようだ。この日は尼崎競艇場で若手レーサーのトークイベントがあり、奥秀人も出演予定だった。
『どこおんねん』
拓也は現地にいるのだろう。電話口は騒がしい。
「家……」
『いえー? ラブレター渡すんやないんか』
「だって……」
『まあええわ。質問コーナーもあるらしいで、何か聞きたいことがあるなら聞いたるよ』
「えっと……じゃあ、八百長のこと聞いて」
『ほんま? ど直球やないか』
「いいじゃん。聞いてよ」
自分にはできないが、拓也ならできそうだ。
『ええよ。おもろそうやし』
「……じゃあ、よろしく」
『オーケイ。ほな行くわ』
「寿司っ!」
通話を切られそうな気配に、思わず言った。
「寿司、奢ってあげるから、ちゃんと聞いてきてね」
拓也は高らかに笑った。
『心配せんでも、ちゃんと聞いたるよ。ほなまた電話するわ』
通話が切れた。なぜか頬が熱くなった。寿司と言ったら、もっと喜ぶかと思ったのに、まるであいつ、こっちが心配性みたいな反応だった。
瑠衣は首を回した。皮膚の中でゴキッと音が鳴る。次に体をひねり、筋を伸ばした。この動作で、だいたいの体のダメージがわかる。これは長引きそうだと思った。重い体を引き摺るようにして風呂場へ行く。脱衣所の鏡を見ると、首にくっきりと痣が浮いていた。
両親が離婚した後、瑠衣は母と共に北陸に引っ越した。母は自宅に男を連れ込んで日銭を稼いでいたが、ある日、顧客の一人が瑠衣としたいと言い出した。肛門で性交できるようになるまで、一ヶ月掛かった。
母は瑠衣で客を取ることに味をしめ、その筋の男たちを自宅に連れ込むようになった。
だから体を売ることに抵抗はない。母にピンハネされることもなく、全て自分の金になるのだから、今の生活にはなんの不満もない。
体を流した後、スマホでトークイベントの様子をチェックした。拓也は本当に八百長について質問したらしく、『こいつ失礼すぎ』と写真付きでSNSに晒されていた。
投稿から十分も経っていないのに、既に多くのコメントが寄せられていた。
『奥秀人が八百長なんかするわけないだろ』
『このバカ何言ってんだ。ボートに八百長はつきものだろ』
『確かに住之江の12Rは怪しかった』
『本人に聞くとか草』
『で、奥はなんて答えたん?』
探しても、奥秀人がなんと答えたかは見つからず、瑠衣は待ち切れずに拓也に発信した。
『どうしたん。俺のこと大好きか』
「質問したんでしょ。奥、なんて答えたの?」
『せっかちなやっちゃのう。そない気になるのになんで来なかったんや』
「体調が悪いんだよ」
『なんや、それならそうと言わんかい。確か一人暮らしやったな。見舞い行ったろか』
「いい。奥秀人はなんて」
『お子ちゃまが遠慮してどうすんねん。ええから住所言い。奥がなんて言ったかはそれからや』
瑠衣は迷ったが、住所を教えることにした。どちらにせよ、この体ではコンビニに行くのもままならない。
鏡を見る。首には絞められた痣がくっきりと残っているが、隠そうとは思わなかった。拓也は定職にも就いていないギャンブル狂い。すなわち社会の底辺だ。クズにどう思われようが構わない。
拓也は三十分ほどでやってきた。瑠衣を見るなり、「なんやその痣っ」と大袈裟に驚く。
「恋人に絞められた」
「はあ?」
驚く拓也を玄関に残し、瑠衣はさっさと部屋の奥へ行く。拓也もすぐさまついてきた。
「自分、首絞めるようなイカツイ女と付き合っとるんかっ……」
「いいだろ別に。それより八百長の質問に奥秀人はなんて答えたの?」
瑠衣はソファに座った。マンションは2LDKで、寝室とリビングは別だ。
「……んまあ、好みは人それぞれやしな」
拓也は広いリビングを物珍しそうに見回す。
「で、奥秀人はなんて答えたのさ」
「『俺はやらない』……即答や。あいつは白や」
「でも……」
住之江の12Rは怪しかった。他にも、あのレースを怪しいと思っている人がいる。
「もうええやろ。確かにあのレース、奥の動きは不自然やった。せやけど奥は八百長するようなタマやない。これ以上探るんはよせ。奥のファンに刺されるで」
「でも……」
「見てみい、これ」
拓也は体を捻るようにして背中を見せた。カーキ色のジャケットにシミが広がっている。
「ラーメンの汁や。ふざけんなってぶっかけられた」
「えっ……」
「係員にも注意されたんやで? 今日は酷い目に遭うたわ」
「……ごめん」
「かまへんよ。俺も聞きたかったことやしな。人気者と喋れてラッキーやわ。あれは確かにええ男やな」
「寿司、頼もうか。僕もお腹空いたし」
「あほう。体調悪いんやろ。そういう時は雑炊か鍋って決まっとんねん。卵とカニカマはあるか? 白米は当然あるわな?」
言いながら拓也はキッチンへ向かう。
「ご飯はあるけど卵もカニカマもないよ」
「殺風景な冷蔵庫やな」
冷蔵庫を開けながら拓也は言った。
「じゃあ買ってきて」
食欲不振ではないのだから、何を食べても良いのだが、拓也の手料理を食べてみたくなった。
「ええよ。材料費はもらうで」
「そこのリュックに財布が入ってる」
床に置かれたリュックを視線で示す。拓也は財布の中を見て、「なんや、千円しか入っとらんやんけ」と言った。
「カード使って。暗証番号は3486」
「他に欲しいもんは」
拓也は黒色のクレジットカードをまじまじと見つめている。桜庭が持たせてくれたものだ。
「ロキソニン」
拓也が顔を上げた。
「病院、連れてったるよ」
「大丈夫」
「恋人はなにしとんねん」
「仕事が忙しいんだよ」
拓也は怪訝にこちらを見ていたが、呆れたような、諦めたようなため息をひとつつくと、ポケットから使い古した財布を取り出し、中から免許証を引き抜いた。
それを、「たんぽ」と言って、瑠衣に差し出す。
「なに?」
「大事なカード預けるんやで。心配やろ」
頼み事を、寿司をチラつかせることで強制しようとしたように、この男は免許証を預けることで不安を和らげようとしているのだ。
寿司を奢ると言った時の、高らかな笑い声を思い出し、瑠衣はムッとした。
「いい、いらない」
拓也は不思議そうに目を丸くした。
「別に、心配してない」
拓也は目を細めた。
「ほんま、可愛いやっちゃ。俺のこと信用しとるんか」
「信用はしてないけど……」
「なんやねん」
拓也は肩を揺すった。
「じゃあもっとき。二十分は待たせんわ」
拓也は免許証をソファに置くと、去っていった。
拓也が去った後、部屋はいつも以上に広く、静かに感じられた。
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