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「わしと宮城さんがぶっ飛べばこのレース、十万はつく。わしは宮城さんをブロックしながら桜井を前に行かせる。そうすると3番人気の山内がわりゃと桜井に挟まれて沈む。最終着順は6-5-1か、6-5-3じゃ」
甲斐の言葉通りにレースを運んだ時の快感は、デビュー後の初勝利に匹敵した。こんなスリルがこの世にあるのかと驚き、同時に感動した。甲斐は一流のレーサーだ。ただ1着を狙いに行くよりも、着順をビルドアップする方がはるかに難しい。
「上出来じゃ」
七日間に及ぶレースを終えた後、甲斐と二人で朝まで飲んだ。疲れているはずなのに、楽しくていくらでも起きていられた。甲斐の話は面白かった。
「わりゃ、時計しないん?」
「ああ……壊れちゃったんです。修理に出したいんですけど、なかなか時間がなくて」
「稼いどるんやから買いや」
「気に入ってたんですよ」
「なんのブランド?」
「セイコーです」
「なんでセイコーなんよ。そんなん、地方のジジババしか持っとらんよ。レーサーならロレックスとかウブロとか、もっといかついもんつけえや」
ムッとする。でも心が傾くのも確かだった。甲斐が身につけているロレックスはシルバー一色のシンプルなデザインだったが、妙に存在感があり、格好良い。でもそれはロレックス単体が格好いいというより、甲斐が身につけているからそう見える気がした。
銀色の髪も、余白の多い目も、訛りも、これまでなんとも思わなかった事柄が、彼を通して見ると格好いいのだ。
「なあ、突っ込ませて」
朝五時に店を出て、乗り込んだタクシーの後部座席で、凛義にもたれ掛かりながら甲斐は言った。
「え?」
「わりゃのケツに、わしのちんこ」
甲斐は凛義の腰を触った。
凛義は激しく狼狽えた。タクシー運転手の視線を気にして、何も答えられずにいると、「嫌ならええけど」と甲斐はそっけなく体を離す。
「嫌じゃないですっ」
まともに事態を飲み込めないまま、凛義は答えていた。
ラブホテルに入って、本当にセックスを求められたのだと実感した時、凛義はやはり、甲斐を格好いいと思った。甲斐の行動には疾しさがない。性に奔放で、こなれた誘い方を大人っぽいと感じた。
「なんや、わりゃ、男が好きじゃったんか」
腰に巻いたタオル越しに、甲斐は凛義の股間に触れてきた。
「じゃあなに? わしに抱かれんのも嬉しい?」
からかうような声。暴力的な衝動が突き上げてきて、凛義は甲斐の腕を掴んだ。
「俺っ……」
男が好きなんて、二十年間誰にも言い出せなかった。
「俺っ……突っ込む方……がいい、です」
蛇のような切長の目をすっと細め、甲斐は顔を寄せ、唇の触れる距離で言った。
「別の男に突っ込ませたってバレたら、わし、怒られてまうわ」
それはつまり、と思考する間も無く、甲斐は唇を重ねてきた。歯磨き粉と酒の匂いに頭が蕩けそうなほど興奮した。遠慮のない舌が唇を割って入ってくる。キスとはこんなに官能的な行為なのかと凛義は衝撃を受けた。タオルを剥ぎ取られ、慣れた手つきでペニスをしごかれる。
「はっ、甲斐っ……さんっ」
そんなことをされたら、すぐにイってしまう。角度を変え、貪られるようなキスをしながらではなおさらだ。振り払おうとした手を、甲斐は逆に振り払い、先走りで濡れたペニスを器用に扱く。
「くっ……」
物理的に与えられる刺激によって、凛義は呆気なく果てた。
息を整えたくても、甲斐の唇は離れない。達したばかりのペニスは瞬く間に硬くなった。
「ん、ぁっ……」
繋げた唇の間から、ふいに甘い声がもれたかと思うと、ペニスの先端が温かいもので包まれた。
「っ……」
凛義は驚いて目を見開いた。そして目の前の男の表情に、さらに驚く。甲斐は片目を閉じ、濡れた唇を半開きにしていた。そこから覗く赤い舌の、扇情的なことといったらない。
「でかすぎるんよ」
甲斐は細い眉を辛そうに寄せ、ぎこちなく口角を上げた。
「甲斐……さん……っ」
「んっ……っふ……」
ゆっくりと、もどかしくなるほど時間を掛けて、甲斐は凛義のペニスをその身に咥え込んだ。
「甲斐さん……俺、やばいです……こんなん、すぐいく」
「わしも、やばいわ。お前のええがに……ええとこ当たる」
ぐったりと甲斐が倒れ込んでくる。濡れた膚は驚くほど滑らかだった。めちゃくちゃに興奮して、気づいたら勝手に腰が動いていた。
「ん、あっ……あっ、ばかっ……あっ」
「甲斐さん……これっ……夢ですかっ……俺っ……夢ん中いるみたいです……っ」
「あっ……はっ……わりゃっ……激し、い……」
「甲斐さんっ……」
初めての男の体に凛義は夢中になった。甲斐の首筋に鼻を寄せ、犬のように匂いを嗅ぎ、汗ばんだ膚を舐め回す。
「鬱陶しいわ」
「甲斐さん、すごく綺麗だから」
甲斐が吹き出すようにして笑った。
「なに言いよるん」
「甲斐さんはすごく綺麗だ」
「目え腐っとんの。そんなこと、わりゃしか言わんわ」
「本当に? 俺以外の男は言いませんか?」
甲斐の目が愉快げに細められる。
「俺以外の男って?」
「……本命、とか」
「あの人はクールじゃけえ、そがいにキザったい言葉は使わんよ」
「っ……」
甲斐には本命がいる。甲斐が否定しないことで、確定してしまった。凛義は「本命」という言葉を使ったことを後悔した。
「んぅっ……」
凛義は体の位置変え、真上から甲斐を見下ろした。中をなぞるように、ゆっくりと腰を動かす。
「甲斐さん……次は?」
「あっ……んっ、あ、あっ……」
「俺、甲斐さんの言うとおりに走ります」
もっと甲斐と仲良くなりたい。八百長という不正ほど、甲斐の気を引き、強固な関係を築けるものはない。次のレースが待ち遠しかった。甲斐の期待に応え、本命を超える存在になりたい。
甲斐の言葉通りにレースを運んだ時の快感は、デビュー後の初勝利に匹敵した。こんなスリルがこの世にあるのかと驚き、同時に感動した。甲斐は一流のレーサーだ。ただ1着を狙いに行くよりも、着順をビルドアップする方がはるかに難しい。
「上出来じゃ」
七日間に及ぶレースを終えた後、甲斐と二人で朝まで飲んだ。疲れているはずなのに、楽しくていくらでも起きていられた。甲斐の話は面白かった。
「わりゃ、時計しないん?」
「ああ……壊れちゃったんです。修理に出したいんですけど、なかなか時間がなくて」
「稼いどるんやから買いや」
「気に入ってたんですよ」
「なんのブランド?」
「セイコーです」
「なんでセイコーなんよ。そんなん、地方のジジババしか持っとらんよ。レーサーならロレックスとかウブロとか、もっといかついもんつけえや」
ムッとする。でも心が傾くのも確かだった。甲斐が身につけているロレックスはシルバー一色のシンプルなデザインだったが、妙に存在感があり、格好良い。でもそれはロレックス単体が格好いいというより、甲斐が身につけているからそう見える気がした。
銀色の髪も、余白の多い目も、訛りも、これまでなんとも思わなかった事柄が、彼を通して見ると格好いいのだ。
「なあ、突っ込ませて」
朝五時に店を出て、乗り込んだタクシーの後部座席で、凛義にもたれ掛かりながら甲斐は言った。
「え?」
「わりゃのケツに、わしのちんこ」
甲斐は凛義の腰を触った。
凛義は激しく狼狽えた。タクシー運転手の視線を気にして、何も答えられずにいると、「嫌ならええけど」と甲斐はそっけなく体を離す。
「嫌じゃないですっ」
まともに事態を飲み込めないまま、凛義は答えていた。
ラブホテルに入って、本当にセックスを求められたのだと実感した時、凛義はやはり、甲斐を格好いいと思った。甲斐の行動には疾しさがない。性に奔放で、こなれた誘い方を大人っぽいと感じた。
「なんや、わりゃ、男が好きじゃったんか」
腰に巻いたタオル越しに、甲斐は凛義の股間に触れてきた。
「じゃあなに? わしに抱かれんのも嬉しい?」
からかうような声。暴力的な衝動が突き上げてきて、凛義は甲斐の腕を掴んだ。
「俺っ……」
男が好きなんて、二十年間誰にも言い出せなかった。
「俺っ……突っ込む方……がいい、です」
蛇のような切長の目をすっと細め、甲斐は顔を寄せ、唇の触れる距離で言った。
「別の男に突っ込ませたってバレたら、わし、怒られてまうわ」
それはつまり、と思考する間も無く、甲斐は唇を重ねてきた。歯磨き粉と酒の匂いに頭が蕩けそうなほど興奮した。遠慮のない舌が唇を割って入ってくる。キスとはこんなに官能的な行為なのかと凛義は衝撃を受けた。タオルを剥ぎ取られ、慣れた手つきでペニスをしごかれる。
「はっ、甲斐っ……さんっ」
そんなことをされたら、すぐにイってしまう。角度を変え、貪られるようなキスをしながらではなおさらだ。振り払おうとした手を、甲斐は逆に振り払い、先走りで濡れたペニスを器用に扱く。
「くっ……」
物理的に与えられる刺激によって、凛義は呆気なく果てた。
息を整えたくても、甲斐の唇は離れない。達したばかりのペニスは瞬く間に硬くなった。
「ん、ぁっ……」
繋げた唇の間から、ふいに甘い声がもれたかと思うと、ペニスの先端が温かいもので包まれた。
「っ……」
凛義は驚いて目を見開いた。そして目の前の男の表情に、さらに驚く。甲斐は片目を閉じ、濡れた唇を半開きにしていた。そこから覗く赤い舌の、扇情的なことといったらない。
「でかすぎるんよ」
甲斐は細い眉を辛そうに寄せ、ぎこちなく口角を上げた。
「甲斐……さん……っ」
「んっ……っふ……」
ゆっくりと、もどかしくなるほど時間を掛けて、甲斐は凛義のペニスをその身に咥え込んだ。
「甲斐さん……俺、やばいです……こんなん、すぐいく」
「わしも、やばいわ。お前のええがに……ええとこ当たる」
ぐったりと甲斐が倒れ込んでくる。濡れた膚は驚くほど滑らかだった。めちゃくちゃに興奮して、気づいたら勝手に腰が動いていた。
「ん、あっ……あっ、ばかっ……あっ」
「甲斐さん……これっ……夢ですかっ……俺っ……夢ん中いるみたいです……っ」
「あっ……はっ……わりゃっ……激し、い……」
「甲斐さんっ……」
初めての男の体に凛義は夢中になった。甲斐の首筋に鼻を寄せ、犬のように匂いを嗅ぎ、汗ばんだ膚を舐め回す。
「鬱陶しいわ」
「甲斐さん、すごく綺麗だから」
甲斐が吹き出すようにして笑った。
「なに言いよるん」
「甲斐さんはすごく綺麗だ」
「目え腐っとんの。そんなこと、わりゃしか言わんわ」
「本当に? 俺以外の男は言いませんか?」
甲斐の目が愉快げに細められる。
「俺以外の男って?」
「……本命、とか」
「あの人はクールじゃけえ、そがいにキザったい言葉は使わんよ」
「っ……」
甲斐には本命がいる。甲斐が否定しないことで、確定してしまった。凛義は「本命」という言葉を使ったことを後悔した。
「んぅっ……」
凛義は体の位置変え、真上から甲斐を見下ろした。中をなぞるように、ゆっくりと腰を動かす。
「甲斐さん……次は?」
「あっ……んっ、あ、あっ……」
「俺、甲斐さんの言うとおりに走ります」
もっと甲斐と仲良くなりたい。八百長という不正ほど、甲斐の気を引き、強固な関係を築けるものはない。次のレースが待ち遠しかった。甲斐の期待に応え、本命を超える存在になりたい。
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