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オッズ(3)
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弟のマンションで、向かい合って食べる食事は、飲食店でのそれとは何かが違った。どう違うのかと説明はできないけれど、凛義はこの時間を好ましく感じるようになっていた。
「兄さん、青い時計ってどうしたの?」
何気ないふうに、弟が聞いてきた。
「最近……っていうか、もうずっと見てないと思って……あれ、どうしたの?」
水面ダイヤルの腕時計のことだろう。壊れて以降、引き出しの奥に突っ込んだままだ。
「ああ……あれな、壊れたんだよ。修理に出すのも面倒で」
新しい時計ならいくらでも買うことができた。
「じゃあ、僕が修理持っていこうか? ……あ、でも、一旦家に戻らなきゃならないし、手間だよね」
「んー……たぶん買った店に出したほうがいいと思うから、今度自分で行ってくるよ。夏服とか取りに戻りたいと思ってたし、来週くらいに」
「それ、僕もついていっていい?」
「え? ……いいけど、俺んちなんもないぞ?」
黒目がちな弟の目がパッと大きくなった。
「家、入ってもいいの?」
「そのつもりで言ったんじゃないのか?」
「いや……移動とか、時計屋とか、兄さんと行きたいと思って……でも、家にも行きたい」
頬を朱色に染めながら、弟はモゴモゴと言った。
全身で好意を伝えてくる弟を、凛義は不思議な気持ちで眺める。
「お前、なんでそんなに俺のこと好きなの?」
弟は弾かれたように顔を上げ、「だって……」と俯いた。
「優しいから」
「別に優しくないだろ」
「優しいよ。……それに、ボートに乗ってる兄さんは、かっこいい」
「ボート……」
休みも四ヶ月目に突入した。支部長からは練習くらいしろとしつこく電話がかかってくるが、凛義は頑なに拒否している。
「ボートに乗ってなくても、もちろんかっこいいよ!」
慌てて付け足す弟がおかしくて、凛義は笑った。
「ありがとう」
ふと、五十嵐拓也の言葉を思い出した。
「……俺のために、競艇場にいた連中とやり合ってくれたんだよな」
弟は首を傾げた。
「ほら、お前、競艇場で絡まれたって言ってたろ? ……俺は、そんな格好で」
そりゃ、そんな格好で競艇場をうろついてたら、襲ってくださいって言ってるようなもんだろ。総額いくらするんだよ。
あの時、弟に平然と放った言葉が、続きが、声にならなかった。
なんてひどい言葉を自分は使ったんだろう。弟が受けた屈辱を思うと、罪悪感で胸が張り裂けそうだった。
「……ごめん」
弟は首を横に振った。
「辛かったよな」
「ううん……」
「どうして怒らないんだよ」
「怒ってないもん」
弟は大学生なのに、凛義はたまに、幼い子供と話しているように感じることがある。一緒に暮らすまでは、弟は自分より賢くて、常識人で、要領が良いと思っていたが、そうじゃない。きっと繕っていたのだ。
「怒って良いんだよ」
「……うん」
「でも、想像できないな。お前が競艇場にいる連中に立ち向かっていくって……いや、疑ってるわけじゃないんだけど」
「立ち向かったわけじゃないよ……殴りかかっただけ。しかも一発も当たらなかった」
弟は悔しげに唇を引き結んだ。
「ありがとう。俺のために怒ってくれて」
「あいつら、最悪だよ……兄さんが転覆したのに……あんなひどい言葉……」
弟はハッとし、「ごめん」と謝った。
「こんなの、聞きたくないよね」
「良いんだよ。あの時、俺も観客の声を聞いていたから」
弟は辛そうに眉根を寄せた。その表情を見たら、自分の言葉の残酷さに吐き気がした。
弟は罵倒の言葉に怒ってくれた。華奢な体で殴られた。どうしてそんな彼に、あんな言葉をぶつけてしまったのか。後悔してもしきれない。
「……兄さんが辞めたいなら、辞めても良いと思う」
「……ありがとう」
スッと感謝の言葉が口をつく。勝負の世界から離れているからだろうか。焦りや不安に駆られることなく、毎日が平穏で温かい。
あの世界に戻れば、勝つことを強いられる。そして自分は勝ち続け、たまに負ける。でも競艇ファンたちは、その少ない負けを許してはくれない。歓声が罵倒にひっくり返る瞬間が、どうしようもなく怖い。
四年ぶりだというのに、時計屋の店員は凛義を覚えていた。
「ボートレーサーとお聞きしましたので、印象に残っていたのです」
ロマンスグレーの髪をシチサンに分けた店員が、微笑みながら言う。
「別に、言いふらしてたわけじゃないからな」
凛義は隣の弟に小声で言った。「俺はボートレーサーなんです!」と自慢していたと思われたら恥ずかしい。
けれど弟は「うん?」と曖昧に頷くだけだった。なぜそんなことを言うのかと不思議に思っている様子だ。
「弟様ですか?」
店員が聞く。
「あ、はい」
凛義が答えると、弟の頬がほんのりと赤くなった。ぺこりと頭を下げる。
「自慢のお兄様ですね」
店員がそう声をかけると、弟は弾かれたように顔を上げ、「はい」とはにかんだ。
「長期休みはご旅行ですか?」
え、と凛義は狼狽える。この店員は、自分が休暇中だと知っているのだ。競艇ファンならともかく、普通の人間はボートレーサーの休みなど知らない。
凛義の戸惑いを察した店員は、恥ずかしげに付け足した。
「あの後、実は競艇場に行ったのです。気軽に行ける距離にありながら、そういえば一度も行ったことがないなと思いまして。そうしたら、競艇場グルメにすっかり魅了されてしまいました……」
「ああ……グルメ」
「はい。江戸川で食べたモツ煮込みが美味しくて美味しくて……七百円という価格にも驚きました。ああこれは男が通い詰めるわけだと納得いたしました。恥ずかしながら、私はそれまで、競艇というものにネガティブなイメージを持っておりました。ですが行ってみると、抱いていたイメージとは全く違った」
「そう、ですか……?」
「はい。若い女性が名前入りのタオルを肩に掛けているのを見た時は、そんな楽しみ方があるのかと度肝を抜かれました。私は賭け方などよくわかりませんので、ああいうふうにボートレーサー個人を応援すれば良いのだなと勉強になりました」
まさかと凛義は息をのんだ。店員は力強く頷く。
「おかげで、ギャンブルの才能がない私でも、勝つことができました」
凛義はたまらず目を伏せた。八百長をしていた自分が、自分を信じて賭けてくれた人の目を、まともに見られるはずがなかった。
「……あの、時計……直りますか?」
トレイに乗った時計を見つめ、凛義は言った。
「もちろんでございます。復帰はいつですか?」
「……4月です」
「4月に復帰されるのですね」心なしか、ホッとしたような声が言った。「では、それまでには必ず間に合わせます」
「……すみません」
後ろめたくて、凛義はすぐにも店を出たかった。
「いえ、時間は十分にありますから」
「……お願いします」
凛義は頭を下げ、弟の腕を引いて店を出た。時間に追われてなどいないのに、凛義の足取りは急くように速い。弟は何も言わずに歩幅を合わせてついてくる。いじらしい、と胸が詰まった。
「ごめんな」
ぽろっと、口からこぼれた。
「俺、間違ってたわ……」
柔らかい手が、凛義の手を強く握る。
「俺……みんな、金のことしか考えてないと思ってたんだ……お前はずっと、俺を応援してたのにな……」
「うん……」
「母さんと父さんが離婚した後、お前は一人で競艇場に来てたよな」
「……競艇場に行けば兄さんに会えたから」
凛義は父親に連れられて競艇場に通っていたが、瑠衣は一人で競艇場に来ていた。
よく考えればわかることだった。まともな母親なら、幼い子供を一人で競艇場になど行かせない。
「昔は兄さんに会える場所。今は、兄さんを応援できる場所」
弟は小さく笑った。
「……僕、競艇場好きなのかな」
「復帰したら、また応援に来てくれるか?」
「当たり前じゃん。現地に行って応援するよ」
「……時計、直ったらまた一緒に来ようか」
「うん」
「さっきはゆっくり見れなかったから、今度はゆっくり見よう。お前が気に入ったの、買ってやるよ」
「え……悪いよ」
「その分稼ぐから良いんだよ」
「ありがとう……やばい。すごく嬉しい……」
すれ違う通行人が、皆一様にギョッと驚いた顔をする。男二人が手を繋いで泣いているのだから当然だろう。薄気味悪いのを自覚しながら、けれど凛義は弟の手を離そうとはしなかった。
「兄さん、青い時計ってどうしたの?」
何気ないふうに、弟が聞いてきた。
「最近……っていうか、もうずっと見てないと思って……あれ、どうしたの?」
水面ダイヤルの腕時計のことだろう。壊れて以降、引き出しの奥に突っ込んだままだ。
「ああ……あれな、壊れたんだよ。修理に出すのも面倒で」
新しい時計ならいくらでも買うことができた。
「じゃあ、僕が修理持っていこうか? ……あ、でも、一旦家に戻らなきゃならないし、手間だよね」
「んー……たぶん買った店に出したほうがいいと思うから、今度自分で行ってくるよ。夏服とか取りに戻りたいと思ってたし、来週くらいに」
「それ、僕もついていっていい?」
「え? ……いいけど、俺んちなんもないぞ?」
黒目がちな弟の目がパッと大きくなった。
「家、入ってもいいの?」
「そのつもりで言ったんじゃないのか?」
「いや……移動とか、時計屋とか、兄さんと行きたいと思って……でも、家にも行きたい」
頬を朱色に染めながら、弟はモゴモゴと言った。
全身で好意を伝えてくる弟を、凛義は不思議な気持ちで眺める。
「お前、なんでそんなに俺のこと好きなの?」
弟は弾かれたように顔を上げ、「だって……」と俯いた。
「優しいから」
「別に優しくないだろ」
「優しいよ。……それに、ボートに乗ってる兄さんは、かっこいい」
「ボート……」
休みも四ヶ月目に突入した。支部長からは練習くらいしろとしつこく電話がかかってくるが、凛義は頑なに拒否している。
「ボートに乗ってなくても、もちろんかっこいいよ!」
慌てて付け足す弟がおかしくて、凛義は笑った。
「ありがとう」
ふと、五十嵐拓也の言葉を思い出した。
「……俺のために、競艇場にいた連中とやり合ってくれたんだよな」
弟は首を傾げた。
「ほら、お前、競艇場で絡まれたって言ってたろ? ……俺は、そんな格好で」
そりゃ、そんな格好で競艇場をうろついてたら、襲ってくださいって言ってるようなもんだろ。総額いくらするんだよ。
あの時、弟に平然と放った言葉が、続きが、声にならなかった。
なんてひどい言葉を自分は使ったんだろう。弟が受けた屈辱を思うと、罪悪感で胸が張り裂けそうだった。
「……ごめん」
弟は首を横に振った。
「辛かったよな」
「ううん……」
「どうして怒らないんだよ」
「怒ってないもん」
弟は大学生なのに、凛義はたまに、幼い子供と話しているように感じることがある。一緒に暮らすまでは、弟は自分より賢くて、常識人で、要領が良いと思っていたが、そうじゃない。きっと繕っていたのだ。
「怒って良いんだよ」
「……うん」
「でも、想像できないな。お前が競艇場にいる連中に立ち向かっていくって……いや、疑ってるわけじゃないんだけど」
「立ち向かったわけじゃないよ……殴りかかっただけ。しかも一発も当たらなかった」
弟は悔しげに唇を引き結んだ。
「ありがとう。俺のために怒ってくれて」
「あいつら、最悪だよ……兄さんが転覆したのに……あんなひどい言葉……」
弟はハッとし、「ごめん」と謝った。
「こんなの、聞きたくないよね」
「良いんだよ。あの時、俺も観客の声を聞いていたから」
弟は辛そうに眉根を寄せた。その表情を見たら、自分の言葉の残酷さに吐き気がした。
弟は罵倒の言葉に怒ってくれた。華奢な体で殴られた。どうしてそんな彼に、あんな言葉をぶつけてしまったのか。後悔してもしきれない。
「……兄さんが辞めたいなら、辞めても良いと思う」
「……ありがとう」
スッと感謝の言葉が口をつく。勝負の世界から離れているからだろうか。焦りや不安に駆られることなく、毎日が平穏で温かい。
あの世界に戻れば、勝つことを強いられる。そして自分は勝ち続け、たまに負ける。でも競艇ファンたちは、その少ない負けを許してはくれない。歓声が罵倒にひっくり返る瞬間が、どうしようもなく怖い。
四年ぶりだというのに、時計屋の店員は凛義を覚えていた。
「ボートレーサーとお聞きしましたので、印象に残っていたのです」
ロマンスグレーの髪をシチサンに分けた店員が、微笑みながら言う。
「別に、言いふらしてたわけじゃないからな」
凛義は隣の弟に小声で言った。「俺はボートレーサーなんです!」と自慢していたと思われたら恥ずかしい。
けれど弟は「うん?」と曖昧に頷くだけだった。なぜそんなことを言うのかと不思議に思っている様子だ。
「弟様ですか?」
店員が聞く。
「あ、はい」
凛義が答えると、弟の頬がほんのりと赤くなった。ぺこりと頭を下げる。
「自慢のお兄様ですね」
店員がそう声をかけると、弟は弾かれたように顔を上げ、「はい」とはにかんだ。
「長期休みはご旅行ですか?」
え、と凛義は狼狽える。この店員は、自分が休暇中だと知っているのだ。競艇ファンならともかく、普通の人間はボートレーサーの休みなど知らない。
凛義の戸惑いを察した店員は、恥ずかしげに付け足した。
「あの後、実は競艇場に行ったのです。気軽に行ける距離にありながら、そういえば一度も行ったことがないなと思いまして。そうしたら、競艇場グルメにすっかり魅了されてしまいました……」
「ああ……グルメ」
「はい。江戸川で食べたモツ煮込みが美味しくて美味しくて……七百円という価格にも驚きました。ああこれは男が通い詰めるわけだと納得いたしました。恥ずかしながら、私はそれまで、競艇というものにネガティブなイメージを持っておりました。ですが行ってみると、抱いていたイメージとは全く違った」
「そう、ですか……?」
「はい。若い女性が名前入りのタオルを肩に掛けているのを見た時は、そんな楽しみ方があるのかと度肝を抜かれました。私は賭け方などよくわかりませんので、ああいうふうにボートレーサー個人を応援すれば良いのだなと勉強になりました」
まさかと凛義は息をのんだ。店員は力強く頷く。
「おかげで、ギャンブルの才能がない私でも、勝つことができました」
凛義はたまらず目を伏せた。八百長をしていた自分が、自分を信じて賭けてくれた人の目を、まともに見られるはずがなかった。
「……あの、時計……直りますか?」
トレイに乗った時計を見つめ、凛義は言った。
「もちろんでございます。復帰はいつですか?」
「……4月です」
「4月に復帰されるのですね」心なしか、ホッとしたような声が言った。「では、それまでには必ず間に合わせます」
「……すみません」
後ろめたくて、凛義はすぐにも店を出たかった。
「いえ、時間は十分にありますから」
「……お願いします」
凛義は頭を下げ、弟の腕を引いて店を出た。時間に追われてなどいないのに、凛義の足取りは急くように速い。弟は何も言わずに歩幅を合わせてついてくる。いじらしい、と胸が詰まった。
「ごめんな」
ぽろっと、口からこぼれた。
「俺、間違ってたわ……」
柔らかい手が、凛義の手を強く握る。
「俺……みんな、金のことしか考えてないと思ってたんだ……お前はずっと、俺を応援してたのにな……」
「うん……」
「母さんと父さんが離婚した後、お前は一人で競艇場に来てたよな」
「……競艇場に行けば兄さんに会えたから」
凛義は父親に連れられて競艇場に通っていたが、瑠衣は一人で競艇場に来ていた。
よく考えればわかることだった。まともな母親なら、幼い子供を一人で競艇場になど行かせない。
「昔は兄さんに会える場所。今は、兄さんを応援できる場所」
弟は小さく笑った。
「……僕、競艇場好きなのかな」
「復帰したら、また応援に来てくれるか?」
「当たり前じゃん。現地に行って応援するよ」
「……時計、直ったらまた一緒に来ようか」
「うん」
「さっきはゆっくり見れなかったから、今度はゆっくり見よう。お前が気に入ったの、買ってやるよ」
「え……悪いよ」
「その分稼ぐから良いんだよ」
「ありがとう……やばい。すごく嬉しい……」
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